• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1188822
審判番号 不服2005-24163  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-15 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2005- 42473「印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-199721〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年6月11日に出願した特願平8-149374号の一部を新たな特許出願としたものであって、拒絶理由通知に応答して平成17年7月22日付けで手続補正がされたが、平成17年11月7日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成17年12月15日付けで審判請求がされるとともに、平成18年1月13日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成20年7月2日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は、平成20年9月3日付けで意見書及び明細書についての手続補正書を提出した。

第2 平成20年9月3日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定
平成20年9月3日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成17年7月22日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】
装置下方に配置され、用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部に収納された用紙の一端部側に配置され、前記用紙を繰り出す用紙繰り出しローラと、
前記一端部側で前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され、装置外部から用紙を挿入する用紙挿入部と、
前記用紙繰り出しローラより上の位置で、前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙の搬送経路と前記用紙挿入部から挿入された用紙の搬送経路の合流部に配置された用紙搬送ローラと、
前記用紙搬送ローラより上の位置で、かつ前記用紙の他端部側に配置された定着部と、
前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙が、前記用紙搬送ローラから前記定着部に向けて斜め上方略直線状に搬送される搬送路と、
前記搬送路の上部で、かつ前記用紙搬送ローラと前記定着部の間に配置された画像形成部と、
装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたとき装置上方に開口部を形成する開閉部と、
前記一端部側で前記用紙搬送ローラより上の位置に配置され、前記画像形成部に現像剤を補充する現像剤補充部を有し、
前記現像剤補充部は、前記開口部から着脱可能であることを特徴とする印刷装置。」
とあったものを、
「【請求項1】
装置下方に配置されるとともに、水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され、用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部に収納された用紙の下端部側に配置され、前記用紙を繰り出す用紙繰り出しローラと、
前記下端部側で前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され、装置外部から用紙を挿入する用紙挿入部と、
前記用紙繰り出しローラより上の位置で、前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙の搬送経路と前記用紙挿入部から挿入された用紙の搬送経路の合流部に配置された用紙搬送ローラと、
前記用紙搬送ローラより上の位置で、かつ前記用紙の上端部側に配置された定着部と、
前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙が、前記用紙搬送ローラから前記定着部に向けて斜め上方に搬送される略直線状の搬送路と、
前記搬送路の上部で、かつ前記用紙搬送ローラと前記定着部の間に配置された画像形成部と、
装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたとき装置上方に開口部を形成する開閉部と、
前記下端部側で前記用紙搬送ローラより上の位置に配置され、前記画像形成部に現像剤を補充する現像剤補充部を有し、
前記現像剤補充部は、前記開口部から着脱可能であり、
前記用紙収納部は、前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備えることを特徴とする印刷装置。」
と補正するものである。

つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。
〈補正1〉
補正前の請求項1における「装置下方に配置され、用紙を収納する用紙収納部」を、補正後の請求項1において「装置下方に配置されるとともに、水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され、用紙を収納する用紙収納部」とする補正。
〈補正2〉
補正前の請求項1における「一端部側」及び「他端部側」を、補正後の請求項1においてそれぞれ「下端部側」及び「上端部側」とする補正。
〈補正3〉
補正前の請求項1における「斜め上方略直線状に搬送される搬送路」を、補正後の請求項1において「斜め上方に搬送される略直線状の搬送路」とする補正。
〈補正4〉
補正前の請求項1に対して、補正後の請求項1において「前記用紙収納部は、前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備える」を追加する補正。

2.本件補正の目的
〈補正1〉について
補正1は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「用紙収納部」を、「水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。

〈補正2〉について
補正2は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「繰り出しローラ」、「用紙挿入部」、「定着部」、及び「現像剤補充部」に関して、「用紙」との位置関係を規定する「一端部側」を「下端部側」と、また「他端部側」を「上端部側」とそれぞれ限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。

〈補正3〉について
補正3は、当審が発した平成20年7月2日付け拒絶理由通知における「平成17年7月22日付け手続補正書により補正された本願の特許請求の範囲【請求項1】において、「斜め上方略直線状に搬送される搬送路」との記載は必ずしも明確とはいえず、「斜め上方に搬送される略直線状の搬送路」と解するのが自然であるので、以下、そのように解して審理を行う。」との指摘に応じて、「斜め上方略直線状に搬送される搬送路」を「斜め上方に搬送される略直線状の搬送路」と補正するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。

