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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1188819
審判番号 不服2005-22161  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-17 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 平成11年特許願第 24518号「集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月11日出願公開、特開2000-223576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年2月2日の出願であって、平成17年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成20年1月15日付けで審尋がなされ、同年3月19日に回答書が提出されたものである。

第2 平成17年11月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、以下のとおりである。
補正事項a
補正前の請求項1を、「【請求項1】 内部回路と、該内部回路との間にそれぞれ信号経路が形成された複数のボンディングパッドとを備えた集積回路において、 前記複数のボンディングパッドのうちの一ボンディングパッドを介して前記内部回路に入力又は前記内部回路から出力していた一信号を、 前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け、 前記他のボンディングパッドは、上記一ボンディングパッドを用いる場合よりも、第2の信号とのクロストークによる不都合を生じない配置とし、 前記切替手段は、外部から入力される信号により制御可能な電気回路であることを特徴とする集積回路。」と補正したこと。

2 本件補正についての検討
2-1 補正事項の整理
補正事項aについての補正は、補正前の請求項1の「前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け」を、補正後の請求項1の「前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け」(以下、「補正事項a-1」という。)と補正し、
補正前の請求項1の「前記他のボンディングパッドは、クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」を、補正後の請求項1の「前記他のボンディングパッドは、上記一ボンディングパッドを用いる場合よりも、第2の信号とのクロストークによる不都合を生じない配置とし」(以下、「補正事項a-2」という。)と補正したものである。

2-2 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
補正事項aについての補正は、補正事項a-1と補正事項a-2とからなるので、それぞれ、検討する。
・補正事項a-1について
補正事項a-1についての補正は、補正前の請求項1の「前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの」と「他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け」の間に、補正後の請求項1の「、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の」という記載を加えて、限定した補正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「【0013】上記集積回路を搭載したパッケージにおいて、振幅に大きな差のある2つの信号が、近接するパッケージの端子を介して入力及び出力される場合、一方の信号に対応するボンディングパッドを上記切替手段によって他のボンディングパッドに対応させる。これにより、該信号に対応するパッケージの端子も他のものとなるので、他方の信号に対応する端子との間に距離をもたせることができる。」(0013段落)、「該チップ1が図3に示すQFPに搭載された場合、ボンディングパッド31からの出力信号はパッケージ6のリード71より出力される。また、ボンディングパッド33からの出力信号ははリード73より出力される。リード71とリード73との間の距離は、クロストークなどによる不都合を生じないような距離になっている。」(0018段落)、及び「ボンディングパッド31からの出力信号は、パッケージ6側ボンディングパッド81を介してハンダパッド91(図5参照)より出力される。また、ボンディングパッド33からの出力信号は、パッケージ6側ボンディングパッド83を介してハンダパッド93(図5参照)より出力される。この場合、ハンダパッド91とハンダパッド93とは近接していることから、上述した不都合が生じるおそれがある。」と記載されているように、複数の「パッケージの端子」のうちの、一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係る「パッケージの端子」と十分離れた位置の他の「パッケージの端子」を介して、前記一信号を入力又は出力させることは記載されているものの、「一信号を、」「前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる」ことは記載されていない。よって、補正後の請求項1の「前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け」において、「前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッド」については、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されているものとは認められず、また、自明な事項でもない。
したがって、補正事項a-1についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。
・補正事項a-2について
補正事項a-2についての補正は、補正前の請求項1の「前記他のボンディングパッドは、」と「クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」の間に、補正後の請求項1の「上記一ボンディングパッドを用いる場合よりも、第2の信号との」という記載を加えて、限定した補正部分(以下、「補正事項a-2-1」という。)と、補正前の請求項1の「クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」を、補正後の請求項1の「クロストークによる不都合を生じない配置とし」とする補正部分(以下、「補正事項a-2-2」という。)を有するが、補正事項a-2-1についての補正は、限定した補正であるから、請求項の減縮を目的とする補正に該当するものの、補正事項a-2-2についての補正は、補正前の請求項1の「前記他のボンディングパッド」が「クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」るものから、補正後の請求項1の「前記他のボンディングパッド」が「クロストークによる不都合を生じない配置」とするものになり、補正事項a-2-2についての補正は、発明を特定するための事項を変更するものであるから、発明を特定するための事項の限定ではなく、限定的減縮とはなっていないので、補正事項a-2-2についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、補正事項a-2-2についての補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかであるので、補正事項a-2-2についての補正は、特許法第17条の2第4項第1号から第4号に規定する要件を満たさない。

