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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1189473
審判番号 不服2006-14154  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-15 
確定日 2008-12-09 
事件の表示 特願2001-125061「室内放出型音質マフラー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月25日出願公開、特開2002-276353〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1] 手続の経緯
本件出願は、平成13年3月19日に出願されたものであって、平成17年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年4月4日付けで拒絶査定がなされ、同年5月15日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、平成20年6月30日付けで審尋がなされ、審尋の指定期間(60日)内に応答がなされなかったものである。

[2]平成18年5月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年5月15日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容
平成18年5月15日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成17年7月20日に提出された手続補正書により補正された)下記の(ロ)に示す請求項1ないし3を下記の(イ)に示す請求項1ないし3と補正するものである。

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
車の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、自動車のマフラーから、音質に変化を着けず、音をとることだけを目的とした、第2のマフラーを設け、音だけをキャビンに導く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。

【請求項2】
請求項1に記載の室内放出型音質マフラーにおいて、自動車のマフラーのマフラーカッターの部分を、一枚板の状態から2重の、中空区間をもった状態に改め、そこから第2のマフラーを、キャビンへと導く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。

【請求項3】
請求項1に記載の室内放出型音質マフラーにおいて、音量の軽減化の目的のため、開閉式蓋を置く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。」

(ロ)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
車の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、自動車のマフラーの、マフラーカッターの部分から、音質に変化を着けず、音をとることだけを目的とした、第2のマフラーを設け、音だけをキャビンに導く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。

【請求項2】
請求項1に記載の室内放出型音質マフラーにおいて、自動車のマフラーの、マフラーカッターの部分を、一枚板の状態から2重の、中空区間をもった状態に改め、そこから第2のマフラーを、キャビンへと導く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。

【請求項3】
請求項1に記載の室内放出型音質マフラーにおいて、音量の軽減化の目的のため、蓋を置く事を特徴とする、室内放出型音質マフラー。」

本件補正は、本件補正前の請求項1の「自動車のマフラーの、マフラーカッターの部分から」を、本件補正後の請求項1の「自動車のマフラーから」と補正するものである。

2.補正の適否の判断
[理由1]
(1)当審の判断
本件補正前の請求項1において特定されていた「マフラーカッターの部分」なる事項を削除することにより、本件補正後の請求項1では、「第2のマフラー」を設ける位置について、マフラーカッターの部分以外の部分にまで拡張されている。
しかしながら、「第2のマフラー」を設ける位置について、マフラーカッターの部分以外の部分とすることは、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に明示の記載はなく、また、当業者からみて、当初明細書等の記載から自明な事項ということもできない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

[理由2]
(1)当審の判断
本件補正前の請求項1において特定されていた「マフラーカッターの部分」なる事項を削除する本件補正は、本件補正前の請求項1ないし3に記載された発明特定事項のいずれの事項を減縮するものでもない。
よって、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1ないし3に記載された発明のいずれかを減縮したものとは認められないので、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。
さらに、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第1号、第3号又は第4号に規定される請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

3.むすび
以上[理由1]又は[理由2]のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、又は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

[3]本願発明について
1. 本願発明
上記のとおり、平成18年5月15日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年7月20日付けで補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記[2]1.(ロ)に記載したとおりである。

2.引用例
実願昭60-83895号(実開昭61-199481号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)

3.当審の判断
(1) 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である上記引用例には、次の事項が記載されている。

ア.「第1図に示す如く、エンジン1から吐出される排気ガスはマフラー2を経てテールパイプ3より大気に放出されるが、該マフラー2の開口部の近傍に、開口させて車室4内と導通するダクト5をフロア6に設け、該ダクト5は、第2図に示す如く、排気音の構成成分の中、耳障りな高周波成分と頭痛のする極低周波成分を減衰除去し、人間の耳に快良い中音域のみを増巾させ車室4内に伝達する構造である。そしてその構造によつて、ダクト5内周壁に形成したグラスウール等吸音材7により高周波成分が吸収され、極低周波成分は排気音がダクト5を経て車室4内に振動伝達されていく途上において、ダクト5の径と長さとで波長の長い極低周波成分はカツトされ、中音域の音は共鳴音となつて増巾し、耳に快良いエキゾーストノートとなり車室4内に伝達される。
なお、8は吸音材7より車室4内方向のダクト内周に亘つて張展された振動膜であつて、更に中音域の音を増巾させ、低周波成分をカツトし、塵埃及び水のダクト5内侵入防止を保護部材9により行うようにしたエキゾーストノート装置である。」(明細書第3ページ第8行?第4ページ第9行)

イ.「この状態を第3図による排気音成分分析図により説明すると、排気音Aがダクト5の通過により高周波成分は吸音材7で吸収(c)してカツトされ、低周波成分はダクト5の径と長さ及び振動膜8で減衰(b)してカツトされ、また、中音域の音はダクト5の径と長さ及び振動膜8で共鳴(a)して増巾して車室4内に快良いエキゾーストノートBが得られる。」(明細書第4ページ第16行?第5ページ第3行)

ウ.上記ア.及び第1図の記載及び車に使用されるマフラーに関する技術常識に照らせば、マフラー2は、エンジン1の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化するものであることが分かる。