〈補正4〉について
補正4は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「用紙収納部」を、「前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備える」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。

以上のように、本件補正における上記補正1及び補正2は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものと認めることができる。また、本件補正は、同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を含んでいる。

3.独立特許要件
上記のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を含んでいるので、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて検討する。

(3-1)本願補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「装置下方に配置されるとともに、水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され、用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部に収納された用紙の下端部側に配置され、前記用紙を繰り出す用紙繰り出しローラと、
前記下端部側で前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され、装置外部から用紙を挿入する用紙挿入部と、
前記用紙繰り出しローラより上の位置で、前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙の搬送経路と前記用紙挿入部から挿入された用紙の搬送経路の合流部に配置された用紙搬送ローラと、
前記用紙搬送ローラより上の位置で、かつ前記用紙の上端部側に配置された定着部と、
前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙が、前記用紙搬送ローラから前記定着部に向けて斜め上方に搬送される略直線状の搬送路と、
前記搬送路の上部で、かつ前記用紙搬送ローラと前記定着部の間に配置された画像形成部と、
装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたとき装置上方に開口部を形成する開閉部と、
前記下端部側で前記用紙搬送ローラより上の位置に配置され、前記画像形成部に現像剤を補充する現像剤補充部を有し、
前記現像剤補充部は、前記開口部から着脱可能であり、
前記用紙収納部は、前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備えることを特徴とする印刷装置。」(以下、「本願補正発明」という。)

(3-2)刊行物
本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平7-271245号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉?〈イ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「【0007】
【実施例】本願発明の一実施例について説明する。図1は、本願発明の一実施例にかかる画像形成装置の概略構成図である。
【0008】図1に示す画像形成装置は、複写、プリンタ、ファクシミリの機能を兼ね備えた複合装置である。
【0009】図2は、本願発明の一実施例にかかる画像形成装置の構成を示す概要ブロック図である。
【0010】記録紙上への画像形成動作について説明する。記録紙収納部2から搬送された記録紙はレジストセンサ11、レジストロ-ラ対13によってタイミングが取られて反時計方向に回転駆動されている感光体1の上部に搬送される。一方、感光体1は、帯電チャ-ジャ17によって表面が帯電された後、光書き込み装置15による光書き込みが行なわれて静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置5によってトナ-像となり可視像化される。このトナ-像は転写チャ-ジャ14によって感光体1の上部に搬送されてきている記録紙に転写されるとともに、定着装置8によって記録紙上に固定される。定着装置を通過した記録紙は記録紙排出部9に排出される。転写後の感光体1に残留したトナ-はクリ-ニング装置10によって、掻き落とされ、回収タンクに回収される。これらの動作は、記録紙収納部2から給紙された記録紙のみならず手差し給紙装置から給送された記録紙に対しても同様に行なわれる。
【0011】本願発明にかかる画像形成装置においては、手差し給紙装置16は、記録紙を給送するばかりでなく、原稿3を給送し、原稿上の画像を読み取る際にも使用される。手差し給紙装置16から画像読み取り装置方向に給送された原稿は、スキャンタイミングセンサ12、読み込みタイミングロ-ラ対19によってタイミングが取られ、読み込みセンサ-を通過した原稿は、搬送路上に設けられた回動可能な分岐爪18により原稿排紙部7に排出される。」(【0007】?【0011】参照)
〈イ〉【図1】の画像形成装置の概略構成図において、
記録紙収納部2が装置下方に配置されていること、
手差し給紙装置16が、記録紙収納部2に収納された記録紙が繰り出される側で、記録紙収納部2より上の位置に配置されていること、
読み込みタイミングローラ対19が、記録紙収納部2より上の位置で、記録紙収納部2から繰り出された記録紙の搬送経路と手差し給紙装置16から挿入された記録紙の搬送経路の合流部に配置されていること、
定着装置8が、読み込みタイミングローラ対19より上の位置で、記録紙収納部2に収納された記録紙が繰り出される側とは反対側に配置されていること、
記録紙収納部2から繰り出された記録紙が、読み込みタイミングローラ対19から定着装置8に向けて斜め上方に搬送される搬送路が形成されていること
感光体1、現像装置5、及び光書き込み装置15が、読み込みタイミングローラ対19と定着装置8の間に配置されていること、
定着装置8で定着された後に排出される記録紙が、水平に対して傾斜し、かつ装置外に延在して配置された記録紙排出部9上に載置されること、
が看取できる。

