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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1189359
審判番号 不服2007-26164  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-25 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 平成 9年特許願第134860号「自動車」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 71877〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年5月26日(優先権主張、1996年5月24日、ドイツ)の出願であって、平成18年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成19年5月2日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、平成19年6月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成19年10月25日付けで審判請求書の請求の理由について手続補正がなされたものであり、その請求項1ないし9に係る発明は、平成19年5月2日付けの手続補正により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 駆動機関、伝動装置、自動化されたトルク伝達機構、トルク伝達機構の制御のための装置及び、トルク伝達機構の操作、例えば接続及び又は遮断のための制御ユニットによって制御可能な作動装置のような操作ユニット、センサ及び場合によっては別の電子装置ユニットに信号接続された制御ユニット並びに、駆動機関の機関モーメントの制御のための機関制御ユニットを備えた自動車において、制御ユニットがギヤの接続されている場合にブレーキ及び負荷レバーの操作されていない状態でクリープ過程を制御して、トルク伝達機構によって制御された所定の伝達可能なクラッチモーメントの場合に自動車がクリープするようになっており、機関制御装置がクリープ過程の制御に際して機関モーメントを少なくともほぼ所定の値だけ高めるようになっており、該所定の値が前記制御されたクラッチモーメントのモーメント値とほぼ同じであることを特徴とする自動車。」


第2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実公平6-42896号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】走行条件によって変速比を無段階に変速制御する無段変速機と組合せ、走行条件によって動作モードを判定し、該動作モードに応じたクラッチ電流を設定することによってクラッチトルクを制御する車両用電磁式クラッチの制御装置において、
アクセル操作を検知するアクセルスイッチの操作頻度から渋滞走行を判定する渋滞判定部と、
車速を検出する車速センサからの信号、上記アクセルスイッチからの信号及びブレーキ操作を検知するブレーキスイッチからの信号を受けると共に、極低速走行用手動スイッチからの信号及び、上記渋滞判定部からの出力信号を受け、上記極低速走行用手動スイッチのON信号又は渋滞判定部からの出力信号が入力する場合で且つ、車速が設定車速以下でアクセル開放時に極低速走行を判定し信号を出力すると共に、車速が設定車速以上又はブレーキスイッチからの信号の入力によって極低速走行時の出力信号を解除する極低速走行判定部を有し、
上記極低速走行部からの出力信号を受けて上記電磁式クラッチのクラッチ電流を一定のクリープ電流に設定する電流設定部を設けることによって、極低速走行時にクリープが生じるようにクラッチトルクを制御することを特徴とする車両用電磁式クラッチの制御装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)

イ.「【産業上の利用分野】
本考案は、車両用電磁式クラッチとして特に無段変速機と組合わせてクラッチトルクを制御する制御装置に関し、詳しくは、極低速走行時にクリープを発生するものに関する。」(公報第1ページ第2欄第10行?第14行)

ウ.「【考案が解決しようとする問題点】
ところで、上記先行技術のドラッグトルクは直結トルクの数分の1の僅かなものであり、車両停止時においてギヤのガタ詰め、無段変速機側の静摩擦トルクを補う程度である。従って、車庫入れや渋滞時等で極低速で走行する場合は、アクセル踏込みによりクラッチトルクを増して走行する必要がある。
ここで、無段変速機は周知のようにエンジン回転数と車速とによる変速パターンで、変速比を無段階に減じてアップシフトする特性を有し、変速開始すると迅速に増速する。このため、上記車庫入れ等で平坦な路面等では増速過ぎてアクセルワークが難しい面がある。また、このとき、アクセル踏込みと開放が頻繁に行われると、電磁式クラッチはトルクコンバータ等と異なり機械的に係合、解放を繰返すので、振動やショックを生じ易い。
このことから、車庫入れ等の極低速で走行する場合は、自動変速(AT)車並のクリープを発生して運転のスムーズ化を図ることが望まれる。
本考案は、このような点に鑑みてなされたもので、車庫入れ、渋滞時等の極低速走行時には、クリープを生じるように制御することが可能な車両用電磁式クラッチの制御装置を提供することを目的としている。」(公報第2ページ第3欄第7行?第28行)

