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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22B
管理番号 1189301
審判番号 不服2005-14834  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-04 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 特願2001-217008「リサイクル用マグネシウム合金材の再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月29日出願公開、特開2003- 27156〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月17日の出願であって、平成17年4月19日付けで手続補正がされた後、同年6月30日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、同年8月4日にこの拒絶査定を不服として請求がされたものであって、同年8月18日付けで手続補正がされたものの、当該手続補正は、平成20年6月6日付けで補正の却下の決定がされるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、同年8月11日付けで手続補正がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年8月11日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「塗料と難燃剤とよりなる塗膜を有するマグネシウム合金材をモノエタノールアミンおよびエチレングリコールモノエチルエーテルを含むアルカリ溶液に浸漬して剥離する剥離工程と、
前記塗膜が剥離されたマグネシウム合金材を溶融させる溶湯調製工程と、 この溶湯の一部を採取して少なくとも鉄成分の含有量を測定する検査工程と、
前記検査の結果、鉄成分の含有量が所定値を超えた場合に溶湯に鉄成分低減物質を添加する成分調整工程とを行うことを特徴とするリサイクル用マグネシウム合金材の再生方法。」(以下、「本願発明」という。)

3.当審拒絶理由の概要
当審より通知された拒絶の理由の概要は、本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記1?4の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


刊行物1:特開2001-20018号
刊行物2:特開平11-254584号公報
刊行物3:日本パーカライジング技報、No.13(2001.1.1)
日本パーカライジング(株)、p.99-102
刊行物4:資源と素材、Vol.115 No.3(1999.3.25)資源素材学会、 p.189-194

4.刊行物の主な記載事項
刊行物1(特開2001-20018号)、刊行物2(特開平11-254584号公報)、刊行物3(日本パーカライジング技報、No.13(2001.1.1)日本パーカライジング(株)、p.99-102)、刊行物4(資源と素材、Vol.115 No.3(1999.3.25)資源素材学会、p.189-194)には、それぞれ次の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開2001-20018号

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗装されたマグネシウム系廃材を、非酸化性雰囲気中で、塗料が分解揮散する温度で熱処理を行って前記塗料を分解しその分解生成物を除去することを特徴とするマグネシウム系廃材の再生方法。
・・・。(審決注;「・・・」は記載の省略を示す。以下、同様。)
【請求項4】 請求項1又は2記載の方法によって塗料を分解揮散した後、フラックスを用いて、再溶融して、溶湯中の異物を沈降分離除去することを特徴とする塗装されたマグネシウム系廃材の再生方法。」(特許請求の範囲、請求項1、請求項4)

(1b)「本発明の再生対象となるマグネシウム系廃材は、マグネシウム又はマグネシウム合金(例えばダイカスト用のマグネシウム合金であるAZ91、AM60 AM50、AS41)製の鋳造品、ダイカスト品、加工品(板材、線材)等でその表面に塗料による塗装が施されている部品及び製品の使用済回収品や、製造工程で生ずる不良品を包含する。」(【0014】)

(1c)「(実施例)
本発明によるマグネシウム系廃材の再生方法の実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
図1の装置を使用してマグネシウム系廃材の塗料の分解除去を行った。
塗装されたマグネシウム系廃材としてAZ91合金(Mg-9%Al-0.7 %Zn-0.2 %Mn)製鋳造品の表面をDOW1法によって化成処理し、中塗り塗料としてサイクロン999 (東京ペイント株式会社製)を用い、上塗り塗料としてMGR-481 ゴールド(東京ペイント株式会社製)を用いて塗装した製品の使用済回収品をマグネシウム系廃材として使用した。
実施例2
実施例1で塗料が除去されたマグネシウム系廃材2kgを図2に示した容量1.5 リットルの10番黒鉛るつぼに入れ、溶融炉で加熱して溶融させた。
・・・。
実施例4
実施例2と同じマグネシウム廃材6kgを容量4.5 リットルの30番るつぼに入れ、廃材の上から立川鋳造溶剤工業所製のSK101 フラックス50grで覆い溶融した。730 ℃で保持しながら同工業所製のSK105 フラックス50grを添加し攪拌棒で5分間攪拌した後、沈降したスラッジをノロ掻きで除去した。650 ℃で30分間沈静した後、溶湯を汲み出し、蛍光X線分析を行った。結果を表1に示す。実施例2と比較して、塗料分解物から成る混入する成分の含有率が減少していて異物が効果的に除去されることを示している。」(【0019】?【0025】)

