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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1188921
審判番号 不服2007-6255  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2004-143649「制御器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-325893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年5月13日の出願であって、平成19年1月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月29日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成19年3月29日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「本体上部に固定されるケーシングと、ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する弁棒と、ケーシング内に上下動自在に設けられた作動軸と、作動軸にかかる力を弁棒に増幅して伝達する動力伝達手段と、作動軸を下向きに付勢する付勢手段と、作動軸に設けられたピストンとこの下側に配された仕切りプレートとの間に形成され操作ガスが導入されることによって作動軸を上方に移動させる圧力室とを備えている制御器において、
弁棒をゆっくりと上方に移動させるためのスロースタート手段をさらに備えており、スロースタート手段は、ケーシングの内径よりも小さい外径とされて作動軸に対して上下移動可能とされたピストンと、作動軸の上部に設けられたばね受けとピストンとの間に配置されてピストンの上下移動量に応じた弾性力をばね受けおよびピストンに作用させる調圧ばねと、ピストンの外周縁部とケーシングとの間に設けられて圧力室とピストンの上側の空間とを仕切るダイアフラムと、仕切りプレート下方に設けられた操作ガス導入室と、仕切りプレートに形成されかつ圧力室と操作ガス導入室とを連通する常時開放連通路と、常時開放連通路に導入される操作ガスの流量を調整する流量調整弁と、仕切りプレートに形成されかつ圧力室と操作ガス導入室とを連通する補助連通路と、補助連通路に設けられてピストンが最下位位置にあるときに同連通路を開放しこの位置から所定距離上昇した補助連通路遮断位置に達したときに同連通路を閉鎖する開閉弁とを有しており、
作動軸の上端部の外周におねじ部が一体に形成され、ばね受けの内周にこれにねじ合わされるめねじ部が設けられ、ばね受けは、作動軸にねじ合わされるとともに、ケーシングに回転不可能にかつ上下移動可能に支持され、作動軸を回転させることで、ばね受けが上下し、調圧ばねの弾性力が調整可能とされていることを特徴とする制御器。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「おねじ部」について、作動軸の上端部「の外周」に「一体に形成され」るとの限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-19369号公報(以下「引用文献1」という。)には、「緩作動開閉弁」と題し、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゆっくりした開閉動作が得られる緩作動開閉弁に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】例えば反応室である種の気体を混合する際には、混合すべき気体をできるだけゆっくりと反応室に供給することが要求されることがある。本出願人は、このような要求に答えるため、開弁動作自体はゆっくりでありながら、開弁信号を与えてから開弁動作に至る応答性に優れた緩作動開閉弁を案出した(特開平3-134387号参照)。」
・「【0005】
