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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1188824
審判番号 不服2006-2252  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-09 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 平成 8年特許願第210846号「情報検索システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 55368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年8月9日の出願であって、平成17年12月27日付(発送日:平成18年1月10日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成18年2月9日に拒絶査定不服審判が請求された。
そして、当審において、平成20年5月19日付で拒絶理由が通知され、これに対して、平成20年7月22日付で手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成20年7月22日付の手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
検索の対象に関する詳細情報を,時間軸または空間軸により対象を分類して各対象の時間軸または空間軸上の位置を示すことのできる属性とともに格納する詳細情報保持手段と,
属性を特定する複数の項目を,画像上に時間的もしくは空間的な項目間の位置関係により配置して時間軸もしくは空間軸を図表化する年表もしくは地図である総合情報を保持する総合情報保持手段と,
資料展示用ディスプレイと,
総合情報の画像表示のスクロールを指示するスクロール指示手段と,
総合情報の画像表示をスクロールするスクロール手段と,
資料展示用ディスプレイにより位置を固定して表示され,総合情報の画像上の項目を指し示すポインタと,
表示処理手段と,検索手段と,検索指示手段とを備え,
表示処理手段により総合情報の画像を資料展示用ディスプレイに表示し,
スクロール指示手段からの指示によりスクロール手段が総合情報の画像をスクロールし,ポインタにより画像上の項目が指し示され,検索指示手段により検索が指示されると,
検索手段が,指し示された項目により特定される属性をもつ詳細情報について詳細情報保持手段を検索し,検索した詳細情報を表示処理手段が資料展示用ディスプレイに表示すると共に,
前記総合情報が公共文化施設等のデータベースの検索の対象の属性を特定する項目を総合化したものであり,資料展示用ディスプレイが公共スペースに設置されているものであり、
各項目には項目の内容を視覚的に示す画像または説明が対応付けられ,ポインタにより項目が指し示されると,指し示された項目に対応する画像または説明を資料展示用ディスプレイに表示し、
公共文化施設がその収蔵品を検索の対象として収蔵品に関する詳細情報をデータベースに格納し,項目が指定されると,その項目により特定される属性を持つ収蔵品が展示されている公共文化施設内の展示室を案内する館内地図を表示することを特徴とする情報検索システム。」

3.引用文献
当審が通知した拒絶理由において引用文献3として引用された、特開平7-121617号公報(以下、引用文献3という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0048】
【実施例】
[問い合せ応答システム1]本発明の一実施例である問い合せ応答システム1の全体構成図を図1に示す。問い合せ応答システム1は、1台の親機3、使用者用子機5a?使用者用子機5n、および被使用者用子機7a?使用者用子機7nを備えている。親機3、使用者用子機5a?使用者用子機5n、および被使用者用子機7a?使用者用子機7nは、各々異なる位置に配置されており、親機3と使用者用子機5a?使用者用子機5n間、および親機3と被使用者用子機7a?使用者用子機7n間は通信路を介して各種の命令またはデータのやりとりを行なう。
【0049】
