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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1188862
審判番号 不服2007-3381  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-05 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 平成11年特許願第365393号「帳票処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-184453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成11年12月22日の出願であって,平成18年12月27日付けで拒絶査定がされ,これに対して平成19年2月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年3月7日付けで手続補正がなされたものである。

第2 手続補正の却下
1 補正却下の決定の結論
平成19年3月7日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正後の本願の発明は,平成19年3月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたものと認められるところ,その請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものである。

「 【請求項1】 複数種類の帳票の画像データを処理する帳票処理システムであって、
前記複数種類の帳票の画像データを多値画像データに変換するとともに該多値画像データを二値画像データに変換し、該多値画像データ及び二値画像データを所定のフォーマットにて送信する窓口端末と、
帳票の種類に応じて、前記窓口端末から受信した多値画像データの特定箇所を切り出し、且つ、二値画像データを文字認識する文字帳票認識部と、
前記文字帳票認識部で切り出した特定箇所の多値画像データ及び文字認識した文字認識結果を一組にして処理済データとして帳票別に格納するメッセージキューバッファと、
前記メッセージキューバッファから処理済データの多値画像データと文字認識結果とを受信して、それらを画面に並べて表示するデータエントリ端末とを有し、
前記文字帳票認識部は、前記窓口端末から受信した多値又は二値画像データでその帳票の種類を制定帳票であるか否かを判断し、制定帳票でないときにはバーコード帳票であるか否かを判断して、判断の結果に識別した帳票の種類に応じた特定箇所のフィールドデータを切り出し、文字認識し、
前記メッセージキューバッファは、前記データエントリ端末からの転送要求を受け、転送すべき前記処理済データがあるときには前記データエントリ端末へ前記処理済データを送信し、転送すべき前記処理済データがないときにはデータ無しの応答を返信し、
前記データエントリ端末は、確認入力又は訂正入力を受けて前記文字認識結果を編集し、前記多値画像データ又は二値画像データの一部のエリアを切り出し、編集した文字認識結果と切り出した画像データとを一つのレコードファイルとして電子ファイリングすることを特徴とする帳票処理システム。」

本件補正は,平成18年12月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「文字帳票認識部」が「窓口端末から受信した多値又は二値画像データでその帳票の種類を制定帳票であるか否かを判断し、制定帳票でないときにはバーコード帳票であるか否かを判断して、判断の結果に識別した帳票の種類に応じた特定箇所のフィールドデータを切り出し、文字認識し」、「メッセージキューバッファ」が「データエントリ端末からの転送要求を受け、転送すべき処理済データがあるときには前記データエントリ端末へ前記処理済データを送信し、転送すべき前記処理済データがないときにはデータ無しの応答を返信し」、「データエントリ端末」が「確認入力又は訂正入力を受けて文字認識結果を編集し、多値画像データ又は二値画像データの一部のエリアを切り出し、編集した文字認識結果と切り出した画像データとを一つのレコードファイルとして電子ファイリングする」という限定を付加したものであり,かつ,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-334610号公報(以下,「引用例1」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。

ア 「【0004】また、流通業界,金融業界等では、各支店からの帳票を事務センターで集計し、各支店の業務を管理することが行われているが、帳票そのものを郵送して管理していたため、そのために人手と時間を要し、迅速確実な集計を行えないという問題もあった。」

イ 「【0016】この光学的文字読取装置は、この装置全体の制御を司どる管理手段としての中央制御装置1を有し、この中央制御装置1に任意数の光学的文字読取機(OCR)2、任意数の訂正端末装置3及び例えば磁気テープ装置の如き外部記憶装置4を各々接続して構成されている。」