(2)刊行物2:特開平11-254584号公報

(2a)「【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板シートなどの金属基材層の表面に熱融着手段により特定の熱可塑性エラストマーを熱融着させて調製した金属層と熱可塑性エラストマー層とから成る複合成形体に関する。
・・・。
【従来の技術】
従来、金属製の各種製品(以下、この用語は、素材、中間製品、及び最終製品を含むものとして最広義に解釈されるべきである。)の表面の保護や装飾などの観点から、金属製品の表面に各種の被覆剤(コーティング剤)が適用されている。」(【0001】、【0002】)

(2b)「本発明の前記A?B成分からなる熱可塑性エラストマー組成物において、各種の目的に応じて任意の配合成分を使用することができることはいうまでもないことである。
この種の配合剤としては、・・・難燃剤・・・等の各種の添加剤がある。 ・・・。
次に、本発明の複合成形体において、前記特定の熱可塑性エラストマー組成物が熱融着により一体化される金属基材について説明する。
・・・。
また、本発明において、金属基材は、・・・マグネシウム、・・・などから選ばれた少なくとも一種の金属で構成されるものである。」(【0049】、【0050】)

(2c)「本発明の前記金属基材層と特定の縮合系のブロック熱可塑性エラストマー層とからなる複合成形体は、種々の目的に応じて使用することができる。
以下、本発明の前記複合成形体の応用例について説明する・・・。
(1).各種のマグネシウム合金製の携帯電子機器分野における複合成形体。
例えば、薄厚のノート型パソコンの筺体は、最近においては軽量化というニーズに答えるために射出成形機を利用したチクソモールディング法により軽量のマグネシウム合金を射出成形して製造されたり、あるいはダイキャスト法により製造されている。本発明の複合成形体は、前記した筺体や軽量化携帯電子機器へ応用することができる。」(【0055】、【0056】)
(3)刊行物3:日本パーカライジング技報、No.13(2001.1.1)
日本パーカライジング(株)、p.99-102

(3a)「1.はじめに
・・・マグネシウム合金は自動車部品や携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラ等情報家電製品の筐体に軽量化や薄肉化、電磁波シールド性、製品のリサイクル性といった特性にマッチした素材として急速に市場が広まっている。
マグネシウム合金はそのものが腐食しやすい素材であることに加え、その成型加工技術や表面処理技術がまだこれからの技術である為に、塗料不良率が高いのが現状である。そういった中、それら不良品の再生やリサイクルの際、塗膜を剥離するという工程が必要になる。その剥離方法にはショットブラストのような物理的剥離もあるが、ここでは、弊社が開発した「マグネシウム合金用塗膜剥離剤」について紹介する。」(99頁左欄1.)

(3b)「3.マグネシウム合金用塗膜剥離剤の特徴
マグネシウム合金はpH11以上で安定であり、それ以下であると腐食領域になる。今回、開発した塗膜剥離剤はpH14以上の強アルカリタイプで以下に特徴を示す。
○1 従来のノンメチクロ剥離剤より剥離性が良好でプライマーの溶解力 がある。
○2 マグネシウム合金の腐食が少ない。
○3 再塗装時の塗装性が良好である。
成分は無機アルカリ、数種類の有機アルカリと数種類の特殊溶剤からなっている。表2に塗膜剥離剤のデータを示す。」(99頁左欄3.)
(審決注;○1、○2、○3は、丸付き数字を示す。)

(3c)「表2 Mg合金用塗膜剥離剤
主成分/無機アルカリ、有機アルカリ、特殊溶剤
使用方法/浸漬 → 湯洗 → 乾燥
剥離例/携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ」
(100頁表2)

(3d)「5.使用方法
・・・使用方法として、従来の加温タイプと同様であるが、不良品再生には、塗膜を完全に剥離しないと再塗装で不良がでる。通常70℃に加温した剥離剤に浸漬して、一定時間後引き上げ水洗を行う・・・・。」(101頁5.)

