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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1188916
審判番号 不服2006-19311  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2001-334884「男性機能補助リング」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月13日出願公開、特開2003-135501〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年10月31日の出願であって、平成18年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月29日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「男性器を弾性的に絞扼する挿入孔を形成してなるリング本体の側面に前記挿入孔の中心軸方向に沿って突出する突状部を一体的に設けると共に、該突状部に設けた着脱口を介して小型バイブレーターを着脱自在に内蔵する空洞部を上記突状部に形成してなり、前記小型バイブレーターの振動は突状部およびリング本体を介して男性器に伝達され、適度な刺激を男性器に与えるようにしたことを特徴とする男性機能補助リング。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「小型バイブレーターを着脱自在に内蔵する」に、(突状部に)「設けた着脱口を介して」との限定を付加し、同様に「形成してなり、」に、「上記突状部に」との限定を付加し、「男性機能補助リング」に、「適度な刺激を男性器に与えるようにした」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、登録実用新案第3060674号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「本考案はこのような従来の事情に鑑みて提案されたもので、・・・男女双方とも刺激を楽しむことのできる局部刺激用玩具を提供しようとするものである。」(【0004】段落)
(イ)「・・・Aはゴム,シリコンゴム等の軟質弾性材よりなる本案玩具であって、膨腹体1の下部に、内径をペニスよりも小径とした環状部2を連設している。この膨腹体1と環状部2の表面には細形突起群3,3aをブラシ状に突設し、また膨腹体1の裏面中央に膨隆部4を形成するとともにその上部にやゝ間隔をおいて開口部5、開口部5に蓋体6を取り付けている。そして膨腹体1はバイブユニット6を内蔵しており、・・・」(【0006】段落)
(ウ)「・・・かくしてバイブユニット7が振動すると膨腹体1の全体が振動し、なおかる環状部2にもその振動が伝わる。」(【0008】段落)
(エ)「上記の玩具Aを使用するには、突起群3,3aを前方に向けた状態で環状部2を男性の局部(ペニス)に嵌合固定する。・・・而して環状部2の内径はペニス径よりも小さくしてあり、取り付ける際に拡開するので取り付け後は適度の締め付け作用を発揮し、男性にとってもプレイ持続に有効となる。」(【0009】段落)
(オ)「乾電池11の交換をする場合は、蓋体6をはずして開口部5からバイブユニット7を取り出し、消耗した乾電池11を本体8から取り外し、新しい乾電池を取り付ければよく、取り付け後は開口部5から膨腹体1内にバイブユニット7を収納し、蓋体6で再び開口部5を塞ぐようにする。」(【0011】段落)
(カ)図1及び図2には、環状部2の中心部には孔が形成されているとともに、環状部2と膨腹部1とは一体的に形成されている点、膨腹体1は主として孔の径方向に突出している点が図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「男性の局部に嵌合固定する孔を形成した環状部2に膨腹体1を連設し、膨腹体1に設けた開口部5からバイブユニット7を取り出し、また膨腹体1内に収納し、バイブユニット7が振動すると膨腹体1の全体が振動し、環状部にもその振動が伝わり、男女双方とも刺激を楽しむことのできる局部刺激用玩具。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「男性の局部」は、本願補正発明の「男性器」に相当し、以下同様に、「嵌合固定する孔」は「絞扼する挿入孔」に、「環状部2」は「リング本体」に、「膨腹体1」は「突状部」に、「開口部5」は「着脱口」に、「バイブユニット7」は「小型バイブレーター」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の玩具は軟質弾性材よりなるものであるから、嵌合固定する場合弾性的に嵌合固定することになる。
また、引用発明において「環状部2に膨腹体1を連設し」ていることは、上記記載事項(カ)をも参酌すれば、環状部2の側面に膨腹体1を一体的に設けること、すなわち本願補正発明の「リング本体の側面に突状部を一体的に設ける」ことに相当している。
また、引用発明において「開口部5からバイブユニット7を取り出し、また膨腹体1内に収納」することは、本願発明の「着脱口を介して小型バイブレーターを着脱自在」とすることに相当し、さらに「膨腹体1内に収納」することから、膨腹体1内には空洞部が形成されていることは自明のことである。
そして引用発明において「バイブユニット7が振動すると膨腹体1の全体が振動し、環状部にもその振動が伝わ」るということは、バイブユニット7の振動は膨腹体1から環状部2を経由して、男性の局部に伝達されることになる。
また、引用発明も男女双方とも刺激を楽しむことのできるものである以上、適度な刺激を男性器に与えるようにしたものと言うことができる。
さらに、引用発明の局部刺激用玩具も上記記載事項(エ)の記載等からみて、男性機能を補助する作用を行うと言えるから、男性機能補助リングに相当する。
そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「男性器を弾性的に絞扼する挿入孔を形成してなるリング本体の側面に突状部を一体的に設けると共に、該突状部に設けた着脱口を介して小型バイブレーターを着脱自在に内蔵する空洞部を上記突状部に形成してなり、前記小型バイブレーターの振動はリング本体を介して男性器に伝達され、適度な刺激を男性器に与えるようにした男性機能補助リング。」