[使用者用子機5の機能ブロック図説明]使用者用子機5について、図2を用いて説明する。使用者用子機5は、命令入力手段13、使用者用子機通信手段15、使用者用子機報知手段17、使用者用子機位置データ記憶手段19、印字手段21、および使用者用子機制御手段11を備えている。」
(イ)「【0051】
使用者用子機制御手段11は、[地図表示モード]においては、つぎのような制御を行なう。命令入力手段13に地図データ取得命令が入力されると、当該地図データ取得命令を送信する送信命令を、使用者用子機通信手段15に出力する。また、使用者用子機通信手段15から地図データが与えられると、使用者用子機位置データ記憶手段19に記憶された位置データを読み出し、当該位置データおよび前記地図データに基づいて、当該位置データを含む目的地図データを、使用者用子機報知手段17に報知させる報知命令を出力する。」
(ウ)「【0055】
[親機3の機能ブロック図説明]つぎに、親機3について、図3を用いて説明する。親機3は、親機通信手段25、地図データ記憶手段23、混雑度記憶手段29、親機制御手段31、および優待券発行目的地記憶手段27を備えている。
【0056】
親機通信手段25は、通信路を介して各使用者用子機5との間、および各被使用者用子機7との間で命令またはデータを送受信する。地図データ記憶手段23は、地図データを記憶する。
【0057】
混雑度データ記憶手段29は、被使用者用子機が配置された店舗の混雑度データを記憶する。優待券発行目的地記憶手段27は、優待券が使用される目的地を優待券発行目的地データとして記憶する。
【0058】
親機制御手段21は、[地図表示モード]においては、つぎのような制御を行なう。親機通信手段25から地図データ取得命令が与えられると、当該地図データ取得命令に基づき、地図データ記憶手段23から地図データを取得する。つぎに、当該地図データを使用者用子機5に向けて送信させる送信命令を、親機通信手段25に出力する。
【0059】
親機制御手段21は、[店舗データ表示モード]においては、つぎのような制御を行なう。親機通信手段25から店舗状況データ取得命令が与えられると、店舗状況データを取得したい店舗に設置された被使用者用子機7に向けて前記店舗状況データ取得命令を送信させる送信命令を、親機通信手段25に出力する。また、親機通信手段25から前記店舗状況データが与えられると、前記店舗状況データ取得命令が入力された使用者用子機5に向けて、当該店舗状況データを送信させる送信命令を、前記親機通信手段25に出力する。」
(エ)「【0074】
図6に、親機3をCPUを用いて実現したハードウェア構成を示す。親機3は、CPU153、ROM155、RAM157、ハードディスク161、キーボード163、プリンタ159、DCU169、I/F171およびバスライン150を備えており、使用者用子機5とほぼ同様の構成している。なお、親機3においては、ハードディスク161は、地図データ、混雑度データ、および優待券発行目的地データ等を記憶する。
【0075】
図7に、被使用者用子機7をCPUを用いて実現したハードウェア構成を示す。被使用者用子機7は、CPU253、ROM255、RAM257、ハードディスク261、キーボード263、CRT265、DCU269、入出力I/F271およびバスライン250を備えており、使用者用子機5とほぼ同様の構成している。なお、被使用者用子機7においては、入出力I/F271には、ビデオカメラ277、およびマイクロフォン279が接続されている。本実施例においては、ビデオカメラ277が撮像手段を、マイクロフォン279が音声取得手段を構成している。ビデオカメラ277は、ズーム機構および首振り機構を有しており、撮像対象を変更することができる。なお、マイクロフォン279はビデオカメラ77に固定されており、ビデオカメラ277が移動すると一緒に移動する。
【0076】
[処理フローチャート]つぎに、図8のフローチャートを用いて、全体の処理動作について説明する。まず、地図表示モード(図8ステップST1)について、図9を用いて説明する。地図表示モードでは、以下の様にして、使用者用子機5のモニタテレビ73に所望の地図を表示させることができる。
【0077】
予め登録してある複数の候補地名がモニタテレビ73に表示されると、使用者様子機5の操作者は、希望する目的地を表示させる地図表示命令を、キーボード63から入力する(図9ステップST11)。使用者用子機5のCPU53は、DCU69を介して前記地図表示命令を親機3に送信する(ステップST12)。