【発明の概要】上記目的を達成する本発明は、弁座に対して接離して流路を開閉する弁体を有するバルブロッド;このバルブロッドを接続したダイアフラム;このダイアフラムにより画成された、該ダイアフラムに開弁圧力を及ぼす開弁圧力室;該ダイアフラムを挟んで上記開弁圧力室と反対側に位置し、この開弁圧力室の開弁圧力に抗する付勢力を上記バルブロッドに対して及ぼす付勢手段;このバルブロッドに対して及ぼされる上記付勢手段の付勢力を調節する調圧手段;上記開弁圧力室に連通するパイロット圧通路;このパイロット圧通路に設けた流量制御弁;上記開弁圧力室とパイロット圧力源とを連通させる、上記パイロット圧通路とは別の予圧通路;この予圧通路に設けた、常時閉弁方向に付勢された予圧開閉弁;および、上記バルブロッドが閉弁位置にあるときこの予圧開閉弁をその付勢力に抗して開く予圧開閉弁作動部材を備えたことを特徴としている。」
・「【0007】
【実施例】以下図示実施例に基づいて本発明を説明する。図1は本発明による緩作動開閉弁の全体構造を示す断面図、図2は図1の要部を拡大して示す断面図、および図3は同一の開閉弁の別の断面を示す一部断面図である。
【0008】図1の下方に示されるバルブボディ11には、流体通路12が設けられ、その一部に、環状弁座13が形成されている。環状弁座13に、バルブロッド14の下端に設けた弁体15が接離し、よって流体通路12が開閉される。
【0009】バルブロッド14は、スぺーサ16およびコネクタスリーブ17を貫通して、図1の上方に突出している。バルブロッド14の下部とスぺーサ16の間には、蛇腹18が張設されていて、流体通路12を流れる流体が、バルブロッド14の軸部に達しないようにされている。すなわちこの開閉弁は、流体通路12を流れる流体のクリーン度を蛇腹18によって保証するクリーンバルブである。コネクタスリーブ17内には、ワッシャ19を介してバルブロッド14を閉弁方向に移動付勢する圧縮ばね20が挿入されている。21は、コネクタスリーブ17をバルブボディ11に固定する袋ナットである。以上の要素は、予めクリーンルーム内で組み立てられ、ユニット化される。
【0010】コネクタスリーブ17の外周には、シリンダ22が嵌められ、これがワッシャ23aおよびストップリング23bを介して、該コネクタスリーブ17に固定されている。
【0011】バルブロッド14のコネクタスリーブ17からの突出部には、ダイアフラム組立体27が摺動可能に、かつ弁体15側に移動付勢されて設けられている。このダイアフラム組立体27は、ローリングダイアフラム24と、このローリングダイアフラム24の中心部を挟着したメインブロック25とリテーナ26を有している。図2に示されるように、メインブロック25の中心にはバルブロッド14を貫通させるボス部25bが形成され、このボス部25bの周囲に、圧縮ばね30の一端部を当接させる凹部25aが形成されている。ボス部25bとバルブロッド14との間には、Oリング52が介在されている。またボス部25bの下面には、バルブロッド14の拡径段部14aを係合させる縮径段部25cが形成されていて、これによりダイアフラム組立体27はその下方移動時の移動端を規制されている。
【0012】バルブロッド14の上部には、メインブロック25の上方において調圧ねじ部材53が嵌合されている。この調圧ねじ部材53は、その外周に雄ねじ部53aを有し、メインブロック25のボス部25bに嵌合すべき嵌合突起部53bを有している。バルブロッド14の先端には、ワッシャプレート55が嵌められ、さらにストップリング54が固定されている。
【0013】調圧ねじ部材53の外周の雄ねじ部53aには、ばね受部材58の中心に形成した雌ねじ部58dが螺合している。ばね受部材58の外周部の一部には、回転止め部材57を挿入させる挿入孔58aが形成されている。シリンダ22の上部には、ロックリング32を介してボンネット31が嵌合されており、このボンネット31の内周一部の上下方向に形成した直進案内溝31aに、上記回転止め部材57が摺動自在に嵌まっている。また調圧ねじ部材53の上部には、図4に示すように、平面視矩形状の調圧回転部53cが形成されている。
【0014】ばね受部材58とメインブロック25の間には、ローリングダイアフラム24を挟んで開弁圧力室33と反対側に位置し、この開弁圧力室33の開弁圧力に抗する付勢力を、ダイアフラム組立体27を介してバルブロッド14に及ぼす圧縮ばね(付勢手段)30が縮設されている。この圧縮ばね30はその他端部を、ばね受部材58のばね受部58bの下面に当接させている。ばね受部材58は、ばね受部58bの上部に止めねじ孔58eを有しており、この止めねじ孔58eに螺合させた止めねじ59をねじ込んでばね受部58bを押圧することにより、ばね受部材58の調圧ねじ部材53に対する相対移動を規制することができる。上記バルブロッド14にこのロッド14に対する相対回転のみ可能に設けられた調圧ねじ部材53と、このバルブロッド14の回転時に該調圧ねじ部材53に対して相対移動されるばね受部材58により、バルブロッド14に対して及ぼされる圧縮ばね30の付勢力を調節する調圧手段が構成されている。」