以上のことから、上記〈ア〉?〈イ〉の記載等を含む引用例1には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「装置下方に配置され、記録紙を収納する記録紙収納部2と、
記録紙収納部2に収納された記録紙が繰り出される側で、記録紙収納部2より上の位置に配置され、装置外部から記録紙を挿入する手差し給紙装置16と、
記録紙収納部2より上の位置で、記録紙収納部2から繰り出された記録紙の搬送経路と手差し給紙装置16から挿入された記録紙の搬送経路の合流部に配置された読み込みタイミングローラ対19と、
読み込みタイミングローラ対19より上の位置で、記録紙収納部2に収納された記録紙が繰り出される側とは反対側に配置された定着装置8と、
記録紙収納部2から繰り出された記録紙が、読み込みタイミングローラ対19から定着装置8に向けて斜め上方に搬送される搬送路と、
読み込みタイミングローラ対19と定着装置8の間に配置された感光体1、現像装置5、及び光書き込み装置15と、
を有する画像形成装置。」(以下、「引用発明」という。)

(3-3)対比
a.引用発明の「記録紙」、「記録紙収納部2」、「手差し給紙装置16」、「読み込みタイミングローラ対19」、「定着装置8」、及び「画像形成装置」は、それぞれ本願補正発明の「用紙」、「用紙収納部」、「用紙挿入部」、「用紙搬送ローラ」、「定着部」、及び「印刷装置」に相当する。
b.引用発明の「感光体1、現像装置5、及び光書き込み装置15」は、本願補正発明に倣って「画像形成部」と称することができる。
c.本願補正発明における「用紙の下端部側」には「用紙を繰り出す用紙繰り出しローラ」が配置されていることから、当該「下端部側」は「用紙が繰り出される側」である点で引用発明と共通する。また同様に、本願補正発明における「上端部側」は「用紙が繰り出される側とは反対側」である点で引用発明と共通する。
d.本願補正発明において「用紙繰り出しローラ」が配置されている「用紙の下端部側」は、「用紙が繰り出される側」と解することができる。また同様に、本願補正発明における「用紙の上端部側」は、「用紙が繰り出される側とは反対側」と解することができる。
したがって、引用発明の「手差し給紙装置16」及び「読み込みタイミングローラ対19」はいずれも「記録紙収納部2」(「用紙収納部」)より上に配置されているのであるから、少なくとも用紙収納部の用紙が繰り出される側より上の位置に配置されている点で本願補正発明の「用紙挿入部」及び「用紙搬送ローラ」と共通する。また、引用発明の「定着装置8」と本願補正発明の「定着部」とは、用紙が繰り出される側とは反対側に配置されている点で共通する。