【0078】
つぎに、親機3のCPU153はDCU169を介して前記地図表示命令に基づき、ハードディスク161から対応する地図データを読み出す。ハードディスク161に記憶されている地図データについて、図11を用いて説明する。図に示すように、本実施例においては、地図データは、目的地名、地図No、中心座標、描画データおよび存在使用者用子機名から構成されている。地図データは、目的地名毎に地図Noが付与されている。中心座標および存在使用者用子機名については後述する。なお、描画データはイメージデータとして記憶している 図9ステップST14において、CPU153は、当該地図データを使用者用子機5に向けて送信させる送信命令を、DCU169に出力する。これにより、当該地図データが使用者用子機5に送られる。
【0079】
使用者用子機5のCPU53は、かかる地図データをDCU69を介して受け取ると、モニタテレビ73に当該地図データの初期画面を表示する(図9ステップST15)。
【0080】
本実施例においては、地図データが全体として表示されるのではなく、カーソル座標を中心として一定の領域が画面に表示される。例えば、図11に示す地図No1の地図データについては、イメージデータA全体がモニタテレビ73に表示されるのではなく、図13に示すように、表示範囲100内だけがモニタテレビ73に表示される。地図データの中心座標とは、当該地図データが初期表示される場合のカーソル座標位置をいう。なお、後述するように表示範囲100外の範囲については、画面を縦方向または横方向にスクロールさせることによりモニタテレビ73に表示することができる。本実施例においては、カーソル位置として人形の頭の位置を採用した。
【0081】
操作者は、表示された地図データを見て、他の目的地を選択するか否かをキーボード63から入力する。CPU53は、このような入力があった場合は(図9ステップST16)、図9ステップST11以降の処理を繰り返す。キーボード63からこのような入力がない場合は図10ステップST18に進み、CPU53は、カーソルが移動したか否かを判断する。カーソルが移動した場合は、ステップST19に進み、カーソル位置に対応した画面を表示する(ステップST19)。例えば、カーソルが点P1から点P2に移動すると、表示範囲100から表示範囲101に変化する。
【0082】
操作者は、カーソルを移動させることによりスクロールされる地図データを見ることができる。そして、地図表示モードを終了する場合は、終了命令をキーボード63から入力する。CPU53は、ステップST20にて、当該終了命令が入力されたか否かを判断する。前記終了命令が入力された場合は、地図表示モードは終了する。前記終了命令が入力されない場合は、CPU53は、図9ステップST16以下の処理を繰り返す。
【0083】
このようにして、使用者用子機側にて、所望の目的地の地図を容易に表示させることができる。
【0084】
本実施例においては、モニタテレビ73に目的地周辺の町並みを表示し、その地図上をあたかも歩いていけるかのように操作できるようにしている。したがって、目的地に着くまでにどのような店が並んでおり、また、どの程度時間がかかるのかを知ることができる。これにより、目的地にいっても目的の店舗を的確に把握することができる。
【0085】
つぎに、店舗データ表示モードに移る(図8ステップST3)。本実施例においては、図11に示す地図データは、図12に示す様な店舗データを含んでいる。したがって、以下に説明するように、目的地までの地図データだけでなく、当該地図データの中の店舗データについても地図データとしてモニタテレビ73に表示することができる。
【0086】
まず、図12の店舗データについて説明する。地図データ中に表示される店舗データについては、表示する店舗毎に通し番号が付されている。これにより、店Noを特定するだけで、地図Noを特定しなくとも店舗を特定することができる。本実施例においては、(Xmin,Ymin),(Xmax,Ymax)の2点で、当該店舗の地図上の店舗領域が決定される。例えば、図13のそば屋○△151は、座標(X101,Y101),(X102,Y102)の2点で表される。
【0087】
