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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1189423
審判番号 不服2005-6344  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-11 
確定日 2008-12-15 
事件の表示 特願2002-191801号「パンツ型おむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年2月18日出願公開、特開2003-47631号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年5月25日に出願した特願平10-143441号の一部を、平成14年7月1日に新たな出願としたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成20年7月8日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおりである。
「展開状態で長手方向の上下部の胴及び腰周り部分がおむつ中央線に対して平行な両側縁部と、長手方向の中央部がそれぞれ括れた脚周り部分とを有した外形シートと、この外形シートの使用面側に固定され、股間部を跨いで前後方向に延在する、透液性トップシート、不透液性バックシート及びこれらの間に介在された吸収材を有する吸収要素とを備え、この外形シートの前身頃及び後身頃の両側縁部を線状に接合し、この接合により胴及び腰周り部分の胴開口部及び前記括れた部分により左右一対の脚開口部を形成し、
前記外形シートは複数枚の不織布を積層固定したものであり、それらの不織布の間に、前記胴開口部の前記吸収体と離間した腰周り相当位置に長手方向に間隔をおいて複数の腰周り弾性部材の群、前記吸収体を横切る胴回り位置に長手方向に間隔をおいて複数の胴回り弾性部材の群、及び前記股間部及び脚開口部を通る複数の脚周り弾性部材の群が、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、前記両側縁部間に渡って設けられ、かつ、これらの弾性部材の群が交差することなく設けられ、
前記脚周り弾性部材は、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、左前記側縁部から左脚周り部、股間部、右脚回り部を通り右前記側縁部に至る位置に配設され、
前記脚回り弾性部材の群の配設形態として、前記左右脚回り部において長手方向に対して最も大きく傾斜するように配置され、かつ前記左右脚回り部においては弾性部材が相互に間隔を開けて配置され、前記股間部、左前記側縁部及び右前記側縁部においては弾性部材が束ねられた状態で配置され、
前記前身頃と後身頃との両側縁部が、前記胴開口部側から前記脚開口部側にわたる接合部によって接合され、前記接合部とおむつの幅方向内方との境界線が前記中央線に対し内向きの傾斜角度を有しており、
前記境界線は、おむつ中央線に対して非平行であり、前記胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置しており、かつ、前記境界線は、腰周り弾性部材の群、胴回り弾性部材の群、及び脚周り弾性部材の群と交差している、
ことを特徴とするパンツ型おむつ。」

2.引用文献
平成20年5月7日付け拒絶の理由において引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-127687号公報(平成10年5月19日公開、以下、「引用文献1」という。)、特開平3-176051号公報(以下、「引用文献2」という。)、及び特開平5-15551号公報(以下、「引用文献3」という。)の記載について検討する。
(1)引用文献1
引用文献1には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「本発明は、パンツ型使い捨て紙おむつに係り、特に、幼児または小児などの着用者の体形にフィットするとともに、腰部開口面からの尿漏れ、便漏れを防止するパンツ型の使い捨て紙おむつに関する。」(段落番号【0001】の記載参照)
(b)「このパンツタイプの紙おむつについては既に種々の提案がなされており、その一例として、実用新案登録第3024357号公報における、添付図面の図10に示したものを挙げることができる。」(段落番号【0004】の記載参照)
