• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1189738
審判番号 不服2007-11939  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-25 
確定日 2008-12-17 
事件の表示 特願2001-383099「使い捨て紙おむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 2日出願公開,特開2003-180747〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成13年12月17日の出願であって,平成19年3月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成19年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月25日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。
「液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これらシート間に配置される吸収体とを有し,着用状態において着用者の背側に位置する背側部と,股下に位置する股間部と,腹側に位置する腹部側とで形成されているテープ止めタイプの使い捨て紙おむつにおいて,前記トップシート側における幅方向ほぼ中央部の前記着用者の股間部が当接する位置に,前記トップシートの色と異なる色で,おむつかぶれ防止剤を含む,塗料またはホットメルトにより,帯状のセンターラインが設けられていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。」

2.補正の目的,特許請求の範囲の拡張,変更及び新規事項の追加の有無
本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「帯状のセンターライン」に,「トップシートの色と異なる色で」「塗料またはホットメルトにより」との限定を付加するものであり,かつ,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして,本件補正は,新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
[引用例1]
原査定の拒絶の理由に引用された,特開平8-280725号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
a.「図1に示す第1の実施例の使い捨ておむつ1は,液透過性のトップシート2と,液不透過性のバックシート3と,これら両シート間に配置される吸収体4とを有し,着用時に使用者の背側に位置する背側部Aと腹側に位置する腹側部Cと股下に位置する股下部Bとが形成されてなる,展開型の使い捨ておむつである。……」(段落0009)
b.「……また,上記背側部Aの左右両側縁部には,おむつを止着するファスニングテープ20がそれぞれ2ヵ所づつ設けられている。」(段落0010)
c.「図6に示す第3の実施例の使い捨ておむつ1は,おむつの幅方向中央部に設けられた第1の目安線10……更に詳述すると,上記の第1の目安線10は,上記背側部Aの端縁から上記腹側部の略中央(おむつの長手方向に対して上記腹側部の略中央)まで設けられて……いる。」(段落0021)
d.「本実施例の使い捨ておむつ1は、このように構成されているので、おむつの幅方向に対する位置合わせが容易であるだけではなく、更におむつの長さ方向に対する位置合わせも容易である。即ち、おむつの位置合わせをする際に、おむつの幅方向に対する位置合わせを上記の第1の目安線10により行い、また、おむつの長手方向に対する位置合わせを上記の第2の目安線11及び第3の目安線12により行うことにより、図7に示すように、容易におむつを適正位置に合わせることができる。また、パンツタイプのおむつの中に入れて使用する補助パットの装着に際しても、この幅方向に向けて設けられた第2の目安線が目安となり、該補助パットの装着を容易にする。」(段落0022)
e.図7には,第1の目安線がトップシート側の使用者の股下部が当接する位置に設けられていることが図示されている。(図面第7図)
これら記載事項及び図示内容を総合し,本願発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これらシート間に配置される吸収体とを有し,着用時において使用者の背側に位置する背側部と,股下に位置する股下部と,腹側に位置する腹部側とで形成され,おむつを止着するファスニングテープを設けた使い捨ておむつにおいて,前記トップシート側における幅方向ほぼ中央部の前記使用者の股下部が当接する位置に,第1の目安線が設けられていることを特徴とする使い捨ておむつ。」

[引用例2]
同じく引用された国際公開第00/64502号パンフレット(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(日本語訳として,当該引用例2の国内段階の出願である特表2002-541982号公報の記載を引用)。
f.「本発明の吸収性物品の身体側ライナ34は,その外側の身体対抗面52にローション剤を更に含む。通常,ローション剤は,皮膚軟化剤,ワックス,及び選択的に,増粘剤を含む。」(13頁15?18行)
g.「また,ローション剤で皮膚を治療することが望ましい場合には,おむつかぶれ用の皮膚保護剤等の活性成分をローション剤に含有させることもできる。」(15頁28?29行)
h.「着用者に対する効果を更に高めるために,他の成分を本発明のローション剤に含有させることができる。例えば,使用できる成分の種類とそれによってもたらされる効果としては,……着色剤(製品に色を付ける)……があるが,これらに限定されない。」(16頁5?29行)
i.「ローション剤は,身体側ライナ34の身体対抗面52全体に塗布することができる。また,おむつの縦方向中心線に沿う中間区域のような身体対抗面52の特定区域に選択的に塗布してその区域の潤滑性をより高め,ローションを着用者の皮膚に移行させることができる。その代わりに,図3で代表的に示したように,身体側ライナ34の身体対応面52は,この面に塗布されたローション剤の複数のストライプ54を備えることができる。例えば,身体側ライナ34の身体対抗面52には,おむつ20の縦方向に沿って伸びるローション剤のストライプ54を,1つから10まで備えることができる。また,ストリップ54の幅は,約0.2から約1センチメートルとすることができる。」(18頁31行?19頁2行)