してみれば、本願補正発明と引用発明とは、
「装置下方に配置され、用紙を収納する用紙収納部と、
用紙収納部の用紙が繰り出される側より上の位置に配置され、装置外部から用紙を挿入する用紙挿入部と、
用紙収納部の用紙が繰り出される側より上の位置で、繰り出された用紙の搬送経路と前記用紙挿入部から挿入された用紙の搬送経路の合流部に配置された用紙搬送ローラと、
前記用紙搬送ローラより上の位置で、かつ用紙が繰り出される側とは反対側に配置された定着部と、
前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙が、前記用紙搬送ローラから前記定着部に向けて斜め上方に搬送される搬送路と、
前記用紙搬送ローラと前記定着部の間に配置された画像形成部と、
を有する印刷装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本願補正発明では用紙収納部が「水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され」るとともに「前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備える」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉
本願補正発明では「前記用紙収納部に収納された用紙の下端部側に配置され、前記用紙を繰り出す用紙繰り出しローラ」を備えると特定され、さらに用紙挿入部が「前記下端部側で前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され」と、用紙搬送ローラが「前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され」と、定着部が「前記用紙の上端部側に配置され」とそれぞれ特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点3〉
本願補正発明では搬送路が「略直線状」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点4〉
本願補正発明では画像形成部が「搬送路の上部」に配置され、「装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたとき装置上方に開口部を形成する開閉部」と「前記下端部側で前記用紙搬送ローラより上の位置に配置され、前記画像形成部に現像剤を補充する現像剤補充部」を有し、「前記現像剤補充部は、前記開口部から着脱可能であり」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(3-4)判断
〈相違点1〉について
本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平4-356061号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の〈あ〉?〈う〉の記載が図示とともにある。
〈あ〉「【0002】
【従来の技術】従来のレーザビームプリンタは斜視図の図5に示すようにプリンタ本体23に対して物を給排するための操作方法は給紙カセット7による用紙の供給側及び排紙ローラ対24からの画像を担持したプリントの排出側とドラムカートリッジ5の出し入れ側とプリンタ本体23の側面の2方向が最低必要であった。
【0003】図5に示す電子写真方式としてレーザスキャナを組合わせた従来のレーザビームプリンタは側面断面図で示す図6のような構成になっている。1は走査光学装置で内部には半導体レーザとコリメータレンズとモータにより回転するポリゴンミラーと結像レンズ群とから成っている。2は反射鏡で前記走査光学装置1により走査された光束を感光ドラム3の表面上に導く。走査光学装置1と反射鏡2は基台4の上に取付けられている。5はドラムカートリッジでこの部分で感光ドラム3に結像して生成された潜像は現像され、給紙カセット7から送られた用紙に転写帯電器9により転写された定着器6に送られ定着し、排紙ローラ対24により排出する。」(【0002】?【0003】参照)