エ.「【作用】
上記構成に基づき、車速が設定車速以下でアクセル開放時において、車庫入れ等のため低速走行用手動スイッチをONした場合や、渋滞判定部で渋滞走行であると判定した場合には、極低速走行判定部の出力によって電磁式クラッチのクラッチ電流は一定のクリープ電流に設定され、これによってクラッチトルクの増大が可能になる。そして、エンジン出力が不足する場合には低速走行判定部の出力によってエンジン回転数をやや上昇させるアイドルアップ手段を設けれることによって伝達トルクが増加し、クリープによりスムーズに極低速走行することができる。こうして極低速走行時の運転性,走行性を向上することが可能となる。」(公報第2ページ第4欄第2行?第14行)

オ.「【実施例】
以下、図面を参照して本考案の一実施例を具体的に説明する。第1図において、本考案が適用される電磁式クラッチを含む伝動系について説明すると、符号1は電磁粉式クラッチ、2は無段変速機であり、無段変速機2は大別すると、入力側から前後進の切換部3、プーリ比変換部4及び終減速部5が伝動構成されて成る。そして、クラッチハウジング6の一方に電磁粉式クラッチ1が収容され、そのクラッチハウジング6の他方と、そこに接合されるメインケース7、更にメインケース7のクラッチハウジング6と反対の側に接合されるサイドケース8の内部に無段変速機2の切換部3、プーリ比変速部4及び終減速部5が組付けられている。
電磁粉式クラッチ1は、エンジンからのクランク軸10にドライブプレート11を介して一体結合するリング状のドライブメンバ12、変速機入力軸13に回転方向に一体的にスプライン結合するディスク状のドリブンメンバ14を有する。そして、ドリブンメンバ14の外周部側にコイル15が内蔵されて両メンバ12,14の間に円周に沿いギャップ16が形成され、このギャップ16はその内側の電磁粉を有するパウダ室17と連通している。また、コイル15を具備するドリブンメンバ14のハブ部のスリップリング18に給電用ブラシ19が摺接し、スリップリング18から更にドリブンメンバ14内部を通りコイル15に結線されてクラッチ電流回路が構成されている。
こうして、コイル15にクラッチ電流を流すと、ギャップ16を介してドライブ及びトリブンメンバ12,14の間に生じる磁力線により、そのギャップ16に電磁粉が鎖状に結合して集積し、これによる結合力でドライブメンバ12に対しドリブンメンバ14が滑りながら一体結合して、クラッチ接続状態になる。一方、クラッチ電流をカットすると、電磁粉によるドライブ及びドリブンメンバ12,14の結合力が消失してクラッチ切断状態になる。そして、この場合のクラッチ電流の制御を無段変速機2の切換部3の操作に連動して行うようにすれば、P(パーキング)又はN(ニュートラル)レンジから前進のD(ドライブ),Ds(スポーティドライブ)又は後退のR(リバース)レンジへの切換時に自動的にクラッチ1が接断して、クラッチペダル操作が不要になる。」(公報第2ページ第4欄第15行?第3ページ第5欄第3行)

カ.「第2図において、上記電磁粉式クラッチの制御系について説明する。本発明に直接必要でないものは省略してその概略について説明すると、例えばメータケーブル取出口等に取付けられて車速に比例したパネルを生じる車速センサ50、例えばイグニッションコイルの一次側電圧を用いてエンジン回転に比例したパルスを生じるエンジン回転数センサ51、例えばアクセル開放時にのみオンしてアクセル操作を検出するアクセルスイッチ52を有し、車速センサ50及びエンジン回転数センサ51の出力信号は制御ユニット53で車速判定部54及びエンジン回転数判定部55をそれぞれ介して動作モード判定部56に入力される。動作モード判定部56は車速との関係で少なくとも4つのモードを判定し、電流設定部57から各モードに応じて直結電流、ドラッグ電流、零電流又はエンジン回転に比例した電流を出力してクラッチコイル15に供給するように構成される。」(公報第3ページ第6欄第6行?第21行)