エ.上記ア.並びに第1図及び第2図の記載から、ダクト5は、その構成上、排気ガスは通過せず、また、塵埃及び水のダクト5内への進入を防止するものであるから、ダクト5は、音をとることだけを目的としており、音だけを車室4内へ導くものであることが分かる。

上記のア.ないしエ.及び第1図ないし第3図の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「エンジン1の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、マフラー2の、マフラー2の開口部の近傍から、排気音の構成成分の中の高周波成分と低周波成分を減衰除去し、中音域のみを増巾させて、音をとることだけを目的とした、ダクト5を設け、音だけを車室4内に導く、エキゾーストノート装置。」(以下、「引用例記載の発明」という。)

(2) 対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例記載の発明の「エンジン1の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、マフラー2」は、本願発明の「車の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、自動車のマフラー」に相当する。同様に、引用例記載の発明の「ダクト5」は本願発明の「第2のマフラー」に、「車室4内」は「キャビン」に、「エキゾーストノート装置」は「室内放出型音質マフラー」にそれぞれ相当する。
また、引用例記載の発明の「マフラー2の開口部の近傍」は、「マフラー末端の部分」という限りにおいて、本願発明の「マフラーカッターの部分」に相当する。

してみると、両者は、
「車の騒音を消音化しまた排気ガスを軽減化する、自動車のマフラーの、マフラー末端の部分から、音をとることだけを目的とした、第2のマフラーを設け、音だけをキャビンに導く、室内放出型音質マフラー。」の点で一致し、以下1)及び2)の点で相違する。

・相違点
1)マフラー末端に関して、本願発明では、「マフラーカッター」が設けられているのに対して、引用例記載の発明では、マフラーカッターが設けられているか否か明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

2)音だけをキャビンに導くことに関して、本願発明では、「音質に変化を着けず」に導くのに対して、引用例記載の発明では、「排気音の構成成分の中の高周波成分と低周波成分を減衰除去し、中音域のみを増巾させて」導く点(以下、「相違点2」という。)。

(3) 判断
上記相違点について検討する。
1)相違点1について
マフラー末端の部分にマフラーカッターを設けることは、例えば、実公平6-19797号公報に示されるように、周知の技術的事項(以下、「周知の技術1」という。)であって、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎないから、引用例記載の発明において、そのマフラー末端にマフラーカッターを設けることは、当業者が容易になし得ることである。

2)相違点2について
引用例記載の発明が、「排気音の構成成分の中の高周波成分と低周波成分を減衰除去し、中音域のみを増巾させて」なる事項を採用しているのは、上記ア.及びイ.からみて、要するに、人間の耳に不要又は害のある周波数を減衰除去するととに、人間の耳に快良い中音域のみを増巾させ、もって、いわゆるエキゾーストノートを得るためである。そして、如何なる周波数が不要又は害であるかは、音源(エンジンが如何なる音を放出するか)又はドライバーの嗜好等に依存するものであるから、引用例記載の発明の「排気音の構成成分の中の高周波成分と低周波成分を減衰除去し、中音域のみを増巾させて」なる事項の具体化に際して、引用例記載の発明が適用される音源又はドライバーの嗜好に応じて、各周波数の減衰削除又は増巾の程度を如何に設定するかは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
ここで、音源たるエンジンについてみると、人間の耳に快良いエキゾーストノートを発することを主眼として設計されているエンジン(例えば、「アルファ・サウンド」を発するよう設計されているアルファ・ロメオ社(イタリア)のエンジン)や独特のエキゾーストノートを発する構造を有するエンジン(例えば、「ボクサー・サウンド」を発する富士重工業(日本)又はポルシェ社(ドイツ)の水平対向型エンジン)があることは、当業者にとって特段例示するまでもなく、周知の技術的事項(以下、「周知の技術2」という。)である。
また、各ドライバーの嗜好についてみても、それらは千差万別であり、通常のエンジンが発する音そのものを嗜好する者が存在することは、充分に想定できるところである。
してみると、上記周知の技術2である特別なエキゾーストノートを発するエンジンを音源として採用する場合、又は、通常のエンジンが発する音そのものを嗜好する者を前提とする場合にあっては、上記引用例記載の発明の具体化に際して、排気音を構成する周波数成分について、引用例記載の発明のように減衰・増巾特性を適宜付与するか、又は、本願発明のように減衰・増巾特性を無とするかは、当業者にとって格別の創作力を要することもなく、なし得る程度のことにすぎない。

また、本願発明を全体として検討しても、引用例記載の発明並びに周知の技術1及び周知の技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

なお、上記[2]において却下された平成18年5月15日付けの手続補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)についても念のため検討する。
上記[2]1.からみて、本願補正発明は、本願発明の「マフラーカッターの部分」なる事項を有しないものに相当する。
そうすると、本願補正発明を特定する事項を全て含み、さらに本願補正発明を減縮したものに相当する本願発明が、上記[3]2.に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明も、同様の理由により、引用例記載の発明並びに周知の技術1及び周知の技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明並びに周知の技術1及び周知の技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2001-125061(P2001-125061)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 森藤 淳志
柳田 利夫
発明の名称 室内放出型音質マフラー  

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