• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1189457
審判番号 不服2006-7416  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-19 
確定日 2008-12-08 
事件の表示 特願2000-606291号「フリースタンディングフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年9月28日国際公開、WO00/56390、平成14年11月26日国内公表、特表2002-539858号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年3月16日(パリ条約による優先権主張 1999年3月19日、米国)を国際出願とする出願であって、平成18年1月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年5月18日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年5月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
「細長いガイドワイヤに沿って血管に導入し、該血管を通る血流において塞栓を捕捉するために、管壁と接触して放射方向に拡張するためのフリースタンディングフィルタであって、
第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有するフィルタ本体であって、該フィルタ本体が、該フィルタ本体の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在する細長いガイドワイヤ受容部材を含み、該細長いガイドワイヤ受容部材が前記細長いガイドワイヤ受容部材を通ってガイドワイヤを受容し、通過させることができ、その間の相対的な移動を行うことができるサイズの開口端を有するチャネルを規定するフィルタ本体と、
前記細長いガイドワイヤ受容部材に接続され、前記細長いガイドワイヤ受容部材を囲繞する拡張可能かつ収縮可能なフレームであって、前記細長いガイドワイヤ受容部材に隣接する第1の収縮位置と、前記細長いガイドワイヤ受容部材から放射方向に離間された第2の拡張位置との間で、移動するように構成されたフレームと、
多孔性塞栓捕捉ユニットであって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端にて頂点を含む多孔性塞栓捕捉ユニットと、
前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する摺動可能な継手であって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの前記頂点が接続される摺動可能な継手と、を具備し、
前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端が、前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する、フリースタンディングフィルタ。」

2.補正の目的、及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1(平成17年12月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載され、原査定の理由に不明瞭な記載と指摘された「多孔性塞栓補足ユニットの少なくとも一部が、実質的に円錐である、」との特定事項を「多孔性塞栓捕捉ユニットであって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端にて頂点を含む多孔性塞栓捕捉ユニットと、」と、その部位を明瞭にする記載に補正するとともに、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記フレームに接続される多孔性塞栓捕捉ユニット」との特定事項に、「前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する摺動可能な継手であって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの前記頂点が接続される摺動可能な継手と、を具備し、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端が、前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する、」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)、以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第4723549号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a.「As shown in FIGS. 1-3, the device of the invention includes a flexible elongated catheter 1 which is inserted into a blood vessel 3 narrowed by a stenosis 5 through an incision (not shown) upstream of the stenosis 5. The catheter 1 is guided into place with the distal end 7 downstream of the stenosis 5 by a guide wire 9 which passes through a guide lumen 11 in the catheter.
・・・A toroidal dilating balloon 13 is secured to the catheter 1 by known techniques at a location spaced from the distal end 7 of the catheter. A dilating balloon lumen 15 in the catheter supplies pressurizing fluid to the dilating balloon through an orifice 17.