2-3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についてのむすび
上記補正事項a-1についての補正と補正事項a-2-2についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たさないとともに、特許法第17条の2第4項に規定する要件も満たさない。

3 本件補正の独立特許要件についての検討
次に、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たし、かつ、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するとみなして、本件補正の独立特許要件についての検討をする。

本願の補正後の請求項1に係る発明は、「第2 1」に掲げた補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

3-1 特許法第36条について
本願の補正後の請求項1に係る発明は、「前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段」を備えるものである。
しかしながら、本願の願書に添付した明細書又は図面には、「【0013】上記集積回路を搭載したパッケージにおいて、振幅に大きな差のある2つの信号が、近接するパッケージの端子を介して入力及び出力される場合、一方の信号に対応するボンディングパッドを上記切替手段によって他のボンディングパッドに対応させる。これにより、該信号に対応するパッケージの端子も他のものとなるので、他方の信号に対応する端子との間に距離をもたせることができる。」(0013段落)、「該チップ1が図3に示すQFPに搭載された場合、ボンディングパッド31からの出力信号はパッケージ6のリード71より出力される。また、ボンディングパッド33からの出力信号ははリード73より出力される。リード71とリード73との間の距離は、クロストークなどによる不都合を生じないような距離になっている。」(0018段落)、及び「ボンディングパッド31からの出力信号は、パッケージ6側ボンディングパッド81を介してハンダパッド91(図5参照)より出力される。また、ボンディングパッド33からの出力信号は、パッケージ6側ボンディングパッド83を介してハンダパッド93(図5参照)より出力される。この場合、ハンダパッド91とハンダパッド93とは近接していることから、上述した不都合が生じるおそれがある。」と記載されているように、複数の「パッケージの端子」のうちの、一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係る「パッケージの端子」と十分離れた位置の他の「パッケージの端子」を介して、前記一信号を入力又は出力させること、及び、それにより「どのような形態のパッケージに搭載されても不都合が生じない集積回路を提供」(0011段落)できるという効果を奏することは記載されているものの、「一信号を、」「前記複数のボンディングパッドのうちの、上記一信号とのクロストークを生じる第2の信号に係るボンディングパッドと十分離れた位置の他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる」ことについては、実質的に記載されておらず、また、それにより、どのようにして上記効果を奏するのか、不明である。すわわち、一信号と比較して振幅の差が大きい他の信号については、一信号に対応する「パッケージの端子」から十分離れた位置の他の「パッケージの端子」に対応させることは記載されているものの、一信号に対応する「ボンディングパッド」から十分離れた位置の他の「ボンディングパッド」に対応させることは記載されておらず、また、一信号及び他の信号に対応する「ボンディングパッド」どうしを十分離れた位置とすることにより、どのようにして、「どのような形態のパッケージに搭載されても不都合が生じない集積回路を提供する」ことができるのか、不明である。
したがって、本願の補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、発明の構成も明確ではないから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

3-2 独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、本願の補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合しない。

4 まとめ
よって、本件補正は、上記「2-3」、及び上記「3-2」に記載のとおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないとともに、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たさないものであり、また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するとみなしても、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
平成17年11月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 内部回路と、該内部回路との間にそれぞれ信号経路が形成された複数のボンディングパッドとを備えた集積回路において、
前記複数のボンディングパッドのうちの一ボンディングパッドを介して前記内部回路に入力又は前記内部回路から出力していた一信号を、前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け、
前記他のボンディングパッドは、クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ、
前記切替手段は、外部から入力される信号により制御可能な電気回路であることを特徴とする集積回路。」

