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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1189452
審判番号 不服2006-5747  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-29 
確定日 2008-12-10 
事件の表示 特願2002-257149「空気清浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 57773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成14年7月31日に特許出願されたものであって、平成17年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年6月15日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「イオン化部分と集塵部分とよりなる集塵エリアと、フィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層で脱臭処理する脱臭エリアからなる空気清浄装置において、上記集塵エリアと脱臭エリアに沿って照明灯を設け、該照明灯は、波長180?300nmの紫外線を照射するようにし、前記紫外線を集塵エリアおよび二酸化チタンの皮膜に当て、集塵エリアに捕捉した細菌の殺菌および集塵エリアを通過した臭気成分の脱臭を行うと共に、汚染空気吸い込み口の内側に遮蔽板を設け、紫外線の外部への露出を防止した空気清浄装置。」

2.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用文献1として提示された特開平10-61986号公報(以下、「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「【発明の実施の形態】・・・。図1は本発明の第1実施形態の空気清浄機の概略構成図である。図1を参照して、本空気清浄機は、ケーシング1内に区画される通気路2中に、プレフィルタ3、イオン化部4、集塵部としての静電フィルタ5および光触媒部としての光触媒フィルタ6を一体に構成した積層フィルタ7、光源ランプ8、並びに通気流10を生成するための送風ファン9を、この順で通気流方向に沿って配置している。」(第3頁右欄第48行?第4頁左欄第6行、段落【0014】)、
(イ)「また、光触媒フィルタ6は光触媒を担持した、例えば目付70g/m^(2)のポリエステル系不織布シートを用いることができる。この不織布シートの少なくとも片面に、例えば光触媒と吸着剤との混練物を塗布することにより、光触媒を担持させてある。」(第4頁左欄第17?21行、段落【0016】)、
(ウ)「また、上記の光触媒としては、・・・二酸化チタンを用いることが好ましい。」(第4頁左欄第36?40行、段落【0018】)、
(エ)「この光源ランプ8としては、紫外線を含む光を発するものであれば、どのようなタイプのランプでも良いが、例えば320?420ナノメータの波長の紫外領域の光線を発する冷陰極管を用いることが好ましい。というのは、冷陰極管であれば、例えば2万時間等と寿命が長くて長期にわたって交換等のメンテナンスを不要にでき、しかも、例えば直径1?5mm程度のものも使用できて光源ランプの配置スペースを削減できると共に、点灯のためのインバータ回路が簡単であることから、小型化を図れるからである。」(第4頁右欄第22?31行、段落【0021】)、
(オ)「本第2実施形態では、集塵部を構成する静電フィルタ11の下流側に、光触媒部12を配置しており、この光触媒部12が、光触媒を担持した互いに平行な複数の平板13を含んで構成されている。」(第4頁右欄第45?49行、段落【0023】)
(カ)「次いで、図5は本発明の第5実施形態を示している。同図を参照して、本第4実施形態が図1の第1実施形態と異なるのは、光源ランプ8の下流に、第2実施形態で示した光触媒部12を設けたことである。・・・。
