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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1189665
審判番号 不服2007-21442  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 特願2002- 88943「X線装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-288853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)3月27日の出願(特願2002-88943号)であって、平成19年6月29日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年8月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年8月31日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成19年8月31日付の手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月31日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成19年5月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1記載の、
「平面から一様に電子を放出する陰極と、この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状の陽極と、前記X線の取り出し窓を有し前記陰極および前記陽極を収容する真空容器とを備えたことを特徴とするX線装置。」が

「平面から一様に電子を放出する平面状陰極と、この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状陽極と、前記X線の取り出し窓を有し前記平面状陰極および前記平面状陽極を収容する真空容器とを備えたX線装置において、前記平面状陰極はその電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えているとともに、前記平面状陽極は細管集合体から構成されていることを特徴とするX線装置。」と補正された。

そして、この補正は、
(1)陰極について、「平面状」であるとともに、「電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えている」ことを特定して限定する補正事項、
(2)陽極について、「平面状」であるとともに、「細管集合体から構成されている」ことを特定して限定する補正事項、
からなり、いずれも、陰極又は陽極の形態・構造を具体化したものであり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当するから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正である。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成19年8月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載で特定される次のとおりのものである。

「平面から一様に電子を放出する平面状陰極と、この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状陽極と、前記X線の取り出し窓を有し前記平面状陰極および前記平面状陽極を収容する真空容器とを備えたX線装置において、前記平面状陰極はその電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えているとともに、前記平面状陽極は細管集合体から構成されていることを特徴とするX線装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭57-158936号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の記載とともに、次の点が記載されている。

「第2図を参照して、本発明による陽極ターゲット10の外周にI型リング11を装着し、このI型リング11のフランジ部を利用してターゲット10を、外被としての耐熱ガラス管12,12’で被っている。ガラス管12はファンネル状で細径部内に陰極部としての電子銃要素14が設置され、外周部には偏向ヨーク13が配設されている。ガラス管12’は、カップ状でターゲット10の端面に平行な封止面が形成されている。勿論、このガラス管内は高真空に保たれる。
第3図を参照して、ターゲット10の一例として、100mm×100mm×30mm^(t)のタングステン板に、隣接する孔との最小部の壁厚Dが100μとなるように直径Cが200μの貫通孔101を多数互いに平行になるように、すなわちハニカム状に形成している。このような孔加工は放電加工等により可能である。このようなターゲット10の外周に真空封止とガラス管溶接端子とを兼ねる断面形状がI型のコバー合金によるリングを作成してろう付けし、第2図に示すような陽極部が得られる。
さて、再び第2図を参照して、陽極部と陰極部間は高電圧に保たれ、電子銃要素14内のフィラメントで発生した熱電子を、同じく電子銃要素14内のグリッドと偏向ヨーク13とで衝突経路を制御し、ターゲット10に貫通孔方向へ衝突させる。衝突した電子は、ターゲット10の貫通孔内壁の図中A側にごく近い部分でX線を発生させるが、発生したX線はAからB方向へ微小な貫通孔内を通過するにつれて平行X線に近い状態となってB側より放出される。
このようなX線発生に伴って発生するターゲット10での熱は、ターゲット10を外部から支持しているI型リング11を伝わってX線管外部に放出される。これはリング11の外部を冷媒で直接冷却することができるという利点をもっている。
第4図、第5図はハニカム状のターゲットをつくるための他の例を示した図で、まず第4図に示すように、50μ厚のタングステン板を波形圧延機にて波形板15に形成し、次に第5図に示すように、波形板15とこれと同じ厚みの平板16とを交互に重ねて多数の互いに平行な貫通孔を有する積層体とし、外周を上記実施例と同様にI型リングで補強及び保護し、第2図同様に組込んで陽極部が得られる。このような方法によれば、隣接する貫通孔との壁厚を同一にすることができ、上記実施例に比して第2図におけるA側へのX線の発生をより少なくできる。
なお上記二つのいずれの実施例においてもターゲットの貫通孔の最適例は、孔径100?300μ、孔長20?50mm、隣接する貫通孔との壁厚は20?50μが最適であった。
ターゲットの貫通孔の形状としては、上記実施例に限らず第6図に示したような断面四角形状、第7図に示したような断面六角形状等様々な例が考えられ、貫通孔の形成加工も上述した放電加工、成形加工品の積層に限らず、原料スラリーからの押し出し焼結品あるいは穴あきグラファイト等へのタングステン材料の化学蒸着、物理蒸着又はチューブの切断結束等の方法によっても良い。
以上説明してきたように、本発明によれば従来の回転陽極形と異なり、機械的摺動部分をまったく省いても陽極部に対してはいわば走査形の熱電子照射なので高出力化が図れ、しかも多大な発生熱を輻射によらず直接外部へ放出できる点が効果として非常に優れている。また平行に近いX線を出せる多焦点ターゲットであるため、X線写真画像が著しく改善されるうえ、周囲への拡散が減少して被爆線量も軽減する。」(第2ページ左下欄第13行?第3ページ左下欄第1行)