ウ 「【0018】この中央制御装置1は、本光学的文字読取装置全体を制御するホストCPU10を有し、このホストCPU10に、光学的文字読取装置全体及びこの中央制御装置1内を制御するための制御プログラム等が格納されたメモリ11、OCR2の読取処理に必要なFC(フォーマットコントロール)情報を記憶するFC情報記憶部12、多数の帳票の読取情報をその帳票識別情報とともに記憶する読取情報記憶部13、各OCR2に対して情報の送受を行うOCRインタフェース14、各訂正端末装置3に対して情報の送受を行う端末インタフェース15及び外部記憶装置4に対して情報の送受を行う外部インタフェース16を各々接続して構成されている。なお、本実施例において、「読取情報」とは、帳票の多値イメージ,2値イメージ,認識情報(認識結果,候補文字)等の情報をいい、「帳票識別情報」とは、読取情報を特定するための情報、例えばOCR2を特定する情報(OCR番号)とそのOCR2が処理した帳票を特定するための情報(連番)とからなる情報をいうものとする。」

エ 「【0032】まず、本光学的文字読取装置の中央制御装置1,各OCR2,各訂正端末装置3及び外部記憶装置4に電源を投入して起動すると、中央制御装置1のホストCPU10は、メモリ11に格納されている制御プログラムに基づき、FC情報記憶部12が記憶するFC情報を各OCR2にOCRインタフェース14及びオンライン回線5を介して送り、各OCR2に帳票の読取処理を行わせる。
【0033】各OCR2は、送出されたFC情報に基づいて読取処理を行う。まず、OCR2のスキャナ部22は、OCR CPU20の制御の下に、帳票の多値イメージを検出する(S1)。すなわち、スキャナ部22の光電変換器22aは、光源から照射された光によって帳票から反射された光を電気信号に変換する。A/D変換器22bは、光電変換器22aによって変換された電気信号を例えば256階調のデジタルデータに変換する。OCR CPU20は、A/D変換器22bが変換したデジタルデータをイメージバッファ23に記憶する。イメージバッファ23には、帳票の多値イメージが記憶される(S1)。
【0034】2値化部24は、OCR CPU20の制御により、予め初期設定されている閾値でイメージバッファ23が記憶する帳票の多値イメージを2値化し、その2値イメージを認識部26に出力する(S2)。
【0035】次に、認識部26は、文字切出し処理及び文字認識処理を行う(S3)。すなわち、認識部26は、2値化部24により得られた帳票の2値イメージのうちFC情報で指定された読取フィールド内の2値イメージから文字パターンを切り出す。続いて認識部26は、切り出した文字パターンと辞書部25が記憶する認識辞書とを照合して類似度値を演算して求め、その類似度値を点数に換算し、点数の最も大きい第1候補文字から順に第n候補文字まで複数の候補文字を選択し、第1候補文字を認識結果として決定する。この時、第1候補文字と第2候補文字との点数が同点の場合は、その文字の認識結果としてリジェクト文字(「?」)を出力する。
【0036】認識部26によって帳票上の文字が読み取られると、OCR CPU20の制御の下に、印字部27によって連番が印字される。
【0037】そして、OCR CPU20は、イメージバッファ23が記憶している帳票の多値イメージ、2値化部24により得られた2値イメージ及び認識部26により得られた認識情報(認識結果、候補文字)等の読取情報を、OCR番号及び連番からなる帳票識別情報とともに通信インタフェース28及びオンライン回線5を介して中央制御装置1に送る。このようにして各OCR2は、複数の帳票に対して読取処理を行って順次読取情報及びその帳票識別情報を中央制御装置1に送る。
【0038】中央制御装置1のホストCPU10は、各OCR2からオンライン回線5を介して順次送られてくる読取情報及びその帳票識別情報をOCRインタフェース14を介して取り込み、読取情報のうちの認識結果,候補文字及び2値イメージ・多値イメージを、それぞれ読取情報記憶部13の認識ファイル、候補ファイル及びイメージファイルに帳票識別情報とともに記憶する。
【0039】次に、ホストCPU10は、各訂正端末装置3の端末CPU30との通信により、空きの訂正端末装置3を捜し出し、その捜し出した空きの訂正端末装置3へ端末インタフェース15及びオンライン回線6を介して多値イメージを除く読取情報及びその帳票識別情報を送る。これらの情報を送る際に、ホストCPU10は、認識結果にリジェクト訂正が含まれているために訂正が必要な読取情報のみを送る。しかも、各訂正端末装置3には、その処理能力に応じた1又は複数枚分の読取情報を送る。
【0040】中央制御装置1から訂正が必要とされる読取情報及びその帳票識別情報が送られた訂正端末装置3の端末CPU30は、送られてきた読取情報及びその帳票識別情報を通信インタフェース35を介して取り込み、訂正情報記憶部32に記憶するとともに、訂正情報記憶部32に記憶した読取情報のうち帳票の2値イメージを表示部33に表示する(S4)。
【0041】オペレータは、表示部33に表示されたイメージの濃度が適切か否かを判断する(S5)。例えば、図7に示すように薄過ぎる場合は、操作部34のキーボード又はマウスを操作して階調レベルD1 乃至Dn を変更する(S6)。」