A filter device 19 is affixed to the catheter between the distal end 7 and the dilating balloon 13. This filter device includes a plurality of ribs 21, of which four are shown in the embodiments illustrated, equiangularly spaced around the catheter 1. A device with six equiangularly spaced ribs 21 has also been constructed. The ribs 21 are pivotally secured to the catheter at one end and extend gradually axially along the catheter in the stowed position shown in FIG. 1. The ribs 21 are formed of a resilient material, preferably stainless steel or a suitable plastic. In the exemplary embodiment, the ribs 21 are 0.006 inch diameter steel wires. These wires are pivotally mounted on the catheter by a ring 23 which in turn is secured to the catheter, such as by an adhesive 25. ・・・ The resilient ribs 21 are prestressed or preformed such that they are biased inward against the catheter.」(第2欄第62行?第3欄第26行)(図1-3に示されるように、この発明の装置は、狭窄5の上流の切り口(図示されない)を通して、狭窄5で狭くなった血管3へ差し込まれる、柔軟に伸びるカテーテル1を含んでいる。カテーテル1は、カテーテル中のガイド腔11を通り抜けるガイドワイヤ9によって、遠位端7を狭窄5の下流にガイドされる。・・・環状体の拡大するバルーン13は、カテーテルの遠位端7から一定間隔で配置された位置で既知の技術によってカテーテル1に取り付けられる。カテーテル中の膨張バルーン腔15は、開口部17を通って膨張バルーンに与圧流体を供給する。フィルタ装置19は、遠位端7と膨張バルーン13の間のカテーテルに取り付けられる。このフィルタ装置は多くのリブ21を含んでおり、図示された具体例では4本であり、カテーテル1のまわりで等角度に間隔を置かれている。6つの等角度間隔に置かれたリブ21を備えた装置も構築される。リブ21は、1つの終わりでカテーテルにピボット可能に取り付けられ、図1に示される収納位置で、カテーテルに沿って軸方向に伸びる。リブ21は、弾力のある材料、できればステンレス鋼あるいは適切なプラスチックから作られる。典型的な具体例では、リブ21は直径0.006インチの鋼線である。これらのワイヤは、接着剤25によってカテーテルに固定されたリング23によって、カテーテルに対してピボット可能に取り付けられている。
・・・弾力のあるリブ21は、それらがカテーテルに対して内部に偏向するように、プレストレスされるか、あるいは前もって作られる。)
b.「Filter material 37 spans the gaps between and is secured to the ribs 21. ・・・
Inflation of the filter balloon 29 extends the filter by pivoting the ribs 21 until they come into contact with the interior wall of the blood vessel 3 as shown in FIG. 2. ・・・ With the ribs 21 extended into contact with the wall of the blood vessel the filter material is stretched across the blood vessel to form a cup shaped opening toward the dilating balloon to catch any fragments broken loose from the stenosis 5. The resiliency or compliance of the ribs 21 causes them to retract to the stowed position shown in FIG. 1 when the filter balloon 29 is deflated. 」(第3欄第31行?54行)(フィルタ材37は、リブ21のギャップ間にまたがり、リブ21に取り付けられる。・・・フィルタ・バルーン29の膨張は、それらが、図2に示されるように血管3の内壁と接触するまで、リブ21をピボットさせることにより、フィルタを拡張する。・・・フィルタ材を血管の壁と接触するように、リブ21を拡張して伸し、血管を横断して、狭窄5からのどんな破片もつかむために拡大するバルーンへの開口部を形作るカップを形成する。リブ21の弾力性・追従性は、フィルタ・バルーン29から空気を抜かれる時、図1に示される収納位置へそれらを収縮させる。)