(4)刊行物4:資源と素材、Vol.115 No.3(1999.3.25)資源素材学会、 p.189-194

(4a)「1.緒言
・・・。
著者らは民生用および業務用のAZ91Dマグネシウム合金製ビデオカメラ部品から清浄なリサイクル材を得ることを目的として、溶解・鋳造による不純物除去方法について検討した。・・・その結果、分別回収した部品を高温溶湯中へ直接投入し、フラックス処理後の静置時間を長く(40min以上)し、鋳込み前にスラグを十分に除去することにより、業務用と比較して民生用のものを用いた場合、比較的清浄なリサイクル材を得ることができた。しかし、過酷な条件で使用される業務用ビデオカメラ部品は、民生用のものに比べると表面処理層が厚く、その塗料成分から混入すると思われるFe、Ni、Cr等の不純物が多くなった。AZ91Dマグネシウム合金中のこれらの不純物はMnを添加し、Al-Mn-Fe-Ni系およびAl-Mn-Fe-Cr系の粗大な化合物として、るつぼ底へ沈降させることによって、分離が可能であると考えらる。
そこで本研究では、業務用のAZ91Dマグネシウム合金製ビデオカメラ部品から溶解・鋳造によるリサイクル処理法によって、JIS規格のAZ91Dマグネシウム合金の化学組成に準拠した清浄なリサイクル材を製造することを目的とした。その際に、混入が予測されるFe、Ni、Cr等の不純物を除去するため、Al-Mn合金を用いてMnを添加し、得られたリサイクル材の化学組成、引張特性および耐食性について評価した。

2.実験方法
本実験ではダイカスト法により作製された肉厚2mm以下の薄肉材で、下地処理後、塗装した業務用のAZ91Dマグネシウム合金製ビデオカメラ部品のスクラップを供試材(以下、スクラップ材と略す)とした。
・・・一方、塗装したままのスクラップ材は、FeおよびCrが混入している。Feは顔料からの混入、Crは下地処理からの混入と思われる。
また、スクラップ材の塗料等から混入するFe、Ni、Cr等の不純物を、粗大な化合物として、るつぼ底部へ沈降させるため、鎮静前にAl-Mn母合金の形でMnを添加した。Al-75%Mn合金は固相プロセスで作製された高溶解性の添加剤を用いた。」(189頁左欄?190頁左欄20行)

(4b)「実験結果および考察
・・・。
3・2 リサイクル材の化学組成
・・・・・
Table2およびTable3に、それぞれ1本目および3本目の鋳造したリサイクル材の化学組成を示す。比較として、金型鋳物(日本工業規格、1992)(castings)、ダイカスト品(日本工業規格、1991a)(die castings)およびダイカスト用地金(日本工業規格、1991b)(ingot)の規格値を示す。
・・・0.23%Mn以上の添加により、リサイクル材の化学組成は、Cu以外、JIS規格をほぼ満足する。これは、Al-Mn系の粗大な化合物中に、Fe、NiおよびCrの不純物が固溶され、粗大なAl-Mn-Fe系の化合物として、るつぼ底部へ沈降するためと考えられる。」

(4c)「Table2 1本目に鋳造したリサイクル材の化学組成(mass%)

Fe%
工業規格 金型鋳物 ≦0.005%
〃 ダイカスト品 ≦0.005%
〃 ダイカスト用地金 ≦0.004%
Mn添加量 0%(mass%) 0.017%
〃 0.23% 0.0026%
〃 0.43% 0.0020%
〃 0.85% 0.0019%
〃 1.26% 0.0020%
〃 1.68% 0.0020% 」(191頁)

5.当審の判断

(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、(1a)の請求項4に関する記載を請求項1を引用して独立形式で記載すると、「塗装されたマグネシウム系廃材を、非酸化性雰囲気中で、塗料が分解揮散する温度で熱処理を行って前記塗料を分解しその分解生成物を除去することよって塗料を分解揮散した後、フラックスを用いて、再溶融して、溶湯中の異物を沈降分離除去することを特徴とする塗装されたマグネシウム系廃材の再生方法。」が記載されているといえる。
そして、(1b)の記載によれば、「塗装された」とは、「塗料により塗装が施されていること」をいい、「マグネシウム系廃材」は、マグネシウム合金製の鋳造品、ダイカスト品、加工品等の部品及び製品の使用済み回収品、すなわち、マグネシウム合金材、さらに詳細には、回収されたマグネシウム合金材を含むものである。
また、(1c)の実施例4の記載によれば、前記再溶融した溶湯中の各成分の含有量は、蛍光X線分析を用いて測定されているといえる。
以上の記載及び認定事項を本願発明の記載ぶりに則り整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認める。

