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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1189486
審判番号 不服2006-20292  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-13 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 平成 9年特許願第362267号「紫外可視吸光度検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 2日出願公開、特開平11-173978〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,出願日が平成9年12月10日であって,平成18年8月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年9月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の特許を受けようとする発明について
1 特許を受けようとする発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「特許を受けようとする発明1」という。)は,平成18年4月21日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
サンプルセル及びリファレンス用穴を備えたフローセル部と、前記フローセル部のサンプルセル入射側セル窓及びリファレンス用穴入射口を含む領域にスペクトル分散方向とは垂直な方向の分光されたスリット像を結像する光学系と、前記サンプルセル及び前記リファレンス用穴を通過した光をそれぞれの受光素子で検出する受光器とを備えた紫外可視吸光度検出器において、
前記光学系が、
集光機能をもつ光源と、
前記光源からの光の集光位置に設置され、縦と横の寸法比が同程度で、かつ前記光源の発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するように前記光源の同じ発光点からの光のみを透過させる大きさの開口部をもつスリットと、
前記スリットからの光を分光する分光器と、
前記分光器により分光された光による前記スリット像を形成する結像光学系と、を備えたことを特徴とする紫外可視吸光度検出器」

2 拒絶理由
それに対し,原査定の平成18年2月17日付け最後の拒絶理由通知における拒絶の理由2.は,
「2. この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1記載の「光源の同じ発光点からの光のみを透過させる大きさ」とは如何ほどの大きさを指すのか、その範囲が不明である。また、本願発明に於けるスリットのような通常の視野絞りのみでは、厳密には「光源の同じ発光点からの光のみを透過させる」ということは不可能であることからも、上記記載の示す技術事項が不明確となっている。
よって、請求項 1 に係る発明は明確でない。」
というものである。

3 当審の判断
(1)特許を受けようとする発明1に対して
ア 上記拒絶理由の「2.」の指摘に対する請求項1の補正により,構成要素「スリット」には,「前記光源の発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するように前記光源の同じ発光点からの光のみを透過させる大きさ」との限定が付加されている。
発明の詳細な説明を参照すると,その技術的意義からみて,発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するようにするためには,どの程度の大きさであればそのような大きさとして十分であるのかを示さなければならないところ,そのような特定がされていないのであるから,「前記光源の発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するように前記光源の同じ発光点からの光「のみ」を透過させる大きさ」は特定できないし,まして,スリットがどんなに小さくても,光源以外からの光が存在した場合には,スリットには入射できるのであるから,「前記光源の発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するように前記光源の同じ発光点からの光「のみ」を透過させる大きさ」は存在しないので,いかなる大きさのスリットを特定しようとするのか明確でないというべきである。

イ また,本願明細書の段落【0008】には,【課題を解決するための手段】の記載として「 【0008】光源からの光をスリットの縦と横の寸法比が同程度の開口部に集光する。スリットの開口部を通過した光を分光器により分光し、フローセル部のサンプルセル入射側セル窓及びリファレンス用穴入射口が分光されたスリット像内に収まるようにフローセル部に結像する。その結果、発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光を入射することができる。」とあり,
さらに,同書の段落【0013】には,特許を受けようとする発明1の実施例に関する記載として「【0013】この実施例では、光源からの光を円形の開口部40をもつ入射スリット39を備え、開口部40を通過した光をグレーティング43により分光し、かつシリンドリカルミラー41及びグレーティング43により結像して、フローセル部45のサンプルセル入射側セル窓53及びリファレンス用穴入射口59がその像の分散方向とは垂直な方向の長さ内に収まるようにしているので、発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光を入射することができる。この実施例では円形の開口部をもつ入射スリットを用いたが、正方形又は正多角形の開口部をもつものを用いてもよい。」とあり,
さらに,同書の段落【0014】には,特許を受けようとする発明1の【発明の効果】に関する記載として「【0014】
【発明の効果】本発明による紫外可視吸光度検出器は、光学系が、光源と、縦と横の寸法比が同程度の開口部をもつスリットと、スリットからの光を分光する分光器と、分光器により分光された光によるスリット像を形成する結像光学系と、を備え、光源からの光をスリットの開口部に集光し、スリットの開口部を通過した光を分光器により分光し、フローセル部のサンプルセル入射側セル窓及びリファレンス用穴入射口が分光されたスリット像内に収まるようにフローセル部に結像するので、発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光を入射することができる。その結果、従来技術に比べて発光点の空間分布が変動したときの相殺性を向上させることができ、ベースラインの安定性が向上して高感度分析に対応することができる。さらに、光源ランプ点灯後のベースライン安定時間を短縮することができ、素早く分析を開始でき、ウオームアップのためのランプの余分な点灯時間を省略することができる。」とあり,これらの「発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光を入射する」との記載は,いずれも同じ発光点の光「のみ」を入射するものではないし,スリットの具体的な寸法は記載されていない。
したがって,発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても,「前記光源の発光点の空間分布が変動してもサンプルセルとリファレンス用穴に同じ発光点の光が入射するように前記光源の同じ発光点からの光「のみ」を透過させる大きさ」は明確でないというべきである。
さらに,本願明細書の記載全体を参酌しても同様であり,該記載から自明の事項であるともいえない。