第2図から、電子銃要素14とターゲット10は、互いに対向した状態で、耐熱ガラス管12,12’及びI型リング11で形成される密封容器内に配置されていることが見て取れる。
また、第2,3,5ないし7図から、ターゲット10が平面状の構造をしていることが見て取れる。
さらに、第2図から、X線の放出方向であるB側が、耐熱ガラス管12’側であることがわかる。

上記記載から、引用例1には、
「陰極部としての電子銃要素14が設置され、電子銃要素14に対対向して平面状構造のターゲット10が配置され、平面状構造ののターゲット10は、電子銃要素14で発生した熱電子が衝突することにより、平行に近いX線を耐熱ガラス管12’から放出する多焦点ターゲットであり、電子銃要素14とターゲット10は、耐熱ガラス管12,12’及びI型リング11で形成される密封容器内に配置されており、ガラス管12,12’内は高真空に保たれており、また、ターゲット10は、貫通孔101を多数互いに平行になるように構成されており、貫通孔の形成加工としてチューブの切断結束の方法が採用されるX線発生装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-250496号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の記載とともに、次の点が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】X線発生装置の陰極としては、タングステン・フィラメントが代表的である。その動作温度は2000?2300℃と非常に高温である。タングステン以外の熱陰極としては、トリウム入りタングステンや、六ホウ化ランタンなども使われている。それらの動作温度は1000?1500℃で、タングステンよりは温度が低いが、それでもかなり高温である。いずれの熱陰極もかなり高出力の加熱電源が必要となる。また、トリウム入りタングステンや、六ホウ化ランタンの熱陰極は、安定したエミッション電流を得るためには高真空が必要である。タングステン・フィラメントに必要な真空度は「1×10のマイナス3乗」Pa以下であるが、トリウム入りタングステンや六ホウ化ランタンの熱陰極に必要な真空度は「1×10のマイナス5乗」Pa以下である。
【0003】 ところで、最近、X線発生装置以外の技術分野では、冷陰極電子放出源としてカーボンナノチューブが注目されている。カーボンナノチューブは直径がナノメータ(10のマイナス9乗メートル)オーダの円筒構造を持つ炭素材料である。このカーボンナノチューブは、電子放出部を平面状にしても(すなわち、針状にしなくても)、常温において電界放出による電子放出が可能である。カーボンナノチューブからなる冷陰極電子放出源は、平面ディスプレイの電子源として用いることが知られている(特開平11-194134、特開平10-199398、特開平10-149760、特開平10-12124)。すなわち、この冷陰極電子放出源から放出された電子を蛍光体に衝突させて発光式のディスプレイとするものである。そのほかに、カーボンナノチューブをブラウン管の電子銃として使うことも知られている(特開平11-260244、特開平11-111158)。」

「【0009】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1は、この発明の第1の実施形態における電子銃ユニットの切断端面図である。この切断端面図はX線発生装置の電子銃ユニット10を側面から見たときの切断端面図である。この電子銃ユニットはウェネルト12を備えており、このウェネルト12の内部に陰極14がある。陰極14は、陰極ベース22と、その表面に固定されたエミッタ24とからなる。陰極ベース22は厚さ0.5mmのニッケル板で作られている。エミッタ24は電子放出用の部材であって、カーボンナノチューブで作られている。この電子銃ユニット10に対向するようにターゲット16が配置されている。陰極14と引き出し電極18およびターゲット16とで作られる電界の作用でエミッタ24から放出された電子は、ウェネルト12の窓20で絞られ、陰極14とターゲット16間にかけられた電界により加速されて、ターゲット16の表面に衝突し、X線を発生させる。エミッタ24からウェネルト12の表面までの距離L1は6?7mmである。ウェネルト12の表面からターゲット16の表面までの距離L2は約12mmである。
【0010】図2は引き出し電極18の正面図(ターゲットの側から見た図)である。引き出し電極18は全体として矩形であり、矩形の開口部38を備えている。引き出し電極18の二つの脚部40は絶縁碍子32(図1を参照)で支持されている。ターゲットの方向から見ると、引き出し電極18はウェネルトの窓20の中に見える。そして、引き出し電極18の開口部38の中にエミッタ24が見える。
【0011】ウェネルトの窓20の開口寸法は10mm×10mm程度である。引き出し電極18の開口部38の寸法は7mm×7mm程度である。引き出し電極18は0.5?1.0mmの板材で作られている。エミッタ24の電子放出領域の寸法は5mm×5mm程度である。」