[引用例3]
同じく引用された実願昭58ー19907号(実開昭59ー125905号)のマイクロフィルム(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
j.「裏面シートの2の素材としては,白色または乳白色を有する極薄で半透明の可撓性ポリエチレンフイルムが使用されているが,補強手段8には,裏面シート2と識別可能でこれを介して外側から透視可能なように赤,青,緑などの適宜色が施されている。かかる着色を有する補強手段8は,好ましくはホットメルト接着剤にその接着性を低下せしめない範囲の極く少量の染料,顔料,インクなど公知の着色料を混合して特定区域に塗布することにより設けられる。」(6頁4?13行参照)が記載されている。

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,その構造または機能からみて,引用発明の「着用時」は,本願補正発明の「着用状態」に相当し,以下同様に,「使用者」は「着用者」に,「股下部」は「股間部」に,「おむつを止着するファスニングテープを設けた」は「テープ止めタイプ」に,「使い捨ておむつ」は「使い捨て紙おむつ」に,「第1の目安線」は「センターライン」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の第1の目安線が,トップシートに設けられた,おむつの幅方向に対する位置合せ用の目印であること(上記3-1.d.参照)を考慮すれば,「第1の目安線」がトップシートの色と異なる色であることは明らかである。

そこで,本願補正発明の用語を用いて表現すると,両者は次の点で一致する。
(一致点)
「液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これらシート間に配置される吸収体とを有し,着用状態において着用者の背側に位置する背側部と,股下に位置する股間部と,腹側に位置する腹部側とで形成されているテープ止めタイプの使い捨て紙おむつにおいて,前記トップシート側における幅方向ほぼ中央部の前記着用者の股間部が当接する位置に,前記トップシートの色と異なる色で,センターラインが設けられていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。」
そして,両者は下記の点で相違する。
なお,対応する引用例記載の用語を括弧内に示してある。
(相違点1)
本願補正発明のセンターラインは,帯状で,おむつかぶれ防止剤を含むのに対し,引用発明のセンターライン(第1の目安線)は,線状で,おむつかぶれ防止剤が含まれていない点。
(相違点2)
本願補正発明のセンターラインは,塗料またはホットメルトにより設けられているのに対し,引用発明は,センターライン(第1の目安線)を設ける手段が明らかでない点。

3-3.相違点の判断
(相違点1について)
引用例2には,使い捨ておむつのトップシート側にローションを帯状に設けること(上記3-1.i.参照),さらに,その際ローションにおむつかぶれ防止剤(同g.参照)や,着色剤(同h.参照)を混入してもよいことが記載されている。
そこで,引用発明に,センターライン(第1の目安線)を帯状とし,その材料におむつかぶれ防止剤を混入する引用例2記載の技術手段を適用して,相違点1に係る本願補正発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
引用例3には,使い捨ておむつにおいてホットメルト接着剤に着色料を混入して塗布すること(上記3-1.j.参照)が記載されている。
そこで,引用発明の第1の目安線を設ける手段として上記引用例3記載のホットメルト接着剤に着色料を混入する技術手段を採用して,相違点2に係る本願補正発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願補正発明による効果も,引用例1?3に記載された事項から当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。
したがって,本願補正発明は,引用例1?3に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成18年2月20日付けの手続補正書により補正された明細書の,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これら両シート間に配置される吸収体とを有し,着用状態において着用者の背側に位置する背側部と,股下に位置する股間部と,腹側に位置する腹側部とで形成されているテープ止めタイプの使い捨て紙おむつにおいて,前記トップシート側における幅方向ほぼ中央部の前記着用者の股間部が当接する位置にかぶれ防止機能を有する帯状のセンターラインが設けられていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は,前記II.1の本願補正発明から,「帯状のセンターライン」の限定事項である「トップシートの色と異なる色で」「塗料またはホットメルトにより」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに,他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記II.3-3に記載したとおり,引用例1?3に記載されたものに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に,引用例1?3に記載されたものに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1?3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
それゆえ,本願出願は,特許請求の範囲の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-03 
結審通知日 2008-10-14 
審決日 2008-10-27 
出願番号 特願2001-383099(P2001-383099)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 使い捨て紙おむつ  
代理人 安形 雄三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