1 引用刊行物及び該引用刊行物記載の発明
刊行物1.特開平7-161761号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特特開平7-161761号公報)には、
「半導体装置」(発明の名称)に関して、
「【請求項3】 内部回路(18)に接続されるボンディングパッド(13)を表面に有する半導体素子(12)と、該半導体素子(12)表面のボンディングパッド(13)にワイヤー(15)を介して接続される複数のリード端子(14)とを有し、該リード端子(14)の端部が導出されるように前記半導体素子(12)が封止されてなる半導体装置において、
前記内部回路(18)からは複数の機能パッド(17)が導出されており、該機能パッド(17)と内部回路(18)を接続する配線に対して、前記ボンディングパッド(13)がヒューズ(19)を介して接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】 内部回路(28)に接続されるボンディングパッド(23)を表面に有する半導体素子(22)と、該半導体素子(22)表面のボンディングパッド(23)にワイヤー(25)を介して接続される複数のリード端子(24)とを有し、該リード端子(24)の端部が導出されるように前記半導体素子(22)が封止されてなる半導体装置において、
前記半導体素子22は、前記内部回路(28)とボンディングパッド(23)との間に介在するように、前記リード端子24の機能を予め決定するためのメモリー(29)と、該メモリー(29)により決定されているリード端子(24)の機能を変更するための書込み可能なメモリー(30)と、前記メモリー(29)と書込み可能なメモリー(30)の信号の切替えを行う一対のゲート(27a,27b)を備えていることを特徴とする半導体装置。」、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多種多様の仕様に対応する半導体装置に関する。汎用品の半導体装置において、顧客の要求は多種多様であり、様々な要求に対して容易に配線の変更を行うことのできるものが望まれている。」、
「【0004】半導体素子32上に形成される複数のボンディングパッド33は、内部回路に接続され、それぞれ電源用、入力信号用等その機能が決まっている。このようなパッド33は図5(b)に示すように、半導体素子32の周囲部に形成されており、リード端子34と1対1に対応して、ワイヤー35により接続されている。」、
「【0020】次に、リード端子とボンディングパッドとの接続ではなく、内部回路とボンディングパッドとの接続において端子配列を容易に変更できる第二実施例を説明する。図3は、モールド樹脂を省略して配線を模式的に示した第二実施例の半導体装置11の平面図である。
【0021】本実施例の半導体装置11は、まず図3(a)に示すとおり、半導体素子12上に内部回路18と所定の配線により接続される複数の機能パッド17と、この配線とマトリクス状になるよう交差する配線が接続されるボンディングパッド13とを形成し、各配線のマトリクス接点部をヒューズ19によって接続した状態にする。
【0022】尚、各機能パッド17は、PP試験時にボンディングパッドと共にプローブピンを接触するための試験用パッドとなっている。このように、ヒューズ19を介してマトリクス状に接続した機能パッド17とボンディングパッド13に対して、PP試験においてプローブピンを接触させて試験を行うが、この際に不要な部分には大電流を流すことでヒューズ19を切断して、必要な部分のみ接続状態を保持させる。
【0023】図3(b)は、図3(a)の状態から所定のヒューズ19を切断することで、ボンディングパッド13aが機能C、パッド13bが機能D、パッド13cが機能B、パッド13dが機能Aとなった状態を示すものである。このような各機能にするためには、上記組み合わせ以外の試験を行う際に大電流を流す。
【0024】例えばボンディングパッド13aを例に説明すると、図3(a)において、まずパッド13aと機能パッドAとにプローブピンを接触させて試験を行っている際には大電流を流してヒューズを切断し、次にパッド13aと機能パッドBとの試験時にも大電流を流すことでヒューズを切断する。そしてパッド13aと機能パッドCとの試験の際には大電流を流すことなく、ヒューズは接続状態を保持する。更に、パッド13aと機能パッドDとの試験時には大電流を流してヒューズを切断する。
【0025】以上のように、ヒューズ,,を切断して、ヒューズの接続状態を保持することにより、ボンディングパッド13aは機能Cを有することになる。ボンディグパッド13b?13dについても同様に、試験時に所望のヒューズのみを残すことにより、各機能を付与することができる。以上のような処理を施すことにより、図3(b)に示すような配線となり、適宜機能を決定された各パッド13にワイヤー15によって接続されるリード端子14の機能が決定される。
【0026】本実施例においても、図2の変形例同様どのような組み合わせの配線も可能であり、その端子配列の自由度は高いものとなる。尚、本実施例においては、PP試験時に大電流を流すことで、ヒューズ19を切断したが、例えばプロセスカバー膜工程時にレーザーによってヒューズ19を切断することによっても同様に各リード端子14の機能を自由に変更することが可能となる。
【0027】第一,第二実施例が顧客の要求に応じて製造側で端子配列変更を行ったのに対して、顧客側にて端子配列の変更を可能とする第三実施例を図4を参照しながら説明する。図4は、モールド樹脂を省略して配線を模式的に示した第三実施例の半導体装置21の平面図である。
【0028】本実施例における半導体装置21は、図4に示すとおり、半導体素子22上に内部回路28より各機能A?Dを有する配線が引き出されて、各配線の配列を決定するメモリー例えばPROM29とゲート27aを介して、それぞれの機能を有する配線が各ボンディングパッド23に接続されている。一方、内部回路18より引き出される配線は、書込み可能なメモリー例えばOPROM30とゲート27bを介すことによっても各ボンディングパッド23に接続されている。
【0029】そして各ゲート27a,27bの切替えはOPROM30によって行うことができるようになっている。尚、各ボンディングパッド23は、半導体素子22周辺に位置するリード端子24とワイヤーボンディングによって接続されている。本実施例の半導体装置21においては、所定の端子配列となるようにPROM29の記憶状態によって決定されているが、製品納入後にOPROM30に対して処理を施すことで、予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能となっている。即ち、顧客自らが必要に応じて端子配列を容易に変更することができるものである。
【0030】図4に示す半導体装置21の場合は、PROM29内に示すようなマトリクス交差部の接続を設定することによって、リード端子24aが機能D、リード端子24bが機能B、リード端子24cが機能C、リード端子24dが機能Aとなるように予め設定されている。そして、顧客側は製品納入後にOPROM30に所定の処理を施すことによって、OPROM30内に示すようなマトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行うことにより、リード端子24aを機能A、リード端子24bを機能C、リード端子24cを機能D、リード端子24dを機能Bに変更している。」、
が、記載されている。