キ.「また、極低速走行する際に手動で入力する極低速走行用手動スイッチ60と、制御ユニット53においてアクセルスイッチ52の信号を受けて渋滞走行を判定する渋滞判定部61を有する。渋滞判定部61はアクセルスイッチ52のON信号、即ちアクセル開放の回数が一定時間内で設定値以上頻繁に行われた場合に渋滞と判定する。そして、車速センサ50の車速、手動スイッチ60,アクセススイッチ52の操作信号、渋滞判定部61の判定信号及びブレーキスイッチ62の各操作信号は極低速走行判定部63に入力する。極低速走行判定部63は手動スイッチ60のON信号又は渋滞判定部61の渋滞判定信号が入力する場合において、車速VがV≦V_(3)(設定値)にて、アクセル開放時に極低速走行を判定し、このとき電流設定部57で例えば直結電流の1/3のクリープ電流I_(R)を定める。一方、車速VがV>V_(3)又はブレーキスイッチ62のブレーキ信号入力により解除するようになっている。
更に、エンジン出力が不足する場合は、極低速走行判定部63の出力信号により図示しないキャブレータのアイドルアップ手段64を動作し、エンジン回転数を例えば1000r.p.mに上げる構成である。」(公報第3ページ第6欄第22行?第41行)

ク.「次いで、このように構成された制御装置53の動作を第3図のフローチャート図及び第4図のクラッチ電流特性を用いて説明する。動作モードを判定するものとして、クラッチ係合状態でアクセル開放時エンスト等を防ぐ。例えば15?20km/hの車速V_(1),及びクラッチ解放後車両がほとんど停止した状態の例えば5?10km/hの極低車速V_(2)を基準にする。以上、各電速の関係は第4図に示すように、V_(1)>V_(3)>V_(2)である。そして、上記車速V_(1)以上ではクラッチコイル15に供給するクラッチ電流Icを第4図の実線の部分aのような直結電流I_(M)に定めて、電磁粉式クラッチ1を完全に係合した状態に保つ。
一方、上記車速V_(1)以下においてアクセルが踏込まれている場合は、再加速であると判断して第4図の破線のようなエンジン回転数に比例した電流INを流して、再びクラッチ1の係合作用を行う。
これに対して、車速V_(1)以下でアクセル開放の場合は、クラッチ電流Icを第4図の実線の部分bのように略零にしてクラッチ1を完全に解放する。このため、これ以降は無段変速機2において高速段から低速段へのダウンシフトが自動的に行われても、エンジン側が切離されていることから、過大なエンジンブレーキは効かなくなって良好に惰行走行することになる。一方、無段変速機2においては車速の低下に伴い最大変速比に向けてダウンシフトされる。ところで、このクラッチ電流Icが略零の場合に厳密にはクラッチトルクのヒステリシスのため、若干のクラッチトルクを生じてギヤのガタずめ程度は行い、通電モードに備えている。そこで、車速が例えば20km/h以上に自然上昇し再び直結電流が流れてクラッチ1を係合する際に、電流及びトルクの立上りが応答良く行われる。」(公報第3ページ第6欄第42行?第4ページ第7欄第21行)

