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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1189290 |
審判番号 | 不服2004-16893 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-12 |
確定日 | 2008-12-18 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 42352号「トナー補給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月31日出願公開、特開平11-237786〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年2月24日の出願であって、その特許請求の範囲に記載された発明は、平成19年4月9日付け手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「交換可能なトナー容器と当該容器からトナー供給を受けるトナーホッパーとを備え、トナー容器が空で交換可能時に、上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖に伴い、当該トナー容器からトナーホッパーへのトナー供給動作を行うトナー補給装置において、上記トナーホッパー内にトナー検知センサを設け、上記トナーホッパーからトナー補給される現像装置内にトナー濃度センサを設けて、トナーホッパー内のトナー無し状態を報知した後における上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖に伴って行われるトナー供給動作を、上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖の間にジャム処理が行われていない場合に限って行い、トナーホッパーにトナーがあることを検知し且つ現像装置内のトナー濃度が適正であることを確認した後に、上記トナー無し状態の報知を解除することを特徴とするトナー補給装置。」 2.引用例 これに対し、当審における平成19年1月31日付けの拒絶理由通知書において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-257167号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。) (2a)「フルカラー画像形成用の複数のカラー現像剤と通常画像形成用黒現像剤とを有する現像装置を備え像担持体の静電潜像を現像して可視像化し記録紙に転写する画像形成装置において、 現像剤交換のために開閉可能な前カバーを有し、トナーエンド検知手段によるトナーエンド検知並びに表示後のトナーエンドリセットが、黒現像剤についてはトナーエンド表示後の前トビラ開放後所定時間を経過後の前トビラ閉鎖と同時に行われ、カラー現像剤については、トナーエンド表示後の前トビラの1回の開閉後予め定めた時間の経過後にトナー濃度センサーによる検出値がトナーエンド前の検出値に対し一定値以上の差に濃度回復した後にトナーエンドリセットが行われることを特徴とする画像形成装置。」(1頁左下欄4行?同欄18行) (2b)「カラー現像剤においては重ね転写によりフルカラーを表現するため、複数のカラー現像剤の濃度バランスがくずれると、画質が低下する。そのため、各現像剤のトナーが消費され、一定値以下にトナー濃度が低下すると、トナーを補給するか補給トナーカートリッジを交換することにより、トナー濃度を一定量に維持することが行われている。 トナーエンド表示によりトナーを補給し又は補給トナーカートリッジを交換して後は撹拌により現像装置内のトナー濃度が一定量に戻るまでは複写可能状態にはならなかった。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄2行) (2c)「本発明は、上記の課題を、現像剤交換のために開閉可能な前カバーを有し、トナーエンド検知手段によるトナーエンド検知並びにこの表示後のトナーエンドリセットが、黒現像剤についてはトナーエンド表示後の前トビラ開放後所定時間を経過後の前トビラ閉鎖と同時に行われ、カラー現像剤については、トナーエンド表示後の前トビラの1回の開閉後予め定めた時間の経過後トナー濃度センサーによる検出値がトナーエンド前の検出値に対して一定値以上の差に濃度回復した後にトナーエンドリセットが行われることを特徴とする画像形成装置により解決した。」