〈い〉「【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。図1は本発明の電子写真装置としてのレーザビームプリンタの側面断面図であって、8は電子写真方式に用いられる感光体を層持する感光ドラム3と、或は更に感光ドラム3の周囲に配された不図示の一次帯電器、現像器、クリーナ等の感光体に作用する電子写真プロセス手段の少なくとも1つを内蔵した本体23に対して着脱可能なカートリッジ、9は転写帯電器、6は定着器、7は給紙カセットである。11は走査光学装置で内部には半導体レーザであるところの光源と、この光源より発せられた光束を平行光束とするためのコリメータレンズと、モータにより定速回転して光束を走査するポリゴンミラー等の偏向走査手段と感光ドラム3面上に走査光束を集光するための結像レンズ群とから成っていて、本体23内に配設されている。12はヒンジ22によりプリンタ本体23上面に枢着され、プリンタ本体上面に設けたカートリッジ8を出し入れできる開口21を開閉できる外開きの開閉部材としての開閉ぶたで、反射鏡13を支持していて、用紙のジャム処理時やカートリッジ8の交換時にはこの開閉ぶた12を開け、本体23内部からカートリッジ8を上方へ取り出す。開閉ぶた12はプリンタ本体23の開口21を閉じた場合にプリンタ本体23に対する掛金、ねじ止め等不図示の固定手段により不動となっている。
【0009】尚、開閉ぶた12は片開きとなっているが両開き、或は単なる脱着できる蓋でもよい。また、カートリッジ8は本体23内に収納された時は、本体23に固定された支持部材18により位置決め支持される。
【0010】図3は開閉ぶた12への反射鏡13の取付及び反射鏡とカートリッジを合せる基準を示す斜視図である。反射鏡13の長手方向の両端部背面に板ばねでできた反射鏡支持部材14を当接して反射鏡支持部材の先端部14aを折り曲げて反射鏡13の短手方向の一方の端部を抱くと共に、反射鏡支持部材14を打抜いて曲げた中間部14bで反射鏡13の短手方向の他方の端部を抱いて固定し、反射鏡支持部材14の根本側を開閉ぶた12に当接し、反射鏡支持部材14の小ねじ用の孔14cを挿通して小ねじ10を開閉ぶた12にねじ込んである。
【0011】感光ドラムを内部に回転可能に支持しているカートリッジ8の両側には反射鏡13の端部の反射面が当接する反射鏡押圧位置決め基準面15を備える。
【0012】プリントが開始されると走査光学装置11から発した光束が図1実線で示す作用位置にある反射鏡13にて反射され、光学走査と同期回転する感光ドラム3上に結像されて静電潜像が形成され、電子写真工程により現像して顕画像化された画像は感光ドラム3と同期して給紙カセット7から送り込まれた用紙に転写帯電器9により転写され、定着器6により定着され機外に送り出される。
【0013】カートリッジ8の交換、点検に際してはヒンジ22を中心に開閉ぶた12を外開きして反射鏡13を非作用位置にもたらして開口21を開放し、カートリッジ8の上方を開放した後、開口21を通じてカートリッジ8を取出して再び開口21を通じてプリンタ本体23内に入れ取付け、開閉ぶた12をヒンジ22を中心に反時計方向に回動して開口21を閉めようとすると反射鏡13の両端部が反射鏡押圧位置決め基準面15に当接する。この状態では開閉ぶた12は充分には閉まっておらず、更に開閉ぶた12を押えると反射鏡支持部材14のばね力に抗して開閉ぶた12が開口21を閉じ、不図示の掛金等の固定手段が開閉ぶた12を係止する。この開閉ぶた12の最後の閉める動作で反射鏡13の反射面は反射鏡押圧位置決め基準面15に上記ばねの弾性力によって振動防止に十分な力で押圧される。」(【0008】?【0013】参照)
〈う〉上記〈あ〉及び〈い〉の記載から、【図1】の実施例を示す側面断面図、【図5】の従来例のレーザービームプリンタの斜視図、及び【図6】の従来例のレーザービームプリンタの側面断面図において、用紙を収納する給紙カセット7が装置下方に配置されるとともに、水平に対して傾斜し、かつ装置外へ延在して配置されていること、並びに、定着器6により定着された用紙が、給紙カセット7の上方に配置された排紙ローラ対24から排出されること、が看取できる。
上記〈あ〉?〈う〉の記載等を含む引用例2には、装置下方に配置される用紙収納部(「給紙カセット7」)を、水平に対して傾斜し、かつ装置外へ延在して配置する構成が記載されているといえる。そして、かかる構成を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到し得る程度の事項である。
また引用例2には、定着部(「定着器6」)で定着された用紙が、用紙収納部上方に配置された排紙ローラ対24から排出される構成が記載されており、水平に対して傾斜し、かつ装置外へ延在する用紙収納部上に用紙が排出されるものと解される。ここで、引用例1には、上記〈イ〉に記載のように、水平に対して傾斜し、かつ装置外へ延在する部材に排出された用紙を載置する点が記載されているといえる。してみれば、引用発明に引用例2に記載の技術事項を適用するにあたり、水平に対して傾斜し、かつ装置外へ延在する用紙収納部を排出された用紙の載置部とすることは、当業者が適宜なし得る程度の事項である。
このように、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明、引用例1に記載の技術事項、及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