オ 「【0048】ここで、オペレータは、修正画面を見て表示部33に表示されたイメージの濃度が、図8に示すように適切となったと判断すると(S5)、操作部34を操作して、修正画面表示を要求する。なお、表示部33に表示されたイメージの濃度が、まだ適切となっていなければ、適切となるまで、前記ステップS6,S7,S4を繰り返す。
【0049】端末CPU30は、修正画面表示の要求に基づき、訂正情報記憶部32から必要な情報を読み出して表示部33に修正画面を表示する(S8)。修正画面には、例えば読取フィールド単位で認識結果(候補文字)とそれに対応する2値イメージが表示される。なお、修正画面には、帳票全体の2値イメージを表示してもよい。
【0050】オペレータは、リジェクト文字を発見すると、操作部34を操作して例えばカナ漢字変換により正しい文字を入力して訂正する(S10)。なお、この訂正の際に、そのリジェクト文字に関連する複数の候補文字を表示させて、その複数の候補文字の中から選択するようにしてもよい。
【0051】端末CPU30は、訂正が終了するとその訂正情報を中央制御装置1に送る。
【0052】ホストCPU10は、送出された訂正情報に基づいて読取情報記憶部13に記憶されている読取情報のうち対応する認識結果を訂正する。
【0053】オペレータは、リジェクト文字の訂正を全て終了すると(S9)、ホストCPU10は、所定のタイミングで、リジェクト文字が全て訂正された帳票の2値化イメージ及び認識結果を帳票識別情報とともに外部記憶装置4に記憶する(S11)。外部記憶装置4に記憶された2値化イメージ及び認識結果は、帳票の管理に供される。」

