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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200519597 | 審決 | 特許 |
不服200511006 | 審決 | 特許 |
不服200317444 | 審決 | 特許 |
不服200510632 | 審決 | 特許 |
不服200516973 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1189417 |
審判番号 | 不服2005-296 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-06 |
確定日 | 2008-12-11 |
事件の表示 | 平成10年特許願第361637号「皮膚化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-178125〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年12月18日の出願であって、最初の拒絶理由通知に応答して平成15年10月31日付けで手続補正がなされ、その後、最後の拒絶理由が通知され、それに応答してなされた平成16年11月1日付け手続補正は平成16年11月29日付けで補正の却下の決定がなされるともに、平成16年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年2月4日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年2月4日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年2月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 補正前(平成15年10月31日付け手続補正書参照)の 「【請求項1】 次の成分(A)及び(B): (A)(a_(1))一般式(3)又は(4) 【化1】 〔式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(4)及びR^(5)は同一又は異なって、炭素数1?4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R^(6)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Yは-O-、-NH-、-CH_(2)-又は-O-CH_(2)CH(OH)-基を示し、Zは炭素数1?4(だたしYが-CH_(2)-のときは炭素数0?3)の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1?4のアルキルサルフェート基を示す。〕 【化2】 〔式中、R^(7)及びR^(8)は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R^(9)及びR^(10)は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Xは前記と同じ意味を示す。〕 で表わされるカチオン性基含有ビニル単量体、 (a_(2))一般式(1)又は(2) 【化3】 〔式中、R^(1)は前記と同じ意味を示し、R^(2)及びR^(3)は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示すか、あるいはR^(2)とR^(3)が一緒になって-(CH_(2))_(n)-(nは3?6の整数)又は-(CH_(2))_(2)O-(CH_(2))_(2)-を示し、隣接する窒素原子を含む環を形成する。〕 【化4】 〔式中、R^(1)は前記と同じ意味を示し、A^(1)は-(CH_(2))_(m)-(mは2?5の整数)を示す。〕 で表わされるアミド基含有ビニル単量体、及び (a_(3))多価アルコールのジビニル化合物又はポリアリル化合物、 を必須構成単量体とし、ラジカル重合することにより得られるカチオン性基含有共重合体、 (B)バーチエキストラクト、トウガラシチンキ、コウキ抽出液、スフィンゴシン誘導体、セラミド類、グアニジン誘導体及び塩基性アミノ酸から選ばれる水溶性薬理成分、 を含有する皮膚化粧料。 【請求項2】 成分(A)が、その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、シェアレート1sec^(-1)での粘度η_(1)、シェアレート10sec^(-1)での粘度η_(2)が、0.3≦η_(1)≦20(Pa・sec)、0.01≦η_(2)≦5(Pa・sec)、かつη_(1)>η_(2)である請求項1記載の皮膚化粧料。 【請求項3】 成分(A)が、その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、ひずみ周波数6.28rad/sec 、ひずみ1%での複素弾性率ε_(1) 、損失正接tan δ_(1)、ひずみ500%での複素弾性率ε_(2)、損失正接tan δ_(2)が、1≦ε_(1)≦300(N/m^(2))、tan δ_(1)≦2、かつ、0.01≦ε_(2)≦30(N/m^(2))、tan δ_(2)≧1である請求項1又は2記載の皮膚化粧料。 【請求項4】 成分(B)が塩基性アミノ酸である請求項1?3のいずれか1項記載の皮膚化粧料。」