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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E01C
管理番号 1189380
審判番号 無効2008-800084  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-05-12 
確定日 2008-12-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第3055054号発明「コンクリート構造物の機械施工方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3055054号に係る発明は、平成8年1月26日に特許出願され、平成12年4月14日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人は平成20年5月12日に、審判請求書を提出して、本件特許明細書の請求項4及び請求項8に係る発明の特許について特許無効の審判を請求するとともに、平成20年6月3日付けで審判請求書の手続補正書を提出し、また被請求人は平成20年6月30日に答弁書を提出した。
その後、請求人より平成20年10月3日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、また被請求人より平成20年10月3日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、そして、平成20年10月3日に、特許庁第1審判廷において、口頭審理がなされたものである。

2.特許請求の範囲の記載
本件特許第3055054号の明細書の特許請求の範囲には、請求項4及び請求項8について次のように記載されている。
「【請求項4】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において、
前記鉄筋を浮動設置し、前記モールドの移動と共に前記鉄筋を先導モールドに導入させ、前記鉄筋の内形を前記先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工方法。」
「【請求項8】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する装置において、
前記鉄筋を浮動設置された鉄筋であり、前記鉄筋の内形と接触する接触部材を前記先導モールドの内部に設けてなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工装置。」

そして、本件の請求項4及び請求項8の記載を分説すると、構成要件A?構成要件Hに規定される次のとおりのものである。

【請求項4】
A 先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、
B その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において、
C 前記鉄筋を浮動設置し、前記モールドの移動と共に前記鉄筋を先導モールドに導入させ、
D 前記鉄筋の内形を前記先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工方法。

【請求項8】
E 先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、
F その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する装置において、
G 前記鉄筋を浮動設置された鉄筋であり、
H 前記鉄筋の内形と接触する接触部材を前記先導モールドの内部に設けてなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工装置。

3.請求人の主張
(1)請求の趣旨
請求人は、「特許第3055054号の請求項4及び請求項8の係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として甲第1?12号証を提出している。

(証拠方法)
甲第1号証の1:米国特許第3792133号
甲第1号証の2:米国特許第3792133号の部分訳
甲第1号証の3:米国特許第3792133号の全文訳
甲第2号証の1:米国特許第4084928号
甲第2号証の2:米国特許第4084928号の部分訳
甲第2号証の3:米国特許第4084928号の全文訳
甲第3号証:特開平7-138909号公報
甲第4号証の1:米国特許第3749505号
甲第4号証の2:米国特許第3749505号の部分訳
甲第5号証の1:米国特許第3856425号
甲第5号証の2:米国特許第3856425号の部分訳
甲第6号証:米国特許第4217065号
甲第7号証:飛島建設(株)発行「とびしま技報」1980.8
甲第8号証の1:米国特許3922124号
甲第8号証の2:米国特許3922124号の部分訳
甲第9号証:特開平6-322782号公報
甲第10号証:(社)日本道路協会発行「道路」昭和44年11月号
甲第11号証:(社)日本道路建設業協会発行「スリップフォームぺーバーによるコンクリート舗装」昭和45年4月20日
甲第12号証:米国特許第4312602号

なお、甲第1号証の3及び甲第2号証の3は、平成20年6月3日付け手続補正書により提示されたものであり、それを除く全ては平成20年5月12日付け審判請求書により提示されたものである。

(2)無効とすべき理由の内容
以下に述べるとおり、本件請求項4に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
また、請求項8は請求項4とカテゴリーのみ相違するだけのものであり、請求項4と同様の理由で無効とすべきである。

(a)構成要件A及びBは、甲第1号証?甲第9号証に示すように、本件特許の出願日において既に周知技術であるし、この点は本件特許公報【0004】?【0006】に記載されているとおり本件特許出願人も認めている出願前の公知技術に過ぎない。(審判請求書第10頁第20?27行)

(b)構成要件Cは、甲第1号証では、補強メッシュ104を浮動状態におき、図6に示す先導モールド114に導入させることとして開示されている。
一方、甲第2号証では、補強ロッド22が浮動状態にあって、先導モールドに該当する部材94にプーリ188の接触部材によって導入されることが開示されている。
また、甲第8号証の補強部22、甲第9号証の鉄筋3は「浮動設置される鉄筋」に相当する。
さらに、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証において、「鉄筋を拾い上げる」等の記載から、鉄筋が固定されていないことは明らかである。(審判請求書第10頁第28-38行)