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-64695号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面の記載とともに、次の点が記載されている。

「【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るX線発生装置の一実施形態を示している。このX線発生装置は、平面状に配列された複数のX線発生ユニット1と、それらのX線発生ユニット1から延びる複数のX線導波細管2とを有している。X線発生ユニット1は、図5に示すように、通電によって熱を発生するペルティエ素子によって形成されたヒータ3と、そのヒータ3に接触して配置されていて加熱されたときに電子を発生するピロ電気素子4と、それらを収納するケーシング6と、ピロ電気素子4に対向するケーシング6の壁面に形成された円形状又は方形状のX線放射窓7とを有する。ヒータ3の表面には温度センサ11が配設される。ケーシング6の外径Dは、例えば、直径4mm程度に設定される。
【0016】X線放射窓7は、円形状又は方形状のターゲット8と、そのターゲット8に面接触する円形状又は方形状のベリリウム部材9とによって構成されている。ターゲット8は、図の左面側から電子が衝突したときに図の右面側(すなわち、X線放射面)からX線を放出する形式の、いわゆる透過型ターゲットとして構成されている。例えば、ターゲット8の厚さを薄くすることによってそのような透過型ターゲットを形成できる。ベリリウム部材9は、薄く形成されたターゲット8の機械的強度を補償したり、ターゲット8で発生する熱をケーシング6へ伝達する等の作用を奏する。ベリリウム部材9は、X線を通すことができると共に比較的高い機械的強度を有する材料であれば、ベリリウム以外の任意の材料に代えることができる。
【0017】X線放射窓7の右側面(すなわち、外側面)には、束ねられた多数のX線導波細管2の一端すなわちX線取込み端が接触する。つまり、透過型ターゲット8のX線放射面に近接して各X線導波細管2のX線取込み端が配置される。ターゲット8のX線放射面にベリリウム部材9を設けない場合には、ターゲット8のX線放射面にX線導波細管2のX線取込み端を直接に接触させることができる。
【0018】X線導波細管2は、図4に示すように、多数本が束ねられた状態で使用されるものであり、それらの個々のX線導波細管2は、例えば、ガラス製のキャピラリチューブによって形成される。個々のキャピラリチューブ2は、例えば、内径6μm?10μm程度に形成され、一端開口から導入したX線を外周ガラスの内周面で全反射させながら他端開口まで導く。X線導波細管2はX線放射窓7の全面を覆うように配置することもできるし、あるいは、X線放射窓7の一部に対向して配置することもできる。いずれの場合でも、多数のX線導波細管2がX線放射窓7に対向して設けられる。
【0019】図1において、束ねられた多数のX線導波細管2のX線取込み端側は、面状に配列された各X線発生ユニット1のX線放射窓に対向して配置され、その他端側はX線放射口12を形成している。本実施形態では、X線放射口12は円形状に形成されている。X線放射口12の面積は、各X線発生ユニット1のX線放射窓7(図5)の面積を合計した面積、すなわち、各透過型ターゲット8のX線放射面の面積を合計した面積よりも小さくなっている。これにより、広い面積の透過型ターゲット8から取り込んだX線を狭い面積に集束させることによって強度の高いX線ビームとして取り出すことができる。
【0020】本発明に係るX線発生装置は以上のように構成されているので、図5において、ヒータ3が通電によって発熱するとピロ電気素子4から電子が発生し、その電子が透過型ターゲット8の一面に到達してその他面、すなわちX線放射面からX線が発生する。ヒータ3の温度は温度センサ11に検知され、その検知結果に基づいてヒータ3の温度が所定温度に制御される。」

