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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06T 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1189737 |
審判番号 | 不服2007-10786 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-13 |
確定日 | 2008-12-17 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第325884号「画像のリサイジング方法及びそのためのコンピュータプログラム製品」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 5日出願公開、特開平 9-231351〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年11月22日(米国優先権主張平成7年11月27日)の出願であって、平成18年9月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成18年12月12日付けで手続補正書及び意見書が提出されたが、平成19年1月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成19年4月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.原審における拒絶理由通知及び拒絶査定の内容 平成18年9月15日付け拒絶理由は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないから特許法第29条第1項柱書き違背とする理由1と、記載不備であるから特許法第36条第4項及び第6項違背とする理由2について通知されたものである。 その内、理由2については、具体的に次の点が指摘されている。 「 ・請求項1,6に記載された各処理/手段が、本願明細書に記載された「2倍のスケーリングを効率的に行えるようにすることが強く要望されている。さらに、多数のピクセルを同時に処理できるようにすることに対する要望も強い」等の課題と、どのように関係するのか不明瞭である。(また、前記請求項に記載された処理と、「画像を2倍にスケーリングすること」との関係も不明瞭である。) ・請求項1,6に記載された「第1の変数」「第2の変数」「1つのマージ変数」「もう一つのマージ変数」「あらかじめ選択された定数」「拡張表現形式の複数の拡張変数」の技術内容、および、明細書発明の詳細な説明に記載された事項との対応関係が不明瞭である。(現行の記載では、前記「第1の変数」「第2の変数」「1つのマージ変数」「もう一つのマージ変数」「あらかじめ選択された定数」「拡張表現形式の複数の拡張変数」等の事項が、「画像を2倍スケーリングする」処理を構成する具体的事項とどのように対応するのか不明瞭である) ・請求項1,6の「前記複数の拡張変数を2つずつ互いに加算して水平補間データを生成する」との記載では、どのような「生成」処理を示してるのか不明瞭である。 ・請求項1,6に示された「マージ処理」の技術内容が特定できない。 ・請求項1,6の「選択的に第1の変数または第2の変数をそれ自体とマージして」との処理内容が不明瞭である。(特に「選択的」とは、どのような選択処理を示すのか不明瞭である) ・請求項2-4に記載された各構成要素と、引用元である請求項1に記載された構成との関係が不明瞭である。 (例えば、請求項2-4の「垂直補間」「水平補間」処理と、請求項1の各ステップとの関係が不明瞭である) 同様に請求項7-10に記載された各構成要素と、引用元である請求項6に記載された各構成要素との関係が不明瞭である。 ・第8図、第9図の技術的意味が不明瞭である。(左上p0-p7の3bit目と4bit目の矢印が交差している理由が不明瞭である。) 」 また、平成1年1月9日付け拒絶査定は、拒絶理由通知書で通知した理由2についてしたもので、備考として次の点が記載されている。 「(1) 「第1の変数」「第2の変数」「第1のマージ変数」「第2のマージ変数」とは、「何」を意味する変数なのか依然として不明である(画像の「画素値」を意味するのか?)。 また、これらの変数と「画像」との関係が依然として不明である。 (2) 「a) 選択的に第1の変数または第2の変数をそれ自体とマージ」するとは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 (3) 「その変数の高位バイトをインターリーブすること及びその変数の下位バイトをインターリーブすることによって第1のマージ変数を生成する」とは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 (4) 「b) 前記第1の変数と前記第2の変数とをマージして、それらの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれらの変数の下位バイトをインターリーブすること」とは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 (5) 「d) 前記複数の拡張変数の対応するバイト対を加算して」とは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 」 3.拒絶理由に対する出願人の対応および審判請求時の審判請求人の対応 平成18年12月12日付け提出の手続補正書においては特許請求の範囲の請求項1?10および図9のみが補正された。また同日付けで提出の意見書においては、該補正の事実のみが記載され、拒絶理由通知書で指摘した事項について何ら意見を述べていない。 審判請求においては、特許請求の範囲の請求項1および図8のみが補正された。また審判請求書においては、該補正の事実のみが記載され、拒絶査定の備考として掲げた各項目について、記載不備ではないことの何らの主張もしていない。 4.当審における判断 平成19年4月13日付け手続補正書により補正された請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】 コンピュータシステムにおいて画像を水平方向に2倍にスケーリングする方法において、水平方向の2つのピクセル値の間に1つのピクセル値を挿入することにより水平補間を実施する方法であって、 a) 第1のピクセル値を表す第1の変数または第2のピクセル値を表す第2の変数をそれ自体と選択的にマージし、それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって1つのピクセル値から得られたピュアピクセル値を表す第1のマージ変数を生成するステップと、 b) 前記第1の変数と前記第2の変数とをマージして、それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって第2のマージ変数を生成するステップと、 c) 前記第1のマージ変数及び前記第2のマージ変数にあらかじめ選択された定数を各々乗じて、それぞれのマージ変数のバイト表現形式を複数の拡張バイト表現形式に変換するステップと、 d) 前記拡張バイト表現形式に変換された変数の対応するバイト対を加算して水平補間データを生成するステップと、 を具備する方法。 