から、 補正後(平成17年2月4日付け手続補正書参照)の 「【請求項1】 次の成分(A)及び(B): (A)(a_(1))一般式(3)又は(4) 【化1】 〔式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(4)及びR^(5)は同一又は異なって、炭素数1?4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R^(6)は炭素数1?4のアルキル基を示し、Yは-O-、-NH-、-CH_(2)-又は-O-CH_(2)CH(OH)-基を示し、Zは炭素数1?4(ただしYが-CH_(2)-のときは炭素数0?3)の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1?4のアルキルサルフェート基を示す。〕 【化2】 〔式中、R^(7)及びR^(8)は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R^(9)及びR^(10)は同一又は異なって、炭素数1?4のアルキル基を示し、Xは前記と同じ意味を示す。〕 で表わされるカチオン性基含有ビニル単量体、 (a_(2))一般式(1)又は(2) 【化3】 〔式中、R^(1)は前記と同じ意味を示し、R^(2)及びR^(3)は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示すか、あるいはR^(2)とR^(3)が一緒になって-(CH_(2))_(n)-(nは3?6の整数)又は-(CH_(2))_(2)O-(CH_(2))_(2)-を示し、隣接する窒素原子を含む環を形成する。〕 【化4】 〔式中、R^(1)は前記と同じ意味を示し、A^(1)は-(CH_(2))_(m)-(mは2?5の整数)を示す。〕で表わされるアミド基含有ビニル単量体、及び (a_(3))エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる架橋性ビニル単量体、 を必須構成単量体とし、ラジカル重合することにより得られる共重合体であって、その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、シェアレート1sec^(-1)での粘度η_(1)、シェアレート10sec^(-1)での粘度η_(2)が、0.3≦η_(1)≦20(Pa・sec)、0.01≦η_(2)≦5(Pa・sec)、かつη_(1)>η_(2)であるカチオン性基含有共重合体、 (B)バーチエキストラクト、トウガラシチンキ、コウキ抽出液、スフィンゴシン誘導体、セラミド類、グアニジン誘導体及び塩基性アミノ酸から選ばれる水溶性薬理成分、 を含有する皮膚化粧料。 【請求項2】 成分(A)が、その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、ひずみ周波数6.28rad/sec、ひずみ1%での複素弾性率ε_(1)、損失正接tan δ_(1)、ひずみ500%での複素弾性率ε_(2)、損失正接tan δ_(2)が、1≦ε_(1)≦300(N/m^(2))、tan δ_(1)≦2、かつ、0.01≦ε_(2)≦30(N/m^(2))、tan δ_(2)≧1である請求項1記載の皮膚化粧料。 【請求項3】 成分(B)が塩基性アミノ酸である請求項1又は2記載の皮膚化粧料。」 と補正された。 上記補正は、少なくとも請求項1において、発明を特定するために必要な事項である成分(A)の「カチオン性基含有共重合体」について、(イ)その必須構成単量体の(a_(3))の「多価アルコールのジビニル化合物又はポリアリル化合物」を「エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる架橋性ビニル単量体」と特定し、(ロ)「その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、シェアレート1sec^(-1)での粘度η_(1)、シェアレート10sec^(-1)での粘度η_(2)が、0.3≦η_(1)≦20(Pa・sec)、0.01≦η_(2)≦5(Pa・sec)、かつη_(1)>η_(2)である」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用された本願出願前の刊行物である、特表平7-500594号公報(以下、引用例1という。)、特開平10-46143号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平10-17458号公報(以下、「引用例3」という。)、特開平5-85924号公報(以下、「引用例4」という。)、特開平8-92054号公報(以下、「引用例5」という。)には、それぞれ次のような技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付したものである。) [引用例1] (1-i)「1.(a)安全有効量の医薬活性剤;及び (b)式(A)_(l)(B)_(m)(C)_(n)の高分子量架橋カチオン系ポリマー0.1?10.0%〔上記式中(A)はジアルキルアミノアルキルアクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(B)はジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(C)はアクリルアミドである;1は0又はそれ以上の整数である;mはl又はそれ以上の整数である;nは0又はそれ以上の整数である;上記ポリマーは架橋剤を含有する〕 を含む、経皮膚で高い浸透性を有する局所医薬組成物。 