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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1189324
審判番号 不服2006-14586  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-06 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 平成11年特許願第154885号「デジタル多色画像形成電子写真装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-347433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明
本願は、平成11年6月2日の出願であって、平成18年5月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされた後、当審において平成20年7月28日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して、同年9月26日付けで手続補正書が提出されたものである。
本願の発明は、平成20年9月26日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「電子写真感光体を用いたデジタル多色画像形成電子写真装置であって、
前記電子写真感光体は、ニッケルシームレスベルト上に白色顔料、バインダーからなる下引き層及び感光層を順次積層してなると共に波長780nmでの光の入射角5°でのニッケルシームレスベルトの鏡面反射率に対する、ニッケルシームレスベルト上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率が13%以下である、デジタル多色画像形成電子写真装置。」

2.刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
当審からの平成20年7月28日付けの拒絶理由に引用された特開平3-146958号(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)
ア.「1.支持体と感光層との間に光干渉防止中間層を設けてなる電子写真感光体において、該光干渉防止中間層が平均粒径が0.2?0.5μmの無機粉体と平均粒径0.05μm以下の超微粒子無機粉体とを樹脂中に分散させたことを特徴とする電子写真感光体。」(特許請求の範囲)
イ.「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、光の干渉による濃度ムラの発生を防止した電子写真感光体を提供することを解決すべき課題とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、支持体と感光層の間に光干渉防止中間層を設けた電子写真感光体において、光の干渉による濃度ムラは該光干渉防止中間層の入射角5°での像形成光に対する相対鏡面反射率(正反射率)が3.5%を境にして発生していた。」(第2頁左上欄第15行?右上欄第6行)
ウ.「本発明の電子写真感光体に用いられる支持体としては、アルミニウム、黄銅、ステレンス、ニッケル等の金属ドラムおよびシート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、紙等の材料にアルミニウム、ニッケルなどの金属を蒸着したり、ラミネートしたものが挙げられる。
〔実施例〕
次に、実施例により、発明を更に詳細に説明する。
実施例1
アルキッド樹脂〔ベッコーゾルTD-50-30(大日本インキ化学工業製)〕100gとメラミン樹脂〔ベッカミンP-138(大日本インキ化学工業製)〕70gとをメチルエチルケトン300gに溶解し、これに平均粒径0.25μmの酸化チタン微粉末(TP-2(富士チタン工業製)〕572gと平均粒径0.02μmの超微粒子シリカ〔130(日本アエロジル製)〕16gとを加え、ボールミルで24時間分散し、更にメチルエチルケトン180gを加えて希釈し、中間層用溶液を作成した。これを厚さ0.2mmのアルミニウム板〔A1080(住友軽金属社製)〕に塗布し、150℃、20分乾燥し、厚さ2μmの中間層を形成した。このようにして作成した中間層を、自記分光光度計〔UV-3100(島津製作所製)〕にて入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する正反射率を測定したところ、780nmにおいて2.6%であった。
実施例2
実施例1において、平均粒径0.25μmの酸化チタン微粉末と平均粒径0.02μmの超微粒子シリカを各々500g及び55g加えた以外は実施例1と同様に中間層用塗布液を作成した。
このようにして得られた塗布液を実施例1と同様にアルミニウム板に成膜し、正反射率を測定したところ、2.4%であった。」(第4頁左上欄第4行?右上欄第19行)
エ.「実施例19
アルキッド樹脂〔ベッコーゾルTD-50-30(大日本インキ化学工業製)〕100gとメラミン樹脂〔ベッカミンP-138(大日本インキ化学工業製)〕70gとをメチルエチルケトン300gに溶解し、これに平均粒径0.25μmの酸化チレン微粉末(TP-2(富士チタン工業製))572gと平均粒径0.02μmの超微粒子アルミナ(Oxide-C(日本アエロジル製)〕27gとを加え、ボールミルで24時間分散し、更にメチルエチルケトン180gを加えて希釈し、中間層用溶液を作成した。これを厚さ0.2mmのアルミニウム板〔A1080(住友軽金属社製)〕に塗布し、150℃20分乾燥し、厚さ2μmの中間層を形成した。このようにして作成した中間層を、自記分光光度計(UV-3100(島津製作所製)〕にて入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する正反射率を測定したところ、780nmにおいて3.0%であった。」(第8頁左下欄第1行?第18行、当審注:酸化チレンは酸化チタンの誤記と認める。)
オ.「実施例22?24、比較例32?37
実施例19?21および比較例1,26?29,31における中間層用塗布液を、各々直径40mm長さ250mmのアルミニウムドラムに塗布、150℃30分乾燥し、2μmの中間層を形成した。」(第9頁左下欄第9行?第13行)
カ.「以上のようにして得られた各々の電子写真感光体を像形成光に半導体レーザー(780nm)を用いたレーザープリンタLP1060-SP3((株)リコー製)改造機にて中間調画像を出力させ、光干渉による濃度ムラの評価を行なった。表3に結果を示す。