そして、両者は次の相違点1及び2で相違する(対応する引用例記載の用語を( )内に示す)。
(相違点1)
本願補正発明では突状部が「挿入孔の中心軸方向に沿って」突出するのに対し、引用発明では突状部(膨腹体1)の主たる突出方向は挿入孔(孔)の径方向である点。

(相違点2)
本願補正発明では小型バイブレーターの振動は「突状部およびリング本体を介して」男性器に伝達されるのに対し、引用発明では小型バイブレーター(バイブユニット7)の振動は突状部(膨腹体1)からリング本体(環状部2)を経由して男性器に伝達される点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例の図2からみて、膨腹体1の厚さはリング本体の厚さよりも厚く、孔の中心軸方向でみても両側に突出している。よって引用発明の突状部は挿入孔の径方向に突出しているのみならず、挿入孔の中心軸方向に沿ってみても突出するものと言うことができるので、相違点1は実質的な相違点ではない。

(相違点2について)
本願補正発明における「突状部およびリング本体を介して」の意味するところを解釈すれば、「突状部」と「リング本体」とが直列的な経由関係にある場合と並列的な経由関係にある場合との両方がありうるが、前者の場合は引用発明と差異がないことになる。
本願の図面を参酌して本願補正発明においては後者を意味するとしてさらに検討すると、引用例の図1及び図2からみて引用発明の突状部と隣接する部分のリング本体の径方向の幅は小さく、挿入孔に男性器が挿入された場合男性器と突状部とは非常に近接することになる。そうすると、引用発明において突状部と隣接する部分のリング本体の径方向の幅をさらに小さくし、突状部自体が挿入孔の一部となるように構成して、リング本体を経由するのみならず、突状部から直接にも男性器に振動を伝達するようにすることも、当業者が適宜なし得る設計的事項ということができる。
したがって、引用発明に基づいて相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

なお、本願補正発明と引用発明との相違点に関して請求人は、審尋に対する平成20年7月7日付け回答書において、概略以下のように主張している。
(1)本願発明は男性機能が低下した男性を対象とするのに対し、引用発明は女性を対象とするものであって、全く異なった創作観点に基づくものである。(2)本願発明では突状部がリング本体の中心軸方向に突設しているため、突状部の長手方向側面が男性器に沿うように密接して振動が伝達されるが、引用発明では膨腹体の振動が直接男性器に伝達されない。(3)本願発明と引用発明とはバイブレータのスイッチ操作やバイブレータの内蔵をキャンセルして使用できる点が異なる。
しかしながら、(1)については、引用発明は適度な刺激を男性器に与えるようにしたものと言うことができることは上記したとおりであって、結果として引用発明も男性機能が低下した男性を対象とし得るものであるから、例え創作観点が異なっているとしてもそのことは容易想到性を否定する根拠とはならない。(2)については、突状部がリング本体の中心軸方向に突設している発明特定事項と、突状部が男性器に密接する作用とは直接の因果関係はなく、むしろ相違点2において指摘したとおり「突状部およびリング本体を介して」の発明特定事項から生じるものと認められるが、該事項も引用発明から容易に想到できることは上記したとおりである。(3)については、本願補正発明はバイブレータのスイッチ操作やバイブレータの内蔵をキャンセルする点を発明特定事項としていない(バイブレータが着脱自在であることからキャンセルできるとするならば引用発明も同様である。)から、これらの点は引用発明との相違点とはならない。
以上の点から、請求人の主張はいずれも採用できない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成18年2月16日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「男性器を弾性的に絞扼する挿入孔を形成してなるリング本体の側面に前記挿入孔の中心軸方向に沿って突出する突状部を一体的に設けると共に、該突状部に小型バイブレーターを着脱自在に内蔵する空洞部を形成してなり、前記小型バイブレーターの振動は突状部およびリング本体を介して男性器に伝達されることを特徴とする男性機能補助リング。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「小型バイブレーターを着脱自在に内蔵する」の限定事項である「設けた着脱口を介して」、及び「形成してなり、」の限定事項である「上記突状部に」、並びに「男性機能補助リング」の限定事項である「適度な刺激を男性器に与えるようにした」、を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2001-334884(P2001-334884)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 蓮井 雅之
八木 誠
発明の名称 男性機能補助リング  
代理人 濱田 俊明  

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