2.架橋剤が、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルアミド、シアノメチルアクリレート、ビニルオキシエチルアクリレート、ビニルオキシエチルメタクリレート、アリルペンタエリトリトール、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルスクロース、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、アリルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは架橋剤がメチレンビスアクリルアミドである、請求項1に記載の組成物。 3.医薬活性剤が、抗アクネ薬、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド系抗炎症薬、無日光日焼け色化剤、日焼け止め剤、創傷治癒剤、皮膚漂白又は淡色化剤、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、止痒薬、抗コリン作動薬、制吐及び抗悪心薬、食欲抑制薬、中枢刺激薬、抗不整脈薬、β-アドレナリン遮断薬、強心薬、降圧薬、利尿薬、血管拡張薬、血管収縮薬、抗潰傷薬、麻醉薬、抗うつ薬、トランキライザー、鎮静薬、抗精神病薬、抗微生物薬、抗新生物薬、抗マラリア薬、筋肉弛緩薬、鎮痙薬、止瀉薬、骨活性薬とそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。 4.医薬活性剤が、サリチル酸、イオウ、レゾルシノール、N-アセチルシステイン、オクトピロックス、レチノイン酸及びその誘導体、過酸化ベンゾイル、エリトロマイシン、亜鉛、テトラサイクリン、アゼライン酸及びその誘導体、フェノキシエタノール及びフェノキシプロパノール、酢酸エチル、クリンダマイシン及びメクロサイクリン、フラビノイド類、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、尿素、硫酸シムノール及びその誘導体、デオキシコール酸塩及びコール酸塩とそれらの混合物からなる群より選択される抗アクネ薬であり、好ましくは抗アクネ薬がサリチル酸である、請求項3に記載の組成物。」(第1頁左上欄2行?同頁右上欄21行参照) (1-ii)「本発明の目的は薬物の皮膚浸透性を高める新規組成物を提供することである。 本発明のもう1つの目的は標的内部組織で薬物の治療レベルに達するために十分な皮膚浸透性増強を示すこのような組成物を提供することである。 本発明のもう1つの目的は特に低pHを要する組成物において低皮膚刺激性のこのような組成物を提供することである。 本発明の更にもう1つの目的は良好な安定性及び良好な化粧品性を有するこのような組成物を提供することである。」(第4頁右下欄10?20行参照) (1-iii)「水溶性ポリマー 本発明で有用なポリマーはあるカチオン系ポリマーである。・・・中略・・・。 一般に、これらのポリマーはカチオン性で通常四級化された窒素部分を有する高分子量物質である。これらのポリマーは一般式:(A)_(l)(B)_(m)(C)_(n)で特徴付けることができ、ここで(A)はジアルキルアミノアルキルアクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(B)はジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(C)は1つの炭素-炭素二重結合を有するモノマーである;lは0又はそれ以上の整数である;mは1又はそれ以上の整数である;nは0又はそれ以上の整数である。(C)モノマーは常用されるモノマーのいずれかから選択することができる。これらモノマーの非制限例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、エイコセン、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸、アクロレイン、シクロヘキセン、エチルビニルエーテル及びメチルビニルエーテルがある。本発明のカチオン系ポリマーにおいて、(C)はアクリルアミドであることが好ましい。 高度に好ましい態様において、これらのポリマーは架橋剤も含み、これは最も典型的には1以上の不飽和官能基を含む物質である。適切な架橋剤の非制限例としては、メチレンビスアクリルアミド類、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド類、多価アルコールのポリアルケニルポリエーテル類、アリルアクリレート類、ビニルオキシアルキルアクリレート類及び多価ビニリデン類からなる群より選択されるものがある。ここで有用な架橋剤の具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルアミド、シアノメチルアクリレート、ビニルオキシエチルアクリレート、ビニルオキシエチルメタクリレート、アリルペンタエリトリトール、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルスクロース、ブタジェン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル及びアリルアクリレートからなる群より選択されるものがある。