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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1189314
審判番号 不服2006-7847  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-24 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 特願2001-315567「ループ状アンテナおよびそれを備えた通信機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-124733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成13年10月12日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

(本願発明)
「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極の一端側は信号供給源からの信号を受ける給電端と成し、他端側は開放端と成しており、当該放射電極は、給電端側部分と開放端側部分が容量結合する間隔を介して並列に隣接配置されて略ループ形状に形成されており、この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており、前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた基本モードの共振周波数に対応した電気長を有し、放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは基本モードの共振周波数よりも高い設定の高次モードの共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、基本モードのアンテナ動作と、高次モードのアンテナ動作とを行うことを特徴としたループ状アンテナ。」

2.引用発明及び周知技術
A.当審の拒絶理由に引用された米国特許第5583523号明細書(1996年発行、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「Referring to FIG. 8, there is illustrated a perspective view
of a preferred embodiment of a compact microwave antenna 52 in
accordance with the present invention. FIG. 9 illustrates the top,
end, and side views of the antenna 52. The antenna 52 is used for
radiating generated microwave electromagnetic energy and for
collecting microwave radiation from free space. The antenna 52
resembles a standard loop antenna which was discussed above;
however, there is a major difference between the antenna 52 and a
standard loop antenna. The difference is that the antenna 52 can
be fed with only a single unbalanced transmission line instead of a
balanced twin line feed, and furthermore, no balun circuit is
required in order to match the impedance of the antenna 52 to the
single line feed. As will be seen, the antenna 52 may be connected
directly to a microstrip line, stripline, or the center conductor of
a coaxial line.」(12欄17?32行目)
(邦訳)
「図8には、本発明にかかるコンパクトなマイクロ波アンテナ52の好ましい実施例の斜視図が示されている。図9は、アンテナ52の上面、端部および側面を示す。アンテナ52は、生成されたマイクロ波電磁エネルギを放射し自由空間からマイクロ波放射を集めるために使用される。アンテナ52は、前述の標準ループアンテナに似ているが、アンテナ52と標準ループアンテナの間には大きな違いがある。その違いとは、平衡な一対の給電線の代わりに単一の不平衡給電線だけで給電されることであり、更にはアンテナ52のインピーダンスを単一給電線に整合させるためのバラン回路が必要でないことである。図から分かるように、アンテナ52は、マイクロストリップ線路、ストリップラインあるいは同軸線路の芯線に直接接続される。」

ロ.「The antenna 52 also includes an extension wire 144 which is
coupled to the other end of the length of wire 142. The extension
wire 144 has a length which is generally, but not necessarily,
shorter than the distance 146 between the plane of the length of
wire 142 and the ground plane 74. Because the extension wire 144 has
one end that is left open, the length of wire 142 is fed by only a
single transmission line, namely, the main transmission line 72
which feeds the feed probe wire 140.
The extension wire 144 shown in FIGS.8 and 9 extends parallel to
the feed probe wire 140 and towards the ground plane 74 without
making contact thereto. The reason for this parallel relationship is
that the antenna 52 will have good geometric symmetry which will
result in a radiation pattern having good definition and symmetry.
For impedance matching purposes, however, the geometry of the
extension wire 144 is not important; the extension wire 144 may
extend in any direction.」(13欄36?53行目)
(邦訳)
「アンテナ52は、更にワイヤ142の長さ方向のもう1つの端に接続される延長線144を含んでいる。一般的には、延長線144はワイヤ142の長さ方向の平面と接地平面74の間の距離146より短いある長さを持っているが、必ずしも短くする必要はない。延長線144の一端は開放端であるから、ワイヤ142は単一の給電線即ち給電プローブ140に給電する主伝送線72により給電される。
図8、9で示される延長線144は給電プローブ140と平行に、接地平面74に向かって、接地平面に接触しないように延伸している。この平行関係の理由は、アンテナ52が良好な幾何学的対称性を得るためであり、その結果、良好な特性および対称性を有する放射パターンが得られるためである。しかしながら、インピーダンス・マッチングのためには、延長線144の形状は重要ではなく、延長線144は任意の方角に延伸してもよい。」

