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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625301 審決 特許
不服2006876 審決 特許
不服20062586 審決 特許
不服200624766 審決 特許
不服20072731 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1188872
審判番号 不服2007-17080  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-19 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2001-392034「エアゾール製品の使用法および該使用法を用いるエアゾール製品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開,特開2003-192059〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成13年12月25日の出願であって,平成19年5月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年6月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,平成19年7月19日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成19年7月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年7月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。
「マウンティングカップに装着さるバルブが肩部を介して開口部にかしめつけられたエアゾール容器と,該エアゾール容器の頂部に嵌着されるキャップと,前記バルブのステムに嵌め込まれるノズルと,該ノズルを軸方向に押圧する,互いに回動可能に連結された第1レバーと第2レバーとからなり,前記キャップ内に収納されるトリガー部材と,前記キャップに連結され,前記エアゾール容器を傾けて保持するためのグリップ部とを備え,前記第1レバーと第2レバーが両端支持部によって連結され,前記第2レバーの後端部の背面には突起形状のストッパーが設けられ,前記バルブのハウジングに装着されるディップチューブが先端の重錘で伸縮,湾曲自在な蛇腹形状もしくはスパイラル形状を呈しているか,または先端の重錘で動き得る柔軟性を備えた材質で作製され,前記バルブのハウジングに装着されるチューブが蛇腹形状またはスパイラル形状を呈しており,かつ該チューブの先端部に重錘が取り付けられているエアゾール製品であって,前記ステムと前記ハウジングのアンダータップの径を大きくし,前記ハウジング(31)にベーパータップが形成されていないエアゾール製品。」

2.補正の目的,特許請求の範囲の拡張,変更及び新規事項の追加の有無
本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「バルブ」に,「マウンティングカップに装着さるバルブが肩部を介して開口部にかしめつけられた」との限定を付加し,同様に「トリガー部材」に,「互いに回動可能に連結された第1レバーと第2レバーとからなり,前記キャップ内に収納される」と,「前記第1レバーと第2レバーが両端支持部によって連結され,前記第2レバーの後端部の背面には突起形状のストッパーが設けられ」との限定を付加するものであり,かつ,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして,本件補正は,新規事項を追加するものでもない。

3.独立特許要件
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された,特開2001-315872号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
a.「……図1に示すように,本発明のエアゾール容器1は,円筒状の容器本体10内に高圧充填された内容物19を噴射するために,容器本体10の口を閉じるバルブ11と,このバルブ11のステム12に接続されたノズル13と,バルブ11を包囲するキャップ14と,ノズル13に係合されているとともに,ノズル13の径方向に沿って延びるレバー15とを有している。」(段落0019)
b.「レバー15は,互いに回動可能に連結された第1部材である第1レバー16と,第2部材である第2レバー17とを有している。第1レバー16は全体がキャップ14内に径方向に延びるように配置され,その一端の連結端部16aがキャップ14の内面に回動自在に取り付けられている。この第1レバー16の中間部には貫通孔16bが設けられており,この貫通孔16b内にノズル13が配置されている。そして,貫通孔16bの周囲に配置された押圧部材18がバルブ11に係止されている。……」(段落0020)
c.「……第2レバー17を第1レバー16に積層する方向に回転させたときに,第2レバー17が全体的にキャップ14内に収納される……」(段落0022)
d.「……この第2レバー17の連結端部17a側には,第1レバー16の開放端部16cに係止可能なストッパ17dが設けられている。第1レバー16の開放端部16cは,第2レバー17の連結端部17aの下側に配置されている。……」(段落0023)
e.「容器本体10の底部側,ここではレバー15と容器本体10との間に,キャップ14に回動自在に連結されたグリップ20が設けられている。……」(段落0025)
f.「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、請求項1に記載したように、キャップに連結されているとともに前記キャップの軸方向に対して交差する方向に延びるグリップを有し、前記グリップが前記容器および前記キャップのうちの一方に沿うように回動可能であることによって、キャップからグリップが突出しているため、ノズルの長手延長方向に内容物を噴射可能であれば、あたかも拳銃を操作するように使用者がグリップを手で把持し、かつ、指でレバーを操作することにより、目標に向かって内容物を的確に噴射できるとともに、使用者に掛かる容器重量の負担を軽減でき、これにより一層良好な操作性が得られ、グリップが容器あるいはキャップに沿うように回動可能であるため、保管スペースを小さくできる。」(段落0031)
g.「……第1部材の開放端部がキャップに保持されているとともに,開放端部から第1部材の連結端部側がノズルに係合されているため,ノズルをレバーの梃子作用により押下でき,レバーがノズルに固定されて直接的に押下する場合に比較して,良好な操作性が得られるとともに,レバーを湾曲変形させる虞れが少ない。」(段落0035)
h.図面第1図,上記fの記載より,「グリップにより,エアゾール容器を傾けて保持すること」が示唆されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し,本願発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。
「バルブを有するエアゾール容器と,該エアゾール容器の頂部に嵌着されるキャップと,前記バルブのステムに嵌め込まれるノズルと,該ノズルを軸方向に押圧する,互いに回動可能に連結された第1レバーと第2レバーとからなり,前記キャップ内に収納されるレバーと,前記キャップに連結され,前記エアゾール容器を傾けて保持するためのグリップとを備え,前記第1レバーと第2レバーが連結端部によって連結され,前記第2レバーの後端部の背面には突起形状のストッパーが設けられたエアゾール容器。」