(c)構成要件Dに関し、
(i)甲第1号証では、図9から明らかなように、リップ108及びガイドプレート114を補強メッシュ104と接触させながら移動させることとして開示されている。
(ii)特に、構成要件Dの「鉄筋の内形」において、甲第1号証のリップ108はその図9に示されるように、ホッパー内のコンクリートによってリップ108は加圧され閉じようとする為補強メッシュ104(鉄筋)の両側に接触し振れを防止するものである。
補強メッシュ104の一方側を外側としてみれば、他方側は内側となる。
つまるところ、甲第1号証には、鉄筋の内外を問わず、鉄筋に接触部材を接触させる技術的思想が開示されていると云える。
また、甲第2号証のプーリ部188,194,202は、補強ロッド22に、図7から明確なように、ロッド22がプーリに、はまり込み、振れを防止し接触する。
すなわち、甲第2号証において、鉄筋に接触部材を接触させる技術的思想が開示されていると云える。
特に、図示例として4つ示される補強ロッド22の全体を、図3及び図4と同様な鉄筋構造物としてみれば、プーリ部188は係る鉄筋構造物の内側(内形)に接触する「接触部材」に相当する。
(iii)構成要件Dの「先導モールドの内部に設けられた接触部材」に対し、甲第1号証のリップ108は、同じく先導モールド114の内部最後尾に設けられているが、甲第2号証のプーリ部188等は先導モールド94の外側に位置している点で構成要件Dとは相違している。しかし、これを先導モールド94の内部に設けることは、容易に推考し得る。
また、甲第7号証49頁図-5の「鉄筋カブリ調節金具」は、正に「先導モールドないに設けられた接触部材」である。
(iv)構成要件Dの「先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなる」構成に関し、甲第1号証のリップ108及び先導モールド114は、先導モールド内での鉄筋の振れを防止するため、本件特許発明の効果も、甲第1号証記載のものから予測できる効果以上のものはない。
(v)また、甲第2号証のプーリ部188等も先導モールド内での鉄筋の振れを防止するため、本件特許発明の効果も、甲第2号証記載のものから予測できる効果以上のものはない。
さらに、甲第7号証図-5の「鉄筋のカブリ調節金具」も、連続的施工で、あらかじめ組まれた鉄筋を浮動設置し、先導モールド内での鉄筋の振れを、躯体鉄筋全体に対し、内周及び外周に振れを防止するため、本件特許発明の効果も、甲第7号証記載のものから予測できる効果以上のものはない。(審判請求書第11頁第1行-第12頁第4行)

また、審判請求書第3頁右欄には、構成要件Dに対応するものとして、甲第3号証における【0020】及び【0024】の記載並びに甲第4号証における図1の記載が示されている。

(3)語の解釈について
平成20年10月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成20年10月3日の口頭審理における請求人の陳述によれば、以下のとおりである。

(a)「予め組み立てられた鉄筋」の語の解釈について
「予め組み立てられた鉄筋」とは、鉄筋をつなぎ合わせて線形に組み立てられた鉄筋も含まれる。
(b)「鉄筋の浮動設置」の語の解釈について
「浮動設置」とは、鉄筋を固定せず置くこと、換言すれば鉄筋が稼働自由に置かれることと解される。甲第1号証のものは技術常識からみて浮動設置であると解される。
(c)「鉄筋の内形と接触する接触部材」の語の解釈について
「鉄筋の内形と接触する接触部材」とは、鉄筋の内側形状にほぼ等しい形状を有し、鉄筋の振れを防止するようその内側に宛がわれるものと解される。
(d)「先導モールド」について
甲第1号証のサイドプレート114及び可撓性リップ108は先導モールドであり、接触部材でもある。

4.被請求人の主張
(1)答弁の趣旨
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。

(2)答弁の概要
請求人の提出したいずれの甲号証にも本件発明の特徴的な構成要件Cおよび構成要件Dを示していないから、甲号証から本件発明を容易に発明することができたとすることはできない。
よって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とされるべきであるとの請求人の主張は、理由がない。(答弁書第10頁第1-8行)