(c)「図1?図5および図7?図8は、本発明に係るパンツタイプの紙おむつの第1の構造例を示したものである。この紙おむつは、典型的に図4および図5に構造が明示されているように、不織布などからなる透液性トップシート10とポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート20とにより、綿状パルプなどからなる吸収体主体31を含む構造のおむつ本体30が、本体バックシート40に設けられている。」(段落番号【0018】の記載参照)
(d)「本体バックシート40は、フラップ部を形成すべく吸収要素より外形が大きく、全体として疑似砂時計形状をなしており、裏面バックシート42に対して、表面バックシート41をホットメルト接着剤Hによって貼り合わたものである。」(段落番号【0021】の記載参照)
(e)「主に図1および図3に明示されているように、各種の弾性伸縮部材が表面バックシート41と裏面バックシート42との間に介在され、両シートに対してホットメルト接着剤Hにより固定されている。」(段落番号【0027】の記載参照)
(f)「前身頃Fの腹部相当個所(図8参照)に横方向に沿ってたとえば糸ゴムからなる複数本(図示例では6本)の腹部弾性伸縮部材61を設け、両端部が腹部相当個所に位置し、中央部が股下側に膨らみ、かつその中央部が前記吸収体主体31の配設位置と交差する関係にあり、さらに製品の前後方向中央線Lから30mm以上前身頃F縁側に偏位する、たとえば糸ゴムからなる複数本(図示例では6本)の前身頃持ち上げ弾性伸縮部材62を設けてある。……前記腹部相当個所に対応した後身頃Bの臀部個所(図8参照)に横方向に沿ってたとえば糸ゴムからなる複数本(図示例では4本)の臀部弾性伸縮部材63を設けてある。さらに後身頃Bにおいて、両端部がほぼ脚回り開口部に位置し、中央部が背中側に膨らみ、かつその中央部が前記臀部個所に位置しているたとえば糸ゴムからなる複数本(図示例では4本)の後身頃フィット用弾性伸縮部材64も設けてある。また、前身頃Fの開口部および後身頃Bの開口部において、たとえば帯ゴムなどからなる、図示例では各4本の腰回り弾性伸縮部材65,66がそれぞれ設けられている。一方、両脚回りを封止する1本または複数本(図示例では各3本)の脚回り弾性伸縮部材67,68が設けられている。これらの脚回り弾性伸縮部材67,68は、脚回りを封止する限り各種の態様があるが、図示例においては、脚回り弾性伸縮部材67においては、前身頃Fの両側縁部間を繋ぎ股下最下部に向かって膨らみ、脚回り弾性伸縮部材68においては、後身頃Bの両側縁部間を繋ぎ股下最下部に向かって膨らみ、弾性伸縮部材67,68の最下部が前後方向中央線L近傍において接近しているものである。」(段落番号【0028】?【0032】の記載参照)
(g)「かかる構造においては、図7に示されているように、本体バックシート40が前後方向に折り重ねられの側部40X,40X相互が熱溶着またはホットメルト接着剤などにより接合され、パンツ型の紙おむつが組み立てられる。」(段落番号【0033】の記載参照)
(h)「 本体バックシート40は、ムレ防止などの点から、通気性および防水性(撥水性)の少なくとも一方、より好ましくは両者の特性を有するのが望まれる。その素材は適宜選択できるが、その例としては、ポリプロピレン主体の熱融着繊維とレーヨン繊維を混綿したレーヨンスパンレース不織布と、ウレタンやイソプレンゴム系の材料を主体とするメルトブロー不織布を熱融着、超音波接合、ホットメルト接着剤による接合などにより一体化し、前者の不織布を着用者の肌側に使用するものを挙げることができる。」(段落番号【0045】の記載参照)
(i)図1?4には、全体として疑似砂時計形状、すなわち、展開状態で長手方向の上下部の胴及び腰周り部分がおむつ中央線に対して平行な両側縁部と、長手方向の中央部がそれぞれ括れた脚周り部分とを有した本体バックシート40に、股間部を跨いで前後方向に、透液性トップシート10、不透液性バックシート20及びこれらの間に介在された吸収主体31を有するおむつ本体30が延在して設けられ、上記吸収主体31から離間した本体バックシート40の腰周り相当位置に長手方向に間隔をおいて複数の腰回り弾性伸縮部材65,66の群、吸収主体31を横切るように間隔をおいて配置された複数の腹部弾性伸縮部材61の群、前身頃持ち上げ弾性伸縮部材62の群、臀部弾性伸縮部材63の群、後