[引用例2]
同じく引用された特開2000-273001号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
i.「本発明は,エアーコンディショナー用スプレー製品に関する。……」(段落0001)
j.「本発明のエアコン用スプレー製品の噴射力を高くすることができるのは,つぎの理由による。噴射力は,単位時間あたりの噴射量が多い方が大きくなり,エアゾール処方が同じ場合,噴射量を大きくするには,以下の方法がある。・・・バルブのステムとアンダータップの穴径を大きくして,ベーパータップを小さくするまたは無くす。・・・・ベーパータップを用いないことで液相のみが噴射され,噴射量が大きくなる。同じステムとアンダータップの穴径のバルブでもベーパータップがあると噴射量は少なくなる。・・・内圧をあげずに噴射量をアップする方法として,ステムとアンダータップ(下穴)の穴径を大きくし,ベーパータップ無しのバルブを用いるのがよく……。」(段落0012?0016)

[引用例3]
同じく引用された実願昭61-29064号(実開昭62-139978号公報)のマイクロフィルム(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
k.「本考案は缶の中心線が直立,水平,または倒立の場合,内容物(7)が少量であっても導入管(4)が缶最低部に位置して導入を可能とするエアゾールスプレー缶に関するものである。」(第1頁下から4行?末行)
l.「本考案は以上の欠点を除くため,缶中心にある導入管(4)を軟質のビニール管のような材料を使用し,蛇腹状に成形し,その一端を噴出管(3)に接続して,他端には導入口金(5)を取付ける。蛇腹状の導入管(4)は蛇腹中心線に沿って伸縮自在とし,缶中心線が直立のとき,また,水平或は倒立の際にも導入管(4)の蛇腹は自重と口金(5)の重さのため,内容物(7)の底部まで伸長し,内容物を導入して噴霧を可能とすることができる。(3頁3?12行)

[引用例4]
同じく引用された特開平10-324378号公報(以下,「引用例4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
m.「本発明は,噴射装置の給液口構造体に……関する。」(段落0001)
n.「【作用】本発明は、螺旋状に巻回した可とう性給液管1、1’の一端をバルブハウジングの下端部分に嵌合し、その他方、すなはち、自由端を合成樹脂で形成した算盤玉形重錘2、2’の中心孔に挿通し、その先端を膨大させて抜け止め部3、3’を形成する。前記重錘2、2’を比較的重量のある合成樹脂で形成したので、噴射容器が正立状態でも、倒立状態のいずれの状態においても、可とう性螺旋状給液管は、常に、下方へ垂下し、重錘を液面下に位置させる。特に、本発明の合成樹脂で形成した重錘を算盤玉形に形成したので、球形重錘に比べてその周縁部分が細くなつているから、従来の球形重錘の場合より、直径の小さい噴射容器にも対応でき、そのような小径の噴射容器においても、正立状態において、容器缶の側壁と凹入底部との間の狭い隙間に入り、容器缶の底近くまで給液口が届く。その結果、その給液口から容器缶の内容液を給液し、それを最後まで使い切ることができ、無駄にしないですむ。……」(段落0005)

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると,その構造または機能からみて,引用発明1の「エアゾール容器」は,本願補正発明の「エアゾール容器」または「エアゾール製品」に相当し,以下同様に,「レバー」は「トリガー部材」に,「グリップ」は「グリップ部」に,「連結端部」は「両端支持部」に,それぞれ相当する。
そこで,本願補正発明の用語を用いて表現すると,両者は次の点で一致する。