(3)答弁の内容
本件特許発明の請求項4の特徴事項は構成要件C及び構成要件Dであるので、これらの構成を中心として請求人の主張に反論することとする。

(a)構成要件Cと甲号証との関係について
(i)構成要件Cと甲第1号証との関係について
「本件発明の請求項4の冒頭で言及している「前記鉄筋」は請求項4の3行目?4行目の「予め鉄筋を組み立てて置き」で言及している「鉄筋」を受けているので、この「前記鉄筋」は「予め組み立てられて置かれた鉄筋」を意味している。そして、この「予め組み立てられて置かれた鉄筋」は浮動設置されていることが要件である。ここでいう浮動設置とは、鉄筋が固定されることなく置かれることであると解することができるが、甲第1号証の「鉄筋補強メッシュまたはフェンス108」はそのままの形では自立できないので、何らかの手段で自立できるように固定されていなければならないことになる。
・・・
従って、甲第1号証において、「鉄筋補強メッシュまたはフェンス108」が浮動設置されているという根拠は何処にもないから、甲第1号証において、鉄筋が浮動設置されていたという主張は成り立たない。」(答弁書第3頁第1-21行)
(ii)構成要件Cと甲第2号証との関係について
「甲第2号証に係る発明は、道路に設置される鉄筋コンクリート製のバリアなどを成形する装置に関するもので、この発明ではバリア内に埋設される鉄筋は図3及び図4に示されたような鉄筋籠32と補強ロッド22とからなっている。鉄筋籠は地中に固着されたサポート部材34に取り付けられたクロス部材36と、クロス部材に取り付けられた一対のほぼ水平に延長する部材38と、その部材38に取り付けられた複数の逆V字型の部材40とから構成されている(甲第2号証第3欄29行?38行)。即ち、この鉄筋籠は地上に浮動設置されていないことは明らかである。なお、補強ロッド22はプーリを介して型枠内に導入されるように構成されているが、この補強ロッドは炭ある棒状鉄筋で本件発明が対象とする予め組み立てられた鉄筋の概念には含まれない。
本件発明において、浮動設置された鉄筋とは組み立てられた地上に固定されることなく設置された鉄筋のことをいい、甲第2号証で対比される鉄筋としては鉄筋籠32が該当し、補強ロッドは対比される鉄筋ではない。甲第2号証の鉄筋籠は浮動設置されていないから、甲第2号証に本件発明の浮動設置された鉄筋が示されているという請求人の主張は採用されるべきものではない。」(答弁書第4頁第6-20行)
(iii)構成要件Cと甲第8号証との関係について
「甲第8号証の発明はコンクリートパイル(杭)を形成する装置に関するものである。その図6及び図7にはコンクリートパイル中に埋設される鉄筋22を下方の半円形状のモールド3の鋼製ライニング5の内面に設置し、この鉄筋22を鋼製ライニング5の内面から浮上させるために成型機1の移動とともに移動するU字型の移動ナイフ34を設けている。
これに対し本件発明は、「道路に設けられる側溝や防護柵、側壁、中央分離帯等の有筋コンクリート構造物を機械施工する方法及び装置」(明細書段落番号【0001】に関するもので、甲第8号証のコンクリートパイルの製造方法並びに装置とは技術分野を全く異にする。また、本件発明では上記の側溝等を構築するために予め鉄筋を組み立てて置き、その鉄筋を地上に浮動設置するもので、鉄筋を半円形状のモールド3の鋼製ライニング5の内面に浮動設置するのとは目的及び作用効果が全く異なり、甲第8号証のように浮動設置された鉄筋を本件発明に適用することは全くできない。」(答弁書第4頁第26行-第5頁第7行)
(iv)構成要件Cと甲第9号証との関係について
「本件発明の明細書の段落番号【0004】の記載にもあるように、従来はベースコンクリートその上に設置される鉄筋とはアンカー鉄筋等を使用して固着するのが一般的であったことからすると、甲第9号証で「このベースコンクリート2の凸部12aの上に、既に組み立てられている鉄筋3を設置していく」との記載から、鉄筋がベースコンクリート上に固定されずに浮動設置されていたということはいえない。」(答弁書第5頁第26-31行)
(v)構成要件Cと甲第10号証との関係について
「甲第10号証は舗装道路を鉄筋コンクリート製に打設するスリップフォーム工法についての技術を示し、その写真2は「連続縦筋舗装の打設前」を示しており、その鉄筋は写真1のように網状に配置されておらず、24ft幅内に48本並べられているだけで組み立てられていない。
即ち、この甲第10号証の鉄筋は本件発明でいう予め組み立てられた鉄筋に該当しない。従って、甲第10号証には予め組み立てられた鉄筋を浮動設置する本件発明の構成については示されていない。」(答弁書第6頁第10-16行)
(vi)構成要件Cと甲第11号証との関係について
「甲第11号証には、甲第10号証と同様に、所定幅内に多数本の縦鉄筋を平行に配置し、パイプが鉄筋を拾い上げながら連続鉄筋コンクリートを打設していく方法が示されている。
この甲第11号証の鉄筋は、甲第10号証の場合と同様に、本件発明でいう予め組み立てられた鉄筋に該当しない。従って、甲第11号証には予め組み立てられた鉄筋を浮動設置する本件発明の構成については示されていない。」(答弁書第6頁第27行-第7頁第1行)
(vii)構成C要件と甲第12号証との関係について
「甲第12号証には、甲第11号証と同様に、所定幅内に多数本の縦鉄筋を平行に配置され、パイプが鉄筋を拾い上げながら連続鉄筋コンクリートを打設していく方法が示されている。
この甲第12号証の鉄筋は、甲第10号証及び甲第11号証の場合と同様に、本件発明でいう予め組み立てられた鉄筋に該当しない。従って、甲第12号証には予め組み立てられた鉄筋を浮動設置する本件発明の構成については示されていない。」(答弁書第7頁第8-14行)