身頃フィット用弾性伸縮部材64の群、そして股間部及び脚開口部を通る複数の脚回り弾性伸縮部材67,68の群が、順次前身頃及び後身頃の開口縁部から股間側に向かって配置され、該脚回り弾性伸縮部材67,68の群は、前身頃及び後身頃においてそれぞれ、左側縁部から股間側を通り右側縁部に至る位置に配設され、股間部と左右の側縁部の中間部が本体バックシート40の括れた脚周り部分に沿うように長手方向に対して傾斜し、股間部において弾性伸縮部材が束ねられた状態で他の部分すなわち脚周り部及び左右側縁部では相互に間隔を開けた状態で配置されている態様が示され、図7には、腰周り部分に開口部を構成する前身頃及び後身頃の開口縁部と脚開口部を繋ぐ前身頃と後身頃の線状の接合部が上記の各弾性伸縮部材の群と交差している態様が示されている。
また、図12には、従来のパンツ型紙おむつの展開図として、長手方向に間隔をおいて複数の腰周り弾性部材の群、長手方向に間隔をおいて複数の胴周り弾性部材の群、及び股間部及び脚開口部を通る複数の脚周り弾性部材の群が前身頃及び後身頃の開口縁部から股間側に向かって、順次群相互が長手方向に間隔を置きかつ群相互が交差することなく、前記前身頃と後身頃との両側縁部間に渡って設けられているものが示されている。

したがって、以上の記載及び図面を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。
「展開状態で長手方向の上下部の胴及び腰周り部分がおむつ中央線に対して平行な両側縁部と、長手方向の中央部がそれぞれ括れた脚周り部分とを有した本体バックシート40と、この本体バックシート40に設けられ、股間部を跨いで前後方向に延在する、透液性トップシート10、不透液性バックシート20及びこれらの間に介在された吸収主体31を有するおむつ本体30とを備え、この本体バックシート40の前身頃及び後身頃の両側縁部を線状に接合し、この接合により腰周り部分の開口部及び前記括れた部分により左右一対の脚開口部を形成し、
前記本体バックシート40は不織布が使用され、表面バックシート41と裏面バックシート42を貼り合わせたものであり、それらのシートの間に、前記腰周り部分の開口部の前記吸収主体31と離間した腰周り相当位置に長手方向に間隔をおいて複数の腰周り弾性伸縮部材65、66の群、 前記吸収主体31を横切る胴回り位置に長手方向に間隔をおいて複数の腹部弾性伸縮部材61の群、前身頃持ち上げ弾性伸縮部材62の群、臀部弾性伸縮部材63の群、後身頃フィット用弾性伸縮部材64の群、及び前記股間部及び脚周り部を通る複数の脚周り弾性伸縮部材67、68の群が、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、前記両側縁部間に渡って設けられ、
前記脚周り弾性伸縮部材67、68は、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、左前記側縁部から左脚回り部、股間部、右脚回り部を通り右前記側縁部に至る位置に配設され、前記脚回り弾性伸縮部材67、68の群の配設形態として、前記左右の脚回り部においておむつの長手方向に対して傾斜するように配置され、
かつ前記脚回り部及び左右側縁部においては弾性伸縮部材が相互に間隔を開けて配置され、前記股間部においては弾性伸縮部材が束ねられた状態で配置され、
前記前身頃と後身頃との両側縁部が、前記腰周り部分の開口部側から前記脚開口部側にわたる線状の接合部によって接合されており、
該接合部は、前記腰回り弾性伸縮部材65,66の群、腹部弾性伸縮部材61の群、前身頃持ち上げ弾性伸縮部材62の群、臀部弾性伸縮部材63の群、後身頃フィット用弾性伸縮部材64の群、及び脚回り弾性伸縮部材67,68の群と交差している、
パンツ型の使い捨て紙おむつ。」

(2)引用文献2及び引用文献3
引用文献2には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「着用者の肌に接する透水性のトップシートと、該トップシートの反対側に位置する不透水性のバックシートと、該両シート間に介在する吸水性のコアとからなるパンツ本体の前身頃の両側部の一部と後身頃の両側部の一部とをそれぞれ接着した接合線を左右に有して、上方に開口部と下方左右にれぞれ脚穴部とを形成して、一体化したパンツ式紙おむつにおいて、前記開口部の付近に設けられた横方向の腰周り弾性体と、股間部の両側にそれぞれ設けられた縦方向の脚穴周り弾性体とを有し、かつ、右側の前記接合線と左側の前記接合線がともに斜めになっていて、前記パンツ本体の横中心部の幅より前記開口部の幅が小さくなっていることを特徴とする紙おむつ」(特許請求の範囲1)