以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「内部回路28に接続される複数のボンディングパッド23を表面に有する半導体素子22と、前記半導体素子22表面の複数の前記ボンディングパッド23にワイヤー25を介してそれぞれ接続される複数のリード端子24とを有し、複数の前記リード端子24の端部が導出されるように前記半導体素子22が封止されてなる半導体装置において、
前記半導体素子22は、前記内部回路28より各機能を有する配線が引き出されて、前記各配線の配列を決定する第1又は第2のメモリーと一対のゲート27a、27bを介して、それぞれの機能を有する前記各配線が前記各ボンディングパッド23に接続されるものであり、前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27bを備えていることを特徴とする半導体装置。」

2 対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比すると、刊行物1発明の「内部回路28」、「ボンディングパッド23」、「配線」は、それぞれ、本願発明の「内部回路」、「ボンディングパッド」、「信号経路」に相当する。
また、刊行物1発明の「複数のリード端子24とを有し、複数の前記リード端子24の端部が導出されるように前記半導体素子22が封止されてなる半導体装置」は、本願発明の「集積回路が搭載されるパッケージ」に相当し、また、刊行物1発明の「リード端子24」は、本願発明の「集積回路が搭載されるパッケージの端子」に相当する。
また、刊行物1発明の「前記内部回路28より各機能を有する配線が引き出されて、前記各配線の配列を決定する第1又は第2のメモリーと一対のゲート27a、27bを介して、それぞれの機能を有する前記各配線が前記各ボンディングパッド23に接続されるものであり、前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27b」において、「前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29」により、「内部回路28」と1つの「ボンディングパッド23」との間に1つの「配線」が設定され、その後、「前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30」の設定により、前記1つの「配線」は、「内部回路28」と別の「ボンディングパッド23」の間に接続され、切り替えられることになる。すると、「配線」が切り替えられると、「配線」を伝送する入出力信号や「配線」を介して供給される電源電圧も切り替えられ、このうちの入出力信号は、他の「ボンディングパッド23」を介して入力又は出力することになり、さらに、刊行物1発明の「第1のメモリー29」と「書込み可能な第2のメモリー30」と「一対のゲート27a,27b」とを併せた構成は、「切替手段」であることは明らかであって、刊行物1発明の「複数のリード端子24とを有し、複数の前記リード端子24の端部が導出されるように前記半導体素子22が封止されてなる半導体装置」が、本願発明の「集積回路が搭載されるパッケージ」に相当し、また、刊行物1発明の「リード端子24」が、本願発明の「集積回路が搭載されるパッケージの端子」に相当することも考慮すると、刊行物1発明の「前記内部回路28より各機能を有する配線が引き出されて、前記各配線の配列を決定する第1又は第2のメモリーと一対のゲート27a、27bを介して、それぞれの機能を有する前記各配線が前記各ボンディングパッド23に接続されるものであり、前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27b」は、本願発明の「前記複数のボンディングパッドのうちの一ボンディングパッドを介して前記内部回路に入力又は前記内部回路から出力していた一信号を、前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段」に相当する。
また、本願発明の「切替手段」の一部に相当する刊行物1発明の「前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30」は、「前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行」うから、外部から「所定の処理を施す」、すなわち、制御する、「マトリクス交差部の接続を設定する」電気回路であるので、本願発明の「切替手段」に相当する刊行物1発明の「前記内部回路28より各機能を有する配線が引き出されて、前記各配線の配列を決定する第1又は第2のメモリーと一対のゲート27a、27bを介して、それぞれの機能を有する前記各配線が前記各ボンディングパッド23に接続されるものであり、前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27b」は、本願発明の「前記切替手段は、外部から」「制御可能な電気回路であること」に相当する。