カーソル(人間印の頭部分)が座標P1から座標P2に移動すると、カーソルが前記そば屋○△151の店舗領域に入った状態となる。なお、これにつれて、表示領域101が画面上に表示される。この状態で、マウス66(図5参照)の左スイッチ(図示せず)をクリックすると、CPU53は、図12の店舗データから該当する店Noのメッセージを表示する。例えば、店No2の領域内でクリックされた場合、メッセージMS2がモニタテレビ73に表示される。図15に、メッセージの一例を表示する。
【0088】
なお、図12に示す店舗データのうち休業フラグとは、休業日を日または曜日で記憶しておくものである。営業日とは異なる休業メッセージを予め記憶させておき、店舗データの表示命令が入力された日が当該休業フラグの記憶された日と同じであれば、CPU53は、当該休業メッセージを表示する。休業日か否かは、CPU53の有するカレンダー機構(図示せず)を用いればよい。休業日メッセージの一例を図16に示す。これにより、現地に着いてから目的店舗が休業であるということを防止することができる。
【0089】
なお、休業日フラグは、被使用者用子機7から随時書換え・追加可能に構成することにより、店舗側から臨時休業の表示も容易に行なうことができる。これは、つぎの様に行なう。図7に示すキーボード263から臨時休業日として、何月何日と入力すると、CPU253は、当該追加命令をDCU269を介して親機3に送信する。親機3のCPU153は、当該追加命令に基づいてハードディスク161の店舗データの内容を変更する。
【0090】
メッセージ表示後(図14ステップST21)、使用者用子機5の操作者は、ジョイステック74のレバー(図示せず)を操作することにより、以下の様にして、現在の店舗状況を知ることができる。」

以上の記載および図面の記載を総合すると、引用文献3には、以下の発明が記載されていると認めることができる。
「1 問い合わせ応答システムであって、
2 親機と、モニタテレビを備えた複数の使用者用子機と、店舗等に配置された複数の被使用者用子機とが通信回線を介して接続されており、
3 親機は、地図データ(図11)と、該地図データに関連付けられた店名、位置座標、メッセージ、休業フラグ等を含む店舗データ(図12)と、予約情報を含む混雑度データ(図20)を記憶するとともに、使用者用子機に所望の領域の地図データおよび店舗データを送信し、
4 使用者用子機は、モニタテレビ上に、前記地図データおよび店舗データに基づいて、空間座標上の対応する位置に店舗名が標記された枠を備えた地図(図13)を表示し、
5 使用者用子機の操作者が、表示された地図を見て、カーソル(図13中のP1,P2等)を移動させると、カーソルの移動によって表示領域(図13中の100,101等)がスクロールし、カーソルにより地図上の特定の位置に配置され店舗名が標記された枠を指定すると、使用者用子機は、当該指定された店舗の位置により特定される店舗に対応するメッセージ(図12中のMS1,MS2等)や休業日フラグを店舗データから読み出し、該店のメッセージ(図15)や休業メッセージ(図16)等を使用者用子機に表示する、
問い合わせ応答システム。」
(以下、引用文献3に記載された発明を、「引用発明」という。)

また、前記拒絶理由通知書で引用した引用文献4(文学館におけるマルチメディア-武者小路実篤記念館の事例を中心に-)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(オ)「はじめに
美術館、博物館などの施設では、近年、映像による展示や関連する情報を提供する情報提供システムや所蔵品管理システムなどの情報システムが相次いで導入されている。」(第18ページ、第1行?第3行)
(カ)「1.「武者小路実篤記念館」の情報システムの概要
(1)機器構成
東京都調布市にある武者小路実篤記念館では、マルチメディアによる展示を行う情報提供システムを1994年に開始した。武者小路実篤記念館の「マルチメディア情報提供システム」は、レーザーディスクとパソコン(マッキントッシュ)を組み合わせたシステムである。図1に機器の構成を示す。
(図1)
中心となるのはハイパーカードで制御されるレーザーディスク「武者小路実篤-その生涯と作品」で、館内の数箇所に設置された来館者用機器(図2-A)で来館者は任意に検索・勧奨することができる。この来館者用機器は、キャスター付きのキャビネットに収まっており、移動が可能であるため、展示や催事に応じたレイアウト変更に対応しやすくなっている。
(図2-A)