ハ.「The variables that are adjusted in order to match the
impedance of the antenna 52 to the main transmission line 72 include
the length of the length of wire 142, the distance 146 between the
plane of the length of wire 142 and the ground plane 74, the
addition and length of the feed probe wire 140, and the addition and
length of the extension wire 144. The length of the length of wire
142 and the distance 146 are initially chosen using standard loop
antenna theory and assuming that a balanced twin line feed is used.
The values are chosen so that the input impedance of the antenna 52
will be about 50 ohms with a nearly zero reactive component which
will provide an optimized match to the 50 ohm main transmission line
72. The feed probe wire 140 and extension wire 144 are then added
to compensate for the fact that a balanced twin line feed is not
used.」(14欄16?30行目)
(邦訳)
「アンテナ52のインピーダンスを主伝送線72に整合させるために調整される諸元は、ワイヤ142の長さ、ワイヤ142の長さ方向の平面と接地平面74間の距離146、給電プローブ140の追加及びその長さ、及び延長線144の追加及びその長さを含む。ワイヤ142の長さおよび距離146は、平衡な一対の給電線を使用する場合の標準ループアンテナ理論に基づいて最初に選択される。前記諸元は、アンテナ52の入力インピーダンスが、主伝送線に最適に整合するように、約50オーム、リアクタンス分はほぼ0となるように、選択される。その後、給電プローブ140および延長線144は、平衡な一対の給電線を使用しない代わりとして、付け加えられる。」

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「ワイヤ142」、「給電プロープ140」、「延長線144」は連続していわゆる「線条の放射電極」を構成しており、前記「給電プロープ140」の一端は「信号供給源」である「主伝送線72」からの信号を受ける「給電端」となっており、前記「延長線144」の一端は「開放端」となっている。また前記「給電プローブ140」と「延長線144」は所定間隔を介して並行配置されている。また前記「線条の放射電極」の長さは図面(FIG.7A、7B)等から明らかなように「使用周波数」の1波長で共振する長さ(電気長)であり、上記「アンテナ52」の形状は同図からも明らかなように「ループ状」である。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極の一端側は信号供給源からの信号を受ける給電端と成し、他端側は開放端と成しており、当該放射電極は、給電端側部分と開放端側部分が所定間隔を介して並列に隣接配置されて略ループ形状に形成されており、前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有するループ状アンテナ。」

B.同じく当審の拒絶理由に引用された特公昭48-2819号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「本発明は複数個の径の異なるループ輻射素子を組み合わせて構成してなる複素子双ループアンテナに関するものである。」(1頁1欄18?20行目)
ロ.「また本発明における複素子双ループアンテナによれば給電点a,a’からの距離が相違なる複数個の径の異なる偏心状のループを構成することによつて広帯域周波数特性を有するアンテナが得られるという効果が同時に得られ、送信チヤンネルの異なる多数のテレビ局に対してアンテナの共用が容易にできること等の効果がある。」(2頁3欄1?8行目)
ハ.「1.複数個の直径の異なるループを同一平面上に偏心状に組み合わせてなる輻射素子を形成する各ループに同時に給電する共通給電点よりなることを特徴とする複素子双ループアンテナ。」(2頁3欄10行目?4欄3行目、特許請求の範囲)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「双ループアンテナ」を構成する双ループのうちの一方のループは「複数個の直径の異なるループを同一平面上に偏心状に組み合わせてなる」いわゆる「双ループアンテナのループユニット」であり、当該「複数個の直径の異なるループ」は「送信チヤンネル(即ち、動作周波数)の異なる多数のテレビ局に対して」動作するものである。また図面から明らかなように前記ループユニット中の長径のループは「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極をループ状に形成するとともにその両端を給電点とし、該給電点に平衡給電を行う」ものであり、短径のループは「前記長径のループをショートカットする連続した短絡電極」として構成されている。また、前記長径のループは「前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループ」でもあり、予め定められた(テレビ局の)送信周波数(即ち、第1の共振周波数)に適合する長さ(即ち、電気長)を有し、前記短径のループは「放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループ」でもあり、その長さは前記長径のループよりも短いのであるから、その動作周波数は前記第1の共振周波数よりも高い第2の共振周波数に適合する長さ(即ち、電気長)を有するものである。またこれらの周波数の送信は「各ループに同時に給電する」ことにより行われるものである。
したがって、上記引用例2には「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極をループ状に形成するとともにその両端を給電点とし、該給電点に平衡給電を行い、この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており、前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた第1の共振周波数に対応した電気長を有し、放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは第1の共振周波数よりも高い設定の第2の共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、第1の共振周波数のアンテナ動作と、第2の共振周波数のアンテナ動作とを同時に行う双ループアンテナにおけるループユニット」が開示されている。

