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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1189729
審判番号 不服2006-6  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-04 
確定日 2008-12-17 
事件の表示 特願2001-377371「改善されたリードフレームを備えるタンタルコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月13日出願公開、特開2003-168626〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年12月11日(パリ条約による優先権主張2001年11月28日、韓国)の出願であって、平成17年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月3日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成19年7月19日付けで審尋がなされ、同年11月26日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年2月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、補正前の請求項1は、補正後の請求項1として、
「【請求項1】 タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子;
前記コンデンサ素子から突出しており、上下面が平坦なベンディング部が終端に形成される陽極ワイヤ;
一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム;
一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム; および
前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部;を含み、
前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接されており、該陽極リードフレームの凹部側壁が該陽極ワイヤに対して斜めに接していることを特徴とするタンタルコンデンサ。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の「前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接される」を補正後の請求項1の「前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接されており、該陽極リードフレームの凹部側壁が該陽極ワイヤに対して斜めに接している」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1:特開平2001-176756号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1には、「固体電解コンデンサ」(発明の名称)に関して、図1及び図3とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。)
「【請求項1】 弁作用金属粉末の焼結体の一壁面から該焼結体内に一端部が埋め込まれて形成される陽極リードおよび前記焼結体の外周壁に形成される陰極を有するコンデンサ素子と、前記陽極リードおよび陰極がそれぞれ電気的に接続される板状の第1および第2の外部リードと、前記コンデンサ素子の周囲を被覆するパッケージとからなり、前記板状の第1の外部リードは、その幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成され、該切欠き部を経た前記陽極リードの端部と溶接されることにより前記電気的接続がなされてなる固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンタル粉末などの弁作用金属の焼結体からなる固体電解コンデンサに関する。さらに詳しくは、パッケージをできるだけ小さくしながら大きなコンデンサ素子を内蔵し、容量値を大きくするなどの電気的特性を向上させると共に、コンデンサ素子の信頼性を向上させることができる構造の固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の固体電解コンデンサは、図3(a)に示されるように、コンデンサ素子1の陽極リード11が第1の外部リード2と電気溶接などにより電気的に接続され、コンデンサ素子1の側壁に形成される陰極12がZ曲げ加工された第2の外部リード3と導電性接着剤6などにより接続され、その周囲が樹脂によりモールド成形されて樹脂製パッケージ5で被覆されることにより形成されている。各外部リード2、3は、モールドにより樹脂製パッケージ5が形成された後にリードフレームから切断されて分離され、フォーミングされることにより、図3に示される構造に形成されている。なお、13はテフロンリングである。」
「【0010】第1および第2の外部リード2、3は、従来と同様に42合金、または銅や鉄を含む0.1mm程度の厚さの板状体を打ち抜くことにより、各リードが連結されたリードフレームの状態に形成されている。このリードの形状に打ち抜く際に、本発明では、図1(b)に第1の外部リード2の端部部分が平面説明図で示されるように、幅方向の中心部で、端部から一定の長さGの切欠き部2aが形成されている。この切欠き部2aの長さGは、たとえば0.2?0.3mm程度で、その幅Hは、0.8mm程度(外部リード2の幅は1.0mm程度)に形成される。なお、図1に示される例では、第2の外部リード2の先端部がさらに幅広に形成されているが、幅広部が形成されることにより、リード抜けに対して一層強固になるため好ましい。この幅広部の長さは、0.2?0.3mm程度である。