ウ なお,審判請求書の請求の理由の(3)本願発明が特許されるべき理由において,「具体的な数値を交えて説明する。この分野における重水素ランプのアパーチャの開口径は、アパーチャの開口径が0.5mmのものが多用されている。スリット像が形成されるフローセル部45の流路51の径は1mmである(段落0010)。この例では、光源のアパーチャ径0.5mmをサンプルセルの径1mmに光源?サンプルセルの光学系の倍率は2倍(1mm/0.5mm)となる。光源?サンプルセルの光学系の倍率を2倍とするためには、スリットのサイズとしては、光源?スリット間の倍率とスリット?サンプルセルの倍率との積が2となるようにすればよい。例えば、光源?スリットの倍率を1.6倍、スリット?サンプルセルの倍率を1.25倍(光源?サンプルセルの光学系として倍率が1.6×1.25=2倍)とするのであれば、スリットのサイズは、光源のアパーチャ径0.5mm×倍率(1.6)で0.8mmとなる。 このように、光源?サンプルセルの光学系の倍率は、使用する光源のアパーチャの径と検出器側のセルの開口部の径とから定まり、スリットの開口部の大きさは光学系の倍率を達成するように定まるのである。一般的に重水素ランプについては、開口部の直径が0.5mm或いは1.0mmのものが市場で入手できるものであり、目的に応じて適宜選択が可能である。また、液体クロマトグラフでは内径1mmの配管が多用されており、検出部の径もこれに応じて(一般的にはカラムで分離された成分が配管の拡大・縮小で分散しないように同じ径に)設計される。光源?サンプルセルの光学系の倍率を、光源のアパーチャ部の径及びサンプルセルの径に適した倍率にするために、光学系の途中に設けるスリットのサイズを如何なる大きさとすべきかについては、特許請求の範囲の記載から当業者が把握できる事項である。これらの発明特定事項が物として有する固有のサイズから光学系の倍率が定まり、必然的にスリットの開口部の大きさも求められる。したがって、開口部の大きさが如何なる大きさであるかについては、これを求めるパラメータを有する物(重水素ランプ、サンプルセル等)が発明の詳細な説明に記載されているので、必然的に定まるものである。」と主張しているが,上記「光源?サンプルセルの光学系の倍率を2倍とするためには、スリットのサイズとしては、光源?スリット間の倍率とスリット?サンプルセルの倍率との積が2となるようにすればよい。」との主張は,光源?スリット?サンプルセルと光源から出射した光がサンプルセル側に行く距離に応じて広がっていく光学系を前提にしている。
しかし,本願明細書の段落【0009】には,「【0009】・・・図3は、一実施例を表す構成図である。光源としてD2ランプ35が備えられている。D2ランプ35の光路には集光レンズ37が設けられている。集光レンズ37により集光されたD2ランプ35からの光の光路上には円形の開口部40をもつ入射スリット39が設けられており、集光レンズ37からの光は開口部40に集光する。・・・」と記載されており,ランプ35からレンズ37に入射した光がレンズ37により集められることが記載されている。そして「スリット」は「前記光源からの光の集光位置に設置され」るのであるから,光の集光位置が存在することを前提にしているのであり,レンズ37上の光の入射位置の断面領域よりスリット位置の光の断面領域は小さくなるもの,すなわち,レンズ37を透過した光の断面領域は,スリット位置に近づくに従って小さくなるものであるから,審判請求書の請求の理由で前提としている光学系の構成は特許請求の範囲の記載とは異なることは明らかである。
さらに,審判請求書の請求の理由で示された具体的な数値による構成を考えると,これらの構成では,重水素ランプのアパーチャの像が,スリットによるケラレなしにサンプルセルに結像されるような構成となっている。一方,本願においては,発光点の空間分布が変動しても同じ発光点の光を入射させるものであるから,スリットはそのような大きさにアパーチャからの光をさらに制限するものでなくてはいけない。(なぜならば,単にアパーチャからの光をケラレなくサンプルセルに結像するようなスリットであれば,本願発明の効果を達成するのはスリットではなくアパーチャによるものとなるからである。)すると審判請求書の請求の理由で主張するような具体的な数値による構成を参照しても,特許を受けようとする発明1が明確であるとは言えない。

4 まとめ
してみると,特許を受けようとする発明1は,少なくとも,「スリット」の「光源の同じ発光点からの光「のみ」を透過させる大きさ」が明確でなく,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 むすび
以上のとおり,本願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-16 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-28 
出願番号 特願平9-362267
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦西村 仁志  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 田邉 英治
信田 昌男
発明の名称 紫外可視吸光度検出器  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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