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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1189291
審判番号 不服2004-24754  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-02 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 特願2001-325753「配信システム及び配信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-134045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月24日の出願であって、平成16年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年12月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年12月22日付けで手続補正がなされたものである。

その後、平成20年7月23日付けで上記平成16年12月22日付けの手続補正を却下する補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで当審から拒絶理由通知がなされ、それに対して、請求人は、平成20年9月29日付けの意見書の提出とともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成20年9月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次のとおりのものである。

「 災害や事故の発生時に被災する可能性のある地域に予め設置されたカメラからの映像信号をリアルタイムで符号化する符号化手段と、
前記符号化手段で符号化された信号に前記カメラの設置位置に関する情報を付加して配信する配信サーバと、
前記配信サーバから配信される情報を無線にて送信する基地局と、
前記基地局から送信された情報を復号して表示する携帯端末とを有し、
前記送信は、ブロードキャスト及びマルチキャストの少なくとも一方で、前記災害や事故が予め設定された地域で発生した時に当該地域の映像を伴った情報を当該地域内の携帯端末に前記地域の配信範囲に応じて送信出力が制御されて送信するものであること
を特徴とする配信システム。」


3.引用刊行物の記載事項および刊行物記載の発明
これに対して、当審拒絶理由通知で引用され、本願特許出願前に頒布された刊行物である特開2000-270330号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(a)段落番号【0002】
「従来、自然環境や災害状況等の映像を監視して表示する場合、監視センタで一元管理を行って、監視センタ内に並んだ複数のモニタ画面に、これらの映像情報を映し出していた。」

(b)段落番号【0016】
「以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の映像配信システムの原理図である。映像配信システム1は、映像をリアルタイムにマルチキャストする映像データ配信装置10と、PC等に該当する情報端末装置20a?20nとから構成され、LANや公衆網等のネットワークNを通じて、映像の配信制御を行う。」

(c)段落番号【0035】
「本発明の符号化手段11とトラフィック動的手段12は、映像交換/符号化装置101側に含まれ、配信手段13は、映像配信サーバ102側に含まれる。映像交換/符号化装置101は、網n1(例えば、6M帯域のG.703網)を通じて、コーデック30a?30n(例えば、MPEG2仕様コーデック)と接続する(コーデック30a?30nは直接、映像交換/符号化装置101と接続してもよい)。また、コーデック30a?30nには、映像を監視する監視カメラや表示ディスプレイ等(図示せず)が接続する。」

(d)段落番号【0038】-【0039】
「そして、ルータ50a?50nは、ネットワークN2(例えば、ISDN網、PHS網、携帯電話網等)と接続する。ネットワークN2は、自宅内にあるPC20nに接続する、また、図示しない無線基地局を介してPHS/携帯電話機20m-1とつながるモバイルPC20mと無線接続する。
このように、映像配信サーバ102は、映像交換/符号化装置101から出力された映像信号を、最終的に自宅内にあるPC20nや、モバイルPC20mまで映像の配信を行う。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「災害状況の映像を監視する監視カメラからの映像信号を符号化するコーデック30a?30n、
コーデック30a?30nで符号化された映像をリアルタイムにマルチキャストする映像データ配信装置10、
ネットワークN2を、PHS/携帯電話機20m-1とつながるモバイルPC20mと無線接続する図示しない無線基地局、
PHS/携帯電話機20m-1とつながるモバイルPC20m、
を有する映像配信システム。」


4.一致点・相違点
刊行物1記載の発明の監視カメラは、監視のためのカメラであるから、ある場所に予め設置されたものである。また、刊行物1記載の発明の監視カメラは、災害状況の映像を監視するから、災害の発生時に被災する可能性のある地域に予め設置されたものである。したがって、刊行物1記載の発明の「災害状況の映像を監視する監視カメラ」は、本願発明の「災害や事故の発生時に被災する可能性のある地域に予め設置されたカメラ」に相当する。
刊行物1記載の発明の映像データ配信装置10は、映像をリアルタイムにマルチキャストするから、コーデック30a?30nは、映像信号をリアルタイムで符号化するものである。
したがって、刊行物1記載の発明の「災害状況の映像を監視する監視カメラからの映像信号を符号化するコーデック30a?30n」は、本願発明の「災害や事故の発生時に被災する可能性のある地域に予め設置されたカメラからの映像信号をリアルタイムで符号化する符号化手段」に相当する。
刊行物1記載の発明の「コーデック30a?30nで符号化された映像をリアルタイムにマルチキャストする映像データ配信装置10」は、本願発明の「前記符号化手段で符号化された信号を配信する配信サーバ」に相当する。
刊行物1記載の発明の図示しない無線基地局は、本願発明の「前記配信サーバから配信される情報を無線にて送信する基地局」に相当する。
一般に、送信端において行われた符号化は、受信端において復号されるから、刊行物1記載の発明のコーデック30a?30nにおいて行われた符号化は、モバイルPC20mにおいて復号されていることは明らかである。したがって、刊行物1記載の発明の「PHS/携帯電話機20m-1とつながるモバイルPC20m」は、本願発明の「前記基地局から送信された情報を復号して表示する携帯端末」に相当する。

