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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12P
管理番号 1189679
審判番号 不服2008-768  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2008-12-10 
事件の表示 特願2007-100298「エルゴチオネインの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-300916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年4月6日(優先権主張 平成18年4月10日)の出願であって、平成19年12月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月10日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年7月7日付で当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年9月5日付で明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものである。



第2.本願発明
本願の請求項1-5に係る発明は、平成20年9月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、

「【請求項1】
エルゴチオネイン含有のキノコとしてタモギタケを用い、前記タモギタケに第1回目の熱水抽出を施してろ過したろ過物に、第2回目の熱水抽出を施してろ過した後、
前記第1回目及び第2回目の各熱水抽出のろ過で得た、前記エルゴチオネインを含有する抽出物を、両イオン性構造のエルゴチオネインを吸着する吸着能を有するイオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを用いて分画処理し、前記抽出物中の非イオン性化合物及びエルゴチオネインを除くイオン性化合物を除去した後、
得られた分画液のうち、前記エルゴチオネインを含有する分画液を高速液体クロマトグラフィー装置によって、前記エルゴチオネインを分離し精製することを特徴とするエルゴチオネインの製造方法。」

であると認める(以下、「本願発明」という)。



第3.引用例
1.当審拒絶理由で引用例1として引用された「Abstracts of Papers American Chemical Society, (2005年) Meeting Info.:230th National Meeting of the American-Chemical-Society. Washington, DC, USA. August 28 -September 01, 2005. [AGFD 162]」には、次の事項が記載されている。

(1-1)「・・・目的は、高速液体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィー/質量分析を利用した解析手法によって、Pleurotus ostreatus、Pleurotus eryngii・・・等のキノコにおけるエルゴチオネイン含量を同定及び定量することである。・・・特殊なキノコ(・・・P.ostreatus、P.eryngii・・・)・・・では、エルゴチオネインが、A.bisporusと比較して統計的に有意に多く含まれていた・・・。」(Abstruct)


2.当審拒絶理由で引用例2として引用された「Biosci.Biotechnol.Biochem., Vol.69, No.2, p.357-363 (2005.02.23)」には、次の事項が記載されている。

(2-1)「エルゴチオネイン(ERT)(2)」(第357頁左欄最終行)

(2-2)「抽出と予備的分離
我々は、Lyophyllum connatumの子実体を入手した・・・。キノコ・・・はアセトンで3日間抽出され、その後、減圧下でろ過及び濃縮された。親油性物質を除去するために残留物は酢酸エチルで抽出され、その後、水層は凍結乾燥された。凍結乾燥物・・・は水・・・で再溶解され、Amberlite IR120B(H^(+)form)イオン交換カラム・・・に適用された。カラムが水・・・で洗浄された後、結合物質をピリジン-水・・・で溶出させた。ピリジン-水溶出物・・・は凍結乾燥され、SiO_(2)充填カラムクロマトグラフィー・・・によって分離され、エタノール・・・、エタノール-水・・・、及び、水・・・で溶出させた。溶出物は15画分に分けられた各300mlのアリコートに集められた。」(第358頁右欄第13-37行)

(2-3)「ERT(2)の単離
2は、SiO_(2)充填カラムクロマトグラフィーの第15画分(4.1-4.4リッターの間で溶出した画分)から得られた。この画分は減圧下で濃縮され、凍結乾燥された。残留物・・・はSephadex G-10カラムクロマトグラフィー・・・によって精製された。0.4-0.5リットルの間で溶出した画分が凍結乾燥された。残留物はHPLC(Develosil C30-UG-5・・・)によって精製され、凍結乾燥され、無色の粉末として2が得られた。」(第358頁右欄第47-56行)


3.当審拒絶理由で引用例3として引用された「木村千恵子著『オシロイシメジに含まれるラジカル消去活性物質について』(2005)岩手大学 博士(農学)論文」には、次の事項が記載されている。

(3-1)「オシロイシメジに・・・Ergothioneineが含まれていることがわかったので、オシロイシメジからのErgothioneineの単離を行った。
・・・Sio_(2) カラムクロマトグラフィーを、さらにH_(2)O・・・で溶出した画分・・・を減圧下で濃縮し、凍結乾燥した。その残渣・・・をSephadex G-10・・・にかけ、H_(2)Oで溶出した。溶出画分のTLC分析(MeOH:H_(2)O=6:1、DPPH)を行ったところ、400mLから500mLの間に・・・Ergothioneineが溶出した・・・。その画分を合わせ、凍結乾燥した。凍結乾燥した残渣を少量のH_(2)Oに溶かし、HPLC・・・でR_(t)12minのピークを分取し、凍結乾燥したところ・・・無色の粉末(Ergothioneine)・・・を得た。」(第61頁第2-16行)