「塗料により塗装されたマグネシウム合金材を、非酸化性雰囲気で、塗料が分解揮散する温度で熱処理を行って前記塗料を分解しその分解生成物を除去する塗料が分解揮散する工程と、
塗料が分解揮散されたマグネシウム合金材を、フラックスを用いて溶融させ、溶湯中の異物を沈降分離除去する工程と、
溶湯中の各成分の含有量を測定する工程と、
を行う、回収されたマグネシウム合金材の再生方法。」
(以下、「刊行物1発明」という。)

(2)本願発明と刊行物1発明との対比

本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における、「塗料により塗装された」とは、本願発明における、「塗料よりなる塗膜を有する」ことに相当する。また、刊行物1発明における、「塗料が分解揮散する」とは、塗料が剥離した状態をいうものといえ、本願発明における、「塗膜を剥離する」に相当するから、刊行物1発明における、「塗料が分解揮散する工程」は、本願発明における、「塗料を剥離する剥離工程」に相当するものといえる。
そして、本願発明における、「溶湯調整工程」とは、本願明細書の記載(【0012】)によれば、フラックスを用いて溶融させ、溶湯内の油分などの不純物をスラッジとして沈降させる工程を含むものであるから、刊行物1発明における、「フラックスを用いて溶融させ、溶湯中の異物を沈降分離除去する工程」は、本願発明における、「溶湯調整工程」に相当し、また、本願発明における、「リサイクル用マグネシウム合金材」とは、本願明細書の記載(【0009】)によれば、「役目を終え回収されたものである」から、刊行物1発明における、「回収されたマグネシウム合金材」は、本願発明における、「リサイクル用マグネシウム合金材」に相当するものといえる。
してみると、本願発明と刊行物1発明とは、
「塗膜を有するマグネシウム合金材において塗膜を剥離する剥離工程と、
前記塗膜が剥離されたマグネシウム合金材を溶融させる溶湯調製工程と、 を行うリサイクル用マグネシウム合金材の再生方法」である点において一致し、以下の点において相違するものである。

相違点1:マグネシウム合金材の塗膜が、本願発明では、塗料と難燃剤とよりなるのに対し、刊行物1発明では、塗料を含むものではあるものの、難燃剤を含むものであるかについては不明である点

相違点2:剥離工程における塗膜の剥離を、本願発明では、マグネシウム合金材をモノエタノールアミンおよびエチレングリコールモノエチルエーテルアルカリ溶液に浸漬することにより行うのに対し、刊行物1発明では、マグネシウム合金材を、非酸化性雰囲気で、塗料が分解揮散する温度で熱処理を行って前記塗料を分解しその分解生成物を除去することにより行う点

相違点3:溶湯の成分調整を、本願発明では、検査工程において、溶湯の一部を採取して少なくとも鉄成分の含有量を測定し、成分調整工程において、前記検査の結果、鉄成分の含有量が所定値を超えた場合に溶湯に鉄成分低減物質を添加することにより行うのに対し、刊行物1発明では、溶湯中の各成分の含有量を測定はするものの、その後の溶湯の成分調整をどのように行うかについては不明である点

(3)相違点についての判断

(3-1)相違点1について
刊行物2には、(2a)?(2c)の「金属製の各種製品の表面の保護や装飾などの観点から、金属製品の表面に各種の被覆剤(コーティング剤)が適用されている。」との記載、「各種の目的に応じて任意の配合成分を使用することができる・・・。この種の配合剤としては、・・・難燃剤・・・等の各種の添加剤がある。 ・・・。 金属基材は、・・・マグネシウム、・・・などから選ばれた少なくとも一種の金属で構成されるものである。」との記載、及び、「本発明の前記複合成形体の応用例について・・・各種のマグネシウム合金製の携帯電子機器分野における複合成形体。例えば、薄厚のノート型パソコンの筺体」との記載によれば、マグネシウム合金製のノート型パソコンの筐体や携帯電気機器等において、その表面の保護や装飾を目的としてコーティングを行う際に、かかるコーティング層には通常その使用目的に応じて難燃剤等の任意の配合成分が添加され、前記機器等が使用されることが記載されているといえる。
してみると、刊行物1発明において、塗料に難燃剤が添加された塗膜を有するマグネシウム合金材も含めてリサイクル対象とすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
よって、相違点1は、当業者が容易に想到し得たことといえる。

