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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1188867
審判番号 不服2007-9102  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2004-191870「防食スリーブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 10047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成16年6月29日の出願であって,平成19年2月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに,同年4月26日に明細書についての補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年4月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書及び出願当初の図面の記載からみて,次のとおりのものと認められる。
「樹脂スリーブ1に金属スリーブ2を密挿可能に構成してなる防食スリーブであって,前記樹脂スリーブ1は,その内周面を上段大径部1aと下段小径部1bの二段に構成する一方,前記金属スリーブ2は,その内周面が円筒形状であり,その外周面を前記上段大径部1aと下段小径部1bとの段1eに予め係合される下端係合部2bと,前記上段大径部1aに予め挿通され,且つ,押し込みにより前記下段小径部1bを拡径可能に密挿される中間円筒部2cと,押し込みにより前記上段大径部1aを拡径可能に密挿される,上方に向かって徐々に拡径するように傾斜した形状の上段くさび部2dの三段に構成したことを特徴とする防食スリーブ。」(なお,補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記金属スレーブ2」は「前記金属スリーブ2」の誤記と認め,本願発明を上記のように認定した。)
なお,本願発明は,上記補正前の出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明を,従属形式から独立形式に表現形式を変えたものに相当し,実質的に補正はなされていない。

3.引用例
(3-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-304487号公報(以下「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,水道本管などの金属管に開孔した場合に露出する金属の防食を目的とした防食スリーブの構造に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来から水道本管などに分岐管を設ける場合には先ず本管に開孔を施し,開孔周面の防食のためにスリーブを密挿する技術は公知である。例えば,出願人も実開平7-23892号公報に記載されたような防食スリーブを既に開示している。ところで,上記防食スリーブは金属スリーブと弾性スリーブを組み合わせたものであるが,密に接触させるために金属スリーブの断面形状を複雑にしている。従って,製造コストが高くつくうえに,金属部分を拡径するために変形時や拡径器具の引き抜き時に大きい力を必要とする。・・・」

・「【0004】本発明は上述した従来の課題を解決するもので,比較的簡単な施工によって確実に防食効果を維持することができる構造のスリーブを開示することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では上記目的を達成するために,略円筒状の樹脂スリーブと,この樹脂スリーブの内周に密に挿通される金属スリーブからなる二重構造とした。そして,樹脂スリーブは挿通方向に対して順に大径内周と小径内周を有し,金属スリーブは挿通方向に対して順に大径外周と中間外周と小径外周を有し,樹脂スリーブの大径内周と金属スリーブの中間外周および小径外周の高さと,樹脂スリーブの小径内周と金属スリーブの大径外周の高さを一致させるという手段を用いることとした。金属スリーブは,スリーブとしての剛性を確保する機能を有している。また,樹脂スリーブは水道本管に穿孔された開孔に対する密着性を確保する機能を有している。そして,金属スリーブの完全な装着によって樹脂スリーブを拡開し,これによってスリーブを本管の開孔に密着させる。」

・「【0007】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好ましい実施形態を,添付した図面に従って説明する。図1は本発明の防食スリーブの一部をなす金属スリーブの全体を示したもので,円筒状の金属スリーブ1は内周面2が正確に円筒形状である一方,外周面3は挿入基端側から順に段差が設けられて3段に絞られている。ここで,最大外周径から順に3a,3b,3cの番号を付与する。また,基端側にはフランジ4が設けられている。金属素材は本発明の目的を達成する素材である必要があり,防食性が高いステンレスなどの素材を採用する。
【0008】図2は金属スリーブ1の外側に位置することになる樹脂スリーブ5の全体を示したもので,外周面6を大径外周6aと小径外周6bで構成し,内周面7も大径内周7aと小径内周7bで構成している。そして,樹脂スリーブ5の内側に金属スリーブ1を打ち込むことによって,本発明の防食スリーブが構成されることになる。大径外周6aと小径外周6bによって形成された段は,水道本管に対して樹脂スリーブ5を挿入する際の位置決め用の段差である。
【0009】図3は水道本管10に設けられた開孔11にジグJを用いて防食スリーブを嵌挿するところを示したもので,先ず樹脂スリーブ5と金属スリーブ1を予め一段だけ組み合わせた状態で製品として,これを開孔11に嵌合し,続いて金属スリーブ1を樹脂スリーブ5の内側にジグのピストンなどを利用してさらに押し込む。図4が作業完了の状態を示している。この場合,金属スリーブの外周に形成された3段の段差によって3種類の外周径が形成されているが,この外周径と樹脂スリーブ5の内周面7に設けられた大径内周7aと小径内周7bの関係を説明する。即ち,図3に示したように金属スリーブの外周3aの高さAと樹脂スリーブ5の大径内周7aの高さaは一致し,金属スリーブの外周3bおよび3cの和の高さBと樹脂スリーブの小径内周7bの高さbが一致している。また,直径に関しては樹脂スリーブの大径内周径と金属スリーブの中間の外周径3bがほぼ一致している。この状態で樹脂スリーブ5に対して金属スリーブ1を押し込んで,図3の製品の状態では樹脂スリーブの大径内周7aと金属スリーブの中間の外周径3bが同じなので容易に挿入,かつこれを維持することができる。続いて,さらに金属スリーブ1を押し込めば樹脂スリーブの小径内周7bが金属スリーブの中間外周3bによって,また樹脂スリーブの大径内周7aが金属スリーブの大径外周3aによってそれぞれ押し広げられて,外側に変形する。これによって樹脂スリーブと水道本管10が密着した状態で防食スリーブの装着が完了する。」