「【0017】シリンダ22には、開弁圧力室33と連通するパイロット圧通路36が形成されている。このパイロット圧通路36は、符号36aで示す通路によりまず予圧開閉弁室38に連通し、次に予圧開閉弁45に穿けた連通孔45a、別の通路36bを介してニードル弁40に連通し、さらに通路36cを介して開弁圧力室33に連通している。
【0018】ニードル弁40は、パイロット圧通路36内に臨むニードル41aを有する雄ねじ体41をシリンダ22に螺合させたもので、その螺合位置を調節することにより、ニードル41aによる流路絞量を大小に変化させる。
【0019】予圧開閉弁室38は、図2に拡大して示すように、予圧通路43を介して、開弁圧力室33に連通しており、この開弁圧力室33には予圧開閉弁45が設けられている。この予圧開閉弁45は圧縮ばね46によってそのOリング47が開弁圧力室33の下面に着座する方向、つまり閉弁方向に付勢されており、従って、予圧開閉弁45に外力が加わらない状態では、予圧通路43は閉じる。またこの予圧開閉弁45は、その上端が開弁圧力室33内に延びていて、圧縮ばね20の力によりバルブロッド14が閉弁位置にあるとき、ダイアフラム組立体27のリテーナ26によってその頭部を押圧されて変位する。すなわち圧縮ばね30のばね力は、圧縮ばね46のばね力より強く、圧縮ばね20のばね力によりバルブロッド14が同図の閉弁位置にあるときには、予圧開閉弁45がリテーナ26により押圧されて圧縮ばね46の力に抗して変位し、予圧通路43が開く。つまりリテーナ26は、予圧開閉弁作動部材である。」
「【0024】よって、パイロット圧源Pからのパイロット圧の供給を継続すると、この後は、ニードル弁40の開度に応じた速度で、バルブロッド14が一体に上昇して、流体通路12を開く。この開弁の速度は、ニードル弁40の開度の調整によって自由に設定できるから、特にゆっくりと開弁することができる。すなわち、切換弁50のポート50aを流路に接続してから、流体通路12が開き始める迄の時間を短縮して応答性を高めることができ、しかも開き始めてからの開弁速度はゆっくりしたものとすることができる。」

また、図1によれば、バルブボディ11の上部に固定されたシリンダ22に下方突出状に配置されてシリンダ11内を往復上下動するバルブロッド14が示されていると共に、バルブロッド14の上部にばね受部材58が設けられていることが示されている。
そして、図1及び【0014】の記載によれば、メインブロック25はボンネット31の内径よりも小さい外径とされてバルブロッド14に対して上下移動可能とされ、メインブロック25の外周縁部とシリンダ22との間に設けられて開弁圧力室33とメインブロック25の上側の空間とを仕切るローリングダイアフラム24が設けられた構成が示されているものと認められる。
さらに、図1及び【0019】の記載によれば、予圧開閉弁45は、ダイアフラム組立体27のリテーナ26によってその頭部を押圧されて変位するものであるから、メインブロック25が最下位位置にあるときに予圧通路43を開放しこの位置から所定距離上昇した予圧通路閉位置に達したときに予圧通路を閉じる予圧開閉弁であるといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「バルブボディ11上部に固定されるシリンダ22と、シリンダ22に下方突出状に配置されて往復上下動するバルブロッド14であって、シリンダ22内に上下動自在に設けられたバルブロッド14と、バルブロッド14を閉弁方向に移動付勢する圧縮ばね20と、バルブロッド14に設けられたメインブロック25とこの下側に形成されパイロット圧が導かれるとバルブロッド14を上昇させる開弁圧力室33とを備えている緩作動開閉弁において、