c.「In the preferred form of the filter shown in FIGS. 5 and 6, the ends 41 of the resilient ribs 21' which extend toward the dilating balloon 13 are secured to a second ring 43 which is slidable along the catheter 1. ・・・ Inflation of the filter balloon 29 causes the ribs 21' to bow outward as shown in FIG. 5 until points, 45, in their mid portion contact the wall of the blood vessel. ・・・Upon deflation of the filter balloon 29, the resiliency or compliance of the ribs 21' returns then to the stowed position shown in FIG. 6 ・・・」(第3欄第67行?第4欄第14行)(図5および6に示されるフィルタの好ましい形態では、膨張バルーン13の方へ伸びる弾力のあるリブ21’の終端41は、カテーテル1に沿って移動する第2リング43へ取り付けられる。・・・フィルタ・バルーン29の膨張は、リブ21’を中央の部分が血管の壁と接触するように、図5の45に示される位置まで外へ湾曲させる。・・・フィルタ・バルーン29の縮小に際して、リブ21’の弾力性・追従性は、図6に示される収納位置へ戻し、・・・ )

ここで、引用例に記載されるフィルタ装置19が取り付けられたカテーテル1は、ガイドワイヤ9に沿って、血管に導入されるものであり(a.参照)、ガイドワイヤが、細長いことは自明であるとともに、引用例には、「Inflation of the filter balloon 29 extends the filter by pivoting the ribs 21 until they come into contact with the interior wall of the blood vessel 3 as shown in FIG. 2. ・・・ With the ribs 21 extended into contact with the wall of the blood vessel the filter material is stretched across the blood vessel to form a cup shaped opening toward the dilating balloon to catch any fragments broken loose from the stenosis 5. 」(b.参照)と、血管3の内壁と接触するまで、フィルタを拡張する旨記載され、さらに、狭窄5からの破片もつかむために開口部を形成する旨記載されるのであるから、引用例には、
細長いガイドワイヤ9に沿って血管に導入し、該血管を通る血流において塞栓を捕捉するために、管壁と接触して放射方向に拡張するためのカテーテル1に設けたフィルタ装置
が記載されている。
また、カテーテル1には、端部が図示されており、第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有することは、自明の事項である。そして、引用例には、「The catheter 1 is guided into place ・・・by a guide wire 9 which passes through a guide lumen 11 in the catheter.」(a.参照)と、カテーテル1は、カテーテル中のガイド腔11を通り抜けるガイドワイヤ9にガイドされる旨記載され、Fig.1の記載によれば、ガイド腔11は細長く、カテーテル1に設けられる以上、ガイド腔11がカテーテル1の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在すると解されるとともに、カテーテル1がガイドワイヤ9にガイドされるのであるから、その間の相対移動が可能な寸法関係にあることが把握され、Fig.1の記載によれば、ガイド腔11の端部、カテーテル1の遠位端7から、ガイドワイヤ9の端部がカテーテル本体1の外部に伸びている。
したがって、引用例には、
第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有するカテーテル1であって、該カテーテル1が、該カテーテル1の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在する細長いガイド腔11を含み、該細長いカテーテル1が前記細長いガイド腔11を通ってガイドワイヤ9を受容し、通過させることができ、その間の相対的な移動を行うことができるサイズの開口端を有する孔を規定するカテーテル1
が記載されている。
さらに、引用例のリブ21に関し、「The ribs 21 are pivotally secured to the catheter at one end and extend gradually axially along the catheter in the stowed position shown in FIG. 1.」(a.参照)と記載され、指摘されるFIG.1を併せみると、リブ21は、カテーテルに沿った収納位置をとることが記載されている。また、「Inflation of the filter balloon 29 causes the ribs 21' to bow outward as shown in FIG. 5 until points, 45, in their mid portion contact the wall of the blood vessel.」と記載され、指摘されるFIG.5を併せ見ると、リブ21’の中央の部分を血管の壁と接触しさせるように外へ湾曲させるカテーテルから放射方向に離間された位置をとるものとされている。
この両位置をとることと関連して、「In the preferred form of the filter shown in FIGS. 5 and 6, the ends 41 of the resilient ribs 21' which extend toward the dilating balloon 13 are secured to a second ring 43 which is slidable along the catheter 1.」(c.参照)と記載され、指摘されるFIG.5,6を併せみると、リブ21’は、カテーテル1に沿って移動する第2リング43に終端41が取り付けられ、さらに、「In the exemplary embodiment, the ribs 21 are 0.006 inch diameter steel wires. These wires are pivotally mounted on the catheter by a ring 23 which in turn is secured to the catheter, such as by an adhesive 25.」(a.参照)と、リブを構成するワイヤの遠位の端は、カテーテルの接着されるリング23にピボット可能に取り付けられると記載されている。