(3-2)「第1節 市販のキノコに含まれるErgothioneineについて
市販の食用キノコ15種類(タモギタケ、・・・)について、TLC、HPLCおよびNMRによる分析を行った・・・。市販のキノコをアセトンに3日間浸漬し、子実体を除いたアセトン浸漬液を減圧下で濃縮し、酢酸エチルで抽出し、脂溶性画分を除いた残りの水溶性画分を凍結乾燥した後分析を行った。
・・・Ergothioneineが含まれていることが明確に確認できた市販のキノコは、タモギタケ、ヤマブシタケ、エノキタケ(白、茶)、ヒラタケ、マイタケ(白、茶)であった。」(第135頁第1-14行)


4.当審拒絶理由で引用例4として引用された「The Journal of Biological Chemistry, Vol.223, No.1, p.9-17 (1956)」には、次の事項が記載されている。

(4-1)「Aspergillus nigerによるエルゴチオネイン合成
エルゴチオネインはA.niger菌糸体の熱水抽出物中に存在することが・・・予備実験で示された。」(第9頁第18-20行)



第4.対比
摘記事項(2-1)-(2-3)からみて、引用例2には、「Lyophyllum connatumの子実体がアセトンで3日間抽出され、減圧下でろ過及び濃縮され、親油性物質を除去するために残留物は酢酸エチルで抽出され、その後、水層は凍結乾燥された」こと、「該凍結乾燥物が水で再溶解され、Amberlite IR120B(H^(+)form)イオン交換カラムに適用され、結合物質をピリジン-水で溶出させた」こと、「該ピリジン-水溶出物は凍結乾燥され、SiO_(2)充填カラムクロマトグラフィーによって分離され、エタノール、エタノール-水、及び、水で溶出させた」こと、「該溶出物は15画分に分けられ、第15画分が減圧下で濃縮され、凍結乾燥された」こと、該凍結された「残留物はSephadex G-10カラムクロマトグラフィーによって精製された」こと、その中で「0.4-0.5リットルの間で溶出した画分が凍結乾燥された」こと、該凍結された「残留物はHPLC(Develosil C30-UG-5)によって精製され、凍結乾燥され、無色の粉末として、エルゴチオネインが得られた」ことが記載されている。

そこで、本願発明と引用例2に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)とを対比すると、引用発明2の「Lyophyllum connatum」、「Amberlite IR120B(H^(+)form)イオン交換カラム」、「SiO_(2)充填カラムクロマトグラフィー」及び「HPLC(Develosil C30-UG-5)」は、それぞれ、本願発明の「エルゴチオネイン含有のキノコ」、「イオン交換樹脂」、「吸着クロマトグラフィー」及び「高速液体クロマトグラフィー装置」に相当するから、両者は、「エルゴチオネイン含有のキノコを用い、前記キノコに抽出を施してろ過した後、前記抽出のろ過で得た前記エルゴチオネインを含有する抽出物を、両イオン性構造のエルゴチオネインを吸着する吸着能を有するイオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを用いて分画処理し、前記抽出物中の非イオン性化合物及びエルゴチオネインを除くイオン性化合物を除去した後、得られた分画液のうち、前記エルゴチオネインを含有する分画液を高速液体クロマトグラフィー装置によって、前記エルゴチオネインを分離し精製することを特徴とするエルゴチオネインの製造方法」である点で一致するものの、以下の点で相違する。

1.エルゴチオネイン含有のキノコが、本願発明は「タモギタケ」であるのに対し、引用発明2では、「Lyophyllum connatum」である点(以下、「相違点1」という)。

2.抽出に用いる溶媒が、本願発明は「熱水」であるのに対し、引用発明2では、「アセトン」である点(以下、「相違点2」という)。

3.エルゴチオネイン含有のキノコに対する抽出操作が、本願発明は「第1回目の熱水抽出を施してろ過したろ過物に、第2回目の熱水抽出を施してろ過」するというように「二回」施されるのに対し、引用発明2は「アセトンで3日間抽出され、減圧下でろ過及び濃縮」するというように「一回」のみ施される点(以下、「相違点3」という)。