(b)構成要件Dと甲号証との関係について
(i)構成要件Dと甲第1号証との関係について
「甲第1号証にはただ単に、「フレキシブルリップ108は補強メッシュの進入だけを許容する。・・・(中略)・・・リップはその間に補強メッシュにダメージを与えることなく通過させる。」と記載されているだけであるから、この記載が構成Dの「前記鉄筋の内形を前記先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなる」構成を示しているということにはならないことは明らかである。」(答弁書第7頁第28行-第8頁第2行)
(ii)構成要件Dと甲第2号証との関係について
「構成Cと甲第2号証との関係について既述したように本件発明の鉄筋と対比する甲第2号証の鉄筋は組み立てられた「鉄筋籠32」であって、補強ロッド22ではない。そして、甲第2号証の「鉄筋籠32」はモールドの内部と接触していないから、甲第2号証には本件発明の構成C(「構成D」の誤り。)は示されていない。」(答弁書第8頁第13-16行)
(iii)構成要件Dと甲第3号証との関係について
「甲第3号証の発明は機械打設装置の型枠部分の全体を交換することなく、部分的な交換や型枠部分を構成する部材を移動することにより高さや幅、形状の異なるコンクリート構造物を打設できるようにすることを目的としており(要約の目的の欄参照)、その関係で段落番号【0024】では先導型枠部11Aを可変調整ねじによってコンクリート構造物の幅方向に移動可能な構造としたにすぎない。また、段落番号【0020】の先導型枠部11Aが「予め設置されている鉄筋16をその中に位置させるものである」との記載から、先導型枠部11Aの内面部が「鉄筋に接触する接触部材」に相当すると解することはできない。
甲第3号証には本件発明のように、先導モールド内での鉄筋の振れを防止するために、先導モールドの内部に接触部材を設けることの記載もなければ、鉄筋の内形を接触部材と接触させるとの開示も示唆もない。」(答弁書第8頁第24行-第9頁第3行)
(iv)構成要件Dと甲第4号証との関係について
「甲第4号証の発明は鉄筋の埋設された道路を形成する装置に関するもので、鉄筋46は棒状鉄筋で本件発明のように予め組み立てられた鉄筋ではない。従って鉄筋の内形を先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させるといった、技術的要請も課題もない。」(答弁書第9頁第7-10行)
(v)構成要件Dと甲第7号証との関係について
「甲第7号証の円筒状の鉄筋コンクリート構造物をスリップフォーム工法で構築する技術に、たとえ本件発明の「接触部材」に相当する部材が示されていたとしても、本件発明のように「接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させること」については示されていないし、また甲第7号証の技術は、本件発明の「道路に設けられる側溝や防護柵、側壁、中央分離帯等の有筋コンクリート構造物を機械施工する方法及び装置」(明細書段落番号【0001】参照)と関連性が無く、甲第7号証の「接触部材」を本件の接触部材に置き換えることは全くできない。」(答弁書第9頁第24-31行)

(4)語の解釈について
平成20年10月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成20年10月3日の口頭審理における被請求人の陳述によれば、以下のとおりである。

(a)「予め組み立てられた鉄筋」の語の解釈について
鉄筋の継手は鉄筋の組立の概念に含まれない。鉄筋の組立とは、「鉄筋が交差するように組み立てる」ことを意味する。
(b)「鉄筋の浮動設置」の語の解釈について
「浮動設置」の語の解釈(「浮動設置」とは、鉄筋を固定せず置くこと、換言すれば鉄筋が稼働自由に置かれることと解される。)については争わない。甲第1号証のものは、補強メッシュ自体は自立性がなく、文献に記載はないが、固定されているものと考えるのが妥当。
(c)「鉄筋の内形と接触する接触部材」の語の解釈について
「鉄筋の内形と接触する接触部材」とは、鉄筋の内側に接して、鉄筋の揺れを拘束するものであって、形状は問わない。
(d)「先導モールド」について
甲第1号証の可撓性リップ108は、ホッパー部に設けられている。

