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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1188922
審判番号 不服2007-6377  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2002-113595「サニタリー用内視管及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月31日出願公開、特開2003-307286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成14年4月16日の出願であって、平成18年5月8日に明細書についての補正がなされたものの、平成19年1月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月29日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成19年3月29日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲における請求項1ないし5のうちの請求項1は、
「表面にリング状のシール用凹溝が形成されたフェルール部をパイプ主体の両端に有し、
抜き勾配角度1度未満の条件下でのポリサルホン系樹脂の射出成形によって、一体的に形成されていること
を特徴とするサニタリー用内視管。」
と補正された。

本件補正は、実質的に、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するのに必要な事項である「射出成形」が、「抜き勾配角度1度未満の条件下での」ものであることを特定したものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-213682号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食品、飲料、医薬品、酪農、化学、バイオテクノロジーなど多くの分野における流体移送のためのサニタリー配管システムに使用するフェルール継手と該継手を用いたパイプの接続法に関するものである。」

・「【0006】この発明はかゝる現状に鑑み、内部流体の挙動等を外部から容易に監視できると共に、配管の少なくとも接液部分に透明な耐熱硬質樹脂を使用して高温の流体の移送にも充分に対処することができるサニタリー配管のためのフェルール継手と、このフェルール継手を用いたパイプの接続法を提供することを目的としたものである。
【0007】この発明の他の目的は、サニタリー配管内の接続部などにバクテリアや細菌の繁殖し易い段差を形成することなく、また、溶接による煩瑣な手間を排して配管接続を可能としたフェルール継手と、このフェルール継手を用いたパイプの接続法を提供せんとするものである。」

・「【0013】
【発明の実施の形態】この発明のフェルール継手(以下、単に継手という。)と、このフェルール継手に差し込んでサニタリー配管を構成するための樹脂パイプ(以下、単に樹脂パイプという。)はいずれも透明であり、耐熱性と優れた衝撃強度を有する強靱な硬質熱可塑性樹脂であるポリフェニルサルホン(ガラス転移温度;Tg=220℃)、ポリサルホン(Tg=190℃)及びポリエーテルサルホン(Tg=220℃)から選ばれた樹脂を用いるもので、継手と樹脂パイプとは基本的には前記から選ばれた同じ材質の樹脂を使用する。
【0014】前記継手と、樹脂パイプとの固定は、接着剤による接着固定と加熱による融着固定のいずれかによって行うものである。」

・「【0022】
【実施例】以下、この発明の継手と、これによる樹脂パイプの接続法の実施例について添付の図面を引用して具体的に説明する。図1は、この発明の継手とこれに固定する樹脂パイプを分解して例示したものであって、継手1は全体が透明なポリフェニルサルホンからなるもので、一端開口部2の外周にフェルール部4を形成し、このフェルール部4の開口部2に連なる面に環状の凹溝7を形成して接続のためのシール面5としている。
【0023】一端開口部2の反対側に形成された他端開口部3は、同じく透明なポリフェニルサルホンからなる内径と外径が一定のパイプP_(1)を差し込むための差込口3(便宜上他端開口部と同符号で示す)とし、内周面6を差込口3から一端開口部2に向けてテーパー状に縮径させてソケット形構造の継手を構成している。」

・「【0025】・・・かくて樹脂パイプP_(1) ,P_(2)の先端が継手1,21のシール面5,25に面一になるように接着一体化することができる。」

・「【0029】かくて接続された接続部は、樹脂パイプP_(1)、ガスケット8および樹脂パイプP_(2)のそれぞれが同じ内径で緊密に当接して接続されるので、接続部に段差や溝などのない平滑な内周面を形成することができる。
【0030】かゝる配管施工によって、流体が流れる管路内は段差や溝などのない面一な状態で構成され、しかも各樹脂パイプP_(1)及びP_(2)ならびに継手1,21がいずれも高温流体に対して充分な耐熱性と衝撃強度を有する前記ポリフェニルサルホンからなる透明な樹脂で形成されて内部が透視できるため、細菌等の繁殖や内部流体の汚濁などが生ずる余地がなく、万一これらのトラブルが生じたとしてもその発見はきわめて容易であると共に、配管の接続部がソケット形のフェルール継手によりクランプされる構造であるので、配管の分解掃除や掃除後の組み立てなどもきわめて容易である。」