本第4実施形態では、光源ランプ8からの紫外線を、光触媒部12の平板13に担持された光触媒と、積層フィルタ7の光触媒フィルタ6の光触媒との双方に照射することができるので、光源ランプ8からの紫外線を有効に利用して効率良く脱臭が行える。・・・。また、光源ランプ8から上流側の集塵フィルタ6へも、紫外線を含む光を照射できる結果、集塵フィルタ5での細菌の増殖を抑えることができる。」(第5頁左欄第33?49行、段落【0027】?【0028】)
(2)原査定の拒絶の理由において引用文献3として提示された特開平11-192405号公報(以下、「引用例2」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「外周が側面板に囲繞された構造を有し、空調設備の空気導入路に着脱自在に配置され、空気中の塵埃、細菌、悪臭物質を除去する光触媒フィルタユニットにおいて、
空気導入口に配置され、空気中に含まれる粗塵を除去するプレフィルタと、
該プレフィルタの下流側に配置されて空気中に含まれる悪臭物質を捕捉すると共に、光に反応してこの悪臭物質を分解する光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタの下流側に配置され、空気中の微細な細菌類を捕捉する中性能フィルタと、
前記光触媒と前記中性能フィルタとの間に配置され、前記光触媒フィルタ及び中性能フィルタに向けて紫外線を照射する紫外線ランプと、
を有することを特徴とする光触媒フィルタユニット。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
(イ)「そして、光触媒フィルタ9と中性能フィルタ10との間の空間には、光触媒励起用の紫外線ランプ11が設置され、該紫外線ランプ11から照射される紫外線により光触媒フィルタ9に付着した悪臭物質を分解し、且つ、中性能フィルタ10に付着した細菌類を殺菌することができるようになっている。紫外線ランプ11から照射される紫外線としては、殺菌能力の高い殺菌線(例えば、波長253.7nm程度)が使用される。」(第4頁左欄第20?28行、段落【0014】)
(3)原査定の拒絶の理由において引用文献4として提示された特開平7-194684号公報(以下、「引用例3」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「清浄化されるべき空気の経路(PH)を区画する本体(1)、
本体(1)の上記経路(PH)中に配設され、当該空気中の雑菌を荷電するイオン化部(120)と荷電された雑菌を捕集する捕集部(121)とを有する電気捕集機(12)、
捕集された雑菌にオゾンを供給するオゾン供給手段(120a、122)、
上記経路(PH)中の、電気捕集機(12)よりも下流側に配設され、残留するオゾンを分解するオゾン分解手段(13)、およびオゾンの雰囲気下で捕集されている雑菌に紫外線を照射する紫外線照射手段(11)を備えていることを特徴とする殺菌装置」(【特許請求の範囲】【請求項2】)、
(イ)「請求項2記載の殺菌装置において、
上記本体(1)は、外部に紫外線が漏れるのを防止するルーバー(15)を備えているものである。」(【特許請求の範囲】【請求項8】)、
(ウ)「紫外線ランプ11は、従来より広く採用されているもので、約200nmから約300nmの波長の紫外線を照射するように構成されている。」(第3頁右欄第30?33行、段落【0019】)、
(エ)「次に、図1の構成において、本体1の空気導入口2には、ルーバー15が配設されている。・・・。ルーバー15は、図2に示すように、空気の経路PHに交差する方向に並設されている多数の羽根部150を備えている。羽根部150は、上記紫外線ランプ11に対向する反射面151と反射面151と反対側に構成され、反射面から反射された紫外線を吸収する吸収層152を備えている。」(第4頁左欄第9?19行、段落【0022】)、
(オ)「特に、図2で説明したように、ルーバー15の紫外線吸収層152が本体1内で紫外線を吸収するので、一層確実に紫外線が漏れるのを防止することができる。」(第4頁右欄第16?19行、段落【0026】)
(4)特開平11-47256号公報(以下、「周知例1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「加熱により光触媒を生成する光触媒前駆体を、フィルタを構成する材料の表面に塗布し加熱処理することで、フィルタを構成する材料の表面に光触媒を担持させても良い。」(第3頁左欄第15?18行、段落【0010】)、