・【0008】の記載事項及び図1によれば,樹脂スリーブの大径内周7aとその下部に続く小径内周7bとは,径の異なる内周面が隣接して配置されることにより,そこに「段」が形成されていることは明らかである。

・図3の「防食スリーブを水道本管に装着する作業前を示す図」及び【0009】の「図3の製品の状態では樹脂スリーブの大径内周7aと金属スリーブの中間の外周径3bが同じなので容易に挿入,かつこれを維持することができる」との記載事項によれば,金属スリーブの先端側(先端部の外周3c及びこれに続く中間部の外周3b)を樹脂スリーブの大径内周7aに挿入し,金属スリーブの先端部の外周3cが樹脂スリーブの前記「段」(大径内周7aから下部の小径内周7bと狭くなる部分)に単に当接するのではなく,「係合」することにより,維持されているものと認められる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,
「樹脂スリーブに金属スリーブを密に挿入可能に構成してなる防食スリーブであって,前記樹脂スリーブは,その内周面を上段の大径内周7aと下段の小径内周7bの二段に構成する一方,前記金属スリーブは,その内周面が円筒形状であり,その外周面を前記上段の大径内周7aと下段の小径内周7b間の段に予め係合される下段先端の外周3cと,前記上段の大径内周7aに予め挿通され,且つ,押し込みにより前記下段の小径内周7bを押し広げて外側に変形可能に密に挿入される中間外周3bと,押し込みにより前記上段の大径内周7aを押し広げて外側に変形可能に密に挿入される上段の大径外周3aの3段に構成した防食スリーブ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-306893号公報(以下「引用例2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記の従来の防食スリーブには次のような種々の問題点を有していた。即ち,縮径変形させた金属スリーブを工具によって拡径する際,・・・,金属スリーブを拡径させながら,工具を挿入させていく時に発生する抵抗力が,大きくなったり,・・・」