(3)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。

引用発明の「陰極部としての電子銃要素14」と、本願補正発明の「平面から一様に電子を放出する平面状陰極」とは、「電子を放出する陰極」である点で一致している。

引用発明の「平面構造のターゲット10」は、電子銃要素14に対向して配置され、電子銃要素14で発生した熱電子が衝突することにより平行に近いX線を放出する多焦点ターゲットであるから、本願補正発明の「この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状陽極」に相当する。

引用発明の「耐熱ガラス管12,12’及びI型リング11で形成される密封容器」は、電子銃要素14とターゲット10を、その内部に配置するものであって、また、ガラス管12,12’内は高真空に保たれていることから、引用発明の「耐熱ガラス管12,12’及びI型リング11で形成される密封容器」と、本願補正発明の「X線の取り出し窓を有し前記平面状陰極および前記平面状陽極を収容する真空容器」とは、「平面状陰極および前記平面状陽極を収容する真空容器」である点で一致している。

引用発明の「ターゲット10は、貫通孔101を多数互いに平行になるように構成されており、貫通孔の形成加工としてチューブの切断結束の方法が採用される」点は、本願補正発明の「平面状陽極は細管集合体から構成されている」点に相当する。

引用発明の「X線発生装置」は、本願補正発明の「X線装置」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「電子を放出する陰極と、この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状陽極と、前記平面状陰極および前記平面状陽極を収容する真空容器とを備えたX線装置において、前記平面状陽極は細管集合体から構成されているX線装置」の点で一致し、次の点で相違する。

ア 相違点1;
本願補正発明の陰極が、「平面から一様に電子を放出する平面状」の陰極であるのに対し、引用発明の陰極部には、その点についての限定がない点。

イ 相違点2;
本願補正発明の陰極及び陽極を収容する容器が「X線の取り出し窓を有する」のに対して、引用発明の陰極及び陽極を収容する容器には、その点について明確でない点。

ウ 相違点3;
本願補正発明の陰極が「電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えている」のに対して、引用発明のターゲットにはその点についての限定がない点。

(4)当審の判断
上記の相違点について検討する。

ア 相違点1について
X線発生装置において、X線を発生するターゲット(陽極)に対して電子を放出する陰極を、平面から一様に電子を放出する平面状陰極とすることは、上記引用例2(【0009】【0010】【図2】参照)や引用例3(【0015】【図5】参照)にも記載されているように周知の技術である。
引用発明においても、技術分野の共通性にかんがみ、上記周知技術を採用し、X線を発生するターゲット(陽極)に対して電子を放出する陰極を、平面から一様に電子を放出する平面状陰極とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

イ 相違点2について
引用発明においてもX線を耐熱ガラス管12’から放出しており、X線を放出する部分が特定されているから、実質的に「X線の取り出し窓を有している」ということができる。したがって、相違点2は、単なる表現上の相違点に過ぎず、実質的な相違点ではない。

ウ 相違点3について;
引用例2には、X線発生装置の陰極について、「陰極14は、陰極ベース22と、その表面に固定されたエミッタ24とからなる。・・・エミッタ24は電子放出用の部材であって、カーボンナノチューブで作られている」(【0009)と記載されており】、X線発生装置の陰極が「電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えている」ことは、引用例2に記載されている技術である。
引用発明においても、技術分野の共通性にかんがみ、上記の引用例2に記載された技術を採用し、陰極が「電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えている」構造とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、上記引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年8月31日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年5月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりものである。
「平面から一様に電子を放出する陰極と、この陰極に対向して配置され前記電子が衝突して平面から一様にX線を放出する平面状の陽極と、前記X線の取り出し窓を有し前記陰極および前記陽極を収容する真空容器とを備えたことを特徴とするX線装置。」

2 引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明は、上記「第2 平成19年8月31日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の
(1)陰極について、「平面状」であるとともに、「電子放出面に平面状のカーボンナノ構造体を備えている」ことを特定した限定、及び
(2)陽極について、「平面状」であるとともに、「細管集合体から構成されている」ことを特定した限定、を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成19年8月31日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」において記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-26 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-17 
出願番号 特願2002-88943(P2002-88943)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 剛  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 安田 明央
森林 克郎
発明の名称 X線装置  
代理人 鹿股 俊雄  

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