検索操作にはトラックボールを用いる。メニューや資料一覧など、操作画面はトラックボールの前方に埋め込まれた13インチカラーディスプレイに表示される。検索後レーザーディスクから表示される映像などの情報は、キャビネットに乗せられた、利用者の前方にあるテレビ画面に表示される(図2-B)。
(図2-B)」(第18ページ第13行?第19ページ末行)
(キ)「(2)情報内容
システムが提供している情報は、武者小路実篤の著書、原稿、書画、映像、音声などである。約30分の動画、約3000枚の静止画、約10分の音声が1枚のレーザーディスクに記録され、青年時代、白樺時代、混沌時代、『心』の時代、晩年、新しき村、といった実篤の生涯の中での代表的な時代別に整理されている。
利用者は、まず時代区分を選択し、その時代ごとに書画、書簡、映像など、資料の種類を選択する。その後、表示される一覧の中から鑑賞したいものを選択すると、13インチディスプレイには解説が、21インチテレビには、レーザーディスクからの情報が表示される。解説画面では、複数のページがある場合にはその「送り」と「戻し」が指示できる。また。動画の場合、一時停止ができる。(図3、次ページ)
(中略)
(3)マンマシンインターフェイス
ミュージアム系施設の情報検索システムには、タッチパネルを利用したものが多いといわれている(3)。銀行のATMなどで馴染があり、操作が直接的であるが、パネルが汚れやすい、誤動作を避けるために画面を余り細かく分けることができず、選択画面の画面数が多くなってしまう、メニューが固定化してしまう、といった点もある。システムの利用者層、メニューの数、提供される情報の性格などにより、選択されるべきである。同館資料(4)によれば、来館者に年配者が多いこと、一覧で表示される資料の数が多いことなどから、トラックボール、タッチパネル、マウスのうち、トラックボールを採用したとのことである。
検索後に表示される画面に付けられている指示ボタンには、ビデオデッキなどで一般的となっている形状のアイコンが用いられている。・・
(図3)」(第20ページ第6行?第21ページ末行)

以上の記載から、引用文献4には、
「1.博物館や美術館における展示に関する資料情報を提供するシステムである。
2.当該施設の館内には来館者用機器が設置してあり、該機器は、来館者に操作させるトラックボールやマウス等のマンマシンインタフェイスと、資料情報検索および提示用ディスプレイと、資料情報およびその情報を検索するソフトウエアを備えたパソコンで構成されている。
3.当該機器のディスプレイには検索用メニューが表示され、来館者が来館者用機器のマンマシンインタフェイスを用いて表示されたメニューの中から所望の項目を選択し、選択された項目に対応する詳細な資料情報が検索され表示される。」
システムが記載されていると認められる。

そして、引用文献1(特に、段落【0010】,【0015】,【0021】,【0022】,【0028】?【0031】、および図4,図5参照)には、映像素材を検索、利用する装置であって、各映像素材に関する属性情報に基づいて、地理位置および時間軸で定義された属性空間に各映像素材を示す素材アイコンが配置されているように表示し、表示されたアイコンの中から所望のものを指定することにより所望の映像素材を選択して再生表示できるものが記載されている。
また、引用文献2(特に、段落【0012】?【0015】,【0025】?【0031】、および図8?図15参照)には、ファイルを検索する方法であって、各ファイルに関する作成時間およびその内容に基づいて、時間軸および位置座標で定義された3次元座標空間内において、各ファイルの作成時間およびその内容に応じた座標位置に当該ファイルを示すミニチュアが配置されているように表示し、表示されたミニチュアの中から所望のものを指定することにより所望のファイルを選択することができるものが記載されている。

4.対比
引用発明と本願発明を対比すると、引用発明の「店舗(名)」および「店舗のメッセージ」は、それぞれ本願発明の「検索の対象」および「検索の対象に関する詳細情報」に相当し、また、引用発明の「店舗の位置」は本願発明の「各対象の空間軸上の位置を示すことのできる属性」に相当するから、引用発明において、「地図データ(図11)と、該地図データに関連付けられた店名、位置座標、メッセージ、休業フラグ等を含む店舗データ(図12)」は、本願発明の「検索の対象に関する詳細情報を、空間軸により対象を分類して各対象の空間軸上の位置を示すことのできる属性とともに格納した詳細情報」と共通するものということができる。