(b)「本発明の紙おむつによれば……パンツ本体の前身頃の両側部の一部と後身頃の両側部の一部とをそれぞれ接着した右側の接合線と、同様な左側の接合線が、とも斜めになっていて、前記パンツ本体の横中心部の幅より前記開口部の幅が小さくなっているので、該腰周り弾性体の幅方向の有効作用長さが従来のものより短くなり、したがって、着用者に対する腰周りのフィット性が向上し、しかも、該脚穴周り弾性体により股間のフィット性も向上する。」(第2頁右下欄第15行?第3頁左上欄第7行の記載参照)

また、引用文献3には以下の事項が図面とともに記載されている。
(c)「この発明はパンツ型の使い捨て着用物品、例えば使い捨ておむつやトレーニングパンツ等における腰周り側部の接合方法、およびそのための装置に関する。」(段落番号【0001】の記載参照)
(d)「前記接合のための装置では、超音波融着装置のホーンが腰周り側部接合線の長さにほぼ等しい長さを有しかつ、前記両シートの供給方向に交叉して設けられていること、一方アンビルが接合パターンに対応する間欠的に配置された突起によって構成され、かつ、ホーンに対向配置されて前記両シートの供給方向に回転するドラム面に設けてあることが要旨である。好ましい実施態様の一つにおいては、少くとも一対のアンビルがドラムの軸に所与の角度で傾き、かつ、互いに対称な位置関係にある。」(段落番号【0008】の記載参照)
(e)図3及び図7には着用物品中央線に対して傾斜角度を有する接合線14が胴回り開口7に対して脚周り開口8に至るほど外方に位置し、かつ、胴回り弾性部材5及び脚周り弾性部材6と交差している態様が示されている。
すなわち、引用文献2及び3には、パンツ型のおむつにおいて、前身頃と後身頃との両側縁部を、その接合部が、おむつ中心線に対して非平行で、胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置するように接合することすなわち、おむつの長手方向中央線に対して、胴開口部に向かって内向きの傾斜を持たせることが記載されており、引用文献2には、そのように接合線を傾斜することによって、弾性体の有効作用長を変化させて着用者へのフィット性を向上せしめることが記載されている。

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「パンツ型の使い捨て紙おむつ」、「本体バックシート40」、「おむつ本体30」、「吸収主体31」、「腰回り弾性伸縮部材65、66の群」、「脚回り弾性伸縮部材67、68の群」は、それぞれ、本願発明の「パンツ型おむつ」、「外形シート」、「吸収要素」、「吸収材」、「腰周り弾性部材の群」及び「脚周り弾性部材の群」に相当する。
本願発明の「胴開口部」は、「胴及び腰周り部分の」とされているが、開口は外形シートの腰周り縁部によって形成されるものであるから、引用発明の「腰周り部分の開口部」がこれに相当し、引用発明の「腹部弾性伸縮部材61、前身頃持ち上げ弾性伸縮部材62、臀部弾性伸縮部材63及び後身頃フィット用弾性伸縮部材64の群」を全体でみれば、本願発明の「胴回り弾性部材の群」を構成するものということができる。
そして、引用発明のおむつ本体30が、本体バックシート40の使用面側に固定されることは、使い捨ておむつの分野における技術常識に照らして明白である。
また、引用発明の本体バックシート40は、不織布が使用され、表面バックシート41と裏面バックシート42を貼り合わせたものであるから、本願発明でいう「複数枚の不織布を積層固定したもの」に相当し、それらのシートの間に設けられる弾性伸縮部材の群は、積層された不織布の間に設けられることになり、さらに、引用発明の前身頃と後身頃との両側縁部における接合部が、各種弾性伸縮部材の群と交差しているのであるから、この接合部のおむつ幅方向内方との境界線が、各種弾性伸縮部材と交差していることも明白である。
したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
展開状態で長手方向の上下部の胴及び腰周り部分がおむつ中央線に対して平行な両側縁部と、長手方向の中央部がそれぞれ括れた脚周り部分とを有した外形シートと、この外形シートの使用面側に固定され、股間部を跨いで前後方向に延在する、透液性トップシート、不透液性バックシート及びこれらの間に介在された吸収材を有する吸収要素とを備え、この外形シートの前身頃及び後身頃の両側縁部を線状に接合し、この接合により胴及び腰周り部分の胴開口部及び前記括れた部分により左右一対の脚開口部を形成し、