さらに、リブ21には、フィルタ37が取り付けられており(b.参照)、FIG.2,5によれば、フィルタ37の遠位の端は、リング23に接続して、膨張時の頂点を形成している。
したがって、引用例には、
細長いカテーテル1に接続され、前記細長いカテーテル1を囲繞する拡張可能かつ収縮可能なリブ21であって、前記細長いカテーテル1に隣接する第1の収縮位置と、前記細長いカテーテル1から放射方向に離間された第2の拡張位置との間で、移動するように構成されたリブ21と、
フィルタ37であって、前記フィルタ37の遠位端にて頂点を含むフィルタ37がリブ21の間に取り付けられ、前記フィルタ37の前記頂点が接続される接着されたリング23と、を具備し、
前記細長いリブ21の上を摺動する摺動可能な第2リング43であって、リブ21の終端が前記細長いカテーテル1の上を摺動するカテーテル1に設けたフィルタ37
が記載されている。
これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「細長いガイドワイヤ9に沿って血管3に導入し、該血管3を通る血流において塞栓を捕捉するために、管壁と接触して放射方向に拡張するためのカテーテル1に設けたフィルタ装置であって、
第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有するフィルタ37を設けたカテーテル1であって、該フィルタ37を設けたカテーテル1が、該フィルタ37を設けたカテーテル1の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在する細長いカテーテル1を含み、該細長いカテーテル1が前記細長いカテーテル1を通ってガイドワイヤ9を受容し、通過させることができ、その間の相対的な移動を行うことができるサイズの開口端を有するガイド腔11を規定するフィルタ37を設けたカテーテル1と、
前記細長いカテーテル1に接続され、前記細長いカテーテル1を囲繞する拡張可能かつ収縮可能なリブ21であって、前記細長いカテーテル1に隣接する第1の収縮位置と、前記細長いカテーテル1から放射方向に離間された第2の拡張位置との間で、移動するように構成されたリブ21と、
フィルタ37であって、前記フィルタ37の遠位端にて頂点を含むフィルタ37と、
前記細長いカテーテル1の上に接着されたリング23であって、前記フィルタ37の前記頂点が接続される接着されたリング23と、
前記細長いカテーテル1の上を摺動する摺動可能な第2リング43であって、前記フィルタ37を取り付けるリブ21の前記頂点ではない側が摺動可能な第2リング43と、を具備し、
前記フィルタ37を取り付けるリブ21の、フィルタ37の前記頂点ではない側が細長いカテーテル1の上を摺動する、カテーテル1に設けたフィルタ装置。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、血管を通る血流において塞栓を捕捉する機能等からみて、引用発明の「フィルタ装置」と本願補正発明の「フリースタンディングフィルタ」とは、ともに「血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタ」である点で共通している。
そして、その構造または機能からみて、引用発明の「フィルタ37を設けたカテーテル1」は、本願補正発明の「フィルタ本体」に相当し、「フィルタ37を設けたカテーテル1」の一部である「カテーテル」は、本願補正発明の「フィルタ本体」に含まれるとされる「ガイドワイヤ受容部材」に相当しており、以下同様に、「ガイド腔11」は「チャネル」に、「ガイドワイヤ9」は「ガイドワイヤ」に、「リブ21」は「フレーム」に、「フィルタ37」は「多孔性塞栓捕捉ユニット」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「リング23」は「フィルタ37」を「カテーテル1」に取り付ける部材であり、本願補正発明の「継手」は「多孔性塞栓捕捉ユニット」を「ガイドワイヤ受容部材」に取り付ける部材であり、取り付けの形式はさておき、どちらも「接続部材」である点では共通している。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「細長いガイドワイヤに沿って血管に導入し、該血管を通る血流において塞栓を捕捉するために、管壁と接触して放射方向に拡張するための血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタであって、
第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有するフィルタ本体であって、該フィルタ本体が、該フィルタ本体の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在する細長いガイドワイヤ受容部材を含み、該細長いガイドワイヤ受容部材が前記細長いガイドワイヤ受容部材を通ってガイドワイヤを受容し、通過させることができ、その間の相対的な移動を行うことができるサイズの開口端を有するチャネルを規定するフィルタ本体と、
前記細長いガイドワイヤ受容部材に接続され、前記細長いガイドワイヤ受容部材を囲繞する拡張可能かつ収縮可能なフレームであって、前記細長いガイドワイヤ受容部材に隣接する第1の収縮位置と、前記細長いガイドワイヤ受容部材から放射方向に離間された第2の拡張位置との間で、移動するように構成されたフレームと、
多孔性塞栓捕捉ユニットであって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端にて頂点を含む多孔性塞栓捕捉ユニットと、