したがって、刊行物1記載の発明と本願発明の一致点・相違点は次のとおりである。

(一致点)
「災害や事故の発生時に被災する可能性のある地域に予め設置されたカメラからの映像信号をリアルタイムで符号化する符号化手段と、
前記符号化手段で符号化された信号を配信する配信サーバと、
前記配信サーバから配信される情報を無線にて送信する基地局と、
前記基地局から送信された情報を復号して表示する携帯端末とを、
有する配信システム。」

(相違点)
(イ)本願発明では、配信サーバが、符号化手段で符号化された信号に前記カメラの設置位置に関する情報を付加しているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような記載がない点。

(ロ)本願発明では、基地局が、ブロードキャスト及びマルチキャストの少なくとも一方で送信しているのに対して、刊行物1記載の発明では、映像データ配信装置10が、映像をリアルタイムにマルチキャストする点。

(ハ)本願発明では、基地局が、前記災害や事故が予め設定された地域で発生した時に当該地域の映像を伴った情報を当該地域内の携帯端末に前記地域の配信範囲に応じて送信出力が制御されて送信するのに対して、刊行物1記載の発明の図示しない無線基地局が、どの地域のPHS/携帯電話機20m-1とつながるモバイルPC20mに、どのような送信出力で送信するのか明記されていない点。


5.相違点の検討
(イ)刊行物1記載の発明のコーデック30a?30nそれぞれに監視カメラが接続されているから、単に映像のみをモバイルPC20mに表示させたのでは、表示されている映像がどの場所において撮影された映像であるのか不明である。このような状態では、災害状況の映像の配信としては、不十分であるから、「映像がどの場所において撮影されたかの情報」つまり「カメラの設置位置に関する情報」を映像信号に付加して配信することは、当業者が容易に想到できたことである。

(ロ)刊行物1記載の発明の「映像データ配信装置10が、映像をリアルタイムにマルチキャストする」というだけでは、図示しない無線基地局がマルチキャストで送信しているのか否か不明であるが、有線区間の映像データ配信装置10が、映像をリアルタイムにマルチキャストするのであるから、無線区間の図示しない無線基地局もマルチキャストで送信することは、当業者が容易に想到できたことである。

(ハ)特開2000-183769号公報の段落番号【0002】に、「放送サービスの中で地域を限定したサービス、例えば被災情報、天気予報、観光情報等ある特定の地域に限定したサービスを供給するいわゆる地域に密着した詳細なローカル情報サービスの需要が高まっている。地域限定サービスには、例えば被災情報等のような地域に緊急的に情報を公知しなければならない場合やその地域の人だけが参加する視聴者参加型番組さらに遠方から観光等に来る場合地域の天気や催し物の確認等他の地域から特定地域のサービスを得たい場合等様々である。地域限定サービスを運用するには、番組に付随する地域コードをどのように伝送するか、また受信機を視聴している場所がどの地域かをいかに検知するか等課題を解決する必要がある。また、視聴している地域(受信機のある地域)を特定することにより、特定地域に起きた災害情報の公知やその地域の住人には無料、他の地域の視聴者は有料等様々な放送運用が可能となる。」と記載され、また特開2001-216263号公報の段落番号【0034】に「このとき登録される情報(コンテンツ)としては、たとえば、広告、気象情報、交通情報、災害情報等の地域限定の情報が考えられる。」と記載されているように、「災害情報」は「地域限定型の情報」として、人々に広く認識されている。
このように、土砂崩れ、河川の氾濫等の災害は一般的には局地的であり、その災害情報に基づいて避難等をする必要性のある地域は限られている。したがって、刊行物1記載の発明の「災害状況の映像」の配信先を、「災害の発生地域およびその回りの地域」に限定することは、当業者が容易に想到できたことである。また、「基地局が、配信範囲に応じて送信出力を制御して送信すること」は、通常行われている周知慣用な事項に過ぎない。

6.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-16 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-06 
出願番号 特願2001-325753(P2001-325753)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 春樹  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 清水 稔
桑原 清
発明の名称 配信システム及び配信方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 木村 明隆  

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