前記外形シートは複数枚の不織布を積層固定したものであり、それらの不織布の間に、前記胴開口部の前記吸収体と離間した腰周り相当位置に長手方向に間隔をおいて複数の腰周り弾性部材の群、前記吸収体を横切る胴回り位置に長手方向に間隔をおいて複数の胴回り弾性部材の群、及び前記股間部及び脚開口部を通る複数の脚周り弾性部材の群が、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、前記両側縁部間に渡って設けられ、
前記脚周り弾性部材は、前記前身頃及び後身頃においてそれぞれ、左前記側縁部から左脚周り部、股間部、右脚回り部を通り右前記側縁部に至る位置に配設され、
前記脚回り弾性部材の群の配設形態として、前記左右脚回り部において長手方向に対して傾斜するように配置され、
前記前身頃と後身頃との両側縁部が、前記胴開口部側から前記脚開口部側にわたる接合部によって接合され、
前記接合部とおむつの幅方向内方との境界線は、腰周り弾性部材の群、胴回り弾性部材の群、及び脚周り弾性部材の群と交差している、
パンツ型おむつ。
【相違点1】
本願発明において、前身頃及び後身頃においてそれぞれ、両側縁部間に渡って設けられる腰周り弾性部材の群、胴回り弾性部材の群、及び脚周り弾性部材の群が、「交差することなく設けられ」ているのに対し、引用発明はこのような構成を備えておらず、引用文献1の図1及び図2を参酌すると、本願発明の胴回り弾性部材の群に相当する弾性伸縮部材の群と脚回り弾性伸縮部材の群とが、両側部近傍において交差している態様が示されているにすぎない点。
【相違点2】
脚回り弾性部材の群の配設形態として、本願発明は「前記左右脚回り部において長手方向に対して最も大きく傾斜するように配置され、かつ前記左右脚回り部においては弾性部材が相互に間隔を開けて配置され、前記股間部、左前記側縁部及び右前記側縁部においては弾性部材が束ねられた状態で配置され」ているのに対し、引用発明の脚回り弾性伸縮部材67、68の群は、左右の脚回り部においておむつの長手方向に対して傾斜するように配置されているが、「最も大きく傾斜」するものか否か明確ではなく、また、左右脚回り部においては弾性伸縮部材が相互に間隔を開けて配置され、股間部においては弾性伸縮部材が束ねられた状態で配置されているが、左右の側縁部において弾性伸縮部材は束ねられていない点。
【相違点3】
本願発明において「(胴開口部側から前記脚開口部側にわたる)接合部とおむつの幅方向内方との境界線が前記(おむつの)中央線に対し内向きの傾斜角度を有しており、前記境界線は、おむつ中央線に対して非平行であり、前記胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置」(括弧内は当審で付加)しているのに対し、引用発明の接合部についてはそのような特定がなされおらず、引用文献1の図7には、接合部がおむつの中央線に対してほぼ平行である態様が示されている点。

4.判断
そこで相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
パンツ型おむつにおいて、前身頃及び後身頃においてそれぞれ、両側縁部間にわたって、腰周り弾性部材の群、胴回り弾性部材の群、及び脚回り弾性部材の群を胴開口部から股間側に向かって配置すること、その際、それらの群相互が交差しないようにすることは、例えば、本願明細書に従来技術として示された、登録実用新案公報第3024357号にも記載されているように、本願出願前より周知の技術である。
したがって、引用発明において、本願補正発明の胴回り弾性部材の群に相当する弾性伸縮部材の群を、脚回り弾性伸縮部材の群と交差しないように配置することは、当業者が適宜採用し得ることであり、それにより、格別顕著な作用効果が奏するものとも解されない。

(2)相違点2について
(2-1)脚回り弾性部材の群の傾斜について
本願明細書を参酌しても、「前記左右脚回り部において長手方向に対して最も大きく傾斜するように配置」する点について、なんら明確な記載はなされておらず、各図の図示内容から、「長手方向」は、おむつの長手方向と解するのが相当である。