前掲アないしオの記載及び図面によると,引用例1には,

「中央制御装置に光学的文字読取機(OCR),訂正端末装置及び外部記憶装置を接続して構成された光学的文字読取装置であって,
前記光学的文字読取機(OCR)は,
光源から照射された光によって帳票から反射された光を電気信号に変換する光電変換器と,前記電気信号を256階調の多値イメージに変換するA/D変換器と,前記多値イメージを2値化する2値化部と,
前記2値化された2値イメージのうち,FC(フォーマットコントロール)情報で指定された読取フィールド内の2値イメージから文字パターンを切り出し,文字認識処理を行う認識部とを有し,
前記多値イメージ,2値イメージ,認識部により得られた認識情報(認識結果,候補文字)等の読取情報を,帳票識別情報とともに中央制御装置に送り,
前記中央制御装置は,
送られてきた読取情報を,前記帳票識別情報とともに読取情報記憶部に記憶し,
空きの訂正端末装置を探し出し,前記2値イメージ,認識情報及び帳票識別情報を送り,
前記訂正端末装置は,
送られてきた前記2値イメージ,認識情報及び帳票識別情報から,読取フィールド単位で前記認識情報とそれに対応する2値イメージを表示し,オペレータが,リジェクト文字を発見すると,正しい文字を入力して訂正し,前記2値イメージ及び認識情報を帳票識別情報とともに前記外部記憶装置に記憶する
光学的文字読取装置。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「光学的文字読取装置」は,「帳票」から反射された光を元に変換された多値イメージに対して,「2値化」や「文字認識」などの処理をするものであって,かつ,「光学的文字読取機(OCR)」,「中央制御装置」,「訂正端末装置」,「外部記憶装置」という複数の装置から構成されたシステムといえるから,引用発明の「中央制御装置に光学的文字読取機(OCR),訂正端末装置及び外部記憶装置を接続して構成された光学的文字読取装置」は,本願補正発明の「帳票の画像データを処理する帳票処理システム」に相当する。
引用発明の「光源から照射された光によって帳票から反射された光を電気信号に変換する光電変換器と,前記電気信号を256階調の多値イメージに変換するA/D変換器と,前記多値イメージを2値化する2値化部」と,本願補正発明の「複数種類の帳票の画像データを多値画像データに変換するとともに該多値画像データを二値画像データに変換し、該多値画像データ及び二値画像データを所定のフォーマットにて送信する窓口端末」とを対比すると,両者は「帳票の画像データを多値画像データに変換するとともに該多値画像データを二値画像データに変換」する機能を有する点で一致し,前記機能を達成する構成は「変換部」と総称することができる。
引用発明の「認識部」は,「FC(フォーマットコントロール)情報で指定された読取フィールド内の2値イメージから文字パターンを切り出し,文字認識処理を行う」ものであるから,本願補正発明の「画像データの特定箇所を切り出し,二値画像データを文字認識する文字帳票認識部」に相当する。
引用発明において,多値イメージ,認識部により得られた認識情報(認識結果,候補文字)等の「送られてきた読取情報を,帳票識別情報とともに」記憶することは,本願補正発明の「画像データ及び文字認識した文字認識結果を一組にして帳票別に格納する」ことに相当するものであって,格納されたものを,「処理済データ」とすることは,単なる呼称の問題であって,技術的な差異を生ずるものではないといえる。
引用発明の「読取情報記憶部」は,多値イメージ,2値イメージ,認識部により得られた認識情報(認識結果,候補文字)等の「送られてきた読取情報を,帳票識別情報とともに」記憶するものであって,「訂正端末装置」に「読取情報及び帳票識別情報を送る」際,当該記憶されたものを用いて行われることは自明といえるから,引用発明の「読取情報記憶部」と本願補正発明の「メッセージキューバッファ」とは,データを一時的に記憶するバッファ機能を備える点で一致する。
引用発明の「訂正端末装置」は,「送られてきた2値イメージ,認識情報及び帳票識別情報から,読取フィールド単位で前記認識情報とそれに対応する2値イメージを表示」するものであって,「2値イメージ」,「認識情報」,「帳票識別情報」は「読取情報記憶部」に記憶されたものであることは自明といえるから,引用発明の「送られてきたイメージ,認識情報及び帳票識別情報から,読取フィールド単位で前記認識情報とそれに対応するイメージを表示」する「訂正端末装置」は,本願補正発明の「バッファから処理済データの画像データと文字認識結果とを受信して、それらを画面に表示するデータエントリ端末」に相当するものといえる。
引用発明の「オペレータが,リジェクト文字を発見すると,正しい文字を入力して訂正」することは,リジェクト文字がない場合にも,確認のため,何らかの入力を行うことは自明であるから,本願補正発明の「確認入力又は訂正入力を受けて文字認識結果を編集」することに相当する。
引用発明の「2値イメージ及び認識情報を帳票識別情報とともに外部記憶装置に記憶する」ことは,本願補正発明の「編集した文字認識結果と画像データとを電子ファイリングする」ことに相当する。

以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。

【一致点】
帳票の画像データを処理する帳票処理システムであって、
前記帳票の画像データを多値画像データに変換するとともに該多値画像データを二値画像データに変換する変換部と、
帳票の画像データの特定箇所を切り出し、且つ、二値画像データを文字認識する文字帳票認識部と、
画像データ及び文字認識した文字認識結果を一組にして処理済データとして帳票別に格納するバッファと、
前記バッファから処理済データの画像データと文字認識結果とを受信して、それらを画面に並べて表示するデータエントリ端末とを有し、
前記文字帳票認識部は、特定箇所のフィールドデータを切り出し、文字認識し、
前記バッファは、前記データエントリ端末へ前記処理済みデータを送信し、
前記データエントリ端末は、確認入力又は訂正入力を受けて前記文字認識結果を編集し、編集した文字認識結果と画像データとを電子ファイリングする
帳票処理システム。