【0011】コンデンサ素子1は、従来の素子と同じ構造で、タンタル、アルミニウム、ニオブなどの弁作用金属の粉末が、その一壁面に陽極リード11が埋め込まれた角形などに成形され、陽極酸化により粉末の周囲にTa_(2)O_(5)などの酸化皮膜や二酸化マンガン層が形成され、焼結体の外周に二酸化マンガン層、グラファイト層、銀層などが形成されて陰極12が形成されている。焼結体の大きさは、たとえば底面積が0.3mm角から1mm角程度で、長さ(図3のL寸法)が0.8?1.7mm程度の(従来の同じ大きさのパッケージに対して、0.2mm程度長い)寸法に形成されている。すなわち、後述するように、本発明では、外部リード2の切欠き部2aを陽極リード11が経る(通過する)ことにより、外部リード2との溶接部までの距離を保てるようになるので、コンデンサ素子1と外部リード2の先端部との間隔を狭くすることができ、その分コンデンサ素子1の長さLが長くなっている。」
「【0013】このコンデンサ素子1の陽極リード11と、第1の外部リード2とは、図1(b)に平面説明図が示されるように、外部リード2の切欠き部2aに陽極リード11が位置するように、コンデンサ素子1を第1の外部リード2に接近した状態で配置され、コンデンサ素子1の上面と外部リード2の先端部との間隔Jが0.2?0.4mm程度となり、陽極リード11の先端部が第1の外部リード2の切欠き部2を通り過ぎたところで電気溶接されている。その結果、陽極リード11の長さB、および外部リード2のパッケージ5内の長さAを従来と同じ寸法にしながら、コンデンサ素子1の上面とパッケージ5側面との距離Eを、切欠き部2aの長さ0.2?0.3mm程度(G)だけ小さくなる0.9mm程度となり、その分だけコンデンサ素子1の長さLが長く形成されている。」
以上から、刊行物1には、
「タンタル粉末の焼結体からなり、Ta_(2)O_(5)などの酸化皮膜が形成されたコンデンサ素子、
コンデンサ素子の一壁面に埋め込まれた陽極リード、
幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成される第1の外部リード、
コンデンサ素子の外周壁に形成された陰極に接続される第2の外部リード、
コンデンサ素子の周囲を被覆する樹脂製パッケージとからなり、
前記板状の第1の外部リードは、その幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成され、該切欠き部を経た前記陽極リードの端部と溶接されることにより前記電気的接続がなされてなる固体電解コンデンサ。」
(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)刊行物2:特開昭62-16507号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物2には、「固体電解コンデンサの製造方法」(発明の名称)に関して、第2図?第4図とともに以下の事項が記載されている。
「このように構成されたコンデンサは例えば第2図?第4図に示すようにして製造される。まず、第2図に示すように、コンデンサエレメント1より導出された陽極リード2を、対向面に平坦部を有する一対のつぶし刃7,7にて圧潰し、上下面に圧潰部2aを形成する。尚、この圧潰部2aの形成によって、圧潰部分の酸化層はかなり破壊される。次に、第3図に示すように、陽極リード2の圧潰部2aにおける非コンデンサエレメント側に、60°程度の角度を有するノッチ刃8,8によってノッチ部2bを形成する。次に、第4図に示すように、陽極リード2の圧潰部2aに第1の外部リード部材3を交叉させて溶接する。次に、陽極リード2の不要部分をノッチ部2bより切離する。以下通常の方法によって第1図に示す固体電解コンデンサが製造される。」(第2頁右下欄第7行?第3頁左上欄第2行)
また、第2?4図には、固体電解コンデンサの陽極リードの終端部の上下面に圧潰部を形成することが示されている。
以上から、刊行物2には、「陽極リードの終端部の上下面に圧潰部を形成した固体電解コンデンサ」が記載されている。

(ウ)刊行物3:特開昭63-265418号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物3には、「ヒューズ付きチップ状固体電解コンデンサおよび製造方法」(発明の名称)に関して、第1図?第4図とともに以下の事項が記載されている。
「第4図(b)は陽極リード端子4,陰極リード端子5の組立後の形状を示したものである。
まず、この陰極リード端子5の段差部の内側に導電性接着剤8を塗布し、この塗布部に前記陽極リード端子4、陰極リード端子5と同じピッチ間隔で並べられたコンデンサ素子lの陰極層3の一方の側面と上面を接着する。次に陽極リード端子4の接続部4aと陽極リード2を溶接により接続し、さらに前記接続部4aと陽極外部電極部4bとをヒューズ6によりはんだ付けあるいはワイヤーボンディング等の手段を用いて橋絡接続し、その上をシリコン樹脂等の絶縁性を有する弾性樹脂7により被覆する。最後に陽極リード端子4の接続部4a、陽極外部電極部4bの露出部および陰極リード端子5の露出部である陰極外部電極部5aを残してトランスファモールド等の手段を用いて第1図のように外装樹脂9により絶縁外装した後、金属板を陽極リード端子4の接続部4aの露出部のA-A線,C-C線および陽極外部電極部4bの露出部のB-B線から切断して、フレーム11側から分離し、さらに陰極リード端子5の露出部である陰極外部電極部5aのD-D線から同様に切断してフレーム12側から分離し、残った陽極外部電極部4b,陰極外部電極部5aを外装樹脂9の外壁に沿って折り曲げ、ヒューズ付きチップ状固体電解コンデンサl0を形成する。」(第4頁左上欄第14行?右上欄第19行)
「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明のヒューズ付きチップ状固体電解コンデンサの一実施例の内部構造を示す斜視図、第2図は第1図の側断面図、第3図は陽極リード端子4の組立前の形状の一例の正面図、第4図(a)はこの固体電解コンデンサ10の別の製造方法の実施例における陽極リード端子4および陰極リード端子5の組立前の形状を示し、第4図(b)はそれらの組立後の形状を示す平面図・・・である。」(第4頁右下欄第17行?第5頁左上欄第8行)