(2頁右上欄1?12行) (2d)「本発明を適用する画像形成装置の一例としてのカラー複写機では、例えば、第1図に示すように、攪拌パドル2と現像ローラ3とを有する黒現像用現像器4B、シアン現像用現像器4C、マゼンタ現像用現像器4M、イエロー現像用現像器4Yと、これらの現像器により現像される静電潜像を担持する像担持体としての感光体ドラム5と、該感光体ドラム5に静電潜像を形成するための帯電器6及び画像露光部7と、現像後のトナー像を転写紙に転写する転写チャージャ7と転写紙を担持する転写ドラム8とを有する。 現像器4Bでは補給ローラ10により補給指令に応じてトナーが補給タンク9より自動的に補給される。 カラー現像剤を収容する現像器4C、4M、4Yについても同様に形成することができるが、通常は消費量が少ないので、トナーエンド表示により作業者が補給する。トナー濃度センサー1は各現像器4B、4C、4M、4Yの現像ローラ3と撹拌バドル2との間の現像剤の流れの良い位置に配置されている。」(2頁左下欄7行?同頁右下欄7行) (2e)「第4図においてトナーエンド又はニアエンド表示後、前カバーがトナー補給又は補給トナーカートリッジの交換に必要な時間として予め設定した時間、例えば20秒以上経過して閉じられたかどうかをチエックする。所定時間以内であればトナー補給が行われていないので前ドアが閉じられてもそのトナーエンド又はニアエンド表示のまま待機する。 所定時間経過後閉じられたときは、それがジャムによる紙除去作業に使用されたものでないかを確認するため、ジャムフラグが立っているかどうかチエックし、ジャムフラグが立っていないときはトナーエンド又はニアエンドをリセットする。 トナー補給して前トビラを閉じて直ぐにトナーエンドがリセットされ、プリント再開可能となるが、黒トナーの場合は画像の性質上あまり画質として問題にされないのでむしろ複写速度が高速化の方を重視する。使用中にトナーの攪拌が進みトナー濃度が濃くなる。 カラー現像剤の場合は第5図においてトナーエンド又はニアエンド表示の後、前カバーが開かれた後閉じたかどうかチエックし、閉じた場合は一定時間、例えば60秒現像装置内でのトナー補給を続け、トナー濃度センサーの出力を検知し、その検知値がトナーエンド前に検知され記憶されている検知値から5bit(例えば0.98V)減算した値より小であるかチエックし、小であればトナーエンド又はニアエンドをリセットする。ここでトナー濃度センサーの出力5Vを215bitとして制御する例を示した。 トナーエンドリセット後は黒現像剤もカラー現像剤も共に例えば第6図のフローチャートにより制御される。」(3頁右上欄15行?同頁右下欄7行) 引用例の第1図には、黒現像用現像器4Bのみが補給トナーカートリッジ(補給タンク9)と、補給トナーカートリッジからトナー供給を受けるトナー受け入れ部(補給ローラ10など)を有しており、カラー現像剤を収容する現像器4C、4M、4Yは補給トナーカートリッジを有しておらず、作業者が直接トナーを補給する構成のものが示されているが、上記(2d)において下線を付した箇所に、カラー現像剤を収容する現像器4C、4M、4Yについても黒現像用現像器4Bと同様に交換可能な補給トナーカートリッジ(補給タンク9)を有するものとしてもよいことが記載されているから、引用例には、各現像器がそれぞれ交換可能な補給トナーカートリッジを有しているものが実質的に記載されているということができる。(なお、カラー現像剤を収容する現像器に交換可能な補給トナーカートリッジからカラー現像剤を供給することは、例えば特開平2-308188号公報、特開平3-53270号公報、実願平2-34579号(実開平3-125357号)のマイクロフィルム、特開平7-319268号公報に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項にすぎない。) また、上記(2e)の記載により、引用例には開閉可能な前カバーがジャム処理以外のために開放されたときに限ってトナー供給動作を行うトナー補給装置が記載されているといえることを考慮して、上記摘記事項を総合勘案すると、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載発明」という。)が実質的に記載されている。 「交換可能な補給トナーカートリッジと当該補給トナーカートリッジからトナー供給を受けるトナー受け入れ部とを備え、補給トナーカートリッジが空で交換可能時に、現像剤交換のために開閉可能な前カバーの開閉に伴い、当該補給トナーカートリッジから現像器へのトナー供給動作を行うトナー補給装置において、上記トナー受け入れ部からトナー補給される現像器内にトナー濃度センサを設けて、現像器内のトナーエンド及びニアエンドを報知した後における上記前カバーの開閉に伴って行われるトナー補給動作を、上記前カバー開平の間にジャム処理が行われていない場合に限って行い、現像器内のトナー濃度が適正であることを確認した後に、上記トナーエンド及びニアエンドの報知を解除するトナー補給装置。」 