C.同じく当審の拒絶理由に引用された特開平11-88035号公報(以下、「引用例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(引用例3)
イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、HF(以下、本明細書中において、この「HF」には「UHFもVHFもを含む」ものとして使用する。)帯やFM帯の電波を受信することのできる面界輻射アンテナとしての平面輻射型アンテナ及びこのアンテナを利用した送受信システムに関する。」(2頁1欄、段落1)
ロ.「【0042】(・・・中略・・・)すなわち、図9において、上記複数の左右縦辺部65a,65b,65cと上記複数の上下横辺部66a,66b,66cのうちの外側の各辺部65a,65b,66a,66bを「複合素子」とし、最も内側の各辺部65c,66cを「整合部」とし、上記共振軸67,67の対向する側を「共振点69」と名称付けることもできるが、上記複合素子65a,65b,66a,66bと、整合部65c,66cと共振軸67,67の形状は、面状、線状、角形、筒状等の形状に構成することができる。
【0043】そして、給電点9A,9Aを設けるために、共振軸67,67から同軸ケーブル15が引き出されている。本実施の形態では、左右縦辺部65a,65b,65cのほぼ中央に共振軸67,67と給電点9A,9Aを設けて、同軸ケーブル15が引き出されているが、下側の横辺部66a,66b,66cに給電点9A,9Aを設け同軸ケーブル15から引き出すものでも良い。(・・・以下省略・・・)」(6頁9欄、段落42、43)

即ち、上記引用例3には「ショートカットループを備えたループアンテナの他の例」が開示されている。

D.同じく当審の拒絶理由に引用された特開平6-169215号公報(以下、「引用例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0009】2周波共用双ループアンテナ1は、上半分の半ループ導体2a,2b、下半分の半ループ導体3a,3b、および共通の接地導体としての接地ライン4を備える。
【0010】この実施例では上半分の半ループ導体2a,2bを800MHz帯域用に、下半分の半ループ導体3a,3bを1.5GHz帯域用に形成する。
【0011】そのため、この実施例では800MHzの帯域で1波長の双ループアンテナとして作動するよう上半分の半ループ導体2a,2bの半径を定める。同様に、1.5GHzの帯域で1波長の双ループアンテナとして作動するよう下半分の半ループ導体3a,3bの半径を定める。」(2頁2欄、段落9?11)

上記引用例4の800MHzと1.5GHzの関係基本モードと高次モードの関係である。
したがって、上記引用例4には「ループアンテナの径を基本モード用と高次モード用に設定すること」が開示されている。

E.例えば特開2000-307327号公報(以下、「周知例1」という。)又は実願昭63-165438号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平2-86208号参照、以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例1)
イ.「【0002】
【従来の技術】従来より、UHF帯の放送電波の送信に用いられている水平偏波用の双ループアンテナとして、図11に示すように、受波しようとする信号成分の1波長分の周囲長を有する一対のループアンテナ104,106を、平行に配設された一対の給電線(以下、平行給電線という)108にて接続し、この平行給電線108の中心に給電点Pを設けた双ループアンテナ102が知られてる。なお、図11(a)は双ループアンテナ102の正面図,(b)はその側面図である。
【0003】即ち、この水平偏波用双ループアンテナ102は、一対のループアンテナ104,106の配列方向が上下方向と一致するように配置される。そして、各ループアンテナ104,106では、その上辺と下辺とで電流が同方向に流れることにより、配列方向(上下方向)に沿った偏波面を有する垂直偏波成分が相殺され、配列方向に対して直交する方向に沿った偏波面を有する水平偏波成分のみが送受されることになる。」(2頁2欄、8?20行目)

(周知例2)
イ.「平行給電線と、この平行給電線に相異なる角度でそれぞれ接続した少なくとも2個の1波長ループアンテナと、前記平行給電線の中央から前記1波長ループアンテナに給電する給電点とを備えることを特徴とするUHFテレビジヨン用双ループ受信アンテナ。」(明細書1頁、実用新案登録請求の範囲)