また、第1,3,4図には陽極リード端子の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されることが示されている。
以上から、刊行物3には、「陽極リード端子の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されること」が記載されている。

(エ)刊行物4:実願昭57-115447号(実開昭59-20625)のマイクロフィルム
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物4には、「チップ型固体電解コンデンサ」(考案の名称)に関して、第1図とともに以下の事項が記載されている。
「陽極引出線3の先端部には金属片6が溶接されている。この金属片6は、平面形状が概略U字状をなし、その基部6aに陽極引出線3が溶接されている。この基部6aの幅寸法はコンデンサ素子1の幅寸法と等しく形成されており、この基部6aの両側からコンデンサ素子1の陽極引出線3の引出側面1aに向って脚部6b、6bが伸延しており、これら脚部6b、6bの先端部と側面1aとの間には微小な間隔が存在する。」(第3頁第15行?第4頁第3行)
また、第1図には、陽極引出線の先端部と溶接される金属片に、内側に狭くなる凹部を形成することが示されている。
以上から、刊行物4には、「金属片の陽極引出線との接続部に内側に狭くなる凹部を形成すること」が記載されている。

(2)本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「タンタル粉末の焼結体からなり、Ta_(2)O_(5)の酸化皮膜が形成されたコンデンサ素子」、「陽極リード」、「切欠き部」、「第1の外部リード」、「陰極」、「第2の外部リード」は、それぞれ本願補正発明の「タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子」、「陽極ワイヤ」、「凹部」、「陽極リードフレーム」、「コンデンサ素子の側面」、「陰極リードフレーム」に相当する。
(b)刊行物1の図1から明らかなように、陽極リードはコンデンサ素子から突出しているので、引用発明の「コンデンサ素子の一壁面に埋め込まれた陽極リード」は、本願補正発明の「コンデンサ素子から突出して」いる「陽極ワイヤ」に相当する。
(c)引用発明は「タンタル粉末の焼結体からな」る「コンデンサ素子」を用いているから、引用発明の「固体電解コンデンサ」は、本願補正発明の「タンタルコンデンサ」に相当する。
(d)引用発明の「幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成される第1の外部リード」は、刊行物1の図1から明らかなように、第1の外部リードの端部はパッケージの下面に配置されているので、本願補正発明の「一側終端の中心部分に」「凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム」に相当する。
(e)引用発明の「コンデンサ素子の外周壁に形成された陰極に接続される第2の外部リード」は、刊行物1の図1から明らかなように、第2の外部リードの端部もパッケージの下面に配置されているので、本願補正発明の「一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム」に相当する。
(f)引用発明の「コンデンサ素子の周囲を被覆するパッケージ」は、刊行物1の図1に示されるように、樹脂製パッケージが、コンデンサ素子と、陽極リードと、第2の外部リードおよび第1の外部リードがコンデンサ素子および陽極リードと付着される部分をつつんでいるから、本願補正発明の「前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部」に相当する。
(g)引用発明の「前記板状の第1の外部リードは、その幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成され、該切欠き部を経た前記陽極リードの端部と溶接されること」は、本願補正発明の「前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接され」ることに相当する。
ゆえに、両者は、
「 タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子;
前記コンデンサ素子から突出している陽極ワイヤ;
一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム;
一側終端の中心部分に凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム; および
前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部;を含み、
前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接されることを特徴とするタンタルコンデンサ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本願補正発明は、陽極ワイヤが「上下面が平坦なベンディング部が終端に形成され」ている構成を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点2]本願補正発明は、陽極リードフレームの一側終端の中心部分の凹部が「内側に狭くなる」という構成を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点3]本願補正発明は、「該陽極リードフレームの凹部側壁が該陽極ワイヤに対して斜めに接している」という構成を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