3.本願発明(前者)と引用例記載発明(後者)の対比 後者の「補給トナーカートリッジ」、「現像剤交換のために開閉可能な前カバーの開閉」、「現像器」、「前カバーの開閉に伴うトナー補給動作」、「トナーエンド及びニアエンド」は、それぞれ、前者の「トナー容器」、「トナー容器の収納空間の開放/閉鎖」、「現像装置」、「トナー容器の収納空間の開放/閉鎖に伴うトナー供給動作」、「トナー無し状態」に相当し、前者のトナーホッパーもトナー容器からトナー供給を受ける「トナー受け入れ部」ということができるから、両者は、 「交換可能なトナー容器と当該容器からトナー供給を受けるトナー受け入れ部とを備え、トナー容器が空で交換可能時に、上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖に伴い、当該トナー容器から現像器へのトナー供給動作を行うトナー補給装置において、上記トナー受け入れ部からトナー補給される現像装置内にトナー濃度センサを設けて、トナー無し状態を報知した後における上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖に伴うトナー供給動作を、上記トナー容器の収納空間の開放/閉鎖の間にジャム処理が行われていない場合に限って行い、現像装置内のトナー濃度が適正であることを確認した後に、上記トナー無し状態の報知を解除するトナー補給装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (3-1)相違点 現像器の具体的構成において、前者の現像装置は、トナー容器からトナー供給を受けるトナーホッパーを備えるとともに、トナーホッパー内にトナー検知センサを設けて、トナーホッパー内のトナー無し状態を報知するものであり、また、トナーホッパー内にトナーがあることを検知し且つ現像装置内のトナー濃度が適正であることを検知し且つ現像装置内のトナー濃度が適正であることを確認した後にトナー無し状態の報知を解除するのに対して、後者の現像装置(現像器)はトナーホッパーを備えておらず、トナー濃度センサの検知出力のみを用いてトナー無し状態(トナーエンド及びトナーニアエンド)を検知するものであり、また、トナー無し状態の報知を解除するのに際してトナーホッパー内にトナーがあることを確認するものではない点。 4.相違点についての判断 複写機などの画像形成装置において、交換可能なトナー容器からトナー供給を受けるトナーホッパーを備えるとともに、トナーホッパー内にトナー検知センサを設け、別に設けられたトナーセンサと協働させてトナー無し検知を報知したり、トナー供給を制御することは、例えば、特開昭58-126555号公報(第1図及びその説明文)、実願昭61-180038号(実開昭63-84153号)のマイクロフィルム(2頁10?3頁15行)、特開平1-288876号公報(第1図、第4図、及びそれらの説明文参照)、特開平4-34480号公報(第1図、第2図、及びそれらの説明文参照)、特開平8-76571号公報(【図1】及びその説明文参照)、特開平9-106167号公報(【0013】?【0016】参照)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。 そして、引用例に記載されているカラー現像器に代えて、交換可能なトナー容器からトナー供給を受けるトナーホッパーを備えるとともに、トナーホッパー内にトナー検知センサを設け、トナー濃度センサと協働させてトナー無し検知を報知したり、トナー供給を制御することは、当業者が上記周知の技術的事項を採用することにより適宜行う事項である。 また、引用例記載発明において、トナーホッパー内にトナー検知センサを設ける構成を採用した場合に、トナー無し状態(トナーエンド及びトナーニアエンド)の報知を解除するのに際してトナーホッパー内にトナーがあることを確認することも当業者が適宜行うことである。 してみると、引用例記載発明において、相違点に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行うことである。 また、引用例記載発明において、相違点に係る構成を有するものとしたことにより、当業者が予期せぬ格別の効果が奏せられるものでもない。 5.むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-15 |
結審通知日 | 2008-10-21 |
審決日 | 2008-11-04 |
出願番号 | 特願平10-42352 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
大森 伸一 赤木 啓二 |
発明の名称 | トナー補給装置 |
代理人 | 藤田 アキラ |