ケ.「そして、極低車速V_(2)以下のほとんど車両停止状態において、極低速走行が判断されない場合はクラッチ電流Icを第4図の実線の部分cのようなドラッグ電流Idに定める。このドラッグ電流Idは例えば1.5Aの直結電流の数分の1の0.2Aであり、これにより例えば0.1?0.3kgmの微少なドラッグトルクを生じる。そこで、かかる車両停止状態においてこのクラッチ1のドラッグトルクによりエンジン動力の極一部が無段変速機2のベルト34の部分等に作用し、そのベルト部分の静摩擦トルクに消費され、且つ切換部3のギヤのガタをつめることになる。これにより発進時クラッチ1の係合によりエンジン動力が伝達する際に、無断変速機2のベルト34が直ちに回動して、もたつき等を生じることなくプーリ比変換部4で変速された動力を出力してスムーズに発進すること可能になる。」(公報第4ページ第7欄第22行?第36行)

コ.「一方、上記車両停止付近で車庫入れ等のためアクセル開放状態で手動スイッチ60をONすると、極低速走行判定部63で極低速走行が判定され、電流設定部57によりクリープ電流I_(R)が第4図のように流れてそれに応じクラッチトルクを増大する。同時にアイドルアップで大き目のエンジン出力がクラッチ1を介し無段変速機2に伝達することで、車両は最大変速比でクリープを生じて極低速走行する。そして、ブレーキ操作をするとクリープは一時的に解除し、切換部3により極低速で前進又は後進してスムーズに車両を動かし得る。
また、渋滞時にアクセル操作を頻繁に行う場合も、渋滞判定部61の渋滞判定により自動的に上述と同様のクリープを生じて極低速走行する。尚、下り板等で車速VがV>V_(3)になると、クリープは自動的に解除してドラッグモードになる。」(公報第4ページ第8欄第1行?第15行)

サ.「【考案の効果】
以上述べてきたように、本考案によれば、
エンジンからの動力を電磁式クラッチを介して無段変速機の伝動する伝動手段を備えた車両においても、電磁式クラッチのクラッチトルクを制御することによって、クリープによる極低速走行を行うことができ、車庫入れや渋滞時にスムーズな運転が可能になる。
また、渋滞時はそれを判断して自動的にクリープを生じるように制御されるので運転性の面で効果が大きく、車速の増大またはブレーキ操作によってクリープが解除されるように制御されるので、通常の走行に支障を与えない。」(公報第4ページ第8欄第16行?第27行)

シ.「【図面の簡単な説明】
第1図は本考案が適用される電磁式クラッチの一例を示す断面図、第2図は本考案の制御装置の実施例を示すブロック図、第3図は作用のフローチャート図、第4図はクラッチ電流の特性図である。
1……電磁式クラッチ、53……制御ユニット、10……手動スイッチ、61……渋滞判定部、63……極低速走行判定部。」(公報第4ページ第8欄第28行?第35行)

(2)ここで、上記記載事項(1)ア.ないしシ.及び図面から、引用文献に記載されたものについて、次のことが分かる。

記載事項(1)エ.ないしシ.及び図面から、エンジン、電磁式クラッチ1、無段変速機2、制御ユニット53等を備えていることが分かる。

記載事項(1)エ.ないしカ.及び図面から、コイル15にクラッチ電流を流すと、クラッチ結合状態になり、クラッチ電流をカットすると、クラッチ切断状態になり、クラッチ電流の制御を無段変速機2の切換部3の操作に連動して行うようにすれば、切換時に自動的にクラッチ1が接断することが分かる。

記載事項(1)ア.、エ.、キ.、コ.及び図面から、車両の極低速走行時には、クラッチには電流設定部57により定められるクリープ電流I_(R)が流れてクラッチトルクが増大し、また、エンジン回転数をやや上昇させるアイドルアップ手段64により大き目のエンジン出力がクラッチ1を介し無段変速機2に伝達することで、伝達トルクが増大し、車両は最大変速比でクリープを生じてスムーズに極低速走行することができることが分かる。