他の架橋剤にはホルムアルデヒド及びグリオキサールがある。メチレンビスアクリルアミドが架橋剤としてここでは使用上好ましい。」(第8頁左上欄7行?同頁左下欄12行参照) (1-iv)「架橋剤が存在する場合、最終ポリマーで望まれる性質、例えば、粘稠化効果に応じて様々な量で用いることができる。理論に制限されないならば、これらカチオン系ポリマー中への架橋剤の配合が、電解質の存在下において糸引き性及び粘度破壊のような否定面なしにより効果的な粘稠化剤である物質を提供していると考えられる。」(第8頁左下欄13?18行参照) (1-v)「1グループの態様において、これらのカチオン系ポリマーは、重合が終了するまで開始剤(通常レドックス又は熱)の存在下重量で約20?約60%、通常約25?約40%のモノマーを含有した溶液の重合を通常要するプロセスから得られる。温度は通常低く、例えば0?95℃で始める。重合は非水性液体、例えば鉱油等へのモノマーの水相の逆相分散を形成することにより行える。 ポリマーがアクリルアミドを含有する場合、アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルアクリレート及びジアルキルアミノアルキルメタクリレートの全モル量に基づくアクリルアミドのモル割合は通常約20?約99%である。好ましくは、アクリルアミドの量は少くとも50%、多くは少くとも60%から約95%以下までである。ここでポリマーについて記載したすべてのパーセンテージは他で指摘されないかぎりモルである。 モノマーAが存在する場合、このプロセスで用いられるモノマーA:モノマーBの比率、ひいては最終ポリマー中における基A及びBの比率はモルベースで好ましくは約80:20?約20:80である。1クラスのプロセスにおいて、比率は約5:95?50:50、即ちカチオン系モノマーは主にメタクリレートである。これらのプロセスにおいて、比率は通常約25:75?約5:95の範囲内で達成される。 もう1つのクラスのプロセスにおいて、比率A:Bは約50:50?約85:15、カチオン系モノマーは主にアクリレートである。好ましくは比率A:Bは約60:40?85:15、最も好ましくは約75:25?85:15である。 モノマーAが存在せず、モノマーB:モノマーCの比率が約30:70?約70:30.好ましくは約40:60?約60:40、最も好ましくは約45:55?約55:45である場合が好ましい。 重合はポリマーが水溶性であって、高分子量、通常約百万、例えば30百万以内を有するような既知条件下で行うことが好ましい。極限粘度数は25℃でモル塩化ナトリウム溶液で測定されたときに通常6以上、例えば8?14である。 ここで有用なカチオン系ポリマーはlがゼロ、Bがメチル四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート、B:Cの比率が約45:55?約55:45及び任意の架橋剤がメチレンビスアクリルアミドである一般構造(A)l(B)m(C)nのポリマーである。提案されたCTFA名、ポリクォータニウム(Polyquaternium)32及び鉱油を有するこのポリマーはアライド・コロイズ社(Allied Co11oids Ltd.)(ノーフォーク,VA)からサルケア(Salcare)SC92として市販されている。 一方、もう1つのグループの好ましい態様において、これらのカチオン系ポリマーはアクリルアミドモノマーを含まず、即ちnがゼロである。これらのポリマーにおいて、(A)及び(B)モノマー成分は前記のとおりである。これらアクリルアミド非含有ポリマーの特に好ましいグループは・・・・」(第8頁左下欄末行?第9頁右上欄3行参照) (1-vi)「ここで最も好ましい組成物はゲルタイプの組成物である。」(第9頁右下欄末行?第10頁左上欄1行参照) (1-vii)「例 例I 抗アクネ組成物は慣用的なミキシング技術を用いて下記成分を混ぜることにより製造する。 成 分 (%V/W) 精製水 54.0 アルコールSD 40 40.0 ポリクォータニウム-32及び鉱油^(1) 4.0 サリチル酸 2.0 ^(1)アライド・コロイズ社、サフォーク、VAから市販されているサルケアSC92 水を適切なサイズの容器に加える。中速(300rpm)でミックスしながら、ポリクォータニウム-32及び鉱油を水に加える。別に、アルコールを容器に入れてカバーする。3ブレードパドルプロペラのあるライトニン(・・)ミキサーを用いてサリチル酸をアルコールに加え、すべてのサリチル酸が溶解するまで低速(100rpm)でミックスする。アルコールを水相にゆっくりと加えてゲルを形成させる。得られたゲルを均一になるまで中速でミックスする。 その組成物は優れた保湿、皮膚軟化、すりこみ及び吸収特性と一緒に改善された皮膚感触及び残留物特性だけではなくサリチル酸活性剤の皮膚浸透性も示す。」(第10頁右下欄1?23行参照) [引用例2] (2-i)「【請求項1】 カバノキのバーチ(学名:Betula platyphylla)植物抽出物を有効成分とすることを特徴とする抗酸化剤。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照) (2-ii)「【0008】抗酸化剤として配合する対象物としては化粧料が好ましく、抗酸化作用の必要な各種化粧品、例えばクリーム、ローション、乳液、ヘアオイル、シャンプー、リンス、石鹸等に添加すると優れた抗酸化力を発揮する。・・・中略・・・。」(段落【0008】参照) [引用例3] (3-i)「【請求項1】 次に示す何れかの植物のエッセンスからなる肌の不均一性改善剤。