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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1189287
審判番号 不服2005-22393  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-21 
確定日 2008-12-17 
事件の表示 平成 8年特許願第517157号「起泡性製剤および泡」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月13日国際公開、WO96/17595、平成10年 9月22日国内公表、特表平10-509724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年12月5日(パリ条約による優先権主張1994年12月6日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成17年8月9日付で拒絶査定され、これに対し、平成17年11月21日に審判請求がされるとともに、平成17年12月9日付で、手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月9日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年12月9日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「生理学上容認可能な泡として身体に塗布することを目的とした製剤において、前記泡は、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、多糖類、寒天、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸グリコール、ゼラチン、キサンタム(xanthum)、グアール、カラヤ、ゲラン(gellan)、アラビア、トラガカント、イナゴマメゴムおよびそれらの塩、それらの混合物からなるグループから選択された生理学上容認可能な起泡性担体と、前記泡内部に微粒子状に分散された有効成分とを含み、前記有効成分は、泡生成の前には、前記起泡性担体とは別に包装されており、泡生成時のみに前記起泡性担体と混合され、クロルヘキシジン、酢酸、ポリノキシリン(polynoxylin)、ポビドンヨウド、 マーキュロクロム・フェノキシエタノール、アクリジン、硝酸銀、スルファジアジン銀、染料、ウンデカン酸、銀化合物、メトロニダゾール、 塩化ベンザクロニウム、ビタミン類、ケタンセリン(Ketanserin)、ストレプトキナーゼ、ストレプトドルナーゼ、亜鉛、セリウム、銅、マンガン、コバルト、クロム、銀、金、ホウ素、セレン、ヒ素、ガリウム、木炭、次亜塩素イオン、過酸化物イオン、過マンガン酸カリウム、ネオマイシン、硫酸フラミセチン(framycetin sulphate)、スルファミロン(sulfamylon)、フジディック酸(fusidic acid)、 ムピロシン(mupirocin)、バシトラシン、グラミシジン、水溶性ガラスからなるグループから選択され、前記水溶性ガラスは金属イオンまたはホウ素、これらの物質の塩、およびそれらの物質の混合物の少なくとも何れかを含むことを特徴とする製剤。」とする補正を含むものである

(2)判断
上記補正は、補正前の請求項1に記載した 「前記有効成分は、泡生成の前には、前記起泡性担体とは別に包装されていて」を、「前記有効成分は、泡生成の前には、前記起泡性担体とは別に包装されており」とする補正を含むものであるが、このような補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定するいずれの事項を目的とするものでもないことは明らかである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成17年12月9日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年6月28日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「生理学上容認可能な泡として身体に塗布することを目的とした製剤において、前記泡は、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、多糖類、寒天、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸グリコール、ゼラチン、キサンタム(xanthum)、グアール、カラヤ、ゲラン(gellan)、アラビア、トラガカント、イナゴマメゴムおよびそれらの塩、それらの混合物からなるグループから選択された生理学上容認可能な起泡性担体と、前記泡内部に微粒子状に分散された有効成分とを含み、前記有効成分は、泡生成の前には、前記起泡性担体とは別に包装されていて、泡生成時のみに前記起泡性担体と混合され、クロルヘキシジン、酢酸、ポリノキシリン(polynoxylin)、ポビドンヨウド、 マーキュロクロム・フェノキシエタノール、アクリジン、硝酸銀、スルファジアジン銀、染料、ウンデカン酸、銀化合物、メトロニダゾール、 塩化ベンザクロニウム、ビタミン類、ケタンセリン(Ketanserin)、ストレプトキナーゼ、ストレプトドルナーゼ、亜鉛、セリウム、銅、マンガン、コバルト、クロム、銀、金、ホウ素、セレン、ヒ素、ガリウム、木炭、次亜塩素イオン、過酸化物イオン、過マンガン酸カリウム、ネオマイシン、硫酸フラミセチン(framycetin sulphate)、スルファミロン(sulfamylon)、フジディック酸(fusidic acid)、 ムピロシン(mupirocin)、バシトラシン、グラミシジン、水溶性ガラスからなるグループから選択され、前記水溶性ガラスは金属イオンまたはホウ素、これらの物質の塩、およびそれらの物質の混合物の少なくとも何れかを含むことを特徴とする製剤。」

(2)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特開平6-279268号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

[イ]「【請求項1】殺菌剤、低級モノアルコール、非イオン界面活性剤および水溶性高分子化合物を含有してなる消毒殺菌剤。
・・・
【請求項8】 殺菌剤、低級モノアルコール、非イオン界面活性剤、水溶性高分子化合物および噴射剤を含有してなるエアゾール組成物。
【請求項9】 フォーム状である請求項8記載のエアゾール組成物。」(第2頁左欄特許請求の範囲)

[ロ]「本発明は、手指や皮膚の消毒、殺菌に用いられる消毒殺菌剤に関する。また、本発明は、この消毒殺菌剤および噴射剤を含有するエアゾール組成物に関するものであって、使用にあたりフォーム(泡)状の消毒殺菌剤を与える。」(第2頁左欄段落【0001】)