5.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに、次のことが記載されている。
(a)「好ましくは、バリア壁10は鉄製補強メッシュまたはフェンス104によって補強されることが好ましく、このような補強は、図5の補強通過用開口106を通じてスクリードに導入される。開口106は、バリア側壁18の構成と同様の垂直的な構成を有し、補強メッシュは開口106を通じて、バリア側壁18に対応するように導入され、側壁内で図1に示すように位置することになる。
ホッパー102内のコンクリートが補強開口106を通過するのを回避するために、上記補強メッシュの上記ホッパーおよびスクリード中への送入を可能にしつつ、可撓性リップ108を用いて上記開口部を閉める。図9を参照して、リップ108は、ゴムまたは同様の材料で成形され得、ブラケット並びにナット接続及びボルト接続112により、ホッパー前壁110上に取り付けられる。これらのリップ108を相互に斜めに配置することにより、上記ホッパー内のコンクリートに起因して圧力が当該リップに付加されて当該リップが閉まるが、リップはその間に補強メッシュにダメージを与えることなく通過させる。
ガイドプレート114は、上記補強メッシュを上記開口部中にガイドするために、ホッパー壁110に取り付けられた開口部108の各側部上に配置される。穴116も、電気バイブレータ118を受け入れるために、ホッパー壁110中に成形される。これらの電気バイブレータ118は、コンクリート分野において周知のように、上記ホッパー中に延び、部分的にその側壁間のスクリード32中に延びて、コンクリートを振動させ、その密度を増加させるようにする。」(第7欄第3?31行)
(b)「動作時において、支持車30は、スクリード側壁64および74の下縁部が基礎の上面上に実質的に配置されるように、基礎12上に配置される。上記スクリードの高さおよび位置は、拡張可能モータ42を通じて、極めて正確に規制され得る。ホイール36を駆動する油圧モータは活性化されて、コンベヤシュート48の方向に支持車をゆっくりと移動させ、硬い混合コンクリートが、普通は生コンクリートトラックから上記コンベヤシュートの下側部位中へと導入される。コンクリートは、らせん状部50によってホッパー52に導入され、スクリードホッパー102に落ちる。穴116内部のバイブレータ118はコンクリートを振動させ、空気の進入をさせないようにし、コンクリートはスクリード側壁64、76によって形作られる。ホッパー102が満たされると、側壁64と76の間のキャビティが満たされ、支持車が前方に移動するにつれ、スクリードによってバリア壁10が形成される。図2から明らかなように、側壁64および76の後端部は、上記壁の下側領域の支持部の最大長さが得られるように、垂直に対して斜めに配置される。上記支持車がその移動経路内を移動すると、補強メッシュ104が開口106を通じてホッパーおよびスクリード中に導入され得、このような補強により、コンクリートが完全に硬化するまでに、上記バリア壁の形成の維持が支援される。」(第8欄第10?36行)
(c)上記記載事項(a)および(b)並びに図1?5及び図9の記載を参酌すると、支持車30は、ガイドプレート114とホッパー102を有し、コンクリート構造物が施工される経路に沿って移動し、その支持車10の移動につれて、予め組み立てられた補強メッシュ104がガイドプレート114により案内されるとともにリップ108を有する開口106を経てホッパー102内に導入され、ホッパー102にコンクリートが満たされることによりバリア壁10が形成されるものが記載されている。

上記記載事項(a)?(c)及び技術常識からみて、甲第1号証には、次の構成要件a?cを備えた発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「構成要件a:ガイドプレート114とホッパー102を有する支持車30をコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、
構成要件b:その移動経路に沿って予め補強メッシュ104を組み立てて置き、前記ホッパー102に生コンクリートを連続的に供給しながらガイドプレート114に前記補強メッシュ104を順次導入してホッパー102によってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において、
構成要件c:前記支持車30の移動と共に前記補強メッシュ104をガイドプレート114に導入させるコンクリート構造物の機械施工方法。」
との発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに、次のことが記載されている。
(a)「【請求項1】成型型枠部を有する機械打設装置を移動可能な車両に設置し、該成型型枠部が車両進行方向の順に門型の先導型枠部と、導入型枠部と、成型型枠部と、コテ仕上型枠部となっており、導入型枠部にコンベヤよって生コンクリートを連続して送り込み、前記車両を走行させることによって成型型枠部、コテ仕上型枠部によってコンクリート構造物を連続的に成型するようにした機械打設方法において、・・・」
(b)「【0006】上記公知の機械打設装置の作用は以下のとおりである。道路上には予め鉄筋9が組立てられており、機械打設装置5の型枠部8は該鉄筋9を覆うように設けられる。・・・」
(c)「【0020】先導型枠部11Aは対向して設置される2枚の板状体からなっている。この先導型枠部11Aは、導入型枠部11Bから前側にこぼれ落ちた生コンクリートが散乱しないように収容すると同時に、予め設置されている鉄筋16をその中に位置させるものである。」
(d)「【0024】尚、先導型枠部11Aについても成型型枠部11C、コテ仕上型枠部11Dと同様に可変調整ねじによってコンクリート構造物の幅方向に移動可能な構造としても良い。・・・」