〈相違点2〉について
引用例1には用紙繰り出しローラが明示されてはいないが、引用発明に係る印刷装置(「画像形成装置」)が用紙収納部(「記録紙収納部2」)に収納された用紙(「記録紙」)を繰り出すための手段(以下、「用紙繰り出し手段」という。)を備えていることは当業者にとって自明であり、当該用紙繰り出し手段としてローラを採用することは本願出願前に周知の技術事項であるといえる。
他方、上記「〈相違点1〉について」ですでに検討したように、引用発明において引用例2に記載の技術事項を採用し、用紙収納部を水平に対して傾斜したものとすることは当業者が容易に想到し得る程度の事項であり、その場合に、用紙収納部に収納された用紙が繰り出される側、すなわち用紙の下端部側に前記用紙繰り出し手段が配置されることは、当業者にとって自明である。
このように、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

〈相違点3〉について
本願出願前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶の理由に引用された特開平7-61638号公報には、
「【0015】
【実施例】図1は本発明の特徴を最もよく表わす図面であり、Pは搬送されるシート材、1はシート材Pが供給されるシート材供給口、2は感光体に外部光の照射を防ぐ弾性部材、3はシート材Pを搬送する搬送ローラ、4は搬送ローラ3に付設され、シート材Pを搬送するニップを形成する従動コロ、5はシート材Pの通過を検知する給紙センサ、6は帯電、露光、現像を行う感光体でプロセスカートリッジ内に図示 しない帯電手段、現像手段、クリーニング手段と共に配設されている。8は感光体6に形成された現像済可視像をシート紙Pに転写する転写ローラ、9a、9bは搬送ローラ3及び従動コロ4から感光体6及び転写ローラ8までシート材Pをガイドする搬送ガイドである。
【0016】搬送ローラ3、従動コロ4、給紙センサ5、感光体6、転写ローラ8はシート材Pが直線的に搬送されるようにそれぞれ配設されている。」(【0015】?【0016】参照)と記載されており、
同じく本願出願前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶の理由に引用された特開平7-72751号公報には、
「【0006】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を示す部分図である。図1を参照すると、静電潜像担持体1は走査光源2によって部分露光された部分の電荷が除去され現像部3で選択的にトナーが静電力によって付着する。付着したトナー画像4は静電潜像担持体1と当接して同一周速度で回転する転写回転体5によって紙6に転写される。転写回転体5と静電潜像担持体1との間には外部電源によって電界が加えられる。この実施例では静電潜像担持体1のほぼ真上に転写回転体5を当接している背面転写方式である。静電潜像担持体1と転写回転体5との当接部である転写部51の水平方向約58mmの所には定着器7のローラが互いに当接する部分である定着部71がある。転写部51と定着部71とを結ぶ線と重力方向とのなす角度は約72度となっている。
【0007】図2はこの実施例の給紙部と用紙排出部とを含む全体図である。図2を参照すると、給紙部13に置かれた紙6は重力方向に対して約40度程度の角度で保存され画像作成動作時に給紙ローラ11、フィードローラ12および転写回転体5によって転写部51を通過し定着部71でトナー像が定着されたあと排出される。
【0008】この実施例によれば、用紙経路が直線に近いため40?135Kg/m2 の厚みの異なる用紙の全てに対して安定した搬送特性が確認された。また定着部に用紙先端が突入する際の転写部の画像を調査したところ、まったく他の部分と変りなく良好な画像を保っていることが確認できた。また従来は200mm近くあった装置高さも140mm程度に低くすることが可能になった。排出された用紙はページの順番がただしかった。」(【0006】?【0008】参照)と記載されている。
これらの記載から、用紙収納部から繰り出された用紙が定着部に向けて搬送される搬送路を略直線状とすることは、本願出願前に周知の技術であるといえる。そして、かかる周知の技術事項を引用発明に適用し、搬送路を略直線状とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項である。
このように、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