(イ)「上述した光触媒、または光触媒前駆体に対する加熱処理は、予めフィルタを構成する材料を加熱しておいてから、光触媒または光触媒前駆体を塗布しても良いし、あるいはフィルタを構成する材料の表面に光触媒または光触媒前駆体を塗布した後、室温放置または加熱処理することにより行っても良い。
塗布方法としては、刷毛塗り法、ディッピング法、スプレー法、PVD(物理蒸着)法、あるいはCVD(化学蒸着)法が挙げられる」(第3頁右欄第16?24行、段落【0015】?【0016】)、
(ウ)「【発明の実施の形態】 図1は、上述した発明が適用された脱臭装置2の概略断面図である。この脱臭装置2は空気清浄機を兼ねている。脱臭装置2の本体ケース4内には流通路6が形成されている。この流通路6内には、空気取り入れ口8側から順に、集塵フィルタ10、活性炭フィルタ12、ホルムアルデヒド除去フィルタ14、紫外線ランプ収納室16、光触媒フィルタ18および排出室20が順に配列されている。」(第3頁右欄第36?43行、段落【0018】)、
(エ)「紫外線ランプ収納室16には、紫外線ランプ32が配置されて、光触媒フィルタ18を紫外線で照射している。」(第4頁左欄第23?25行、段落【0023】)、
(オ)「集塵フィルタ10の代わりに電気集塵ユニットを用いても良い。」(第5頁左欄第13?14行、段落【0032】)

3.対比・判断
引用例1には、記載事項(ア)に「空気清浄機は、・・・イオン化部、集塵部としての静電フィルタ・・・、光源ランプ、・・・を、この順で通気流方向に沿って配置し」ていることが記載されている。そして、該記載中の「光源ランプ」に関して、記載事項(エ)に「紫外線を・・・発するものであれば、どのようなタイプのランプでも良い」ことが記載され、記載事項(カ)に「光源ランプの下流に、第2実施形態で示した光触媒部を設けた」ことが記載され、該記載中の「第2実施形態で示した光触媒部」に関して、記載事項(オ)に「光触媒を担持した」ことが記載され、該記載中の「光触媒」に関して、記載事項(ウ)に「二酸化チタンを用いる」ことが記載されており、また、記載事項(ア)中の「空気清浄機」に関して、記載事項(カ)に「光源ランプからの紫外線を、光触媒部の・・・光触媒・・・に照射することができるので・・・脱臭が行え・・・光源ランプから上流側の集塵フィルタへも、紫外線を・・・照射できる結果・・・集塵フィルタでの細菌の増殖を抑える」ことが記載されている。
そして、これらの記載を、本願発明の記載に沿って整理すると、引用例1には、「イオン化部、集塵部としての静電フィルタ、紫外線を発するものであれば、どのようなタイプのランプでも良い光源ランプをこの順で通気流方向に沿って配置し、光源ランプの下流に二酸化チタンを用いる光触媒を担持した光触媒部を設け、光源ランプからの紫外線を光触媒部の光触媒に照射できることで脱臭を行い、光源ランプから上流側の集塵フィルタへも紫外線を照射できることで集塵フィルタでの細菌の増殖を抑える空気清浄機」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
そして、本願発明と引用1発明を対比すると、引用1発明の「イオン化部」、「集塵部としての静電フィルタ」、「光源ランプ」及び「空気清浄機」が、それぞれ、本願発明の「イオン化部分」、「集塵部分」、「照明灯」及び「空気清浄装置」に相当し、また、引用1発明の「イオン化部と集塵部としての静電フィルタ」が本願発明の「集塵エリア」に相当し、さらに、引用1発明で「光触媒部」が、脱臭を行う部位であるから、本願発明の「脱臭エリア」に相当する。そして、引用1発明で「イオン化部、集塵部としての静電フィルタ、・・・光源ランプをこの順で通気流方向に沿って配置し、光源ランプの下流に・・・光触媒部を設け」ていることにより、引用1発明において「イオン化部、集塵部としての静電フィルタ」と「光触媒部」との間に「光源ランプ」が位置することになるから、該位置関係が本願発明の「集塵エリアと脱臭エリアに沿って照明灯を設ける」ことに相当する。また、引用1発明の「集塵フィルタ」がその名称と光源ランプの上流側に配置されることからみて「集塵部としての静電フィルタ」を表していることが明らかであること、「光触媒部」が「イオン化部、集塵部としての静電フィルタ」の下流に設けられていること、及び、引用1発明の「集塵フィルタでの細菌の増殖を抑える」ことが本願発明の「集塵エリアに捕捉した細菌の殺菌を行う」ことと単なる表現上の差違に過ぎないといえることを勘案すると、引用1発明の「光源ランプからの紫外線を光触媒部の光触媒に照射できることで脱臭を行い、光源ランプから上流側の集塵フィルタへも紫外線を照射できることで集塵フィルタでの細菌の増殖を抑える」ことが、本願発明の「集塵エリアに捕捉した細菌の殺菌および集塵エリアを通過した臭気成分の脱臭を行う」ことに相当するといえる。