カバノキ科バーチ(Betula pendula Roth.)、・・・中略・・・」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照) (3-ii)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、肌の不均一改善剤及び老化等に起因するくすみを改善予防するのに好適な当該肌の不均一改善剤を含有する化粧料に関する。」(段落【0001】参照) [引用例4] (4-i)「【請求項1】 スフィンゴシン類を含有することを特徴とする皮膚外用剤。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照) (4-ii)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は皮膚外用剤に関し、さらに詳しくは表皮の角化を正常化する皮膚外用剤に関する。」(段落【0001】) [引用例5] (5-i)「【請求項1】 次の一般式(1)又は(2); 【化1】 ・・構造式略・・ [式(1)中、・・・中略・・・意味を示す]で表されるグアニジン誘導体又はその酸付加塩を含有することを特徴とする皮膚化粧料。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照) (5-ii)「【0001】本発明は、角質層への柔軟性付与効果に優れ、使用感も良好な皮膚化粧料に関する。」(段落【0001】参照) (3)対比、判断 引用例1には、上記2.(2)に摘示した記載からみて、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)安全有効量の医薬活性剤;及び (b)式(A)_(l)(B)_(m)(C)_(n)の高分子量架橋カチオン系ポリマー0.1?10.0%〔上記式中(A)はジアルキルアミノアルキルアクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(B)はジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、その四級アンモニウム又は酸付加塩である;(C)はアクリルアミドである;1は0又はそれ以上の整数である;mはl又はそれ以上の整数である;nは0又はそれ以上の整数である;上記ポリマーは架橋剤を含有する〕 を含む、経皮膚で高い浸透性を有する局所医薬組成物。」 そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比する。 (イ)引用例1発明の「経皮膚で高い浸透性を有する局所医薬組成物」は、「良好な化粧品性を有する」(摘示(1-ii))とされ、「皮膚感触」や「皮膚浸透性」を示す(摘示(1-vii))ものであることから、本願補正発明の「皮膚化粧料」に相当する。 (ロ)引用例1発明の「医薬活性剤」は、薬理成分を意味するから、本願補正発明の「水溶性薬理成分」に対応し、いずれも薬理成分で一致する。 (ハ)引用例1発明の「高分子量架橋カチオン系ポリマー」は、本願補正発明の「カチオン性基含有共重合体」に相当する。 (ニ)引用例1発明の(C)の「アクリルアミド」は、本願補正発明の一般式(1)でR^(1)=H,R^(2)=H,R^(3)=Hの場合の(a_(2))成分に相当する。 (ホ)引用例1発明の(A)及び/又は(B)の「ジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマーの四級アンモニウム塩」は、発明の詳細な説明に「メチル四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート」が例示されている(摘示(1-v))ことを勘案し、本願補正発明の一般式(3)のR^(1)=H,Y=O,Z=アルキレン,R^(4)及びR^(5)はアルキル,R^(6)はアルキル,Xは酸の共役塩基場合の(a_(1))成分に相当する。なお、引用例1発明では、「アルキル」基について格別の言及はないけれども、「メチル四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート」のように「アルキル」として「メチル」や「エチル」の具体例があることからみて、本願補正発明で特定している「炭素数1?4のアルキル基」と実質的な差異はないといえる(以下、アルキル(基)はそのような意味で使用する)。 (ヘ)引用例1発明の「架橋剤」は、本願補正発明の「架橋性ビニル単量体」に相当する。 してみると、両発明は、 「次の成分(A)及び(B): (A)(a_(1))ジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマーの四級アンモニウム塩であるカチオン性基含有ビニル単量体、 (a_(2))アクリルアミドであるアミド基含有ビニル単量体、及び (a_(3))架橋性ビニル単量体、 を必須構成単量体としたカチオン性基含有共重合体、 (B)薬理成分、 を含有する皮膚化粧料。」 で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 1.架橋性ビニル単量体に関し、本願補正発明では、「エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる」と特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点 2.