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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25J
管理番号 1188858
審判番号 不服2007-2588  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-19 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 平成10年特許願第 40208号「水平多関節ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月 7日出願公開、特開平11-239987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年2月23日の出願であって、平成18年12月18日付で拒絶査定され、平成19年1月19日に拒絶査定を不服とする審判が請求されたものであって、平成20年2月27日付の当審の審尋に対し、同年4月28日に回答書が提出され、平成20年6月12日に面接が行われ、平成20年6月13日付の当審の拒絶理由通知に対し、同年8月22日に意見書と手続補正書が提出されたものである。本願の請求項1に係る発明は、平成20年8月22日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認められる。
「水平多関節ロボットにおいて、
ロボット本体前面で昇降可能なZ方向機台に一端を支持されて水平面を揺動する第1アームと、
該第1アームの他端に支持されて水平面を揺動する第2アームと、
前記第1アーム及び第2アームのそれぞれを駆動するための第1アーム用モータ及び第2アーム用モータとを前記Z方向機台に設け、
前記夫々のアームは前記モータと夫々のプーリとベルト等の伝達手段を介して駆動可能としてなると共に、
前記第2アームは前記モータと一対のプーリを設けて、2本のスチール製の両端付きベルト本体の両端を基部側プーリと先端側プーリとにそれぞれ逆方向となるように設置されて夫々固定して、
該スチール製の両端付きベルト本体の両端及び中間は板状部材で挟持させて固定し、且つ、その中間の板状部材箇所で常にスチールベルトが緊張するようにして連結する伝達手段を介して駆動可能としてなること
を特徴とする水平多関節ロボット。」(以下、「本件発明」という。)

2.当審の拒絶理由
一方、当審において、平成20年6月12日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1に係る発明が、本願の出願前に頒布された刊行物である、以下の文献に記載された発明(事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

刊行物1: 実願昭60-74145号(実開昭61-191886号)
のマイクロフィルム
刊行物2: 特開平5-263884号公報

3.刊行物記載の発明(事項)
3.1 刊行物1
a.(明細書第5ページ第15行?第7ページ第5行)
「第1図ないし第3図は、本考案のウエハー等の搬送装置1の中心をなすアーム旋回型のロボット2を示している。このロボット2は、ケーシング兼用の基台3の内部で上下動手段としての送りねじ4,送りナット5および上下動用のモータ6を備えており、これらによって中空状の上下動体7を上下動自在に支持している。なお、上記モータ6の回転は、タイミングベルト・プーリ8などによって、送りねじ4に伝達される。この送りねじ4は、垂直方向で、回転自在に設けられており、基台3の内部のガイド9に対し、回転自在に支持されている。また上記上下動体7は、基台3の上部および上記ガイド9の下部に対し滑り案内できる状態で支持されており、その底部で送りナット5に固定的に連結されており、またその上面でケーシング兼用のロボットフレーム10を保持している。
そして、上記ロボットフレーム10は、旋回アームとして、第1アーム11,およびこれを介し第2アーム12,さらに先端アーム13を垂直方向の軸線により旋回可能な状態で支持しており、また、内部でこれらを駆動するためのギヤモータ14、15、16を収納している。すなわち、上記第1アーム11は、垂直な第1軸17によってロボットフレーム10に対し回動自在に支持されており、また第2アーム12は、第1アーム11の先端で、しかもその上方位置で、垂直方向にあって、中空の第2軸18によって回動自在に支持され、さらに先端アーム13は、第2アーム12の先端で、しかもその上面位置で垂直方向の先端軸19により回動自在に支持されている。」
b.(明細書第7ページ第18行?第8ページ第1行)
「また前記ギヤモータ15は、タイミングベルト・プーリ24、第1軸17と同心的な中空軸25、およびタイミングベルト・プーリ26により上記第2軸18に回転力を伝達する。」
c.(第3図)
第1アーム11と第2アーム12のそれぞれを駆動するための第1アーム用と第2アーム用のギヤモータ14,15が上下動体7に設けられていること、
前記第1アーム11は前記第1アーム用のギヤモータ14に駆動され、前記第2アーム12は前記第2アーム用のギヤモータ15とタイミングベルト・プーリ24からなる伝達手段を介して駆動可能とされること、及び
前記第2アーム12は前記第2アーム用のギヤモータ15と一対のプーリを介して駆動可能とされること、
が当業者にとって理解可能であると認める。

摘記事項aにおいて、第1アームと第2アームはともに垂直軸の回りに旋回可能であるのだから、水平面内で揺動することは自明である。
そこで、上記摘記事項を技術常識に照らし、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「アーム旋回型のロボットにおいて、
基台に対して昇降可能な上下動体に一端を支持されて水平面を揺動する第1アームと、
該第1アームの他端に支持されて水平面を揺動する第2アームと、
前記第1アーム及び第2アームのそれぞれを駆動するための第1アーム用のギヤモータ及び第2アーム用のギヤモータとを前記上下動体に設け、
前記第1のアームは第1アーム用ギヤモータにより駆動され、前記第2アームは前記第2アーム用ギヤモータとプーリとベルトからなる伝達手段を介して駆動可能としてなると共に、
前記第2アームは前記第2アーム用のギヤモータと一対のプーリを介して駆動可能としてなるアーム旋回型のロボット。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