〈相違点4〉について
引用例2には、上記〈あ〉?〈う〉に加えて、以下の〈え〉が記載されているといえる。
〈え〉上記〈い〉の記載から、【図1】の実施例を示す側面断面図において、用紙が定着器6に向けて搬送される搬送路の上部にカートリッジ8が配置されるとともに、装置上方に開閉部材12が設けられていることが看取できる。
上記〈あ〉?〈え〉の記載等を含む引用例2には、画像形成部(「感光ドラム3」及び「電子写真プロセス手段」を内蔵した「カートリッジ8」)が搬送路の上部に配置されるとともに、装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたときに装置上方に開口部(「開口21」)を形成する開閉部(「開閉部材12」)を設け、画像形成部を開口から着脱可能とする構成が記載されているといえる。そして、かかる構成を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到し得る程度の事項である。
他方、本願出願前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶の理由に引用された特開平6-258878号公報には、
「【請求項1】 現像器に対し着脱可能であり、着脱に伴って新規トナーを補給する開口部を開閉するシャッタを備え、かつ内部に蓄えた新規トナーを前記現像器に補給するトナーカートリッジを備えた電子写真装置において、
前記シャッタに設けられ、かつ前記トナーを前記現像器に送り出すときのガイドとなるガイド部と、このガイド部に当接し、前記ガイド部に付着したトナーを掻き落とすためのトナー除去部材とを備えたことを特徴とする電子写真装置。」(【請求項1】参照)と記載されており、
同じく本願出願前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶の理由に引用された特開平7-10316号公報には、
「【0002】
【従来の技術】 図5は従来の画像形成装置(ここでは一例としてプリンタ装置を示す)の全体図である。この画像形成装置は、装置本体Mに挿脱自在で用紙Pを積載収納する給紙カセット1、この給紙カセット1から用紙を順次給送する給紙ロール2、給送されてきた用紙を一旦待機させ所定タイミングで再搬送する待機ロール対3、その再搬送された用紙上に画像情報に基づきトナー画像を形成する画像形成プロセス手段としての画像形成部4、上記トナー画像を用紙に定着させる定着器5等を備えている。装置本体Mは下部機体M1 と上部機体M2 とに分割され、一端部のヒンジ軸6を支点として上部機体M2 が下部機体M1 に対し矢印B方向に開閉自在な構成となっている。
【0003】上記画像形成部4は、矢印A方向に回転可能な感光体ドラム11を備えると共に、この感光体ドラム11の周囲に順次配設された画像形成関与部材として、感光体ドラム11表面を一様に帯電する帯電器12、帯電された感光体ドラム11表面に画像情報に基づく露光を施して静電潜像を形成する光書き込みヘッド13、上記静電潜像をトナーで現像してトナー画像を形成する現像器14、搬送されてきた用紙上に上記トナー画像を転写する転写器15、感光体ドラム11表面に残留した未転写のトナーを回収除去するクリーナ16等を備えている。そして、このような構成からなる画像形成部4は、感光体ドラム11、ブラシ帯電器12及びクリーナ16がひとまとめにされ1つのプロセスユニットU1 として構成されると共に、現像器14がもう1つのプロセスユニットU2 として構成され、これら2つのプロセスユニットU1 、U2 が図6に示すように上部機体M2 を開いた状態で下部機体M1 の所定の装着部に対し略上下方向に着脱自在としてある。なお、光書き込みヘッド13は上部機体M2 側に取り付けられており、上部機体M2 の開成に伴って感光体ドラム11表面から離間し、プロセスユニットU1 、U2 の着脱を邪魔しない構成となっている。」(【0002】?【0003】参照)と記載されている。これらの記載から、画像形成部のうち現像剤補充部を着脱可能とすることは、本願出願前に周知の技術であるといえる。
してみれば、引用発明に引用例2に記載の技術事項を適用するにあたり、上記周知の技術事項を参酌して画像形成部のうち現像剤補充部を着脱可能とすることは、当業者が適宜なし得る程度の事項である。
このように、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明、引用例2に記載の技術事項、及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

このように、上記相違点1乃至相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明、引用例1に記載の技術事項、引用例2に記載の技術事項、及び周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、かかる発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例1に記載の技術事項、引用例2に記載の技術事項、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成20年9月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年7月22日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「装置下方に配置され、用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部に収納された用紙の一端部側に配置され、前記用紙を繰り出す用紙繰り出しローラと、
前記一端部側で前記用紙繰り出しローラより上の位置に配置され、装置外部から用紙を挿入する用紙挿入部と、
前記用紙繰り出しローラより上の位置で、前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙の搬送経路と前記用紙挿入部から挿入された用紙の搬送経路の合流部に配置された用紙搬送ローラと、
前記用紙搬送ローラより上の位置で、かつ前記用紙の他端部側に配置された定着部と、
前記用紙繰り出しローラにより繰り出された用紙が、前記用紙搬送ローラから前記定着部に向けて斜め上方略直線状に搬送される搬送路と、
前記搬送路の上部で、かつ前記用紙搬送ローラと前記定着部の間に配置された画像形成部と、
装置上方に開閉可能に設けられ、開けられたとき装置上方に開口部を形成する開閉部と、
前記一端部側で前記用紙搬送ローラより上の位置に配置され、前記画像形成部に現像剤を補充する現像剤補充部を有し、
前記現像剤補充部は、前記開口部から着脱可能であることを特徴とする印刷装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物
当審の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明から、「用紙収納部」に関する「水平に対し傾斜し、かつ装置外へ延在して配置され」及び「前記定着部で定着されたのちに排出される用紙を載置する載置部を備える」との限定を省き、また用紙の「下端部側」及び「上端部側」をそれぞれ「一端部側」及び「他端部側」と、「上」及び「下」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.(3-4)」に記載したとおり、引用発明、引用例1に記載の技術事項、引用例2に記載の技術事項、及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1に記載の技術事項、引用例2に記載の技術事項、及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-02 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2005-42473(P2005-42473)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (B41J)
P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅野 芳男
坂田 誠
発明の名称 印刷装置  
代理人 大西 健治  
代理人 鈴木 弘一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