[ハ]「本発明の消毒殺菌剤は掌に噴射してフォーム(泡)を形成し、両手で手もみして手指の全域にまんべんなく拡げられる。このようにしてフォームは順次消滅する。」(第2頁右欄段落【0009】)

[ニ]「本発明の消毒殺菌剤に配合される殺菌剤としては、例えば陽イオン型界面活性剤である・・・ビグアナイド化合物であるグルコン酸クロルヘキシジンなど、ヨウ素及びヨウ素化合物製剤であるポビドンヨードなど、水銀化合物である・・・マーキュロクロムなどが挙げられる。」(第2頁右欄?第3頁左欄段落【0010】)

[ホ]「水溶性高分子化合物としては、天然あるいは合成の高分子化合物が用いられる。天然高分子化合物としては、例えば可溶性ポリサッカライドであるアカシヤガム、キサンタンガム、ペクチン、カラギナン、アルギン酸ナトリウムなど、可溶性ポリペプタイドであるゼラチンなど、キチン類であるキチン、キトサンなどが挙げられる。また、合成高分子化合物としては、天然高分子化合物を部分的に化学的加工した、例えば可溶性ポリサッカライドであるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ハイドロキシプロピルセルロースなどが挙げられ、また純合成高分子化合物としてはポリビニルアルコール系化合物であるポリビニルアルコールおよびその誘導体など、ポリビニルピロリドン系化合物であるポリビニルピロリドンおよびその誘導体などが挙げられる。これらのうち、泡の安定性の点からキサンタンガムが好ましい。」(第3頁左欄?右欄段落【0014】)

[へ]「本発明の消毒殺菌剤は、水溶性高分子化合物を適度に配合することによりフォームの状態を明瞭かつ安定に保持することができる。」(第3頁右欄第41?44行、段落【0017】)

(3)対比・判断
引用例には、殺菌剤、低級モノアルコール、非イオン界面活性剤および水溶性高分子化合物を含有してなる消毒殺菌剤が記載(前記[イ])されている。
そして、該消毒殺菌剤の成分である殺菌剤として、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード及びマーキュロクロムが例示(前記[ニ])され、水溶性高分子化合物としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが例示(前記[ホ])されているので、引用例には、殺菌剤としてグルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード又はマーキュロクロム、及び水溶性高分子化合物としてキサンタンガム、アルギン酸ナトリウム又はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する消毒殺菌剤(以下、「引用例発明」という。)が実質的に記載されている。
そこで、本願発明と引用例発明とを以下に対比する。
引用例発明の消毒殺菌剤は、掌に噴射して泡を形成する(前記[ハ])ものであるので、本願発明の「生理学上容認可能な泡として身体に塗布することを目的とした製剤」に相当する。引用例発明の、殺菌剤としてのグルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード又はマーキュロクロムは、本願発明の、クロルヘキシジン、ポピドンヨウド又はマーキュロクロムからなる有効成分に相当する。また、引用例発明の水溶性高分子化合物としてのキサンタンガム、アルギン酸ナトリウム又はカルボキシメチルセルロースナトリウムは、泡の状態を明瞭かつ安定に保持することができるものである(前記[ヘ])ので、本願発明の、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、又はキサンタム(xanthum)からなる生理学上容認可能な起泡性担体に相当する。
したがって、両者は、「生理学上容認可能な泡として身体に塗布することを目的とした製剤において、泡は、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、又はキサンタム(xanthum)からなる生理学上容認可能な起泡性担体と、クロルヘキシジン、ポピドンヨウド又はマーキュロクロムからなる有効成分とを含む製剤」である点で一致し、前者が、有効成分は、泡生成の前には、前記起泡性担体とは別に包装されていて、泡生成時のみに前記起泡性担体と混合されるものであるのに対して、後者には、そのような事項について記載されていない点で相違する。
以下、この相違点について、検討する。
身体への塗布時に泡を生成するタイプの製剤において、製剤の構成成分を二分割し、泡生成前には別々に包装しておき、泡生成時に混合するように製剤化することは、例えば、特公昭49-10010号公報、実願昭48-89671号のマイクロフィルム(実開昭50-37113号公報)等にも記載されているとおり、本願出願前に周知の技術的事項である。すなわち、泡状の製剤の態様として、複数の成分を泡発生前に全て混合しておくか、複数の成分を、泡生成前には、別々に包装しておいて、泡生成時に混合するようにした製剤とするかは、使用する成分相互の反応性などを考慮して、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
そして、そのことにより、顕著な効果も認められない。
審判請求人は、平成20年1月9日付回答書において、本願発明は「有効成分と起泡性担体とを別に包装し、泡生成時に有効成分と起泡性担体とを混合し、有効成分を泡中に分散させる」ことにより、粒子状の有効成分が保存中に起泡性担体から分離したり沈澱したりすることを防止できるとともに、使用時には有効成分が泡中に均一に分散するという優れた作用効果を奏すると主張しているが、これらの効果は、有効成分と起泡性担体とを別に包装し、泡生成時に有効成分と起泡性担体とを混合することによって生じる、当然に予測できる効果にすぎないから、審判請求人の主張は採用できない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-17 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-07 
出願番号 特願平8-517157
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋山口 昭則  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 起泡性製剤および泡  
代理人 有我 軍一郎  

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