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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1189649
審判番号 不服2007-5544  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 平成9年特許願第108317号「遮音性を有する床構造」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月4日出願公開、特開平10-292610〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成9年4月11日の出願であって,平成19年1月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,請求項1?5に係る発明のうち,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年10月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「床基板上に、2枚以上の硬質板及び仕上げ材又は仕上げ下地材と仕上げ材が順次積層されており、積層された硬質板の目地部がずれていることを特徴とする遮音性を有する床構造。」


2.刊行物及びその記載内容
刊行物:特開平8-302876号公報

これに対して,原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された上記刊行物には,次のことが記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物の床に関し、例えばユニット式建物の床に利用できる。」、
「【0006】そこで、本発明は、少ない層数で所要の強度が得られる建物の床を提供することを目的とする。」、
「【0014】図1に示すように、前記建物ユニット11は、床パネル12、天井パネル13、床パネ12と天井パネル13間に立設された4本の柱14、図示しない外壁パネル等を備えて構成される。前記床パネル12は、4本の下梁15が四角に組まれ、対向する一対の下梁15間に複数の根太16が掛け渡され、更に上面に床材17が張られたものである。また、前記天井パネル13は、4本の上梁18が四角に組まれ、対向する一対の上梁18間に複数の小梁19が掛け渡され、更に下面に天井材21が張られたものである。
【0015】図2に示すように、前記床パネル12の床材17は、上から第1層となる床仕上げ材23、第2層となる高比重石膏ボード24及び第3層となる合板25を含んで構成されている。前記床仕上げ材23は、フローリング又はクッションフロアよりなる。
【0016】前記高比重石膏ボード24は、焼石膏、ガラス繊維等を材料として比重が1.25とされたものである。…
【0017】…更に、JIS A 1321に準じて難燃性を試験したところ、不燃性を示した。なお、この高比重石膏ボード24として、硬質石膏板とも呼ばれているタイガースーパーハード(商品名、吉野石膏株式会社製)を使用した。」、
「【0019】従って、前記高比重石膏ボード24と従来の石膏ボードとの比較より、本実施形態で使用する高比重石膏ボード24は、比重1.25の高比重とされ、かつガラス繊維が混入されたものであるため、大きな強度を有していることがわかる。」、
「【0024】また、上記実施形態では、床材17中に高比重石膏ボード24が1層含まれていたが、所要の強度に応じて2層以上としてもよく、この場合でも従来の石膏ボードを使用する場合と比べて、床材全体の層数の削減が可能になる。」、
「【0025】
【発明の効果】本発明に係る建物の床によれば、床材の少なくとも一層が、高比重石膏ボードよりなるものであるため、少ない層数で所要の強度が得られる。」。

上記記載及び図面の記載からみて,刊行物には,
「下梁15、根太16及び合板25上に、2層以上の高比重石膏ボード(硬質石膏板)24及び床仕上げ材23が順次積層されている床パネル12。」の発明(以下,「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。


3.対比・判断
本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると,刊行物記載の発明の「下梁15、根太16及び合板25」が本願発明の「床基板」に相当し,以下同様に,「2層以上の高比重石膏ボード(硬質石膏板)24」が「2枚以上の硬質板」に,「床仕上げ材23」が「仕上げ材」に,「床パネル12」が「床構造」に,それぞれ相当するから,
両者は,
「床基板上に、2枚以上の硬質板及び仕上げ材が順次積層されている床構造。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
床構造について,本願発明では,「積層された硬質板の目地部がずれて」おり,「遮音性を有する」のに対し,刊行物記載の発明では,そのようなものか定かでない点。

上記相違点を検討すると,上記刊行物には,床構造(床パネル12)の硬質板(高比重石膏ボード(硬質石膏板)24)が,遮音性を有するとの記載は見当たらないが,硬質板,例えば,硬質石膏板が,遮音性能を有することは,特開平8-302979号公報の段落【0008】に,「…上記高比重石膏板は、例えば、本願出願人による特願平6-174306号明細書に開示された硬質石膏板であり、…しかも、高比重石膏板は、遮音性能及び耐火性能が高く、防音及び防火の観点から有利に使用することができる。このような高比重石膏板として、『タイガースーパーハード』(吉野石膏株式会社製品)を例示することができる。」と記載されているように,本願出願前によく知られているところであるから,「2枚以上の硬質板及び仕上げ材を順次積層した床構造」が記載されている刊行物記載の発明は,事実上,遮音性を有するものということができる。
また,積層板において,各層の目地部が上層から下層に貫通すると,音漏れすることは明らかであり,遮音性能を向上するために,上記目地部を上層から下層に貫通しないようにすること,すなわち,「積層された板の目地部をずらす」程度のことは,当業者であれば容易に思い付く技術事項であるし,積層板において,同種類の板ではないが,積層された板の目地部をずらして,防音効果を得るようにしたものは,例えば,実願昭56-138915号(実開昭58-45032号)のマイクロフィルムの明細書3頁2?8行に,「…このように同一形状の基板と遮音シートが一定のずれをもつて積層固定される結果、この複合板からなる単位構造材を並べて施工していく際、何らの困難を伴なうことなく各構造材どうしを密着状態で施工することができ、隣接する複合板との間に隙間を生じないため、予期する以上の防音効果を得ることができるのである。」と記載されているように,周知慣用のことと認められる。
したがって,上記刊行物記載の発明と周知技術を組み合わせて,本願発明の構成とすることは,当業者であれば容易に思い付くことであり,このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。


4.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-09 
結審通知日 2008-10-14 
審決日 2008-10-27 
出願番号 特願平9-108317
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 寛史江成 克己  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
五十幡 直子
発明の名称 遮音性を有する床構造  
代理人 近藤 利英子  
代理人 吉田 勝広  

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