」 出願人(審判請求人)は意見書においても、審判請求書においても、記載不備として指摘した事項について、何らの意見も述べていないので、拒絶査定における備考記載事項の各項目について順次、拒絶査定の是非を検討する。 (1)「第1の変数」「第2の変数」とは、「何」を意味する変数なのか、依然として不明である。 平成19年3月13日付け手続補正により、「第1のピクセル値を表す第1の変数または第2のピクセル値を表す第2の変数」と補正はされ、第1のピクセル値と第1の変数、あるいは、第2のピクセル値と第2の変数が対応することは明らかにはなったが、変数という数値が何を示すものであるかは依然として不明である。 拒絶査定において「(画像の「画素値」を意味するのか?)」と疑問を呈しているのに対し、「画素値」であるか否かについて、当該手続補正書においては「画素値」とする補正はなされておらず、また、審判請求書において何らの意見も述べていない。 また、発明の詳細な説明の段落0006には、変数に関して「無整列の入力ストリームから2つの変数を抽出する。」との記載があるが、当該記載を参酌しても、そもそも無整列のストロリームから変数を抽出することの意味が不明であり、第1,第2のピクセル値を表すものがどういうことであるのか不明である。 また、第1のマージ変数」「第2のマージ変数」とは、「何」を意味する変数なのか、依然として不明である。 平成19年3月13日付け手続補正書により、「第1のマージ変数」は「第1のピクセル値を表す第1の変数または第2のピクセル値を表す第2の変数をそれ自体と選択的にマージし、それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって1つのピクセル値から得られたピュアピクセル値を表す」というものとなり、「第2のマージ変数」は「前記第1の変数と前記第2の変数とをマージして、それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって」生成されるものと補正されているが、前記したように、「第1の変数」「第2の変数」が依然として何を意味するか不明であり、また、次項(2)?(4)に示すように、この補正された文章の意味が不明であるから、結局「第1のマージ変数」「第2のマージ変数」とは、「何」を意味する変数なのか不明である。 (2)「選択的に第1の変数または第2の変数をそれ自体とマージする」ことが、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 「マージ」とは、通常、「併合」「合成」の意味であるが、第1の変数(または第2の変数)をそれ自体と併合、合成するという事象が、どういうことであるのか理解することはできない。さらに、これを「選択的に」行うことがどういうことであるのか、その意味が不明である。 例えば発明の詳細な説明の段落0024には、実施例として当該マージに関する記載はあるが、ここで説明されている文章及び対応する図8、図9を参照しても、図0006には、変数に関して「無整列の入力ストリームから2つの変数を抽出する。」との記載があるが、当該記載を参酌しても、「選択的に第1の変数または第2の変数をそれ自体とマージ」がどういうことであるのか不明である。 (3)「その変数の高位バイトをインターリーブすること及びその変数の下位バイトをインターリーブすることによって第1のマージ変数を生成する」とは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 平成19年3月13日付け手続補正により、「それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって1つのピクセル値から得られたピュアピクセル値を表す第1のマージ変数を生成する」と補正されているが、依然として当該記載の意味は不明である。 「インターリーブ」とは、「差し込む」「埋め込む」の意味であるが、信号系においては、通常「挿入」の意味で用いられる。「挿入」の意味であるとして、「高位バイト」「低位バイト」を、どこに、どのように挿入するかは不明であって、当該文章がいかなる処理を意味するのか不明である。 例えば発明の詳細な説明の段落0024、図8、図9がこのことを説明しているものと判断できるが、これら記載から「その変数の高位バイトをインターリーブすること及びその変数の下位バイトをインターリーブすることによって第1のマージ変数を生成する」あるいは「それぞれの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれぞれの変数の下位バイトをインターリーブすることによって1つのピクセル値から得られたピュアピクセル値を表す第1のマージ変数を生成する」の意味を理解することはできない。 (4)また、「前記第1の変数と前記第2の変数とをマージして、それらの変数の高位バイトをインターリーブすること及びそれらの変数の下位バイトをインターリーブすること」についても、上記(3)と同様、その意味は依然として不明である。 (5)請求項1において、「前記複数の拡張変数の対応するバイト対を加算して」とは、いかなる処理を意味するのか、依然として不明である。 平成19年3月13日付け手続補正により、「拡張バイト表現形式に変換された変数の対応するバイト対を加算して」と補正はされているが、依然として当該記載の意味は不明である。 「バイト対」はある「バイト」の「対(通常2つ)」の意味であるが、この「対」とは何であるか不明であり、又、対応する対を加算とは、何が「対応」であり、「対」がどのように加算されるのか意味不明である。 また、この「バイト対」が、発明の詳細な説明のどの記載に対応しているのか不明であって、発明の詳細な説明を参酌しても、その意味を理解することができない。 したがって、発明を特定するために必要な要素にこれら不明点を含む請求項1は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものではない。 そして、これら(1)?(5)の不明な点については、発明の詳細な説明においても不明であるから、発明の詳細な説明は、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度の内容が明確に記載されたものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、他に検討するまでもなく、幾つかの記載不備事項を示して明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないとした拒絶査定に誤りはない。 したがって、拒絶査定を取り消す理由は存在しないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-16 |
結審通知日 | 2008-07-22 |
審決日 | 2008-08-04 |
出願番号 | 特願平8-325884 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G06T)
P 1 8・ 537- Z (G06T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡本 俊威、脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
西山 昇 廣川 浩 |
発明の名称 | 画像のリサイジング方法及びそのためのコンピュータプログラム製品 |
代理人 | 紺野 正幸 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 黒川 弘朗 |