記載事項(1)コ.及び図面から、車両の極低速走行時には、アクセルが開放状態で、ブレーキ操作がされていないことが分かる。


(3)引用文献記載の発明
上記記載事項(1)、(2)より、引用文献には次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「エンジン、無段変速機2、自動化された電磁式クラッチ1、電磁式クラッチ1のクラッチ電流回路及び、電磁式クラッチ1の接断のための電流設定部57、センサに信号接続された制御ユニット53並びに、エンジンの出力の制御のためのアイドルアップ手段64を備えた車両において、制御ユニット53がギヤの接続されている場合にブレーキ及びアクセルの操作されていない状態でクリープ過程を制御して、クラッチ電流がクリープ電流I_(R)の場合に車両がクリープするようになっており、極低速走行判定部63がクリープ過程の制御に際してエンジン出力をアイドルアップし、かつクラッチトルクを増大するようになっている車両。」


第3.本願発明と引用文献記載の発明との対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「エンジン」、「無段変速機2」、「電磁式クラッチ1」、「電磁式クラッチ1のクラッチ電流回路」、「電磁式クラッチ1の接断のための電流設定部57」、「センサに信号接続された制御ユニット53」、「エンジンの出力の制御のためのアイドルアップ手段64」、「車両」、「アクセル」、「クラッチ電流がクリープ電流I_(R)の場合」、「極低速走行判定部63」、「エンジン出力」、「アイドルアップ」及び「クラッチトルク」は、その機能及び形状からみて、本願発明における「駆動機関」、「伝動装置」、「トルク伝達機構」、「トルク伝達機構の制御のための装置」、「トルク伝達機構の操作、例えば接続及び又は遮断のための制御ユニットによって制御可能な作動装置のような操作ユニット」、「センサ及び場合によっては別の電子装置ユニットに信号接続された制御ユニット」、「駆動機関の機関モーメントの制御のための機関制御ユニット」、「自動車」、「負荷レバー」、「トルク伝達機構によって制御された所定の伝達可能なクラッチモーメントの場合」、「機関制御装置」、「機関モーメント」、「少なくともほぼ所定の値だけ高める」及び「クラッチモーメント」にそれぞれ相当する。

そうすると、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「駆動機関、伝動装置、自動化されたトルク伝達機構、トルク伝達機構の制御のための装置及び、トルク伝達機構の操作、例えば接続及び又は遮断のための制御ユニットによって制御可能な作動装置のような操作ユニット、センサ及び場合によっては別の電子装置ユニットに信号接続された制御ユニット並びに、駆動機関の機関モーメントの制御のための機関制御ユニットを備えた自動車において、制御ユニットがギヤの接続されている場合にブレーキ及び負荷レバーの操作されていない状態でクリープ過程を制御して、トルク伝達機構によって制御された所定の伝達可能なクラッチモーメントの場合に自動車がクリープするようになっており、機関制御装置がクリープ過程の制御に際して機関モーメントを少なくともほぼ所定の値だけ高め、かつ、クラッチモーメントを高めるようになっている自動車。」で一致し、次の点において相違している。

<相違点>
機関制御装置がクリープ過程の制御に際して少なくともほぼ所定の値だけ高める機関モーメントの「所定の値」が、本願発明においては「前記制御されたクラッチモーメントのモーメント値とほぼ同じ」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「前記制御されたクラッチモーメントのモーメント値とほぼ同じ」であるかどうか不明である点。


第4.当審の判断
上記<相違点>について検討する。
引用文献には、前記第2.(2)のように、クリープの際に、クラッチトルクを増大し、同時にアイドルアップによりエンジン出力を増大することが記載されており、その際、エンジン出力の増大量を、クラッチトルクの増大量とほぼ同じか、それ以上とする程度のことは、当業者であれば当然想到する程度のことにすぎない。

したがって、上記引用文献記載の発明に基いて、上記<相違点>に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことにすぎない。

なお、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-22 
結審通知日 2008-07-23 
審決日 2008-08-05 
出願番号 特願平9-134860
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 悟史  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 森藤 淳志
金澤 俊郎
発明の名称 自動車  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  

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