(3)甲第7号証
(a)第42?49頁の記載並びに第45頁の図-2、図-3及び第49頁の図-5の記載によれば、サージタンクのような円筒形の鉄筋コンクリート構造物をスリップフォーム工法で構築する技術が開示されており、「鉄筋のカブリ調節金具」が円筒状に組まれた鉄筋の内周部分及び外周部分に接しているものが記載されている。

(4)甲第8号証
甲第8号証には、図面とともに、次のことが記載されている。
(a)「図6および7において、モールディングベッドの上を機械が前進する間、特殊要素34は補強部22を持ち上げる目的を達成する。補強部22は完成されたパイルではコンクリートの内部に全体が封入され、したがって、それが下部モールド半分部3において伸張されるとき、それは下部モールド半分部の表面より少し上に位置することになる。しかし、パイルがかなり長く伸張されるとき、補強部のたわみは、下部モールド半分部3の表面にかなり近い位置に到達する。これを避けるため、要素34は機械1に装着され、その移動に連動する。図6および7から明らかなように、要素は、移動間に機械の前方に移動する一方の縁を有し、テーパーから与えられたU型ナイフを備えており、それが補強部22を持ち上げて、要素34の内面の上に載せる。」(第2欄第63行?第3欄第12行)
(b)「図6および7によれば、装置34は、たとえその引っ張りが適切な位置に維持することができるほど十分ではないとき、補強部22がパイルの中で正しい位置になることを確実にする。」(第4欄第11?14行)

(5)甲第9号証
甲第9号証には、図面とともに、次のことが記載されている。
(a)「【請求項1】 自走機械の側部に、締固め装置および移動方向の前後が開口した型枠からなる整形装置を装着し、未だ固まらないコンクリートを前記型枠内に供給して締固め装置により締固め、整形装置により所望の形状に整えながら型枠を移動し、コンクリート構造物を連続的に構築するに際して、
・・・
第2工程として、このベースコンクリート上に、別途組み立てられた鉄筋を敷設し、
・・・」
(b)「【0010】鉄筋3は、縦鉄筋3aと上部中央が開口したフープ鉄筋3bからなり、工場あるいは現場で組み立てられる。・・・」
(c)「【0014】・・・
(ii)このベースコンクリート2の凸部12aの上に、既に組み立てられている鉄筋3を設置していく。」
(d)「【0017】
【発明の効果】・・・
(2) 別途組立てられた鉄筋が所望の位置に確実にセットされ、型枠と鉄筋とが衝突するようなことはない。
・・・」

6.当審の判断
本件特許第3055054号の請求項4及び請求項8に係る発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、上記「2.特許請求の範囲の記載」のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明4」、「本件発明8」という。)。

(1)本件発明4について
(a)甲第1号証記載の発明との対比
本件発明4と甲第1号証記載の発明とを対比すると、その構成の機能及び作用からみて、甲第1号証記載の発明の「ガイドプレート114」が本件発明4の「先導モールド」に相当し、以下同様に、「ホッパー102」が「ホッパー部と成形モールド」に、「支持車30」が「モールド」に、「補強メッシュ104」が「鉄筋」に、それぞれ相当する。
したがって、両者の構成要件を対比すると、
「先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ(構成要件A)、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において(構成要件B)、
前記モールドの移動と共に前記鉄筋を先導モールドに導入させるコンクリート構造物の機械施工方法。」
である点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

(相違点1)
「鉄筋」について、本件発明4が浮動設置している(構成要件C)のに対し、甲第1号証記載の発明が浮動設置しているのかどうか不明である点。

(相違点2)
本件発明4が、鉄筋の内形を先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなる(構成要件D)のに対し、甲第1号証記載の発明が、このような接触部材を有しているかどうか不明である点。