バルブロッド14をゆっくりと上方に移動させるための手段をさらに備えており、該手段は、シリンダ22の内径よりも小さい外径とされてバルブロッド14に対して上下移動可能とされたメインブロック25と、バルブロッド14の上部に設けられたばね受部材58とメインブロック25との間に配置されて開弁圧力室33の開弁圧力に抗する付勢力をバルブロッド14に及ぼす圧縮ばね(付勢手段)30と、メインブロック25の外周縁部とシリンダ22との間に設けられて開弁圧力室33とメインブロック25の上側の空間とを仕切るローリングダイアフラム24と、パイロット圧通路36と、開弁圧力室33とパイロット圧通路36とを連通する通路36cと、通路36cに導入されるパイロット圧による開弁の速度を設定するニードル弁40と、開弁圧力室33とパイロット圧通路36とを連通する予圧通路43と、予圧通路43に設けられてメインブロック25が最下位位置にあるときに予圧通路43を開放しこの位置から所定距離上昇した予圧通路閉位置に達したときに予圧通路43を閉じる予圧開閉弁45とを有しており、
バルブロッド14の上部に調圧ねじ部材53が嵌合され、この調圧ねじ部材53の外周におねじ部53aを有し、ばね受け部材58の内周にこれにねじ合わされるめねじ部58dが設けられ、ばね受け部材58は、調圧ねじ部材53にねじ合わされるとともに、ボンネット31に回転不可能にかつ上下移動可能に支持され、調圧ねじ部材53を回転させることで、ばね受け部材58が上下し、圧縮ばね(付勢手段)30の弾性力が調整可能とされている制御器。」
(2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特許第3338972号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、制御器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、制御器としては、弁棒をばねにより下向きに付勢して弁を閉じ、空気圧やソレノイド等によりばね力より大きい力で弁棒を上向きに駆動して弁を開くものや、弁棒をばねにより上向きに付勢して弁を開き、空気圧やソレノイド等によりばね力より大きい力で弁棒を下向きに付勢して弁を閉じるものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の制御器を高圧流体用として使用する場合、流体の洩れを防止するために弁を閉じる力を大きくする必要があるが、弁棒をばねにより下向きに付勢して弁を閉じ、空気圧やソレノイド等により弁棒を上向きに駆動して弁を開くものでは、ばねの弾性力を大きくすると、これに伴って弁棒を動かすための空気圧等の駆動力を上げなければならず、駆動力を上げるには限界があるため、弁を閉じる力を必要に応じた分だけ大きくすることができないという問題があった。弁棒をばねにより上向きに付勢して弁を開き、空気圧やソレノイド等によりばね力より大きい力で弁棒を下向きに付勢して弁を閉じるものでも、弁を閉じる力を大きくするためには、空気圧等の下向き付勢力を上げなければならず、同様の問題がある。
【0004】この発明の目的は、空気圧、ばねの弾性力、ソレノイド等の駆動力を上げることなく弁を閉じる力を必要に応じて大きくすることができ、したがって高圧流体を使用する場合でも流体の洩れが確実に防止できる制御器を提供することにある。」
・「【0009】ローラ支持体(43)の揺動中心軸と転動ローラ(46)の軸線との間の距離をC、ローラ支持体(43)の揺動中心軸と転動ローラ(46)の軸線とを結ぶ線が第1ローラ受け部材(26)のテーパ面(26a) となす角をγ、ローラ支持体(43)の揺動中心軸と押えローラ(45)の軸線との水平距離をδ、一方の押えローラ(45)がローラ受け部材(19)を押す下向きの力をNとすると、N×δ=G×Cos γ×Cが成り立つ。したがって、両方の押えローラ(45)がローラ受け部材(19)を押す下向きの力、すなわち弁棒(2) を押す下向きの力は、2N=F×Cos γ×C÷Sin α÷δとなり、α、γ、δおよびCを適当な値とすることにより、任意の増幅率により作動軸(21)にかかる力を弁棒(2) に増幅して伝達することができる。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「バルブボディ11」はその機能・作用からみて、前者の「本体」に相当し、同様に「シリンダ22」は「ケーシング」に相当する。
また、後者の「バルブロッド14」の上部はシリンダ22内を上下動自在に設けられているので前者の「作動軸」に相当し、同様にその下部はシリンダ22から下方に突出して往復上下動するので前者の「弁棒」に相当するということができる。そうすると、後者の「シリンダ22に下方突出状に配置されて往復上下動するバルブロッド14であって、シリンダ22内に上下動自在に設けられたバルブロッド14」は、前者の「ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する弁棒と、ケーシング内に上下動自在に設けられた作動軸」に相当する。