(3-2)相違点2について
刊行物3には、(3a)?(3d)の「マグネシウム合金は・・・不良品の再生やリサイクルの際、塗膜を剥離するという工程が必要になる。・・・ここでは、・・・「マグネシウム合金用塗膜剥離剤」について紹介する。」との記載、「3.マグネシウム合金用塗膜剥離剤の特徴 マグネシウム合金はpH11以上で安定・・・以下に特徴を示す。
○1 従来のノンメチクロ剥離剤より剥離性が良好でプライマーの溶解力がある。 ○2 マグネシウム合金の腐食が少ない。 ○3 再塗装時の塗装性が良好である。 成分は無機アルカリ、数種類の有機アルカリと数種類の特殊溶剤からなっている。」との記載、及び、「主成分/無機アルカリ、有機アルカリ、特殊溶剤 使用方法/浸漬 → 湯洗 → 乾燥 剥離例/携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ」との記載によれば、マグネシウム合金材をリサイクルする際の塗膜の剥離工程において、アルカリ性を有する塗膜剥離剤溶液に再生すべきマグネシウム合金材を浸漬することにより、塗膜を剥離することが記載されているといえるから、塗膜が形成されたマグネシウム合金材をアルカリ性を有する塗膜剥離剤溶液に浸漬し、塗膜を剥離しマグネシウム合金材の再生を図ることは公知技術と認められ、また、アルカリ性を有する塗膜剥離剤溶液として、モノエタノールアミンを包含するアミン類と、エチレングリコールモノエチルエーテルやジエチレングリコールモノエチルエーテルを包含する多価アルコールとを含み、さらに、水酸化カリウム等のアルカリを含む塗膜剥離剤溶液は、出願時において周知である(要すれば、例えば、特開平6-63950号公報(【0009】、【0015】等参照。)、特開昭63-69897号公報(特許請求の範囲、2頁右上欄17行?19行、第1表等参照。)等参照。)。
してみると、上記公知技術を同じくマグネシウム合金材の再生を目的とする刊行物1発明における塗膜の除去技術、すなわち、マグネシウム合金材を、非酸化性雰囲気で、塗料が分解揮散する温度で熱処理を行って前記塗料を分解しその分解生成物を除去することに替えて適用すること、そして、その際に用いるアルカリ性を有する塗膜剥離剤として上記周知の塗膜剥離剤を用いることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
よって、相違点2は、当業者が容易に想到し得たことといえる。

(3-3)相違点3について
刊行物4には、(4a)?(4c)の「本研究では、業務用のAZ91Dマグネシウム合金製ビデオカメラ部品から溶解・鋳造によるリサイクル処理法によって、JIS規格のAZ91Dマグネシウム合金の化学組成に準拠した清浄なリサイクル材を製造することを目的とした。・・・・スクラップ材の塗料等から混入するFe、Ni、Cr等の不純物を、粗大な化合物として、るつぼ底部へ沈降させるため、鎮静前にAl-Mn母合金の形でMnを添加した。」との記載、及び、「0.23%Mn以上の添加により、リサイクル材の化学組成は、Cu以外、JIS規格をほぼ満足する。これは、Al-Mn系の粗大な化合物中に、Fe、NiおよびCrの不純物が固溶され、粗大なAl-Mn-Fe系の化合物として、るつぼ底部へ沈降するためと考えられる。」との記載によれば、マグネシウム合金製の部品から清浄なリサイクル材を得ることを目的として、溶解・鋳造によるリサイクル処理法において、塗料成分からの混入が予測されるFe、Ni、Cr等の不純物を除去するため、溶解時に、Al-Mn母合金を用いてMnを添加し、これらの不純物を粗大なAl-Mn-Fe系の化合物として、るつぼ底部へ沈降させることにより分離し、JIS規格に準拠した清浄なリサイクル材を得ることが記載されているといえる。
してみると、マグネシウム合金材の再生を目的とする刊行物1発明において、測定されたFe等の不純物量が所定値を超えた際に、刊行物4に記載された上記公知技術を適用し、Fe成分低減物質であるマンガン成分を添加することにより、Fe等の不純物元素を低減させ、リサイクル材の清浄化を図ることは当業者が容易になし得るものと認められる。
よって、相違点3は、当業者が容易に想到し得たことといえる。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2?4に記載された発明、及び、前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-16 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願2001-217008(P2001-217008)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C22B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近野 光知  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 長者 義久
平塚 義三
発明の名称 リサイクル用マグネシウム合金材の再生方法  
代理人 横山 淳一  

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