カチオン性基含有共重合体に関し、本願補正発明では、「ラジカル重合することにより得られる共重合体であって」と特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点 3.カチオン性基含有共重合体に関し、本願補正発明では、「その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、シェアレート1sec^(-1)での粘度η_(1)、シェアレート10sec^(-1)での粘度η_(2)が、0.3≦η_(1)≦20(Pa・sec)、0.01≦η_(2)≦5(Pa・sec)、かつη_(1)>η_(2)である」と特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点 4.薬理成分に関し、本願補正発明では、「バーチエキストラクト、トウガラシチンキ、コウキ抽出液、スフィンゴシン誘導体、セラミド類、グアニジン誘導体及び塩基性アミノ酸から選ばれる水溶性薬理成分」と特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点 そこで、これらの相違点について検討する。 相違点1について 引用例1発明では、「架橋剤」についての具体例として、「メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、・・・・より選択される」(摘示(1-i),(1-iii))と説明されているから、本願補正発明で特定する「架橋性ビニル単量体」の「エチレングリコールジ(メタ)アクリレート」を選択し得ることは自明乃至は、当業者が容易に想い到る程度のことと言える。 この点に関し、請求人は、引用例1発明で説明され実施例で用いられている「ポリクォータニウム(Polyquaternium)32」即ち「サルケア(Salcare)SC92」について、参考資料を提示して、「ポリクォータニウム(Polyquaternium)32」は(B)と(C)の2種のモノマーが共重合したものであり、架橋剤はこの共重合体を架橋して更に高分子化するためのものであり、引用例1の架橋カチオン系ポリマーは線状構造をとるものであり、本願発明の網目構造を形成する架橋性ビニル単量体と機能が異なること、及び、架橋剤がメチレンビスアクリルアミドであって異なることを主張する。 しかし、引用例1には、「Bがメチル四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート、B:Cの比率が約45:55?約55:45及び任意の架橋剤がメチレンビスアクリルアミドである一般構造(A)l(B)m(C)nのポリマーである」との説明に続いて、その具体例として「ポリクォータニウム(Polyquaternium)32」(それを鉱油中に分散したものが「サルケア(Salcare)SC92」)を挙げていること、及び「SalcareSC92」が「鉱油油にアクリルアミド-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド架橋コポリマー」を分散したものであることが知られている(例えば、特表平8-506824号公報第8頁やWO97/28785号第16頁(特表平11-504043第28頁)など参照)ことからみて、更に架橋によって架橋高分子が得られるのであって線状のものが得られることは技術常識に反する(例えば、化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典2」、縮刷版第22刷、昭和53年9月10日発行、第323頁の「架橋」の項を参照)ことから、前記請求人の主張は採用すべき理由がない。 なお、メチレンビスアクリルアミドは本願補正発明で特定する架橋性ビニル単量体ではないけれども、架橋剤(架橋性ビニル単量体)としてメチレンビスアクリルアミドと並んでエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが選択肢として明示されており(摘示(1-i))、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(本願補正発明で架橋性ビニル単量体として特定のもの)を選択して使用してみることは適宜なし得ることであり、その作用効果において格別異なるものとなると解すべき理由もないし、引用例1発明を実施例に限定して解すべき理由もない。 相違点2について 引用例1には、具体的にどのような手段で共重合させるかについて記載はないけれども、炭素-炭素の二重結合を有するモノマーを重合させるのに、ラジカル重合を用いることは極一般的なことであるから、そのようなラジカル重合を採用することは、当業者が容易になし得ることにすぎない。 相違点3について 本願補正発明で特定する0.5重量%ハイドロゲルの粘度について、発明の詳細な説明を検討しても、「粘度挙動がこの範囲内にあれば毛髪への塗布が容易であり、毛髪への残留感が得られ、上記のような良好な使用感を得ることができる。」(段落【0006】)とされていて、その規定した範囲内の粘度を有する実施例が記載されてはいるけれども、比較例としては、カチオン性でない共重合体を用いた場合が示されているだけで、本願補正発明で特定する0.5重量%ハイドロゲルの粘度を逸脱した場合に劣った結果が得られるのか何らのデータも示されておらず、かかる粘度のパラメータにどの程度の臨界的意義があるのか不明である。 一方、引用例1の実施した例Iには、ゲルを形成させた「その組成物は優れた保湿、皮膚軟化、すりこみ及び吸収特性と一緒に改善された皮膚感触及び残留物特性だけではなくサリチル酸活性剤の皮膚浸透性も示す。」