以下同様に、後者の「バルブロッド14」をその機能から前者の「作動軸」又は「弁棒」のいずれかに置き換えると、後者の「閉弁方向」は前者の「下向き」に相当し、以下同様に「移動付勢」は「付勢」に、「圧縮ばね20」は「付勢手段」に、それぞれ相当するので、後者の「バルブロッド14を閉弁方向に移動付勢する圧縮ばね20」は前者の「作動軸を下向きに付勢する付勢手段」に相当し、以下同様に「バルブロッド14に設けられたメインブロック25」は「作動軸に設けられたピストン」に、「パイロット圧が導かれるとバルブロッド14を上昇させる」は「操作ガスが導入されることによって作動軸を上方に移動させる」に、「開弁圧力室33」は「圧力室」に、「緩作動開閉弁」は「制御器」に、「バルブロッド14をゆっくりと上方に移動させるための手段」は「弁棒をゆっくりと上方に移動させるためのスロースタート手段」に、「バルブロッド14に対して上下移動可能とされたメインブロック25」は「作動軸に対して上下移動可能とされたピストン」に、「バルブロッド14の上部に設けられたばね受部材58」は「作動軸の上部に設けられたばね受け」に、それぞれ相当する。
また、後者において、「開弁圧力室33の開弁圧力」はメインブロック25と圧縮ばね(付勢手段)30とばね受部材58と調圧ねじ部材53を介してバルブロッド14をゆっくりと上方へ移動させるためのものであるから、後者の「開弁圧力室33の開弁圧力に抗する付勢力をバルブロッド14に及ぼす圧縮ばね(付勢手段)30」は前者の「ピストンの上下移動量に応じた弾性力をばね受けおよびピストンに作用させる調圧ばね」に相当するものといえる。
そして、後者の「ローリングダイアフラム24」は前者の「ダイアフラム」に相当し、以下同様に「パイロット圧通路36」は「操作ガス導入室」に、「通路36c」は「常時開放連通路」に、「パイロット圧による開弁の速度を設定するニードル弁40」は「操作ガスの流量を調整する流量調整弁」に、「予圧通路43」は「補助連通路」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「バルブロッド14の上部に調圧ねじ部材53が嵌合され、この調圧ねじ部材53の外周におねじ部53aを有し」と、前者の「作動軸の上端部の外周におねじ部が一体に形成され」とは、「作動軸の上端部におねじ部が配置され」との概念で共通している。
また、後者のバルブロッド14が閉弁位置にあるときにはメインブロック25も最下位位置にあるから後者の「バルブロッド14が閉弁位置にあるとき」は前者の「ピストンが最下位位置にあるとき」に相当するので、後者の「予圧通路43に設けられてメインブロック25が最下位位置にあるときに予圧通路43を開放しこの位置から所定距離上昇した予圧通路閉位置に達したときに予圧通路43を閉じる予圧開閉弁45」は前者の「補助連通路に設けられてピストンが最下位位置にあるときに同連通路を開放しこの位置から所定距離上昇した補助連通路遮断位置に達したときに同連通路を閉鎖する開閉弁」に相当する。
さらに、後者の「バルブロッド14の上部に調圧ねじ部材53が嵌合され、この調圧ねじ部材53の外周におねじ部53aを有し」と前者の「作動軸の上端部の外周におねじ部が一体に形成され」とは「作動軸の上端部におねじ部が配置され」との概念で一致し、後者の「調圧ねじ部材53にねじ合わされるとともに、……調圧ねじ部材53を回転させる」と前者の「作動軸にねじ合わされるとともに、……作動軸を回転させる」とは、「おねじ部を回転させる」との概念で共通する。
そして、本件補正発明では、ばね受けを回転可能にかつ上下移動可能に支持している部分であって明細書中で「ケーシングキャップ」と称する部分も「ケーシング」と称していることから、後者の、ばね受け部材58を回転不可能にかつ上下移動可能に支持している「ボンネット31」は前者の「ケーシング」に相当するといえる。
したがって両者は、
[一致点]
「本体上部に固定されるケーシングと、ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する弁棒と、ケーシング内に上下動自在に設けられた作動軸と、作動軸を下向きに付勢する付勢手段と、作動軸に設けられたピストンとこの下側に形成され操作ガスが導入されることによって作動軸を上方に移動させる圧力室とを備えている制御器において、