そして、引用発明において地図上(図13)に表示された各店舗が標記された枠は、本願発明における「属性を特定する複数の項目」に相当し、引用発明において複数の店舗が表示された地図(図13)を表示するための情報全体は、実質的に本願発明における「属性を特定する複数の項目を,画像上に空間的な項目間の位置関係により配置して空間軸を図表化する地図である総合情報」と共通するものということができる。
さらに、引用発明の「モニタテレビ」、「表示画面上に位置が固定されたカーソル」は本願発明の「ディスプレイ」、「位置を固定した表示されたポインタ」に相当し、引用発明においてカーソルを移動させると表示領域がスクロールすることは、本願発明において「画面表示をスクロールする」ことに相当する。
さらにまた、引用発明において「カーソルの移動によって表示領域がスクロールし、カーソルにより地図上の特定の位置に配置され店舗名が標記された枠を指定すると、使用者用子機は、当該指定された店舗の位置により特定される店舗に対応するメッセージを店舗データから読み出し、該店のメッセージを使用者用子機に表示する」ことは、本願発明において「スクロール指示手段からの指示によりスクロール手段が総合情報の画像をスクロールし,ポインタにより画像上の項目が指し示され,検索指示手段により検索が指示されると,検索手段が,指し示された項目により特定される属性をもつ詳細情報について詳細情報保持手段を検索し,検索した詳細情報を表示処理手段がディスプレイに表示する」ことと共通するといえる。

以上のことから、引用発明と本願発明とは、
<一致点>
「検索の対象に関する詳細情報を,空間軸により対象を分類して各対象の空間軸上の位置を示すことのできる属性とともに格納する詳細情報保持手段と,
属性を特定する複数の項目を,画像上に空間的な項目間の位置関係により配置して空間軸を図表化する地図である総合情報を保持する総合情報保持手段と,
ディスプレイと,
総合情報の画像表示のスクロールを指示するスクロール指示手段と,
総合情報の画像表示をスクロールするスクロール手段と,
ディスプレイにより位置を固定して表示され,総合情報の画像上の項目を指し示すポインタと,
表示処理手段と,検索手段と,検索指示手段とを備え,
表示処理手段により総合情報の画像をディスプレイに表示し,
スクロール指示手段からの指示によりスクロール手段が総合情報の画像をスクロールし,ポインタにより画像上の項目が指し示され,検索指示手段により検索が指示されると,
検索手段が,指し示された項目により特定される属性をもつ詳細情報について詳細情報保持手段を検索し,検索した詳細情報を表示処理手段がディスプレイに表示すると共に,
前記総合情報がデータベースの検索の対象の属性を特定する項目を総合化したものであり,ディスプレイが設置されているものであり、
各項目には項目の内容を視覚的に示す説明が対応付けられ,ポインタにより項目が指し示されると,指し示された項目に対応する説明をディスプレイに表示する、情報検索システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、検索の対象、項目および詳細情報が公共文化施設のデータ(具体的には、博物館、美術館等が管理する資料の情報)に関するものであるのに対し、
引用発明は、上記情報が店舗、施設に関するデータである点。
<相違点2>
本願発明は、ディスプレイが「公共施設に設置された資料展示用ディスプレイ」であるのに対し、
引用発明は、使用者用のディスプレイである点。
<相違点3>
本願発明は、「公共文化施設がその収蔵品を検索の対象として収蔵品に関する詳細情報をデータベースに格納し,項目が指定されると,その項目により特定される属性を持つ収蔵品が展示されている公共文化施設内の展示室を案内する館内地図を表示する」という構成を備えるものであるのに対し、
引用発明は、上記のような構成を備えていない点。

(なお、本願発明は、「時間軸または空間軸により」、「時間軸または空間軸上の位置」、「時間的もしくは空間的な項目」、「時間軸もしくは空間軸を図表化する年表もしくは地図」、「画像または説明」と発明の構成を特定したものであるが、「または、もしくは」は選択的な要件であって、一方の要件を充足すれば本願発明の技術的範囲に含まれることを意味しているのであるから、「時間」、「年表」、「画像」に関する要件は、形式的には相違点といえない。)