第5.当審の判断
上記相違点について以下で順次検討する。

1.相違点1について
摘記事項(3-2)からみて、引用例3には、「タモギタケ」にエルゴチオネインが含まれていることが記載されている。
してみると、引用発明2において、「Lyophyllum connatum」なるキノコにかえて「タモギタケ」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、摘記事項(1-1)からみて、引用例1には、「Pleurotus ostreatus」及び「Pleurotus eryngii」にエルゴチオネインが含まれることが記載されている。また、該記載に接した当業者であれば、「Pleurotus」属のキノコにはエルゴチオネインが含まれている蓋然性が高いと理解できるといえる。してみると、引用発明2において、「Lyophyllum connatum」なるキノコにかえて、「Pleurotus」属の種々のキノコを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。また、その際に、該「Pleurotus」属のキノコとして周知の「タモギタケ」を選択することに格別の困難性はないといえる。


2.相違点2について
摘記事項(4-1)からみて、引用例4には、Aspergillus niger菌糸体を熱水で抽出することによりエルゴチオネインを得たことが記載されているから、引用例4に接した当業者であれば、熱水でエルゴチオネインを抽出することが可能であると理解することができたといえる。
してみると、引用発明2において、アセトンにかえて熱水を用いてエルゴチオネインの抽出を行うことは当業者が容易に想到し得ることである。


3.相違点3について
抽出操作を二回行うことは、本願優先日前から当業者の慣用技術(要すれば、特開平9-56362号公報、特開2003-342183号公報、国際公開第2004/004748号、特開2004-215663号公報、特開2005-35928号公報及び特開2006-28070号公報を参照されたい。)であり、当業者であれば必要に応じて適宜なし得たことである。


4.本願発明の奏する効果について
平成20年9月5日付意見書において、「・・・本願発明では・・・タモギタケからのエルゴチオネインの熱水抽出の際に、タモギタケの粉砕及びスラリー化を省略できると共に、エルゴチオネイン含有の抽出液のろ過を容易に行うことができ、エルゴチオネインの製造コストの更に一層の低減を図ることができるという引用例からは予測困難な作用・効果を奏します。」(第2頁第49行-第3頁第6行)との主張がなされているのでこの点について検討する。
まず、「タモギタケの粉砕及びスラリー化を省略できると共に、エルゴチオネイン含有の抽出液のろ過を容易に行うことができ」るとの主張について検討する。そもそも、タモギタケの「粉砕」及び「スラリー化」を行わない旨の特定が本願発明はなされていない。したがって、本願発明にはタモギタケの「粉砕」又は「スラリー化」を行うものも包含されている。また、摘記事項(3-2)の特に「市販のキノコをアセトンに3日間浸漬し」との摘記事項からみて、キノコを粉砕もスラリー化もせずに抽出操作を行うことが引用例3に記載されており、本願発明が「タモギタケの粉砕及びスラリー化を省略できると共に、エルゴチオネイン含有の抽出液のろ過を容易に行うことができ」るとしても、その点は、当業者の予測の範囲を逸脱するほどのものではない。
次に、「エルゴチオネインの製造コストの更に一層の低減を図ることができる」との主張について検討する。本願出願当初明細書の【0013】段落に、

「以上、説明してきた本発明に係るエルゴチオネインの製造方法では、原料として用いるきのこに含まれているエルゴチオネインを、容易に抽出、濃縮及び精製できる。このため、エルゴチオネインの製造コストを、合成法や発酵法に比較して大幅に低減できる。」

と記載されていることからみて、本願発明は、製造コストが「合成法や発酵法に比較して大幅に低減できる」ものであることが理解できる。そして、この点については、合成法や発酵法ではなく「抽出」によってエルゴチオネインを製造する引用発明2においても奏される効果であるといえる。また、例え、本願発明のように抽出操作を二回行うことによって製造コストが更に一層低減されるとしても、その程度は、合成法や発酵法から抽出法にかえた際の低減の程度よりはるかに小さいものであり、しかも、「3.相違点3について」で述べたように、そもそも、抽出操作を二回行うこと自体が慣用技術であって、それによる収量等の上昇及びそれに起因する製造コストの低減も当業者の予測の範囲を逸脱するものではない。

そして、該意見書のその余の主張及び本願明細書の記載全体を参酌しても、本願発明の構成を採ることにより、引用例1-4の記載及び本願優先日前の技術常識からでは予測できない程の効果が奏せられるものではない。


5.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明2並びに引用例1、3及び4の記載に基づいて当業者が容易になし得たものであるといえ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



第6.むすび
以上から、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2007-100298(P2007-100298)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三原 健治戸来 幸男  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 鈴木 恵理子
小暮 道明
発明の名称 エルゴチオネインの製造方法  
代理人 堀米 和春  
代理人 堀米 和春  
代理人 綿貫 隆夫  
代理人 綿貫 隆夫  
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