してみると、両者は「イオン化部分と集塵部分とよりなる集塵エリアと、脱臭処理する脱臭エリアからなる空気清浄装置において、上記集塵エリアと脱臭エリアに沿って照明灯を設け、該照明灯は、紫外線を照射するようにし、集塵エリアに捕捉した細菌の殺菌および集塵エリアを通過した臭気成分の脱臭を行う空気清浄装置」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点a:本願発明では、「フィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層で脱臭処理する」のに対して、引用1発明では、「光触媒部」が二酸化チタンを用いる光触媒を担持しているから二酸化チタンを用いて脱臭処理するものの、「光触媒部」でフィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層で脱臭処理することについての記載がない点
相違点b:本願発明では、「照明灯は、波長180?300nmの紫外線を照射する」のに対して、引用1発明では、「光源ランプ」から波長180?300nmの紫外線を照射することについての記載がない点
相違点c:本願発明では「紫外線を集塵エリアおよび二酸化チタンの皮膜に当て」るのに対して、引用1発明では、光触媒に二酸化チタンを用い、紫外線を光触媒部の光触媒に照射し、光源ランプから上流側の集塵フィルタへも紫外線を照射しているから、紫外線を「イオン化部と集塵部としての静電フィルタ」および「二酸化チタン」に照射しているものの、紫外線を二酸化チタンの皮膜に照射することについての記載がない点
相違点d:本願発明では、「汚染空気吸い込み口の内側に遮蔽板を設け、紫外線の外部への露出を防止」するのに対して、引用1発明では、紫外線の外部への露出を防止する手段を設けることについての記載がない点
そこで、上記の相違点について検討する。
(i)相違点(a)について
引用例1には引用1発明の「光触媒部」における光触媒の具体的な担持構造が記載されていないが、該担持構造が、仮に、記載事項(イ)に記載する「不織布シートの少なくとも片面に、例えば光触媒と吸着剤との混練物を塗布することにより、光触媒を担持させてある」ものと同一であるとすると、該「不織布シート」が本願発明の「フィルター体」に相当し、また、該「不織布シート」に二酸化チタン混練物を塗布したものが、本願発明の「フィルター体を二酸化チタンの被膜で表面処理したフィルター層」に相当する。
そして、引用1発明の「光触媒部」における光触媒の具体的な担持構造が記載事項(イ)に記載する上記のものと同一でないとしても、集塵を行う電気集塵ユニットと光触媒に紫外線を照射して脱臭を行う脱臭手段を備えた空気清浄機において光触媒部にフィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層を設けて脱臭処理を行うものは周知例1(記載事項(ア)?(オ)〕に記載されているように本願出願前周知であり、引用1発明は光触媒部にフィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層を設けて脱臭処理を行うことを阻害する特別の事由を有するものと認められないから、引用1発明に対して、「光触媒部」がフィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層で脱臭処理するものとすることは、当業者であれば適宜なし得ることであって、技術的に格別のことでない。
(ii)相違点(b)について
光触媒に紫外線を照射する脱臭手段と空気中の細菌類の捕捉手段を備えた空気清浄機において紫外線発生手段である紫外線ランプを上記の両手段の間に配置するとともに、紫外線ランプから照射される紫外線の波長を180?300nmの範囲内のものとすることによって上記の脱臭手段による脱臭を行うとともに上記の細菌類の捕捉手段で捕捉した細菌類の殺菌も行うものは引用例2〔記載事項(ア)、(イ)〕に記載されているように本願出願前公知であり、また、紫外線照射手段を備えた空気清浄装置において照射される紫外線の波長を180?300nmの範囲内のものとすることは引用例3〔記載事項(ア)、(ウ)〕に記載されているように本願出願前周知である。