(第9頁右下欄第14行?第10頁左上欄)

上記摘記事項を総合すると、刊行物1には、下記の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。

「支持体であるアルミニウムドラムと感光層との間に光干渉防止中間層を設けてなる電子写真感光体を用いたレーザープリンタであって、該光干渉防止中間層が樹脂と酸化チタン微粉末とを含有し、該光干渉防止中間層の、波長780nm、入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する相対鏡面反射率が3.0%である、モノクロレーザープリンタ。」

(刊行物2について)
当審からの平成20年7月28日付けの拒絶理由に引用され特開平7-261419号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)
キ.「導電性支持体上に少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体において、いずれかの層に下記一般式(化1),(化2)または(化3)で示されるナフトキノンまたはナフトキノン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】?【化3】(略)、以下略」(【請求項1】)
ク.「この様な感光体の電気特性を改良するためには、基体と感光体との間に中間層を設けることが有効であるとされている。一般に、この様な中間層を設ける目的としては、接着性改良、感光層の塗工性向上、基体の保護、基体上の欠陥の被覆、感光層の電気的破壊に対する保護、基体から感光層への電荷注入性の改良などがあげられる。」(【0003】)
ケ.「導電性基体としては、体積抵抗10^(10)Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着又はスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、前記の金属又は導電性カーボンをフィルム状もしくは円筒状のプラスチック中に分散含有させたものあるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板およびそれらをD.I.(ドローイング アイドリング),I.I.(インパクト アイドリング),押出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等を使用することができる。」(【0016】)
コ.「実施例5
TiO_(2)(TM-1、富士チタン工業製) 1500g
アクリル樹脂(アクリデインクA-460-60、
大日本インキ化学(株)製,固形分濃度60重量%) 300g
メラミン樹脂(スーパーベッカミンL-121-60、
大日本インキ化学(株)製,固形分濃度60重量%) 167g
MEK(メチルエチルケトン) 750g
上記の材料を、15cmφの硬質ガラスポットに、1cmφのアルミナ焼結ボールとともに投入し、24時間ミリングした。
この液に
1,2-ナフトキノン 20g
MEK 563g
IPA(イソプロピルアルコール) 438g
から成る液を加えて、さらに3時間ミリングし、取り出した液を固形分濃度50重量%、溶剤比(重量比)MEK/IPA=75/25になるように稀釈し、中間層塗工液を作製した。」(【0034】、当審注:「アクリデインク」は、「アクリディック」の誤記と認める。)
サ.「肉厚1mm、長さ340mmのアルミドラムに、作製した中間層塗工液を浸漬塗工し、130℃20分間、加熱乾燥して膜厚3μmの中間層を設けた。
さらにこの上に電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、110℃10分間加熱乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を設けた。
さらにこの上に電荷輸送層塗工液を浸漬塗工し、130℃15分間加熱乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層を設けた。」(【0039】?【0041】)

上記摘記事項をまとめると、刊行物2には、以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物2発明」という。)

「導電性支持体であるアルミドラム上に順次、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層を積層した電子写真感光体であって、中間層として、下記の組成からなる塗工液を塗布乾燥して、膜厚3μmの層を設けた、電子写真感光体。
酸化チタン(TM-1、富士チタン工業製) 75重量部、
アクリル樹脂(アクリディックA-460-60、
大日本インキ化学(株)製) 15重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミンL-121-60、
大日本インキ化学(株)製) 8.35重量部
MEK(メチルエチルケトン) 65.65重量部
1,2-ナフトキノン 1重量部
IPA(イソプロピルアルコール) 21.9重量部」