また、刊行物1発明の「半導体素子22」は、本願発明の「集積回路」に相当する。
すると、本願発明と刊行物1発明とは、
「内部回路と、該内部回路との間にそれぞれ信号経路が形成された複数のボンディングパッドとを備えた集積回路において、
前記複数のボンディングパッドのうちの一ボンディングパッドを介して前記内部回路に入力又は前記内部回路から出力していた一信号を、前記集積回路が搭載されるパッケージの端子の配置に応じて前記複数のボンディングパッドのうちの他のボンディングパッドを介して入力又は出力させる切替手段を設け、
前記切替手段は、外部から制御可能な電気回路であることを特徴とする集積回路。」
の点で一致し、
本願発明は、「前記他のボンディングパッドは、クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」るとの構成を有するのに対して、刊行物1発明は、このような構成を有していない点(以下、「相違点1」という。)、本願発明は、「前記切替手段は、外部から入力される信号により制御可能な電気回路である」のに対して、刊行物1発明は、本願発明の「切替手段」に相当するものが、「外部から」「制御可能な電気回路である」が、「外部から入力される信号により制御可能」かどうか不明である点(以下、「相違点2」という。)で、相違している。
そこで、上記相違点1、2について検討する。
a.相違点1について
本願に係る審判請求書の「【請求の理由】 (3) 1」には、「ここでクロストークは主に信号経路間の容量結合等によって発生するため、ボンディングパッドを含めた信号経路同士が離れているほど、クロストークによる不都合が生じないことは周知であります。」と、審判請求人も認めているように、ボンディングパッドを含めた信号経路同士が離れているほど、クロストークによる不都合が生じないことは周知である。
そして、刊行物1の「汎用品の半導体装置において、顧客の要求は多種多様であり、様々な要求に対して容易に配線の変更を行うことのできるものが望まれている。」(【0001】段落)という記載によれば、顧客の要求として、周知である、クロストークによる不都合が生じないようにすることも、当然にあり得る要求であるから、信号間でクロストークが問題となる場合に、ボンディングパッドを含めた信号経路同士を離すための何らかの工夫をすることは当然のことであり、そのために、刊行物1発明の「前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27b」を用いて、ボンディングパッド23の位置を切り替え、本願発明のごとく、「前記他のボンディングパッドは、クロストークによる不都合を生じないように前記一信号を入力又は出力させ」るようになすことは、当業者が適宜なし得たことと認められる。
なお、本願発明は、クロストークによる不都合を生じないことに関して、具体的な構成がなく、機能的な表現の構成のみであるので、上記のように判断せざるをえない。
b.相違点2について
刊行物1には、「本実施例の半導体装置11は、まず図3(a)に示すとおり、半導体素子12上に内部回路18と所定の配線により接続される複数の機能パッド17と、この配線とマトリクス状になるよう交差する配線が接続されるボンディングパッド13とを形成し、各配線のマトリクス接点部をヒューズ19によって接続した状態にする。」(【0021】段落)こと、「ヒューズ19を介してマトリクス状に接続した機能パッド17とボンディングパッド13に対して、PP試験においてプローブピンを接触させて試験を行うが、この際に不要な部分には大電流を流すことでヒューズ19を切断して、必要な部分のみ接続状態を保持させる。」(【0022】段落)ことが、記載されている。
そして、「内部回路18」と「ボンディングパッド13」の接続を、「不要な部分には大電流を流すことでヒューズ19を切断して」設定することが、示されており、「ヒューズ19」を用いた切替手段と認められる。
すると、この「ヒューズ19」を用いた切替手段は、もちろん、制御可能な電気回路であり、「大電流を流すことでヒューズ19を切断」するから、「大電流」を信号ととらえると、本願発明の「前記切替手段は、外部から入力される信号により制御可能な電気回路であること」に相当する。
また、「内部回路と、該内部回路との間にそれぞれ信号経路が形成された複数のボンディングパッドとを備えた集積回路において」、「切替手段」として、「外部から入力される信号により制御可能な電気回路」を用いることは、以下の周知文献に記載されているように、周知技術でもある。
周知文献1.特開平5-74177号公報(原審の拒絶査定で提示、図1、【0019】、【0020】段落の記載を参照)には、