・「【0010】
【発明の実施の形態】図1は水道配管の本管1から支管へ分岐配管を行なうための止水機構2を有するサドル付き分水栓3を設置した状態を示す断面図である。同図において,本管である金属管1には,図示しない穿孔工具により通水口4となる孔を穿孔した際,その孔壁5の切削面の腐食を防止するための防食スリーブ6を装着している。
【0011】この防食スリーブ6は,後述する弾性スリーブ7の内径側に滑り特性が良く,かつ伸び特性が大きい樹脂筒層8を備えたスリーブ本体9の開口部10より剛性スリーブ11を挿入することによって樹脂筒層8を拡径すると同時に弾性スリーブ7を拡径させて通水口4である穿孔穴の孔壁5の切削面に弾性スリーブ7を密着させるものである。
【0012】この場合,図面に示すスリーブ本体9は,ゴムスリーブ7の内径側に滑り特性が良く,かつ伸び特性が大きい樹脂スリーブ8を挿入したものであり,このスリーブ本体9の開口部10より,例えばステンレス製等の剛性のある厚肉状の金属スリーブ11(または剛性のある硬質樹脂製スリーブでも良い。)を挿入することによって樹脂スリーブ8を拡径すると同時にゴムスリーブ7を拡径させる。この樹脂スリーブ8は,上端に鍔部8aを設け,この鍔部8aの開口内周面にテーパ部8bを設けると共に樹脂スリーブ8の下端内周面に突起部8cを形成する。
【0013】その他,スリーブ本体9は,図示しないがゴムスリーブ7の内径側に滑り特性が良く,かつ伸び特性が大きい樹脂をコーティングしたものでも良く,この場合は,ゴムスリーブ7自体に,上記に示した例と同様に,上端に鍔部と下端内周面に突起部を形成し,このゴムスリーブ7の内径側全体に樹脂をコーティングして成形する。
【0014】また,図6に示すように,上端部にフランジ部12aを有する筒体12bの下端外周部に係合溝12cを形成し,この筒体12bには,鍔部11aを有する金属スリーブ11とゴムスリーブ7の内径側に樹脂スリーブ8を備えたスリーブ本体9を挿入すると共に金属スリーブ11の下端部を樹脂スリーブ8の開口部10に挿入し,かつ筒体12bの係合溝12cに樹脂スリーブ8の下端内周面に形成した突起部8cを係合して,図7に示すように防食スリーブ6を装着工具12に装着させる。次いで,この状態の装着工具12で後述する金属管1の通水口4に防食スリーブ6を装着する。なお,図中11bは金属スリーブ11の外周面に形成した係止溝で,この係止溝11bは樹脂スリーブ8からの金属管の引抜きを防止するものである。また,本実施例では中空の筒体12bを用いているが,これは,中空ではない円柱体であっても良い。
【0015】次に,防食スリーブ6をサドル付き分水栓3と金属管1の孔壁5に装着する方法について説明する。まず,操作杆12dを螺着した装着工具12の筒体12bに,金属スリーブ11を挿入して金属スリーブ11の鍔部11aをフランジ部12aに係合させ,次いで,この金属スリーブ11には,ゴムスリーブ7の内径側に樹脂スリーブ8を備えたスリーブ本体9を筒体12bに挿入して筒体12bの係合溝12cに樹脂スリーブ8の下端内周面に形成した突起部8cを係合し,かつ樹脂スリーブ8の開口部10に金属スリーブ11の下端部を挿入した状態で装着工具12に防食スリーブ6を仮固着する。この装着工具12を図2に示すように分水栓3と金属管1の通水口4に挿入してゴムスリーブ7を孔壁5に位置させる。このとき,樹脂スリーブ8の鍔部8aは,後述する止水機構2の取付キャップ19の内周面に形成した突条環部21の上面に係合する。
【0016】次いで,図3に示すように装着工具12を更に挿入させることにより金属スリーブ11をスリーブ本体9の内周面に挿着して同図に示すように樹脂スリーブ8を拡径させる。更に,装着工具12を挿入させて図4に示すようにゴムスリーブ7を拡径させて通水口4の孔壁5の切削面にゴムスリーブ7を密着させ,かつ樹脂スリーブ8の突起部8cが反転してゴムスリーブ7の下端部7aが外方に突設されて金属管1の孔壁5の内端部に係合し,図4に示すように,金属管1の孔壁5に防食スリーブ6が密封状態で装着される。このとき防食スリーブ6が装着されたまま,装着工具12は上方より引き抜くことができるので,図5に示す状態に確実に装着される。」

・図2には,金属スリーブ11の下端近傍の外周と樹脂スリーブ8の開口内周面に設けられたテーパ部8bとの間に間隙が存在する態様が示されている。

・図4及び図5には,金属スリーブが,その上部に設けられている鍔部11aの下面が樹脂スリーブの上部に設けられている鍔部8aの上面に接するまで樹脂スリーブ8内に挿入されて,樹脂スリーブ8の開口内周面に設けられたテーパ部8bとその内周に位置する金属スリーブの外周面との間には,隙間がなく接している態様が示されている。

・図2及び図6には,金属スリーブ11の外周に,係止溝11bよりも(図面上)上方の位置から,さらに上方に位置する鍔部11aに向かって徐々に拡径するように傾斜した形状のくさび部が形成された態様が示されているといえる。
また,金属スリーブ11の外周に,このようなくさび部が形成されていることは,図2及び図4・図5に上記のような態様が示されていることからも,裏付けられる。

