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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20052730 審決 特許
不服20057234 審決 特許
不服200511006 審決 特許
不服200516521 審決 特許
不服200423946 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1189672
審判番号 不服2007-25121  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-13 
確定日 2008-12-10 
事件の表示 特願2006-166364「オゾン溶存グリセリン溶液を含む化粧料、医薬部外品、医薬(医薬品)等の外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-332078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明

本願は、平成18年6月15日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成20年9月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「オゾン溶存グリセリン溶液を含む、皮膚または粘膜に用いられる外用剤であって、創傷治療目的ではなく、ピーリング効果を有しながら、皮膚自体または粘膜自体における水分蒸散量の低減に用いられ、オゾンの濃度の初期値が少なくとも85ppmである、前記外用剤。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例の記載の概要

これに対して、当審の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された次の刊行物には以下の事項が記載されている。

・第15回 日本オゾン協会年次研究講演会講演集、2005年9月12日、第117?120ページ(以下、「引用例1」という。)

(A)「1)から6)においては被験物質としてオゾンジェル(オゾン溶存グリセリン:株式会社ブイエムシー製)を用い、下記の実験を行った。……。
7)においてはオゾンジェルを用いて製造したオゾン基礎化粧品の体感アンケートを実施した。……。
オゾン基礎化粧品の処方)
化粧水:水、ラウロイル硫酸Na、グリセリン、PCA(ピロリドンカルボン酸)-Na,セラミド1、セラミド3、セラミド6II、オゾン、フィトスフィンゴシン、コレステロール、グリチルリチン酸ジカリウム、フェノキシエタノール
美容液:水、グリセリン、ヒアルロン酸Na、キサンタンガム、オゾン、フェノキシエタノール
クリーム:グリセリン、PEG450、PEG65M、オゾン」(第117ページ第26?36行)

(B)「(1)顔のシミ: オゾン基礎化粧品塗布群では塗布前に比べ、2週、4週ともに有意に(P>0.01)改善したが、未使用群では塗布4週間後で塗布前に比べ、有意な(P>0.05)改善を示した。
(2)顔のクスミ: オゾン基礎化粧品塗布群では塗布前に比較し、2週、4週ともに有意に(P>0.01)改善したが、未使用群では塗布4週間後に比べ、有意な(P>0.05)改善を示した。
……。
(5)たるみ: オゾン基礎化粧品塗布群、未使用群のいずれもが塗布前に比較し、2週、4週で有意な(P>0.05)改善を示した。
(6)顔のかさつき: ……塗布4週間後ではオゾン基礎化粧品群が有意な(p>0.05)改善を示した。
(7)目、口元のかさつき: オゾン基礎化粧品群が塗布前と比較し、2週、4週ともに有意な(p>0.01)改善を示したが、未使用群では差がなかった。」(第120ページ第8?22行)

・特開2005-232094号公報(以下、「引用例2」という。)

(C)「高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、化粧水や美容液に利用する場合には、グリセリンの濃度を低下させる必要があるが、請求項2に記載の発明によれば、オゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合することで、グリセリンの刺激性を抑えることができる。また、オゾンが80ppm以上溶存しているため、充分な殺菌能力を発揮することができる。」(【0011】)

(D)「 なお、オゾン溶存グリセリン溶液は用途によってはそのまま使用することもできるが、化粧水や美容液に利用する場合には、高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、グリセリンの濃度を20%以下にすることが好ましい。このため、オゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈することが好ましい。
……
これらの希釈剤でオゾン溶存グリセリン溶液を希釈したオゾン溶存混合溶液は、オゾン濃度が80ppm以上であることが好ましい。オゾン濃度が80ppm以上であれば、殺菌能力を発揮することができる。また、オゾン濃度が100ppm以上であれば、より殺菌能力を発揮することができる。さらに、オゾン濃度が500ppm以上であれば、創傷治癒効果を得ることができ、オゾン濃度が1000ppm以上であれば、後述するように、優れた創傷治癒効果を発揮することができる。」(【0039】?【0043】)

3.当審の判断
(1)対比
引用例1には、「オゾン溶存グリセリン溶液を含む、顔、及び、目、口元のかさつきを改善する化粧水、美容液及びクリーム。」(以下、「引用発明」という。)が、記載されている(摘記事項(A)、(B))。
そこで、本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の化粧水、美容液及びクリームは、外用剤であり、引用発明の顔、及び、目、口元は皮膚の一部であるから、両者は「オゾン溶存グリセリン溶液を含む、皮膚自体に用いられる外用剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1
本願発明は、オゾンの濃度の初期値が少なくとも85ppmであるのに対し、引用発明は、オゾンの濃度の初期値の特定がない点。
・相違点2
本願発明は、創傷治療目的ではなく、ピーリング効果を有しながら、皮膚自体における水分蒸散量の低減に用いられるのに対し、引用発明は、顔、及び、目、口元のかさつきを改善するのに用いられる点。

・相違点1について
引用発明の化粧水、美容液及びクリームにおいて、高濃度では毒性が認められている有効成分であるオゾンの安全且つ好ましい配合量を選定することは当業者が適宜なし得ることである、
また、引用例2には、適当な希釈剤を混合したオゾン溶存グリセリン溶液を化粧水や美容液に利用すること、オゾンが80ppm以上溶存しているため、十分な殺菌能力を発揮することができることが記載されている(摘記事項(C)、(D))。
そうすると、引用例2には、オゾン溶存グリセリン溶液は、オゾンが80ppm以上溶存していても皮膚に適用する化粧料として使用できることが記載されているのであるから、オゾン溶存グリセリン溶液を含む化粧水、美容液及びクリームの発明である引用発明において、オゾンの十分な効果と安全性とを考慮し、オゾンの濃度の初期値を少なくとも85ppmとすることは当業者が容易に想到し得ることである。

・相違点2について
引用例2には、適当な希釈剤を混合したオゾン溶存グリセリン溶液を化粧水や美容液に利用することが記載されていることから(摘記事項(D))、オゾン溶存グリセリン溶液を創傷治療目的でなく用いることは当業者にとって自明である。
また、ピーリング効果はオゾン自体が有する作用であるから(特開2004-485号公報の【0012】参照。)、引用発明がピーリング効果を有することは当業者にとって自明である。
さらに、かさつきが、皮膚自体が乾燥した状態、すなわち、皮膚自体における水分量の低減状態であることは周知である。そして、引用例1におけるオゾン溶存グリセリン溶液を含む外用剤である引用発明を4週間適用後に顔、及び、目、口元のかさつきの改善をするという記載をみれば、その4週間で皮膚自体にかさつきの改善に関連する何らかの改善を生じたと考えるのが自然であるから、引用発明がかさつきを改善したのは、皮膚自体の水分蒸散量の低減効果によるものであることを期待して、それを実際に測定し、確認し、水分蒸散量の低減に用いることは当業者が容易になし得ることである。

なお、請求人は、平成20年9月16日付けの意見書でオゾン濃度を大きくすればピーリング効果が増進し、それにともない水分蒸散が増大してしまうと危惧するのでオゾン濃度を85ppm以上とすることに阻害要因がある旨主張しているが、上記のとおり引用例2には、オゾン溶存グリセリン溶液はオゾンが80ppm以上溶存していても皮膚に適用する化粧料として使用できることが記載されているのであるから、この請求人の主張は採用できない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-24 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-17 
出願番号 特願2006-166364(P2006-166364)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 安紀子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 川上 美秀
瀬下 浩一
発明の名称 オゾン溶存グリセリン溶液を含む化粧料、医薬部外品、医薬(医薬品)等の外用剤  
代理人 葛和 清司  

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