刊行物2には、「陽極リードの終端部に上下面に圧潰部(本願補正発明の「平坦なベンディング部」に相当)を形成した固体電解コンデンサ」が記載されているから、引用発明において、陽極ワイヤが「上下面が平坦なベンディング部が終端に形成され」ているとの構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物3に「陽極リード端子(本願補正発明の「陽極リードフレーム」に相当)の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されること」が記載され、刊行物4に「金属片(本願補正発明の「陽極リードフレーム」に相当)の陽極引出線との接続部に内側に狭くなる凹部を形成すること」が記載されているから、引用発明において、陽極リードフレームの一側終端の中心部分の凹部が「内側に狭くなる」という構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3について]
(a)刊行物3には「陽極リード端子の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されること」が記載されており、刊行物3において、刊行物2のように陽極リードを圧潰してベンディング部を形成すれば、「陽極リードフレームの凹部側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接する」ようになるから、この構成を引用発明に採用し、本願補正発明のごとく「陽極リードフレームの凹部側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接する」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(b)本願明細書の【0012】には「凹部を半円形に形成することもできる。」と記載されている。
そして、陽極リードフレームの凹部の形状として、引用発明は、刊行物1の図1から明らかなように「切欠き部の側辺は陽極リードに平行」であるが、刊行物3には「陽極リード端子の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されること」が記載され、刊行物4には「金属片の陽極引出線との接続部に内側に狭くなる凹部を形成すること」が記載されているように各種の形状があり、引用発明の切欠き部(本願補正発明の「凹部」に相当。)を、例えば半円形として、本願補正発明のごとく「陽極リードフレームの凹部側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接する」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(c) 請求人は、請求の理由の第2頁第23行?第30行において、「上記凹部の形状を内側に狭くなるようにして、当該凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接するようにすることで、陽極ワイヤと陽極リードフレームが重なる部位(溶接部位)をより多く確保することが可能となり、その結果、溶接時に発生する熱を効率良く分散、発散させることができる、安定した溶接面を確保することができる、陽極リードフレームと陽極ワイヤのモールディングによる固定力を維持することができる、陽極ワイヤのベンディング加工部位の長さ(溶接部位の長さ)を縮めることができ、陽極ワイヤに加わるストレスを減少させることができる(陽極ワイヤとコンデンサ素子内部の誘電体との安全性が増す)などの顕著に優れた効果を奏するものであります。」と本願補正発明の効果を主張している。
しかし、主張の効果は、本願明細書及び図面には記載がなく、本願明細書及び図面の記載から自明とも認められない。
さらに、本願の図5を参照すると、「凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接するように」しているために、溶接ラインよりも陽極リードフレーム側に陽極リードフレームにおける溶接部位が一部欠落した状態となって、その分陽極ワイヤと陽極リードフレームが重なる部位(溶接部位)が少なくなっているから、陽極リードフレームの凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接するようにするよりもむしろ、刊行物1,3,4のように、前記陽極リードフレームの凹部の端面を前記溶接ラインに沿って陽極ワイヤに対し直角に接するような形状に構成した方が、前記溶接部位をより多く確保することが可能であると認められる。
また、溶接時の熱は、陽極リードフレームのフレーム方向に逃げるものであり、凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接してフレームと反対方向(陽極リードフレームの先端方向)に逃げる熱量はごくわずかであるから、凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接することにより、溶接時に発生する熱が分散、発散して顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、請求人が主張する上記効果は、陽極リードフレームの凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接するようにした場合の特有のものとは認められず、陽極リードフレームの凹部の側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接するようにするか否かは、製造容易性等に応じて、当業者が適宜実施し得る設計的事項であると認められる。
(d)以上から、引用発明において、本願補正発明のごとく「陽極リードフレームの凹部側壁が陽極ワイヤに対して斜めに接する」との構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、補正後の請求項1についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子;
前記コンデンサ素子から突出しており、上下面が平坦なベンディング部が終端に形成される陽極ワイヤ;
一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム;
一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム; および