(b)検討
(構成要件Cについて)
構成要件Cにおける「鉄筋を浮動設置し」について検討すると、「浮動設置」とは、鉄筋を固定せず置くこと、換言すれば鉄筋が稼働自由に置かれることと解され、この解釈については、両当事者とも争いはない。
また、構成要件Cにおける「鉄筋」とは、構成要件Bにおける「鉄筋」、すなわち、予め組み立てて置かれた「鉄筋」を指している。構成要件Bにおける「予め鉄筋を組み立てて置き」について検討すると、発明の詳細な説明には、具体的な定義は記載されていない。そして、一般には、「組み立て」とは「いくつかの部分品を組み合わせて、一つのものを作りあげること」(参照:「大辞林」三省堂)であり、「鉄筋を組み立てたもの」としては、立体構造のもの、平面構造のもの、線形構造のものが一応考えられる。しかしながら、本件特許明細書の請求項4には「鉄筋の内形を・・・接触させながら」と記載され、実施例として「【0027】次に、図4の(D)に示す実施例は、・・・該底板に接触部材19Dを設けたものである。そして、該接触部材19Dが鉄筋16の内形と接触することにより該鉄筋16の振れを防止している。」と記載されており、図面には立体構造のものが記載されていることを参酌すると、本件特許明細書における組み立てられた「鉄筋」は内形、外形を有しており、三次元的立体構造であるものと解され、特に、本件発明4の組み立てられた「鉄筋」は、内形を有していることが構成要件Dから明らかであり、内側に空間部を有する立体構造であるものと解される(ここで、本件特許明細書における「内形」の語は、必ずしも明らかではないが、特許明細書及び図面の記載全体からみて、「組み立てられた鉄筋の内側の部分」を指すものと解釈した。)。
してみると、本件発明4における「鉄筋」とは、内側に空間部を有し、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」であると解される。

甲第1号証の「補強メッシュ104」は、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」ではあるが、ホッパー102(「ホッパー部」に相当)やガイドプレート114(「先導モールド」に相当)に導入される前に、「補強メッシュ104」がどのような状態であるか(浮動設置か否か)について何ら開示がされていない。また、審判請求人が提出した平成20年10月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成20年10月3日の口頭審理における請求人の陳述をみても、「補強メッシュ104」が必然的に浮動設置されていると解するに十分な根拠が開示されていない(審判請求人は、ガイドプレート114を設けることの技術的意義(振れの防止)からみて、「補強メッシュ104」が浮動設置しているものと解しているが(上記陳述要領書第4頁第24行-第5頁第6行)、甲第1号証の図1からみて「補強メッシュ104」はほぼ垂直な「く」の字型に形成されているので、下方が固定設置されていたとしても上方が安定せず振れることは十分に想定され、固定設置している場合も含めてガイドプレート114は機能しているものと解される。してみると、ガイドプレート114の存在をもって、「補強メッシュ104」が必然的に浮動設置されていると解することはできない。)。
また、甲第8号証について検討すると、上記記載事項5.(4)(a)、(b)及び図面の記載からみて、「補強部22」は、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」であり、浮動設置される「鉄筋」と解される。しかしながら、甲第8号証の発明はコンクリートパイル(杭)を形成する装置に関するものであって、「補強部22」は、コンクリートパイルを形成するため、コンクリートパイル内に埋設される、立体構造に組み立てられた「鉄筋」であり、円柱状のコンクリートパイル自体が完成されたコンクリート構造物であるために、「補強部22」が半円状のモールド3に固定されることは想定されず、「補強部22」の浮動設置は甲第8号証の発明において、必然的な構成であるものと解される。一方、本件発明4に関する「道路に設けられる側溝や防護柵、側壁、中央分離帯等の有筋コンクリート構造物」(本件特許明細書【0001】)は、コンクリート構造物が地面上に設置されるものであり、設置箇所において鉄筋が埋設されたコンクリート構造物が形成されるものであるので、甲第8号証のコンクリートパイル(杭)を形成するものとは技術分野を異にしており、鉄筋を埋設するコンクリート構造物を対象としている点で共通するのみであって、目的及び作用効果を含めて、その形成方法は大きく異なっている。よって、甲第8号証の「補強部22」が浮動設置された鉄筋であると解されたとしても、それを甲第1号証記載の発明に適用することは容易になし得るものとは認められない。
また、甲第9号証について検討すると、上記記載事項5.(5)(a)?(d)及び図面の記載からみて、「鉄筋3」は、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」と解されるが、浮動設置されたものか否かについては何ら開示されていない。

なお、甲第2号証、甲第10号証、甲第11号証及び甲第12号証については、「鉄筋」について、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」ではないので、構成要件Cを充足しない。

してみると、相違点1に係る本件発明の構成要件Cは、審判請求人の提示したいずれの証拠にも開示されておらず、またこれらの証拠から自明な事項ともいうことはできない。

(構成要件Dについて)
構成要件Dにおける「鉄筋の内形を前記先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながら」について検討すると、「鉄筋の内形」とは、上記6.(1)(b)で述べたとおり、「組み立てられた鉄筋の内側の部分」と解される。また、「接触部材」とは、本件特許明細書【0027】によれば、「鉄筋の内形と接触することにより該鉄筋の振れを防止しているもの」と解される。