3.2 刊行物2
a.(段落【0001】?【0004】)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はロボットなどの回転駆動力をバックラッシュなく伝達するベルトによる動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、回転の伝達を行う簡単な方法としてベルトがよく使われている。その中で回転を精度よく伝えるためにはスチールベルトによる伝達が有効である。
【0003】以下に従来のスチールベルトによる動力伝達装置について説明する。図6において、11は駆動軸、12は従動軸、13,14はプーリー、15,16はスチールベルトである。駆動軸11とプーリー13、従動軸12とプーリー14は、それぞれ固定されている。またベルト15,16の一端はプーリー13に、他端はプーリー14に固定されている。
【0004】以上各構成よりなる動力伝達装置について、各構成要素の関係と動作を説明する。駆動軸11が矢印Aで示した方向に回転すると、ベルト16はプーリー13に巻きとられ、プーリー14を矢印Aで示した方向に回転させる。また駆動軸11が矢印Bで示した方向に回転すると、ベルト15がプーリー13に巻きとられ、プーリー14を矢印Bで示した方向に回転させる。ベルトはループ状のものを1本だけ使っても構成できるが、ここでは回転の動作範囲を広げるためにベルト15,16の2本を使って構成している。また、従動軸12に負荷が加わった状態でも回転力が加わらない方のベルト15または16がたるむことのないように、ベルト15,16は一定の初張力で張られている。」
b.(【図6】)
スチールベルト15,16が両端付きベルトであること、及び
2本のベルトの両端が駆動軸側プーリー13と従動軸側プーリー14とに、それぞれ逆方向となるように設置され、各プーリーに板状部材で挟持させて固定してあること、
が当業者にとって理解可能であると認める。

上記摘記事項を技術常識に照らして整理すると、刊行物2には次の事項が記載されていると認められる。
「一対のプーリーを設けて、一定の初張力で張られた2本のスチール製の両端付きベルト本体の両端を駆動軸側プーリーと従動軸側プーリーとにそれぞれ逆方向となるように夫々固定して、該スチール製の両端付きベルト本体の両端は板状部材で挟持させて固定したロボット用回転駆動力伝達手段」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)

4.対比
そこで、本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「アーム旋回型のロボット」、「基台」、「上下動体」、「第1アーム用のギヤモータ」及び「第2アーム用のギヤモータ」が、前者の「水平多関節ロボット」、「ロボット本体」、「Z方向機台」、「第1アーム用モータ」及び「第2アーム用モータ」にそれぞれ相当することは明白である。また、後者の「上下動体」と前者の「「Z方向基台」とは、ともにロボット本体に対して昇降可能である点に限れば共通している。後者においては第1アームは第1アーム用のギヤモータに駆動されているが、ギヤモータとは原動機であるモータと出力軸との間に減速ギヤ等の伝達機構を設けたものであるから、後者の第1アームも第1アーム用のモータと伝達手段を介して駆動可能としたものということができる。
そうすると、本件発明と刊行物1記載の発明とは、次の各点において一致及び相違するものということができる。
【一致点】
「水平多関節ロボットにおいて、
ロボット本体に対して昇降可能なZ方向機台に一端を支持されて水平面を揺動する第1アームと、
該第1アームの他端に支持されて水平面を揺動する第2アームと、
前記第1アーム及び第2アームのそれぞれを駆動するための第1アーム用モータ及び第2アーム用モータとを前記Z方向機台に設け、
前記夫々のアームは前記モータと夫々のプーリとベルト等の伝達手段を介して駆動可能としてなると共に、
前記第2アームは前記モータと一対のプーリを介して駆動可能としてなる水平多関節ロボット。」である点。
【相違点1】
Z方向機台は、前者ではロボット本体前面で昇降可能であるのに対し、後者ではロボット本体前面では昇降可能でない点。
【相違点2】
第2アームと第2アーム用モータとの間の伝達手段は、前者では一対のプーリを設けて、2本のスチール製の両端付きベルト本体の両端を基部側プーリと先端側プーリとにそれぞれ逆方向となるように設置されて夫々固定して、該スチール製の両端付きベルト本体の両端及び中間は板状部材で挟持させて固定し、且つ、その中間の板状部材箇所で常にスチールベルトが緊張するようにして連結したものであるのに対し、後者ではこのようなものでない点。

5.当審の判断
以下に上記の各相違点について検討する。

5.1 【相違点1】について
ロボットの昇降部をロボット本体の前面に設けることは、水平多関節ロボットにおいて従来より周知かつ慣用の技術であり(例として、実願平5-7393号(実開平6-66978号)のCD-ROM、実願平2-46461号(実開平4-102794号)のマイクロフィルム、特開平8-85090号公報、特開平2-53581号公報等を参照。)、このような構成を採用することは、ロボットが使用される環境や用途等の状況に応じて当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。このため、本件発明においてZ方向機台をロボット本体の前面で昇降可能とすることも、当業者にとっては設計事項に過ぎないというべきである。