5.判断
<相違点1>および<相違点2>について
当審の拒絶理由で提示した引用文献1(特開平8-87525号公報)および引用文献2(特開平6-180661号公報)には、前記したように、空間軸および時間軸で定義される座標空間上に、複数の映像素材あるいは複数のファイルに対応するアイコンあるいはミニチュアを、座標上の位置で定義される属性に応じて配置し、所望のアイコンあるいはミニチュアを指定することにより指定されたものに対応する映像素材あるいはファイルの内容が得られるようにした検索システムが記載されているが、このような検索システムは、情報の種類に関係なく、複数の情報の中から所望の情報を検索する手法として広く知られたものである。
そして、引用発明は、店舗名が標記された枠(アイコン、ミニチュアに相当するもの)を地図空間上に配置し、その枠を指定することにより店舗情報を検索するシステムであるが、上記したように、一般的な情報を検索するシステムとして、時間軸あるいは空間軸で定義される座標空間上にアイコン等を配置して所望のアイコン等を指定させる検索システムは知られているから、引用発明の店舗情報検索システムを各種情報の検索システムに適用することは普通に考え得るところである。
しかして、博物館や美術館等の公共文化施設において、当該施設にディスプレイを備えた来館者用情報検索システムを設置し、来館者に該検索システムに備えられたトラックボール等を操作させ、当該施設が管理する各種資料の項目の中から所望のものをディスプレイ上に表示された指示ボタンで選択させ、選択された所望の資料の詳細情報を来館者に提示できるようにしたものは、引用文献4に記載されているように知られているから、引用発明の検索システムを、公共文化施設の資料検索システムに適用すること(この場合、検索され表示される情報は展示品、収蔵品に関する資料情報となり、そしてディスプレイが公共文化施設内に設置されることになるのは当然である)は、当業者が容易に想到できたと認められる。
したがって、相違点1および相違点2は、引用文献1、引用文献2および引用文献4に記載されたものから当業者が容易に想到できたと認められる。
<相違点3>について
博物館や美術館等において、展示物が何処に展示されているかなどを館内地図と合わせて表示すること(例えば、パンフレット等において、著名な絵画などの展示場所を館内地図と合わせて表記することなど)は普通に行われている。
したがって、資料検索システムで検索され提示される情報に、収蔵品が展示されている公共文化施設内の展示室を案内する館内地図を含める程度のことは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

なお、「4.対比」において相違点に含めなかった「時間軸を図表化した年表上に複数の項目を配置すること」や、「項目が指定されると画像が表示されること」などについても念のため検討する。
引用文献1および2には、時間軸上にアイコンやミニチュアを配置することが記載されているから、年表上にアイコン等(項目)を配置することは容易に想到できたと認められる。
また、引用文献1,2には、アイコン等(項目)を指定すると画像を表示することも記載されているから、引用発明において、枠(項目)を指定した際に画像を表示することは適宜なし得たことと認められる。
したがって、相違点に含めなかった上記要件についても、特段のものは認められない。
さらに、本願発明の作用効果等を検討しても、本願発明に格別の点を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明および周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-12 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願平8-210846
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻本 泰隆  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 菅原 浩二
飯田 清司
発明の名称 情報検索システム  
代理人 長谷川 文廣  
代理人 今村 辰夫  
代理人 穂坂 和雄  

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