前記細長いガイドワイヤ受容部材の上の接続部材であって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの前記頂点が接続される接続部材と、を具備した
血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタフィルタ。」

そして、両者は次の相違点1及び2で相違する。
(相違点1)
本願補正発明の血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタは、フリースタンディングフィルタであるのに対し、引用発明の血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタは、カテーテルに設けたフィルタ装置である点。

(相違点2)
本願補正発明の細長いガイドワイヤ受容部材の上の接続部材は、ガイドワイヤ受容部材の上を摺動する摺動可能な継手であって、多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端が、前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動するのに対し、引用発明の細長いガイドワイヤ受容部材の上の接続部材は、カテーテルの上に接着されたリングであり、多孔性塞栓捕捉ユニットに相当するフィルタの遠位端が、前記細長いガイドワイヤ受容部材に相当するカテーテルの上を摺動するものではなく、頂点ではない側の第2リングが摺動する点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
血管を通る血流において塞栓を捕捉するフィルタとして、フリースタンディングフィルタは、原審の拒絶の理由に引用された米国特許第4643184号明細書にもあるように周知の一形式であり、引用発明のものをその設計にあたり、周知の形式とすることに格別の困難性は認められないので、引用発明に、周知の技術を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
引用発明においても、フィルタの収納位置とフィルタの拡張位置との間で、フィルタを取り付けたリブのフィルタの頂点ではない側の第2リングはカテーテル上を摺動している。そして、頂点を有する形状物の収納・拡張においては、その形状から少なくとも1の移動部位が必須であることは明らかであり、引用発明は、フィルタの収縮位置と拡張位置との間で、頂点を有して変形するものであるから、当業者は、少なくとも1カ所の移動部位を設けることを引用例の直接の記載の有無にかかわらず把握可能な事項というべきであり、その設計にあたり、引用発明の第2リングまたはフィルタの頂点側のリングの何れを摺動させるかは、適宜選択し得た設計上の差異にすぎない。
したがって、引用発明を相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なしえた設計上の事項に属するものである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成17年12月6日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「細長いガイドワイヤに沿って血管に導入し、該血管を通る血流において塞栓を捕捉するために、管壁と接触して放射方向に拡張するためのフリースタンディングフィルタであって、
第1の端部及び前記第1の端部から離間した第2の端部を有するフィルタ本体であって、該フィルタ本体が、該フィルタ本体の前記第1の端部及び前記第2の端部との間に延在する細長いガイドワイヤ受容部材を含み、該細長いガイドワイヤ受容部材が前記細長いガイドワイヤ受容部材を通ってガイドワイヤを受容し、通過させることができ、その間の相対的な移動を行うことができるサイズの開口端を有するチャネルを規定するフィルタ本体と、
前記細長いガイドワイヤ受容部材に接続され、前記細長いガイドワイヤ受容部材を囲繞する拡張可能かつ収縮可能なフレームであって、前記細長いガイドワイヤ受容部材に隣接する第1の収縮位置と、前記細長いガイドワイヤ受容部材から放射方向に離間された第2の拡張位置との間で、移動するように構成されたフレームと、
前記フレームに接続される多孔性塞栓捕捉ユニットと、を具備し、
前記多孔性塞栓補足ユニットの少なくとも一部が、実質的に円錐である、フリースタンディングフィルタ。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明の限定事項である「多孔性塞栓捕捉ユニットであって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端にて頂点を含む多孔性塞栓捕捉ユニットと、」との特定事項から、その部位を明瞭とする事項を省くとともに、「前記フレームに接続される多孔性塞栓捕捉ユニット」に係る限定である「前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する摺動可能な継手であって、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの前記頂点が接続される摺動可能な継手と、を具備し、前記多孔性塞栓捕捉ユニットの遠位端が、前記細長いガイドワイヤ受容部材の上を摺動する、」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-2、3-3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-16 
審決日 2008-07-29 
出願番号 特願2000-606291(P2000-606291)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 太郎内藤 真徳  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 仲村 靖
蓮井 雅之
発明の名称 フリースタンディングフィルタ  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 田中 克郎  
代理人 大賀 眞司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