(一致点)
「バルブを有するエアゾール容器と,該エアゾール容器の頂部に嵌着されるキャップと,前記バルブのステムに嵌め込まれるノズルと,該ノズルを軸方向に押圧する,互いに回動可能に連結された第1レバーと第2レバーとからなり,前記キャップ内に収納されるトリガー部材と,前記キャップに連結され,前記エアゾール容器を傾けて保持するためのグリップ部とを備え,前記第1レバーと第2レバーが両端支持部によって連結され,前記第2レバーの後端部の背面には突起形状のストッパーが設けられたエアゾール容器。」

そして,両者は下記の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は,「マウンティングカップに装着さるバルブが肩部を介して開口部にかしめつけられ」ているのに対し,引用発明1は,具体的なバルブの取付け手段が明示されていない点。
(相違点2)
本願補正発明は,「バルブのハウジングに装着されるディップチューブが先端の重錘で伸縮,湾曲自在な蛇腹形状もしくはスパイラル形状を呈しているか,または先端の重錘で動き得る柔軟性を備えた材質で作製され,前記バルブのハウジングに装着されるチューブが蛇腹形状またはスパイラル形状を呈しており,かつ該チューブの先端部に重錘が取り付けられている」のに対し,引用発明1は,そのような構成を備えているか明らかでない点。
(相違点3)
本願補正発明は,「ステムとハウジングのアンダータップの径を大きくし,ハウジングにベーパータップを形成されていない」のに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
一般に,エアゾール容器において,マウンティングカップに装着されたバルブを肩部を介して開口部に取り付けていることも周知の技術的手段である。 例えば,周知例として特開平9-290879号公報(特に,段落0008の記載,図面第1図等参照),特開2001-19067号公報(図面第1図等参照)があげられる。また,かしめによって装着することも技術常識である。
してみると,引用発明1のバルブを取付ける手段に関して,周知の技術的手段を適用して,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
エアゾール容器において,バルブのハウジング側端部に,蛇腹形状またはスパイラル形状で,先端に重錘が付けられているチューブを装着することは,引用例3(上記3-1.ij参照)及び引用例4(上記3-1.k.l.)に開示されている。
そこで,引用発明1に,引用例3,4に記載の技術的手段を適用して,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用例2には,エアゾール容器において,噴射力を高くする手段の一つとして,ステムとハウジングのアンダータップの径を大きくし,ハウジングにベーパータップを形成しないことが開示されている。
当該技術手段を,同じ分野であるエアゾール容器に適用することに,格別の困難性は認められないから,引用発明1に上述した引用例2記載の技術的手段を適用して,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本願補正発明による効果も,引用発明1?4に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。
したがって,本願補正発明は,引用発明1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下され,原審において平成19年3月16日付手続補正も却下されているので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を,「本願発明」という)は,平成18年12月15日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「バルブが装着されているエアゾール容器と,該エアゾール容器の頂部に嵌着されるキャップと,前記バルブのステムに嵌め込まれるノズルと,該ノズルを軸方向に押圧するトリガー部材と,前記キャップに連結され,前記エアゾール容器を傾けて保持するためのグリップ部とを備えるエアゾール製品であって,前記バルブのハウジングに装着されるディップチューブが先端の重錘で伸縮,湾曲自在な蛇腹形状もしくはスパイラル形状を呈しているか,または先端の重錘で動き得る柔軟性を備えた材質で作製されてなるエアゾール製品であって,前記バルブのハウジングに装着されるチューブが蛇腹形状またはスパイラル形状を呈しており,かつ該チューブの先端部に重錘が取り付けられているエアゾール製品であって,前記ステムと前記ハウジングのアンダータップの径を大きくし,前記ハウジングにベーパータップが形成されていないエアゾール製品。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は,前記II.1の本願補正発明から,「バルブ」の限定事項である「マウンティングカップに装着さるバルブが肩部を介して開口部にかしめつけられた」との構成を省き,且つ,「トリガー部材」の限定事項である「互いに回動可能に連結された第1レバーと第2レバーとからなり,前記キャップ内に収納される」との構成と,「前記第1レバーと第2レバーが両端支持部によって連結され,前記第2レバーの後端部の背面には突起形状のストッパーが設けられ」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに,他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記II.3-3に記載したとおり,引用発明1,引用例2?4に記載された技術手段及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に,引用発明1,引用例2?4に記載された技術手段及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1,引用例2?4に記載された技術手段及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-01 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願2001-392034(P2001-392034)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 537- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 熊倉 強
栗林 敏彦
発明の名称 エアゾール製品の使用法および該使用法を用いるエアゾール製品  
代理人 朝日奈 宗太  

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