また、「最も大きく」は、脚回り部のどの部分が、何と比較して最も大きいのか必ずしも明確ではなく、また、各図を参照しても、脚回り弾性体の群G1、G2とおむつの長さ方向とのなす角度は、中央部Cより、股間部及び腰脇部に向かうほど大きくなり、股間部及び腰脇部において長手方向に対して最も大きく傾斜している態様が示されているにすぎないものである。
さらに、本願明細書及び図面を参酌しても、脚回り弾性体の群の傾斜を「前記左右脚回り部において長手方向に対して最も大きく傾斜するように配置」することにより、格別の作用効果が奏されるとの技術的根拠も見いだせない。
したがって、本願発明の脚回り弾性部材の群と、引用発明において、左右の脚回り部においておむつの長手方向に対して傾斜するように配置されている脚回り弾性伸縮部材67、68の群との間に実質的な相違を見いだすことはできない。

(2-2)脚回り弾性部材の群の配列について
本願発明において、脚回り弾性部材の群が「左右脚回り部においては弾性部材が相互に間隔を開けて配置され、前記股間部、左前記側縁部及び右前記側縁部においては弾性部材が束ねられた状態で配置され」ている点について、本願明細書の段落番号【0016】に、弾性糸を束ねて固定した場合と間隔を開けて固定した場合の収縮力の強さの違い及び被着者への作用面の広さの違い等によってフィット性が良好になり、締付け跡が付きにくく、また横漏れ防止効果もある旨が記載されている。
しかしながら、弾性部材が、その長さ方向に伸縮性を与えるものであり、かつその配列を密にすれば、当該箇所の伸縮性が強化されることは当業者によって自明ともいうべき事項であって、パンツ型のおむつにおいて、その着用状体を良好に保ち、排泄物の漏れを防止するなどの目的のために、脚回り弾性部材の群を構成する複数本の弾性部材の配列間隔を、長さ方向で変化させることは、本願出願前より周知の技術である。
しかも、例えば、特開平4-122257号公報、特開平4-31649号公報には、両端部すなわち本願発明の両側縁部において、脚周りに配置される複数本の弾性部材の配列間隔を狭くすることによりフィット性等を向上させることが示されているのであるから、引用発明において、股間部で束ねられた状態に配置され、両側縁部では相互に間隔を開けて配置された脚周り弾性伸縮部材を、上記本願前周知のように左右の側縁部で狭くなるようにして、該部分においても束ねられた状態とすることは、当業者が適宜になし得る設計的事項であり、その効果も当業者が十分に予測し得る程度のものにすぎない。

(2-3)相違点2についてのまとめ
本願発明の相違点2に係る、脚回り弾性部材の群の傾斜及び配列を総合しても、それが相互に関連して格別の作用効果が奏されるとの技術的根拠を見出すことはできないから、本願発明の相違点2に係る構成は、上述した周知技術を勘案すれば、当業者が適宜採用し得る程度のものにすぎないというべきである。

(3)相違点3について
本願発明の相違点3に係る構成に関連して、本願明細書には、「本発明の前身頃Fと後身頃Bとの両側縁部の実質的に長手方向全体を接合した接合部は、図1、図2および図1の要部拡大図である図4に明示してあるように、その接合部30は、おむつ中央線に対して非平行で角度θをもち、脚開口部LO側ほどおむつ外方に位置しているものである。」(段落番号【0022】)とし、「複数本の弾性糸G1…,G2…からなる脚周り弾性部材の有効伸縮長さは、その接合部の前身頃Fの内方境界線と後身頃Bの内方境界線を結ぶ長さ分である。」(段落番号【0029】)とした上で、「上述例の接合部の形態を採ると、脚周り弾性部材の有効伸縮長さが長くでき、伸縮総長が増長される分、かつ、必要な収縮量当たりの長さが長くなる分、肌により柔らかくかつ漏れ防止に充分なフィットがもたらされ、いわゆるフィット性が良好となる。しかも、接合部の内方境界線が傾斜しているので、脚を通すときごく自然な形態となり、はき易くなる。また、伸長総長が増長される面からもはき易くなる。」(段落番号【0030】)とその技術的意義が記載されている。
しかしながら、パンツ型おむつの前身頃と後身頃を接合部がおむつ中心線に対して非平行で、胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置するように接合することは、引用文献2及び3に記載されているように本願出願前より周知の技術であり、特に引用文献2には、接合線が傾斜して設けられることにより、腰周り弾性体の幅方向の有効作用長さが従来のものより短くなり、したがって、着用者に対する腰周りのフィット性が向上し、しかも、脚穴周り弾性体により股間のフィット性も向上することも記載されている。