【相違点】
(ア) 本願補正発明は,「複数種類」の帳票を対象とし,「文字帳票認識部」は,「多値又は二値画像データでその帳票の種類を制定帳票であるか否かを判断し,制定帳票でないときにはバーコード帳票であるか否かを判断して,判断の結果に識別した帳票の種類に応じた」特定箇所を文字認識するのに対し,引用発明には,複数種類の帳票を対象とすることは特定されておらず,文字認識するにあたり,帳票の種類を判断して帳票の種類に応じた処理を行うことは特定されていない点。

(イ) 本願補正発明は,文字帳票認識部において,「多値画像データの特定箇所を切り出し」,切り出した「特定箇所の多値画像データ」をバッファに格納し,データエントリ端末において,「画像データの一部のエリアを切り出し」電子ファイリングするのに対し,引用発明は,「多値画像データ」及び電子ファイリングする画像データを切り出すことは特定されていない点。

(ウ) 本願補正発明は,「変換部」が,「窓口端末」であって,変換した画像データを「所定のフォーマットにて送信」し,文字帳票認識部は,受信した画像データから文字認識を行うのに対し,引用発明は,「変換部」が「窓口端末」であること及び文字帳票認識部に変換した画像データを送信することは特定されていない点。

(エ) 本願補正発明は,バッファが,「多値画像データ」を文字認識結果とともに格納し,データエントリ端末は,「多値画像データ」と文字認識結果を画面に表示し,「多値画像データ」又は「二値画像データ」を文字認識結果とともに電子ファイリングするのに対し,引用発明は,バッファが,「多値画像データ」及び「二値画像データ」を文字認識結果とともに格納し,データエントリ端末は,「二値画像データ」と文字認識結果を画面に表示し,「二値画像データ」を文字認識結果とともに外部記憶装置に電子ファイリングする点。

(オ) 「バッファ」が,本願補正発明は,「メッセージキューバッファ」であって,「データエントリ端末からの転送要求を受け,転送すべき処理済データがあるときには前記データエントリ端末へ前記処理済データを送信し,転送すべき前記処理済データがないときにはデータ無しの応答を返信」するのに対し,引用発明は,バッファとしての機能を備える「読取情報記憶部」であって,空きのデータエントリ端末へ処理済データを送信するものであり,データエントリ端末からの転送要求により送信すること及び転送すべき処理済データの有無に応じて応答することについては特定されていない点。

(カ) 文字認識結果と画像データとを電子ファイリングする際,本願補正発明は,「一つのレコードファイルとして」ファイリングするのに対し,引用発明は「一つのレコードファイルとして」ファイリングすることは特定されていない点。

(4) 当審の判断
まず,上記相違点(ア)について検討する。帳票の読取装置において,複数種類の帳票を読取対象とすること,その際に,読み取った帳票の画像データの帳票IDやバーコードから,帳票の種類を判断し,帳票の種類に応じてフィールド位置を特定し,文字認識することは,例えば,特開平8-30722号公報(原査定の拒絶の理由で引用された文献7。特に,段落【0006】?【0008】,【0018】等参照。)や,特開平1-199285号公報(特に,第1頁右下欄第11行?第2頁左上欄第11行,同右下欄第5行?第18行,第3頁右下欄第18行?第20行,第4頁左上欄第19行?同右上欄第5行参照。)などに記載されているように,周知技術であるから,引用発明において,複数種類の帳票を読取可能にし,帳票の種類に応じてフィールド位置(本願補正発明の「特定箇所」に相当)を特定し,文字認識することは,当業者が容易に想到し得たことである。なお,帳票の種類として,制定帳票を選択することや,どの種類の帳票から順に判断を行うのかは,当該発明を実施するにあたり,当業者が適宜なし得る設計的事項である。

次に,上記相違点(イ)について検討する。必要な箇所だけ画像データを切り出して処理に用いることや,データを記憶する際に,余分なデータを除外して,必要なデータのみを記憶することで,使用するメモリ容量の低減を図ることは,一般的に行われている事項であり,引用発明において,文字認識に必要な箇所を切り出すことや,画像データを記憶(ファイリング)する際に,余分なデータを除外し,必要なエリアのみを切り出して格納することは,当業者であれば容易に想到し得た事項である。