前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部;を含み、
前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接されることを特徴とするタンタルコンデンサ。」

第4 刊行物に記載された発明
前記「第2 2(1)(ア)(イ)(ウ)(エ)」に記載したとおりである。

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「タンタル粉末の焼結体からなり、Ta_(2)O_(5)の酸化皮膜が形成されたコンデンサ素子」、「陽極リード」、「切欠き部」、「第1の外部リード」、「陰極」、「第2の外部リード」は、それぞれ本願発明の「タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子」、「陽極ワイヤ」、「凹部」、「陽極リードフレーム」、「コンデンサ素子の側面」、「陰極リードフレーム」に相当する。
(b)刊行物1の図1から明らかなように、陽極リードはコンデンサ素子から突出しているので、引用発明の「コンデンサ素子の一壁面に埋め込まれた陽極リード」は、本願発明の「コンデンサ素子から突出して」いる「陽極ワイヤ」に相当する。
(c)引用発明は「タンタル粉末の焼結体からな」る「コンデンサ素子」を用いているから、引用発明の「固体電解コンデンサ」は、本願発明の「タンタルコンデンサ」に相当する。
(d)引用発明の「幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成される第1の外部リード」は、刊行物1の図1から明らかなように、第1の外部リードの端部はパッケージの下面に配置されているので、本願発明の「一側終端の中心部分に」「凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム」に相当する。
(e)引用発明の「コンデンサ素子の外周壁に形成された陰極に接続される第2の外部リード」は、刊行物1の図1から明らかなように、第2の外部リードの端部もパッケージの下面に配置されているので、本願発明の「一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム」に相当する。
(f)引用発明の「コンデンサ素子の周囲を被覆するパッケージ」は、刊行物1の図1に示されるように、樹脂製パッケージが、コンデンサ素子と、陽極リードと、第2の外部リードおよび第1の外部リードがコンデンサ素子および陽極リードと付着される部分をつつんでいるから、本願発明の「前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部」に相当する。
(g)引用発明の「前記板状の第1の外部リードは、その幅方向の中心部において、端部から長手方向に切欠き部が形成され、該切欠き部を経た前記陽極リードの端部と溶接されること」は、本願発明の「前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接され」ることに相当する。
ゆえに、両者は、
「 タンタル酸化物を誘電体に用いるコンデンサ素子;
前記コンデンサ素子から突出している陽極ワイヤ;
一端が前記コンデンサ素子の側面に付着され、他端は基板に実装される端子に形成される陰極リードフレーム;
一側終端の中心部分に凹部が形成され、他側終端は基板に実装される端子に形成される陽極リードフレーム; および
前記コンデンサ素子と、前記陽極ワイヤと、前記陰極リードフレームおよび前記陽極リードフレームが前記コンデンサ素子および前記陽極ワイヤと付着される部分と、をつつむモールディング部;を含み、
前記陽極ワイヤは前記陽極リードフレームの凹部が形成された一端と重なる部位で溶接されることを特徴とするタンタルコンデンサ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本願発明は、陽極ワイヤが「上下面が平坦なベンディング部が終端に形成され」ている構成を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点2]本願発明は、陽極リードフレームの一側終端の中心部分の凹部が「内側に狭くなる」という構成を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
刊行物2には、「陽極リードの終端部に上下面に圧潰部(本願発明の「平坦なベンディング部」に相当)を形成した固体電解コンデンサ」が記載されているから、引用発明において、陽極ワイヤが「上下面が平坦なベンディング部が終端に形成され」ているとの構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物3に「陽極リード端子(本願発明の「陽極リードフレーム」に相当)の一側終端の中心部分に内側に狭くなる凹部が形成されること」が記載され、刊行物4に「金属片(本願発明の「陽極リードフレーム」に相当)の陽極引出線との接続部に内側に狭くなる凹部を形成すること」が記載されているから、引用発明において、陽極リードフレームの一側終端の中心部分の凹部が「内側に狭くなる」という構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

したがって、本願発明は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-04 
出願番号 特願2001-377371(P2001-377371)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 572- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸本 泰広  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 大澤 孝次
橋本 武
発明の名称 改善されたリードフレームを備えるタンタルコンデンサ  
代理人 三好 秀和  
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