そして、引用1発明で、「光源ランプ」が「紫外線を発するものであれば、どのようなタイプのランプでも良い」ことを勘案すると、引用1発明に対して、「光源ランプ」から波長180?300nmの紫外線を照射するものとすることは、当業者であれば適宜なし得ることであって、技術的に格別のことでない。
なお、引用例1の記載事項(エ)中に光源ランプから照射される紫外線の波長に関して「例えば320?420ナノメータの波長の紫外領域の光線を発する冷陰極管を用いることが好ましい。」と記載されているものの、この範囲の波長の紫外線を用いるのが光源ランプの長寿命化や、配置スペースの削減や、小型化を図るためであることを勘案すると、引用1発明がこの範囲の波長の紫外線を照射するものに限定して解釈されるものでないことは明らかである。
(iii)相違点(c)について
相違点aで検討したように、引用1発明に対して、「光触媒部」がフィルタ-体を二酸化チタンの皮膜で表面処理したフィルタ-層で脱臭処理するものとする場合は、当然紫外線を二酸化チタンの皮膜に照射することになる。
してみると、引用1発明に対して、紫外線を二酸化チタンの皮膜に照射するものとすることは、当業者であれば適宜なし得ることであって、技術的に格別のことでない。
(iv)相違点(d)について
紫外線照射手段を備えた装置において紫外線が装置外に漏れて人体の目等へ害を与えないようにするために安全用の対策を講じることは本願出願前から普通に行われていることであり、また、清浄化されるべき空気中の雑菌を捕集する電気捕集機と紫外線照射手段を備えた殺菌装置において本体の空気導入口内に外部に紫外線が漏れるのを防止する手段としてのルーバーを設けるものは引用例3〔記載事項(ア)、(イ)、(エ)?(オ)〕に記載されているように本願出願前公知である。
そして、上記公知技術における「空気導入口」という用語は清浄化されるべき空気の導入口を意味するから、本願発明における「汚染空気吸い込み口」及び引用1発明における浄化される空気の空気清浄機ケーシングへの入口である「浄化される空気の給気口」に相当することは明らかであり、また、上記公知技術における「外部に紫外線が漏れるのを防止する」と本願発明における「紫外線の外部への露出を防止する」は単なる表現上の差違に過ぎず、さらに、上記公知技術における「ルーバー」は「遮蔽板」の一形態のものである。
してみると、引用1発明に対して、浄化される空気の給気口の内側に遮蔽板を設けて紫外線の外部への露出を防止することは、当業者であれば適宜なし得ることであって、技術的に格別のことでない。
そして、本願発明の上記相違点に係る特定事項を採ることにより奏される「殺菌と脱臭が同時に行えて、装置がコンパクトになるとともに、製作コストも節減でき、また、紫外線の外部への露出を防ぐことができる」という効果も当業者であれば予測し得る範囲内のことである。
してみると、本願発明は、引用例1に記載された発明、光触媒に紫外線を照射する脱臭手段と空気中の細菌類の捕捉手段を備えた空気清浄機における引用例2に記載の公知技術、清浄化されるべき空気中の雑菌を捕集する電気捕集機と紫外線照射手段を備えた殺菌装置における引用例3に記載の公知技術及び上記諸周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明並びに上記の公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-29 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2002-257149(P2002-257149)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 浩平  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 大工原 大二
小川 慶子
発明の名称 空気清浄装置  
代理人 中島 正  
代理人 中島 正  

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