3.刊行物1発明との対比・判断
(本願発明と刊行物1発明との対比)
本願発明(前者)と刊行物1発明(後者)を対比する。
まず、後者における「酸化チタン微粉末」、「樹脂」、「光干渉防止中間層」は、それぞれ、前者における「白色顔料」、「バインダー」、「下引き層」に相当する。
また、後者における「支持体であるアルミニウムドラム」と、前者における「ニッケルシームレスベルト」とは、「導電性基体」の点で一致する。
そして、後者における「モノクロレーザープリンタ」は、摘記事項カ.からデジタルモノクロ電子写真装置と認められるから、後者における「モノクロレーザープリンタ」と、前者における「デジタル多色画像形成電子写真装置」とは、「デジタル画像形成電子写真装置」の点で一致する。
さらに、後者における「該光干渉防止中間層の、波長780nm、入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する相対鏡面反射率が3.0%である」と、前者における「波長780nmでの光の入射角5°でのニッケルシームレスベルトの鏡面反射率に対する、ニッケルシームレスベルト上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率が13%以下である」とは、相対鏡面反射率の対象が、前者は、下引き層を積層する前の導電性基体(ニッケルシームレスベルト)の鏡面反射率であるのに対して、後者は、Al蒸着ミラーであるが、「導電性基体上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での鏡面反射率が所定値である」点で一致する。
したがって、両者は
「電子写真感光体を用いたデジタル画像形成電子写真装置であって、
前記電子写真感光体は、導電性基体上に白色顔料、バインダーからなる下引き層及び感光層を順次積層してなると共に、導電性基体上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での鏡面反射率が所定値である、デジタル画像形成電子写真装置」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:導電性基体に関して、前者は、「ニッケルシームレスベルト」であるのに対して、後者は、「アルミニウムドラム」である点。

相違点2:導電性基体上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での鏡面反射率に関して、前者は、「波長780nmでの光の入射角5°でのニッケルシームレスベルトの鏡面反射率に対する、ニッケルシームレスベルト上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率が13%以下である」のに対して、後者は、「波長780nm、入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する相対鏡面反射率が3.0%である」である点。

相違点3:デジタル画像形成電子写真装置に関して、前者は、「デジタル多色画像形成電子写真装置」であるのに対して、後者は、モノクロである点。

(当審の判断)
上記相違点について検討する。
まず、相違点1については、刊行物1発明は、アルミニウムドラムを導電性基体とするものであるが、前記摘記事項ウ.に、「アルミニウム、黄銅、ステレンス、ニッケル等の金属ドラムおよびシート」とあるとおり、ニッケルシームレスベルトを導電性基体とすることは、刊行物1に記載されているに等しい事項であり、かつ、本願出願時における周知技術である。(必要ならば、特開平4-57053号公報、特開平4-122945号公報、特開平4-191861号公報等参照。)
したがって、相違点1は、当業者が適宜為し得る設計的事項である。
次に、相違点2について検討する。
刊行物1発明において、Al蒸着ミラーの鏡面反射率と、導電性基体(支持体であるアルミニウムドラム)の鏡面反射率はともに明らかではないが、Al蒸着ミラーの鏡面反射率は100%に近い値であり、導電性基体の鏡面反射率は、45%?95%の範囲内にあると考えられるから(必要ならば、特開平8-6279号公報、特開平10-239883号公報参照)、刊行物1発明の「波長780nm、入射角5°でのAl蒸着ミラーに対する相対鏡面反射率が3.0%」である構成は、本願発明の「波長780nmでの光の入射角5°での導電性基体の鏡面反射率に対する、導電性基体上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率が13%以下」を満たすことは明らかである。
なお、相違点2に関連して、当審からの平成20年7月28日付けの拒絶理由通知に対して、請求人は平成20年9月26日付けの意見書において、単に「開示されているとは言えません」と主張するのみで、上記と同様の指摘について、実質的に何ら反論していない。
また、相違点3の「デジタル多色」の点については、文献を提示するまでもなく、本願出願時において、アナログ/デジタル、モノクロ/多色の各種画像形成電子写真装置は周知であるから、モノクロ画像形成電子写真装置における感光体の構成を、「デジタル多色画像形成電子写真装置」に適用する程度のことは、当業者が適宜為し得た設計的事項に過ぎない。
そして、請求人が主張する「優れた画像品質を形成することができるデジタル多色画像形成電子写真装置を提供する」との効果も一般的な目的・効果であって、格別のものではない。
よって、上記相違点1?3に係る構成の変更は、当業者が適宜なし得たことである。
(まとめ)
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.刊行物2発明との対比・判断
(本願発明と刊行物2発明との対比)
本願発明(前者)と刊行物2発明(後者)とを対比する。
まず、後者における「酸化チタン」、「アクリル樹脂及びメラミン樹脂」、「中間層」、「電荷発生層及び電荷輸送層」は、それぞれ、前者における「白色顔料」、「バインダー」、「下引き層」、「感光層」に相当する。
また、後者における「導電性支持体であるアルミドラム」と、前者における「ニッケルシームレスベルト」とは、「導電性基体」の点で一致する。
そして、後者における「電子写真感光体」と、前者における「電子写真感光体を用いたデジタル多色画像形成電子写真装置」とは、電子写真装置の部品としての「電子写真感光体」の点で一致する。
したがって、両者は、
「導電性基体上に白色顔料、バインダーからなる下引き層及び感光層を順次積層してなる電子写真感光体」の点で一致し、
下記の点で相違する。