弁棒をゆっくりと上方に移動させるためのスロースタート手段をさらに備えており、スロースタート手段は、ケーシングの内径よりも小さい外径とされて作動軸に対して上下移動可能とされたピストンと、作動軸の上部に設けられたばね受けとピストンとの間に配置されてピストンの上下移動量に応じた弾性力をばね受けおよびピストンに作用させる調圧ばねと、ピストンの外周縁部とケーシングとの間に設けられて圧力室とピストンの上側の空間とを仕切るダイアフラムと、操作ガス導入室と、圧力室と操作ガス導入室とを連通する常時開放連通路と、常時開放連通路に導入される操作ガスの流量を調整する流量調整弁と、圧力室と操作ガス導入室とを連通する補助連通路と、補助連通路に設けられてピストンが最下位位置にあるときに同連通路を開放しこの位置から所定距離上昇した補助連通路遮断位置に達したときに同連通路を閉鎖する開閉弁とを有しており、
作動軸の上端部におねじ部が配置され、ばね受けの内周にこれにねじ合わされるめねじ部が設けられ、ばね受けは、ケーシングに回転不可能にかつ上下移動可能に支持され、おねじ部を回転させることで、ばね受けが上下し、調圧ばねの弾性力が調整可能とされている制御器。」である点で一致し、
[相違点]
(イ)「作動軸」と「弁棒」に関して、本件補正発明では、ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する「弁棒」と、ケーシング内に上下動自在に設けられた「作動軸」とからなるものであり、「作動軸にかかる力を弁棒に増幅して伝達する動力伝達手段」を有するのに対して、引用発明では、ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する「バルブロッド14であって」、ケーシング内に上下動自在に設けられた一体の「バルブロッド14」からなるものであり、「作動軸にかかる力を弁棒に増幅して伝達する動力伝達手段」を有していない点、
(ロ)本件補正発明では、圧力室がピストンと「この下側に配された仕切りプレート」との間に形成されるとともに、操作ガス室が「仕切プレート下方に設けられ」、常時開放連通路及び補助連通路が「仕切りプレートに形成され」るものとしているのに対し、引用発明ではこのような「仕切りプレート」を有していない点、及び
(ハ)「作動軸の上端部におねじ部が配置され」た構成に関し、前者では「作動軸の上端部の外周におねじ部が一体に形成され」た構成であるのに対し、後者では「バルブロッド14の上部に調圧ねじ部材53が嵌合され、この調圧ねじ部材53の外周におねじ部53aを有し」た構成である点、
(ニ)「おねじ部を回転させることで」ばね受けが上下する構成に関し、前者では「ばね受けは、作動軸にねじ合わされるとともに、……作動軸を回転させる」ものであるのに対し、後者では「ばね受け部材58は、調圧ねじ部材53にねじ合わされるとともに、……調圧ねじ部材53を回転させる」ものである点で相違している。

(4)相違点に対する判断
相違点(イ)、(ハ)及び(ニ)について
弁の制御器において、流体の洩れを防止するために、作動軸にかかる力を弁棒に増幅して伝達する動力伝達手段を作動軸と弁棒との間に設けて弁を閉じる力を大きくした発明が引用文献2に記載されている。
流体の洩れを防止することは、弁に共通の課題といえるから、引用発明においても流体の洩れを防止するために引用文献2に記載された発明における弁を閉じる力を大きくする動力伝達手段を採用することで相違点(イ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
また、調圧ばねの弾性力を調整するために作動軸の外周におねじ部を一体に設け、該おねじ部を回転させることでばね受けを上下させる構成は周知技術(例.特開昭61-55482号公報、第1図には、調整ねじ軸71の外周におねじが一体に形成され、ばね受けに相当するブッシュ79の内周にこれにねじ合わされるめねじ部が設けられた調圧ばねの弾性力を調整可能とした構成が記載されている。)であるから、引用発明において、ばね受けを上下させる構成に上記周知技術を採用して、調圧ねじ部材に換えて、作動軸の外周に一体におねじ部を設けることで相違点(ハ)及び(ニ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が適宜設計し得る事項と認められる。