上記相違点(ウ)について検討する。帳票の読み取り,画像データへの変換を窓口端末で行うことは,例えば,特開平1-161575号公報(原査定の拒絶の理由で引用された文献2。特に,第1図及びこれに関する記載参照。)や,特開平10-278452号公報(特に,段落【0006】?【0007】,【0016】等)などに記載されているように周知技術であり,また,端末側では文字認識を行わず,文字認識を行う外部装置に画像データを送信することは,例えば,上記特開平10-278452号公報や,特開平7-115525号公報(特に,段落【0001】?【0002】等)などに記載されているように周知技術である。したがって,引用発明において,「変換部」を「窓口端末」とし,文字認識を行う外部装置に画像データを送信することは,当業者が容易になし得たことである。なお,送信の際に,端末と外部装置との間で決められた所定のフォーマットを用いることは,自明の事項である。

上記相違点(エ)について検討する。文字認識結果の訂正を行う際に,文字認識結果と多値画像データとを表示することは,例えば,特開平3-164988号公報(原査定で周知技術として提示された文献。特に,第3頁左上欄第10行?同左下欄第19行等参照。)や,特開平8-263593号公報(原査定で周知技術として提示された文献。段落【0010】?【0014】等参照。)などに記載されているように,周知技術であり,引用発明において,「二値画像データ」と文字認識結果を画面に表示することに代えて,格納されている「多値画像データ」を用いて,「多値画像データ」と文字認識結果を画面に表示することは,当業者が容易になし得たことである。

上記相違点(オ)について検討する。バッファとして,メッセージキューバッファを採用し,データの取出し要求に応じて,取り出しを行うことは,例えば,特開平1-161575号公報(原査定の拒絶の理由で引用された文献2。特に,第8頁左上欄第6行?第12行等参照。)や,特開平7-319984号公報(原査定の拒絶の理由で引用された文献4。特に,段落【0009】?【0012】等参照。)などに記載されているように周知技術であり,引用発明において,読取情報記憶部をメッセージキューバッファとし,データエントリ端末からの取り出し要求に応じて,取り出しを行うことは,当業者が容易になし得たことである。なお,取り出し要求を受けた場合に,キューイングされたデータがなければ,データを取り出すことはできず,その際に,データ無しの応答を返信することは,自明の事項である。

上記相違点(カ)について検討する。一般に,複数の情報を対応付けて記憶する際に,一つのレコードファイルとすることは,例を挙げるまでもなく周知技術であり,引用発明において,2値イメージ及び認識情報を帳票識別情報とともに記憶する際に,一つのレコードファイルとして記憶することは,当業者が適宜採用し得る設計的事項である。

そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願補正発明の奏する効果を検討してみても,引用例1に記載された発明及び周知技術から想定される範囲を越えるものではない。

したがって,本願補正発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年3月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年12月11日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】 複数種類の帳票の画像データを処理する帳票処理システムであって、
前記複数種類の帳票の画像データを多値画像データに変換するとともに該多値画像データを二値画像データに変換し、該多値画像データ及び二値画像データを所定のフォーマットにて送信する窓口端末と、
帳票の種類に応じて、前記窓口端末から受信した多値画像データの特定箇所を切り出し、且つ、二値画像データを文字認識する文字帳票認識部と、
前記文字帳票認識部で切り出した特定箇所の多値画像データ及び文字認識した文字認識結果を一組にして処理済データとして帳票別に格納するメッセージキューバッファと、
前記メッセージキューバッファから処理済データの多値画像データと文字認識結果とを受信して、それらを画面に並べて表示するデータエントリ端末とを有することを特徴とする帳票処理システム。」

2 引用例
引用例1及びその記載事項は,前記「第2 2 (2)」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から前記「第2 2 (1)」に記載した限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2 (3)」,「第2 2 (4)」に記載したとおり,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-01 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願平11-365393
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 則和  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 原 光明
廣川 浩
発明の名称 帳票処理システム  
代理人 秋田 収喜  

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