相違点i:導電性基体に関して、前者は、「ニッケルシームレスベルト」であるのに対して、後者は、「アルミドラム」である点。

相違点ii:前者は、「波長780nmでの光の入射角5°でのニッケルシームレスベルトの鏡面反射率に対する、ニッケルシームレスベルト上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率が13%以下である」のに対して、後者は、その特定がない点。

相違点iii:前者は、「電子写真感光体を用いたデジタル多色画像形成電子写真装置」であるのに対して、後者は、「電子写真感光体」である点。

(当審の判断)
相違点i及びiiiについては、上記3.の相違点1及び3について検討したのと同様に、周知の事項であるから、設計上の微差に過ぎない。
次に、相違点iiについて、検討する。
本願発明の明細書記載の実施例を参照すると、
「アクリル樹脂(アクリディックA-460-60(大日本インキ化学工業製))15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンL-121-60(大日本インキ化学工業製))10重量部をメチルエチルケトン80重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末(TM-1(富士チタン工業製))70重量部を加え、ボールミルで24時間分散し、下引き層塗布液を作成した。これを直径80mm、長さ360mmのニッケルシームレスベルトに塗布し、140℃で20分乾燥し、厚さ2μmの下引き層を形成した。」(段落【0022】)というものである。
ここで、実施例に基づいて比較する。
まず、塗布液(塗工液)の組成は、アクリル樹脂15重量部に対して、
本願発明は、「メラミン樹脂10重量部、酸化チタン70重量部」で、刊行物2発明は、「メラミン樹脂8.35重量部、酸化チタン75重量部」であるから、メチルエチルケトン等の溶剤を除いて重量比はほぼ同じである。
次に、塗布液の作成に関して、本願発明においては、「ボールミルで24時間分散し、」であり、刊行物2発明においては、「上記の材料を、15cmφの硬質ガラスポットに、1cmφのアルミナ焼結ボールとともに投入し、24時間ミリングした。・・・さらに3時間ミリングし、」とあるように、格段異なる処理を行っているわけではないから、作成された下引き層(中間層)自体に差異があるとは考えられない。
また、膜厚は、本願発明のものが2μmで、刊行物2発明のものが3μmであるが、刊行物2発明のものの方が若干厚いものの、これによって、相対鏡面反射率が高くなるとも考えられない。
してみると、本願発明と刊行物2発明の実施例での比較では、下引き層の作成に差異はない。
そして、導電性基体として「ニッケルシームレスベルト」を採用するか、それとも「アルミドラム」を採用するかによって、「波長780nmでの光の入射角5°での導電性基体の鏡面反射率」及び「波長780nmでの光の入射角5°での導電性基体の鏡面反射率に対する、導電性基体上に下引き層を積層した積層体の波長780nmでの光の入射角5°での相対鏡面反射率」が大きく変わるとも考えられない。
したがって、刊行物2発明においても、「波長780nmの光での導電性基体の鏡面反射率に対する、導電性基体上に下引き層を積層した積層体の相対鏡面反射率が13%以下」を満たしている蓋然性が高いといえる。
よって、相違点iiは、実質的な相違点ではない。
なお、相違点iiに関連して、当審からの平成20年7月28日付けの拒絶理由通知に対して、請求人は平成20年9月26日付けの意見書において、単に「構成についての記載が、全くありません。」と主張するのみで、上記と同様の指摘について、実質的に何ら反論していない。
そして、請求人が主張する「優れた画像品質を形成することができるデジタル多色画像形成電子写真装置を提供する」との効果も一般的な目的・効果であって、格別のものではない。
よって、上記相違点に係る構成の変更は、当業者が適宜なし得たことである。
(まとめ)
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1又は2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-15 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願平11-154885
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 木村 史郎
大森 伸一
発明の名称 デジタル多色画像形成電子写真装置  
代理人 伊東 忠彦  

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