(摘示(1-vii))とされていて、前記本願明細書段落【0006】に記載された粘度挙動の範囲内で得られる作用効果とほぼ同じ作用効果が得られている。 ところで、引用例1の例Iでは、「サルケア(Salcare)SC92」が用いられ、このものは架橋性ビニル単量体がメチレンビスアクリルアミドである点で本願補正発明で特定するカチオン性基含有共重合体と異なるものであるが、引用例1発明では、架橋剤(架橋性ビニル単量体)としてメチレンビスアクリルアミドと並んでエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが選択肢として明示されており、本願補正発明で架橋性ビニル単量体として採用するエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを選択して使用しても、その例Iと同程度の作用効果を奏するものと解すべきである。 なお、本願補正発明で特定する0.5重量%ハイドロゲルの粘度(25℃,シェアレート1sec^(-1)で0.3?20Pa・s,シェアレート10sec^(-1)で0.01?5Pa・s)は、皮膚化粧料に用いる架橋ヒアルロン酸として、1%生理食塩水溶液における粘度(20℃,ずり速度1sec^(-1))1000?6000センチポアーズ(即ち1?60Pa・s)のものが好ましいこと(特開昭61-172808号公報第2頁左上欄参照)や髪の手入れ用製剤に用いるアルキルグリコシド増粘剤(0.05?6重量%)としてゲル状含水混合物の粘度(20ないし25℃,ずり速度30s^(-1))が400ないし10,000mPa・s(即ち0.4?10Pa・s)のものを用いること(特表平8-503719号公報請求項1?3,10,第8頁5?14行参照)が公知であることに鑑みれば、格別特異な値であるとは解し得ないし、ずり速度が大きいほど粘度が小さくなること(η_(1)>η_(2))は一般的なことにすぎない。 よって、引用例1には本願補正発明で特定する0.5重量%ハイドロゲルの粘度について言及はないが、本願補正発明では該粘度による臨界的意義は示されておらず、それによって奏される作用効果も引用例1に記載されているものと軌を一にするものであることを勘案すると、本願補正発明で特定する0.5重量%ハイドロゲルの粘度は、所期の効果を奏しているものの粘度を単に測定して明らかにしたものにすぎず、当業者が容易に為し得る程度のことというべきである。 相違点4について 引用例1発明の「「経皮膚で高い浸透性を有する局所医薬組成物」」即ち皮膚化粧料(上記対比の(イ)を参照)において、「医薬活性剤」として何を用いるかは格別限定されているわけではないし、例えば乳酸の如く水溶性のものも使用対象とされていることから、皮膚化粧料として用いられる医薬活性剤を適宜採用し得ることは明らかと言えるところ、引用例2?5には、バーチエキスやスフィンゴシン類、グアニジン誘導体を皮膚化粧料に用いられる薬理成分であることが示されていること(摘示(2-i),(2-ii),(3-i),(3-ii),(4-i),(4-ii),(5-i),(5-ii)を参照)から、そのようなバーチエキスやスフィンゴシン類、グアニジン誘導体などを用いることは、当業者が容易に想い到る程度のことといえる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1?5から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年2月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年10月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記「2.(1)」に摘示したとおりのものである。 (1)引用例 原査定の拒絶理由に引用される引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比、判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である成分(A)の「カチオン性基含有共重合体」について、(イ)その必須構成単量体の(a_(3))の「エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる架橋性ビニル単量体」を「多価アルコールのジビニル化合物又はポリアリル化合物」と拡張し、(ロ)「その0.5重量%ハイドロゲルの、25℃における、シェアレート1sec^(-1)での粘度η_(1)、シェアレート10sec^(-1)での粘度η_(2)が、0.3≦η_(1)≦20(Pa・sec)、0.01≦η_(2)≦5(Pa・sec)、かつη_(1)>η_(2)である」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-10 |
結審通知日 | 2008-10-14 |
審決日 | 2008-10-27 |
出願番号 | 特願平10-361637 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 美穂 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 星野 紹英 |
発明の名称 | 皮膚化粧料 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 村田 正樹 |