「【0019】具体的には、端子パッドAを端子ピン(Pin2)に、端子パッドBを端子ピン(Pin24)に、端子パッドCを端子ピン(Vcc)にそれぞれボンディングワイヤーBW1、BW2、BW3で接続した場合、コントローラCRでは、端子パッドAからの信号を信号(A16)として認識してそれを図示しない内部回路へと供給する一方、端子パッドBからの信号を信号(反転OE又はVpp)として認識してそれを図示しない内部回路へと供給するようになされている。尚、ここで、VppはEPROMに対する書き込み用電源である。
【0020】また、端子パッドAを端子ピン(Pin2)に、端子パッドBを端子ピン(Pin24)に、端子パッドDを端子ピン(Vss)にそれぞれボンディングワイヤーBW1、BW2、BW4で接続した場合、コントローラCRでは、端子パッドAからの信号を信号(反転OE又はVpp)として認識してそれを図示しない内部回路へと供給する一方、端子パッドBからの信号を信号(A16)として認識してそれを図示しない内部回路へと供給するようになされている。」ことが、記載されている。
周知文献2.特開平8-184646号公報(従来例の図5、【0007】段落の記載を参照)には、
「【0007】図5において、出力回路2a、2b、2cおよび2dの出力信号は、通常動作時においては、それぞれ対応する信号出力パッド3a、3b、3cおよび3dより、所定の信号出力用の各端子(図示されない)を介して外部回路(図示されない)に供給される。また、テストモード時においては、切替信号5a、5b、5cおよび5dにより制御されて、切替回路6a、6b、6cおよび6dが順次導通状態となり、これらの出力回路2a、2b、2cおよび2dの出力信号は、順次切替えられてテスト用パッド4に伝達され、テスト用の信号出力として、テスト用端子(図示されない)を介して外部の検査装置(図示されない)に伝達される。」ことが、記載されている。
周知文献3.特開平10-253717号公報(従来例の図5、【0003】段落の記載を参照)には、
「【0003】そこで、この問題を解決するために図5に示すように半導体集積回路装置の複数の入力回路1aや出力回路1bを有する入出力回路1と、これに対応して設けられている複数の入出力用のボンディングパッド4a,4bを有するボンディングパッド4との間に切換回路3を設け、プローブ試験時に入出力回路1に対して1個のボンディングパッド、ここではボンディングパッド4aの接続を切替ながらプローブ試験を行う技術が提案されている。この図5の技術では、入力回路1aおよび出力回路1bと、これらに対応されるボンディングパッド4a,4bとの間に切替回路3Aを設けておき、ボンディングパッド4aを切替回路3aによって入力回路1aと出力回路1bのいずれかに選択的に切り替えるようにしたものである。」ことが、記載されている。
そこで、刊行物1発明の「前記内部回路28と複数の前記ボンディングパッド23との間に介在するように、複数の前記リード端子24の機能を予め決定するためにマトリクス交差部の接続を設定した前記第1のメモリー29と、前記第1のメモリー29により決定されている前記各リード端子24の機能を変更するために所定の処理を施すことによって、マトリクス交差部の接続を設定すると共に、ゲート27a,27bの切替えを行い予め決定されている端子配列とは異なる配列に変更することが可能で書込み可能な前記第2のメモリー30と、前記第1のメモリー29と書込み可能な前記第2のメモリー30の信号の切替えを行う前記一対のゲート27a,27b」からなる、「外部から」「制御可能な電気回路である」「切替手段」の換わりに、刊行物1に記載の上記の「ヒューズ19」を用いた切替手段又は上記の周知技術である「外部から入力される信号により制御可能な電気回路」からなる「切替手段」を採用し、本願発明のごとく、「前記切替手段は、外部から入力される信号により制御可能な電気回路であること」との構成をなすことは、当業者が、適宜設定できた程度のことと認められる。

したがって、本願発明は、その出願前に国内において頒布された上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-02 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願平11-24518
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次大嶋 洋一  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 棚田 一也
近藤 幸浩
発明の名称 集積回路  
代理人 佐野 静夫  

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