相違点(ロ)について
本願明細書の【0002】、【0005】、【0013】、【0016】、及び【0019】の記載によれば、「仕切りプレート」はピストンの下側にあって常時開放連通路と補助連通路と開閉弁を有し、操作ガスが導入される圧力室を形成するためのものであると認められる。
しかしながら、これらの機能はいずれも引用発明のシリンダの、ピストンに対向する面が備えている機能である。
そして、本願明細書を見てもこれらの機能を、引用発明のシリンダに相当するケーシングから分離して仕切プレートにもたせたことにより新たな効果を奏するものとは認められず、ケーシングに、常時開放連通路と補助連通路と開閉弁を設けると共に、操作ガスが導入される圧力室を形成する機能を持たせたものと等価であるといわざるを得ない。
したがって、引用発明においてシリンダに、常時開放連通路と補助連通路と開閉弁を設けると共に、操作ガスが導入される圧力室を形成する機能を持たせたものに替えて、ピストンに対向する面に上記構成と機能を有する「仕切りプレート」を設けて、相違点(ロ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が任意に設計し得る事項と認めざるを得ない。

また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年9月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「本体上部に固定されるケーシングと、ケーシングに下方突出状に配置されて往復上下動する弁棒と、ケーシング内に上下動自在に設けられた作動軸と、作動軸にかかる力を弁棒に増幅して伝達する動力伝達手段と、作動軸を下向きに付勢する付勢手段と、作動軸に設けられたピストンとこの下側に配された仕切りプレートとの間に形成され操作ガスが導入されることによって作動軸を上方に移動させる圧力室とを備えている制御器において、
弁棒をゆっくりと上方に移動させるためのスロースタート手段をさらに備えており、スロースタート手段は、ケーシングの内径よりも小さい外径とされて作動軸に対して上下移動可能とされたピストンと、作動軸の上部に設けられたばね受けとピストンとの間に配置されてピストンの上下移動量に応じた弾性力をばね受けおよびピストンに作用させる調圧ばねと、ピストンの外周縁部とケーシングとの間に設けられて圧力室とピストンの上側の空間とを仕切るダイアフラムと、仕切りプレート下方に設けられた操作ガス導入室と、仕切りプレートに形成されかつ圧力室と操作ガス導入室とを連通する常時開放連通路と、常時開放連通路に導入される操作ガスの流量を調整する流量調整弁と、仕切りプレートに形成されかつ圧力室と操作ガス導入室とを連通する補助連通路と、補助連通路に設けられてピストンが最下位位置にあるときに同連通路を開放しこの位置から所定距離上昇した補助連通路遮断位置に達したときに同連通路を閉鎖する開閉弁とを有しており、
作動軸の上端部におねじ部が設けられ、ばね受けの内周にこれにねじ合わされるめねじ部が設けられ、ばね受けは、作動軸にねじ合わされるとともに、ケーシングに回転不可能にかつ上下移動可能に支持され、作動軸を回転させることで、ばね受けが上下し、調圧ばねの弾性力が調整可能とされていることを特徴とする制御器。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から、おねじ部について、作動軸の上端部「の外周」に「一体に形成され」るものとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-19 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2004-143649(P2004-143649)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
P 1 8・ 575- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 仁木 浩
谷口 耕之助
発明の名称 制御器  
代理人 日比 紀彦  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 渡邊 彰  
代理人 清末 康子  

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