例えば上記周知例1、2に開示されているように「双ループアンテナは一対の1波長ループアンテナで構成される」ことは周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「容量結合する間隔を介して」という構成と引用発明の「所定間隔を介して」という構成はいずれも「所定間隔を介して」という構成の点で一致している。
また引用発明は本願発明の「この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており」という構成を備えていない。
また引用発明の「前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有する」構成と本願発明の「前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた基本モードの共振周波数に対応した電気長を有し」という構成はいずれも「前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有する」という構成の点で一致している。
また引用発明は本願発明の「放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは基本モードの共振周波数よりも高い設定の高次モードの共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、基本モードのアンテナ動作と、高次モードのアンテナ動作とを行う」構成を備えていない。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極の一端側は信号供給源からの信号を受ける給電端と成し、他端側は開放端と成しており、当該放射電極は、給電端側部分と開放端側部分が所定間隔を介して並列に隣接配置されて略ループ形状に形成されており、前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有するループ状アンテナ。」

<相違点>
(1)「所定間隔を介して」という構成に関し、本願発明は「容量結合する間隔を介して」という構成であるのに対し、引用発明は「所定間隔を介して」という構成である点。
(2)本願発明は「この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており」という構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。
(3)「前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有する」という構成に関し、本願発明は「前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた基本モードの共振周波数に対応した電気長を有し」という構成であるのに対し、引用発明は「前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有する」構成である点。
(4)本願発明は「放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは基本モードの共振周波数よりも高い設定の高次モードの共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、基本モードのアンテナ動作と、高次モードのアンテナ動作とを行う」構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。

4.判断
そこで、まず、上記相違点(1)の「所定間隔を介して」という構成について検討するに、一般に「所定間隔を介して並列に隣接配置され」た2導体間にいわゆる「線間容量」が発生することは当業者には自明のことであるところ、上記引用例には「インピーダンス・マッチングのためには、延長線144の形状は重要ではなく、延長線144は任意の方角に延伸してもよい。」という構成が記載されており、当該構成における「インピーダンス・マッチングのために延長線の方角を変える」構成は、結果として「2線間の間隔(即ち、線間容量)を変える」ことであるから、上記引用例の記載及び前記自明な事項に基づいて、引用発明の「所定間隔を介して」という構成を、本願発明のような「容量結合する間隔を介して」という構成とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。
ついで、上記相違点(2)?(4)をまとめて検討するに、上記引用例2には「アンテナ動作を行う一端側から他端側にわたって連続した線状の放射電極を有し、この放射電極をループ状に形成するとともにその両端を給電点とし、該給電点に平衡給電を行い、この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており、前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた第1の共振周波数に対応した電気長を有し、放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは第1の共振周波数よりも高い設定の第2の共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、第1の共振周波数のアンテナ動作と、第2の共振周波数のアンテナ動作とを同時に行う双ループアンテナにおけるループユニット」が開示されており、また上記引用例3には「ショートカットループを備えたループアンテナの他の例」が開示されている。そして例えば上記周知例1、2に開示されているように「双ループアンテナは一対の1波長ループアンテナで構成される」ことは周知であり、当該周知技術における「ループアンテナ」は普通の「1波長ループアンテナ」であって、特別なものではないから、前記引用例2に開示されている「双ループアンテナにおけるループユニット」の構成を、引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらない。
また上記引用例4には「ループアンテナの径を基本モード用と高次モード用に設定すること」が開示されており、当該技術手段を前記引用例2に開示されている第1の共振周波数と第2の共振周波数の関係とすることにも格別な阻害要因は見あたらない。
したがって、これらの技術手段に基づいて、引用発明のループにショートカットループを追加し、その際それぞれのループの共振周波数を基本モード用と高次モード用とすることにより、引用発明の構成に本願発明のような「この放射電極には当該放射電極のループをショートカットする連続した短絡電極が設けられており」という構成を追加し(相違点2)、引用発明の「前記放射電極における給電端から開放端に至るループは予め定められた共振周波数に対応した電気長を有する」構成を本願発明のような「前記放射電極における給電端から前記短絡電極を通らずに開放端に至るループは予め定められた基本モードの共振周波数に対応した電気長を有し」という構成とし(相違点3)、引用発明に本願発明のような「放射電極の給電端から短絡電極を通って開放端に至るショートループは基本モードの共振周波数よりも高い設定の高次モードの共振周波数に対応した電気長を有する構成と成して、放射電極は、基本モードのアンテナ動作と、高次モードのアンテナ動作とを行う」構成を追加する(相違点4)程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2?4に記載された技術手段ないしは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-17 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願2001-315567(P2001-315567)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 松元 伸次
山本 春樹
発明の名称 ループ状アンテナおよびそれを備えた通信機  
代理人 五十嵐 清  

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