なお、請求人は平成20年8月22日付意見書において、刊行物1記載の発明については「つまり、ごみなどの付着を防止するため、高い位置にあって、ウエハーに清浄空気に最初に触れる関係を維持するように、基台3に設けた送りねじ4の最下点を基準とする上下動体7の上昇機能による搬送動作が極めて重要な意味を持っていることは明らかです。」(第3ページ第20?23行)、本件発明については「即ち、動作軸18の中間箇所に昇降部材19が螺合されて、上方向に全移動量の1/2の移動が可能で、下方向にも同様に1/2の移動を可能にすることにより、作動軸18の中間部を基準として上昇と下降の移動方向をもつZ方向の動作範囲を規定しています。」(第3ページ第30?32行)とそれぞれ説明し、「更には、刊行物1の上下動体7の上昇機能は、基台3より高い位置における搬送動作を可能にするために必要な構成であって、これに対して、本願発明のロボット本体1の前面側にZ方向機台2を設けて、Z方向機台2の上昇・下降の移動をロボット本体1の高さ以下に限定した低位置での動作とは明らかに相違し、また、刊行物1の場合、本願発明のように、ロボットフレーム10内の全ての駆動用モータを基台3に収納することはできません。」(第3ページ第38?43行)と主張している。
しかしながら、「動作軸18の中間箇所に昇降部材19が螺合されて、」「Z方向機台2の上昇・下降の移動をロボット本体1の高さ以下に限定した低位置での動作」とする点は請求項1の記載に基づいたものではない。また、「刊行物1の場合、本願発明のように、ロボットフレーム10内の全ての駆動用モータを基台3に収納することはできません。」との主張は、刊行物1の発明においては第3図に示されるように上下駆動用のモータ6のみが基台3に収納され、ギヤモータ14,15,16は上下動体7に収納されている点を指摘しているものと解されるところ、本件発明においても基台に相当するケーシング22にはZモータ20のみが収納され、第1アーム用モータ4,第2アーム用モータ10,R軸用モータ12は上下動体に相当するZ方向機台2に収納されているため、実質的に相違点を指摘するものということはできない。

5.2 【相違点2】について
刊行物2記載の事項における「駆動軸側プーリー」と「従動軸側プーリー」が、刊行物1記載の発明における「基部側プーリ」と「先端側プーリ」に相当することは明らかであるから、刊行物2には「一対のプーリを設けて、2本のスチール製の両端付きベルト本体の両端を基部側プーリと先端側プーリとにそれぞれ逆方向となるように設置されて夫々固定して、該スチール製の両端付きベルト本体の両端は板状部材で挟持させて固定し、且つ、常にスチールベルトが緊張するようにして連結した」伝達手段が記載されているということができる。
刊行物2記載の事項は刊行物1記載の発明と同様のロボットのための回転駆動力伝達手段に関するものであるから、刊行物1記載の発明における伝達手段に代えて刊行物2記載の伝達手段を採用することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
刊行物2記載の事項では、スチールベルトは常に一定の初張力で張られているものの、スチールベルトの中間を板状部材で挟持させて固定し、中間の板状部材の箇所で常にスチールベルトが緊張するように連結することについて記載されていないが、スチールベルトを緊張させるための構成は当業者が適宜設計、選択し得る程度のものであり、本件発明のようにスチールベルトの中間に板状部材を連結して、該板状部材箇所で緊張を与えるようにすることにも格別の作用効果を認めることはできないから、【相違点2】に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得たものというべきである。

なお、請求人は平成20年8月22日付意見書において、刊行物2記載の事項について「しかしながら、開示されている刊行物2の特徴の『負荷回転トルクが変化しても、常にベルトの巻き付け部における伸びを一定に保つ』ことは、ベルトを緊張状態にして連結することではなく、逆に、接触板によりベルト巻き付け部分の張力は、たるむことのないほどの初張力に近い値まで下げることであり、即ち、ベルトを緊張状態で連結しないでベルトの伸びを一定にすることであり、これにより駆動軸1の回転を従動軸2に正確に伝達することを可能にすることが開示されています。」(第4ページ第34?39行)と説明し、「したがって、刊行物2には、『該スチール製の両端付きベルトは常にスチールベルトが緊張するようにして連結する伝達手段』があるとされた認定には誤りがあります。」(第4ページ第40?41行)と主張している。
しかしながら、刊行物2記載の事項においてベルトを「一定の初張力で張る」ということはベルトがたるまないように緊張状態にすることにほかならないため、上記説明には根拠がなく、上記主張も採用することはできない。

5.3 まとめ
本件発明の作用効果には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術から普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すこともできない。
したがって、本件発明は刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件発明すなわち本願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-22 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願平10-40208
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 健松浦 陽佐々木 一浩  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 槻木澤 昌司
豊原 邦雄
発明の名称 水平多関節ロボット  

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