・但し,上記くさび部が,樹脂スリーブ8の開口内周面に設けられたテーパ部8bを拡径可能な形状か否かは明らかではない。

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると,後者の「密に挿入可能に構成」は,前者の「密挿可能に構成」に相当し,以下同様に,樹脂スリーブの「上段の大径内周7a」は前者の「上段大径部1a」に,「下段の小径内周7b」は「下段小径部1b」に,「上段の大径内周7aと下段の小径内周7b間の段」は「上段大径部1aと下段小径部1bとの段1e」に,金属スリーブの「下段先端の小径外周3c」は「下端係合部2b」に,「押し広げて外側に変形可能に密に挿入される」は「拡径可能に密挿される」に,「中間外周3b」は「中間円筒部2c」にそれぞれ相当する。
また,金属スリーブにおける後者の「上段の大径外周3a」と前者の「上方に向かって徐々に拡径するように傾斜した形状の上段くさび部2d」とは,「上段の大径部」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「樹脂スリーブに金属スリーブを密挿可能に構成してなる防食スリーブであって,前記樹脂スリーブは,その内周面を上段大径部と下段小径部の二段に構成する一方,前記金属スリーブは,その内周面が円筒形状であり,その外周面を前記上段大径部と下段小径部との段に予め係合される下端係合部と,前記上段大径部に予め挿通され,且つ,押し込みにより前記下段小径部を拡径可能に密挿される中間円筒部と,押し込みにより前記上段大径部を拡径可能に密挿される,上段の大径部の三段に構成したことを特徴とする防食スリーブ。」の点で一致し,
金属スリーブの上段の大径部の構成に関し,前者が「上方に向かって徐々に拡径するように傾斜した形状の上段くさび部2d」を備えているのに対し,後者ではこのような構成を備えていない点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2には,ゴムスリーブ7と樹脂スリーブ8から成るスリーブ本体9の内周面に金属スリーブ11を挿着して構成される防食スリーブにおいて,金属スリーブの外周面の上段に,上方に向かって徐々に拡径するように傾斜した形状のくさび部を形成することが開示されている。但し,該くさび部が樹脂スリーブの開口内周面に設けられたテーパ部を拡径可能な形状か否かについて,引用例2には明記されておらず,該くさび部がどのような作用をなすのかは明らかでない。
しかし,弾性を有する管状部材の内側に剛性の別の管状部材を挿入して,密着させた構造としたものにおいて,内側に挿入する管状部材の外周面にくさび部を形成し,該くさび部にその外周に密着する弾性の管状部材を拡径する機能を持たせることは,本願出願前に周知の事項である(例えば,実願昭48-98146号(実開昭50-44924号)のマイクロフィルムの「ナット(1)(注.丸付き数字。以下,半角の()付き数字は同様。)の外部に雄ネジ(2)を切りその先端にテーパー(3)を切り三種一体とした構造とし,別にビニールパイプ(4)に段差付テーパーリング(5)及び段差付ナット(6)をはめ込みビニールパイプ(4)をテーパー(3)にはめ込み・・・ビニールパイプ(4)は強く段差付テーパーリング(5)段差付ナット(6)の両者に強く圧押され完全に緊締する」(明細書2頁11行?3頁2行),実願平3-92307号(実開平5-34388号)のCD-ROMの「中空管状ジョイント本体は,軸方向の一端であるチューブ嵌合部に弾力性のあるチューブの内側をはめ込み接続する部材である。チューブ嵌合部の外周面には開口端に向かってやや閉じたテーパを付け,」(【0009】段落),特開平9-229268号公報の「ホース2,2の開口端部2a,2a内に筒状インサート6を構成する長筒部材12,12をテーパ外周面12a,12a側からそれぞれ挿入し,ホース2,2の開口端部2a,2aの端面を長筒部材12,12の膨出部12b,12bの端面に当接させる。」(公報6頁9欄18?23行),図1等を参照のこと)。
ところで,引用例1の【0002】に,従来技術の課題として,「金属部分を拡径するために変形時や拡径器具の引き抜き時に大きい力を必要とする。」と記載されていることからも明らかなように,引用発明は,樹脂スリーブ内に金属スリーブを挿入する際,押し込みに要する力を軽減して挿入を円滑にし作業性の向上を図るという課題を内包するものということができる。
また,引用例2に記載された防食スリーブも,【0003】に従来技術の課題として「工具を挿入させていく時に発生する抵抗力が大きくなったり」と記載されることからも明らかなように,引用発明と同様の課題を有しているということができるから,引用発明に引用例2に記載された技術的事項を適用することには,動機付けが存在するといえる。
そうすると,引用発明において,引用例2に記載された技術的事項を適用するに際し,上記周知の事項を勘案しつつ,くさび部の形状をその外周に位置する樹脂スリーブを拡径可能なものとして採用することは,当業者が容易になし得るものと認められる。
したがって,引用発明において,相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
なお,付言すれば,引用発明において,(樹脂スリーブの形状を変えることなく)金属スリーブの上段大径部に,引用例2に開示されたくさび部の構成を採用すれば,該くさび部が樹脂スリーブを拡径することとなるのは明らかであるから,この観点からしても,相違点に係る本願発明の構成とすることに,格別の困難性を認めることはできない。

そして,本願発明により奏される作用効果は,引用発明,引用例2に記載された技術的事項及び周知の事項から,当業者が予測し得る範囲のものに過ぎない。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-19 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2004-191870(P2004-191870)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 小川 恭司
田中 秀夫
発明の名称 防食スリーブ  
代理人 濱田 俊明  

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