そして、このように接合線を傾斜させることによって、接合部のおむつ内方の境界線も、おむつ中心線に対して非平行で、胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置するようになることは容易に予測し得ることである。
したがって、引用発明において、脚周りのフィット性の向上を図るべく、引用文献2及び3に記載されたように、接合部をおむつ中心線に対して非平行で、胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置するように接合するようにして接合部とおむつの幅方向内方との境界線が、おむつ中央線に対して非平行であり、前記胴開口部に対し脚開口部に至るほどおむつ外方に位置するようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
しかも、それによって、脚周り弾性部材の有効伸縮長さが長くできることも、引用文献2の腰周り弾性体の有効長さについての記載を参照するまでもなく、当業者が十分に予測し得る程度の事項である。

(4)判断についてのまとめ
以上のとおり、本願発明の相違点1ないし3に係る構成は、いずれも、上述した周知の技術からみて、これを超え格別の作用効果を奏するものとはいえず、かつ、本願出願前より周知の技術を適宜寄せ集め、組み合わせる点にも格別の困難性を見いだすことができないから、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、請求人は、平成20年7月8日付けの意見書において、「脚回り弾性部材は脚回り部を収縮させ、脚回りに隙間ができないようにフィットしますが、最も収縮力の求められる脚回り部では長手方向に向けて大きく傾斜するように配置されるため、おむつをずり下げようとするおむつ長手方向の収縮力としても働きます。従来技術(引用文献1など)長手方向に沿って平行に設けられているため、このおむつ長手方向にかかる力によるおむつのずり下がりを効果的に防ぐことができません。一方、本願発明では脇部の接合線がおむつの幅方向に向けて傾斜しているため、脚回り部の収縮力の作用線と脇部の接合線の成す角度が従来技術と比べて90度により近づきます。従って脚回り部が収縮しても、おむつのずり下がりは軽度なものとなります。」と、本願発明の脚回り弾性体が、長手方向に向けて大きく傾斜するように配置されされるのに対し、引用文献1に記載されたものは、脚回り弾性体が長手方向に沿って平行に設けられているかのように主張する。
しかしながら、引用文献1に、脚回り弾性伸縮部材67、68の群が、左右の脚回り部においておむつの長手方向に対して傾斜するように配置されている点が記載されていることは前述のとおりである。
そして、引用発明の脚回り弾性伸縮部材67、68の群の収縮力も、おむつ長さ方向と幅方向の成分を有すること、そして、その幅方向の成分は、傾斜が大きいほど大きくなることも当然の事項であるから、本願明細書を参酌しても、本願発明のものと比較して、作用効果の観点で格別の差異があるものとは解されない。
また、接合線がおむつの幅方向に向けて傾斜しているため、脚回り部の収縮力の作用線と脇部の接合線のなす角度が従来技術と比べて90度により近づく旨の主張についても、傾斜した弾性伸縮部材67、68の群を設けた引用発明に、本願出願前より周知の技術である、傾斜した接合部を適用すれば、弾性収縮部材と接合線のなす角度が、引用発明のものより90度に近づくことは当業者が容易に予測し得る事項であり、格別なものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知の技術を勘案し、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-10 
結審通知日 2008-10-16 
審決日 2008-10-30 
出願番号 特願2002-191801(P2002-191801)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志内山 隆史  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 佐野 健治
熊倉 強
発明の名称 パンツ型おむつ  
代理人 永井 義久  
代理人 永井 義久  

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