甲第1号証の「補強メッシュ104」をみると、上記6.(1)(b)で述べたように、ほぼ垂直な「く」の字型に形成されており、強いて「内形」について解釈すると、「く」の字型の折れ曲がった内側を空間部とすれば、甲第1号証の図1において、「補強メッシュ104」の右側が「内形」に相当すると解される。
そして、甲第1号証の「ガイドプレート114」は、「補強メッシュ104」をホッパー部まで案内するものと解されるが、「補強メッシュ104」と常に接触し、振れを防止しているかどうかが不明であり、さらに「補強メッシュ104」の「内形」と接触しているかどうかも明らかではない。してみると、甲第1号証の「ガイドプレート114」は、本件発明4の「接触部材」に相当しない。
また、甲第1号証の「リップ108」は、甲第1号証の図9に示されるように、コンクリートが開口106から流出しないように開口106を閉じるように設けられ、ゴム又は同様の材料で形成され、ホッパーへの補強メッシュ104の進入だけを許容するものである(甲第1号証第7欄第12-23行)。そして、「リップ108」は、補強メッシュ104のホッパーへの進入にあたり、接触しているものではあるが、鉄筋の振れを防止する程度に接触しているかは不明である。「リップ108」がゴム又は同様の材料で形成されていることを考慮すれば、補強メッシュ104に振れがあった場合、「リップ108」は振れに応じて変形するのみであって、振れを防止する機能を有するものとは解されない。してみると、甲第1号証の「リップ108」は、本件発明4の「接触部材」に相当しない。
審判請求人は、平成20年10月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成20年10月3日の口頭審理における陳述により、甲第1号証の「ガイドプレート114」及び「リップ108」が、本件発明4の先導モールド及び接触部材に相当する旨を主張するが、「ガイドプレート114」及び「リップ108」を合わせて一つの部材とみても、常に「補強メッシュ104」と接触し、かつ振れを防止している部材とみることはできない。
また、甲第3号証について検討すると、「接触部材」に相当する部材を備えていない。
また、甲第7号証について検討すると、上記記載事項5.(3)(a)にもあるとおり、甲第7号証はサージタンクのような円筒形の鉄筋コンクリート構造物をスリップフォーム工法で構築する技術が開示されているものであり、甲第7号証の第49頁の図-5をみると、「鉄筋のカブリ調節金具」は円筒状に組まれた鉄筋の内周部分及び外周部分に接しているのが見て取れる。
ここにおいて、円筒状に組まれた鉄筋の「内形」について考察すると、「鉄筋の内形」とは、上記6.(1)(b)で述べたとおり、「組み立てられた鉄筋の内側の部分」と解され、「内形」を有する「鉄筋」とは内側に空間部を有する立体構造であると解されることから、円筒状に組まれた鉄筋の「内形」は内周部分ではなく、内周部分と外周部分との間の鉄筋の空間部が相当するものと解される。そして、円筒状に組まれた鉄筋の内周部分と外周部分は、鉄筋の「外形」に相当するものと解される。
してみると、「鉄筋のカブリ調節金具」は円筒状に組まれた鉄筋の内周部分及び外周部分に接していることから、鉄筋の内形に接触するものではなく、本件発明4の「接触部材」に相当しない。

なお、甲第2号証及び甲第4号証については、「鉄筋」について、予め立体構造に組み立てられた「鉄筋」ではないので、構成要件Dを充足しない。

してみると、相違点2に係る本件発明の構成要件Dは、審判請求人の提示したいずれの証拠にも開示されておらず、またこれらの証拠から自明な事項ともいうことはできない。

以上のことを総合すると、本件発明4は甲第1?12号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本件発明8について
本件発明8は、「方法」の発明である本件発明4を、カテゴリーの異なる「物」の発明としたものであり、表現上の差異はあるものの、実質的構成においては、本件発明8の構成要件Eは本件発明4の構成要件Aに、同じく、構成要件Fは構成要件Bに、構成要件Gは構成要件Cに、構成要件Hは構成要件Dにそれぞれ対応している。
してみると、上記6.(1)で検討した事項がそのまま、本件発明8における検討に用いることができる。
よって、本件発明8は、本件発明4と同様の理由により、甲第1?12号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由によっては、本件発明4及び本件発明8に係る特許を、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願平8-31257
審決分類 P 1 123・ 121- Y (E01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 山口 由木
関根 裕
登録日 2000-04-14 
登録番号 特許第3055054号(P3055054)
発明の名称 コンクリート構造物の機械施工方法及び装置  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 羽鳥 亘  
代理人 中村 希望  
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