・図1及び図2には、フェルール部4が樹脂パイプP_(1)の端部にあることが示されている。

これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、
「シール面に環状の凹溝が形成されたフェルール部を樹脂パイプの端部に有し、
ポリフェニルサルホンで形成され、一体化されている
サニタリー配管の内部流体の挙動等を外部から監視可能なフェルール部及び樹脂パイプ。」
という事項を含む発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認定することができる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「シール面に環状の凹溝が形成された」態様は、本願補正発明の「表面にリング状のシール用凹溝が形成された」態様に相当する。
次に、引用発明の「樹脂パイプ」は、実質的に、本願補正発明の「パイプ主体」に相当する。
また、引用発明の「端部」と本願補正発明の「両端」とは、「端部」という概念で共通する。
続いて、引用発明の「ポリフェニルサルホンで形成され、一体化されている」態様と、本願補正発明の「抜き勾配角度1度未満の条件下でのポリサルホン系樹脂の射出成形によって、一体的に形成されている」態様とは、「ポリサルホン系樹脂によって、一体的に形成されている」という概念で共通する。
最後に、引用発明の「サニタリー配管の内部流体の挙動等を外部から監視可能なフェルール部及び樹脂パイプ」は、その機能・作用からみて、本願補正発明の「サニタリー用内視管」に相当する。

そうすると、両者は、
「表面にリング状のシール用凹溝が形成されたフェルール部をパイプ主体の端部に有し、
ポリサルホン系樹脂によって、一体的に形成されている
サニタリー用内視管。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点1
フェルール部を、本願補正発明ではパイプ主体の「両端」に有するとの特定がされているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。

・相違点2
サニタリー用内視管が、本願補正発明では「抜き勾配角度1度未満の条件下での」「射出成形」によって一体的に形成されているものとの特定がされているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。

(4)相違点についての判断
・相違点1について
サニタリー配管は、前記「2.(2)」で摘記した引用例の【0030】に示されるように、配管の分解掃除及び組立が可能であることが前提のものである。つまり、サニタリー配管のパイプであれば他のパイプとの接続を考慮する必要があるものといえる。そして、フェルール部が他のパイプとの接続のためのものであることに照らせば、引用発明においても、樹脂パイプ(パイプ主体)の端部のうちの一方のみがフェルール部を有するものではなく、樹脂パイプの両端にフェルール部を有するものと考えるのが自然である。
そのうえ、パイプの両端にフェルール部を有するものは周知の技術である(例えば、特開平7-241921号公報図1等を参照。フランジ1a及び1bがフェルール部に相当する)。
そうすると、引用発明において周知の技術を参酌し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
射出成形にてフェルール部を両端に設けたパイプを形成することは周知の技術である(例えば、前掲特開平7-241921号公報「【0011】・・・また、パイプ状成形体は、射出成形可能な(注:「は」は誤記)範囲内のものであれば、複雑な形状のものであってもよく、例えば両端にフランジ部などを有する複雑な形状の成形体とすることもできる。」という記載等を参照)。
また、射出成形において抜き勾配をどの程度のものにするかは、一般的には、成形材料の種類、成形品の形状、要求される性能等に応じて適宜設定される設計的事項といえるものであり、しかも、この抜き勾配を1度未満にすることが周知の技術である(例えば、特開平7-9495号公報「【0007】・・・パイプの内径、外径部の抜き勾配が0もしくは30分以内であることが好ましい。」(注:30分は0.5度に相当))。
加えて、本願の願書に最初に添付された明細書をみても、抜き勾配を1度未満にしたことに関する記載は次に摘記するとおりであり、その技術的意義については普通に予測される程度のものが記載されているに過ぎない。
・「【0022】
パイプ主体2の内径は、内壁面が平滑で、一端の内断面積と他端の内断面積を近づけるには、その公差を小さくすることが望ましく、また、成形時の抜き勾配を可及的に小さくすることが望ましく、上記IDF2S相当品における公差は±0.2mmの範囲とし、抜き勾配を角度1度未満、好ましくは0.75度以下とすることが、品質のよい製品を得る上で好ましい。なお、抜き勾配を0.15度よりも小さくすることは現状では困難である。」
そうすると、引用発明において周知の技術を参酌し、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の全体構成から奏される効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明については、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年5月8日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「表面にリング状のシール用凹溝が形成されたフェルール部をパイプ主体の両端に有し、
ポリサルホン系樹脂の射出成形によって一体的に形成されたこと
を特徴とするサニタリー用内視管。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、実質的に、「射出成形」が、「抜き勾配角度1度未満の条件下での」ものであるとの特定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願発明についても相違点2についての検討のうち「抜き勾配角度1度未満の条件下での」という事項についての検討が不要になるほかは同様の理由により引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、特許法49条2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願2002-113595(P2002-113595)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
P 1 8・ 575- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 大河原 裕
本庄 亮太郎
発明の名称 サニタリー用内視管及びその製造方法  
代理人 幸田 全弘  
代理人 幸田 全弘  

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