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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1189841
審判番号 不服2005-4925  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2008-12-24 
事件の表示 特願2001-262209「高速光記録方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月28日出願公開、特開2002-183967〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成13年8月30日(優先権主張 2000年12月7日 韓国)に出願されたものであって、平成16年12月9日に拒絶査定がされ、平成20年2月29日付けで当審において拒絶理由通知がされ、平成20年6月4日付けで手続補正がされたものである。
本願の発明は、上記平成20年6月4日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】 メインビームとサブビームとを生成する段階と、
前記メインビームを光ディスク上に照射してメイン光スポットを形成し、前記サブビームを前記光ディスク上に照射して前記光ディスクのトラック方向に沿って前記メイン光スポットより所定距離だけ先立ってマークを一次的に消去するサブ光スポットを形成する段階とを含み、記録しようとするマーク長に該当する記録信号によって前記メイン光スポットによりマークを記録する間に、前記記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポットで既存マークを一次的に消去した後、前記記録信号の間にサブ光スポットにより一次的に消去された位置を、前記記録信号と前記記録信号との間の消去信号により前記メイン光スポットにより再消去することで、前記メイン光スポットは新たなマークの記録及び既存マークの消去を行い、前記サブ光スポットは既存のマークの消去のために用いられ、マーク記録及び/または消去を可能にしたことを特徴とする光記録方法。」(以下「本願発明」という。)


2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平5-342582号公報(以下「刊行物」という。)には、光ディスクの情報記録速度を向上させ、高速のオーバライトを簡単な光学系で実現する光学情報記録方法について以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0002】
【従来の技術】レーザー光を利用して記録媒体に信号を記録する、あるいは記録した信号を再生する技術は既に公知である。中でも再生専用型のものはコンパクトディスク装置(以下CDと略す)あるいはレーザーーディスク装置として広く普及し、また追記型あるいは書換え型のものは文書ファイル、データファイル等に応用されている。
(2)「【0003】書換え型の一つの方式に、アモルファス-結晶間、あるいは結晶-結晶間の可逆的な状態変化を利用して情報を記録する相変化型光ディスク装置がある。相変化光ディスクは、単一のレーザービームによるダイレクトオーバライトが可能であるという特徴を持つ。これに用いられる記録薄膜は、レーザーー光の照射パワーに応じて、アモルファス状態と結晶状態を形成する。記録薄膜に信号を記録する際には、情報信号に対応させて、ピークパワーPpとバイアスパワーPb(Pp>Pb)の二つのパワーレベル間で強度変調したレーザーー光を照射する。光の照射部は、以前の状態がアモルファスあるいは結晶のいずれであっても、ピークパワーPpが照射された部分はアモルファス状態となり、一方バイアスパワーPbが照射された部分は結晶状態となる。この結果、一つのレーザーー光スポットにより光ディスク上に情報信号の重ね書き(オーバーライト)が行われる。」
(3)「【0011】
【作用】本発明は上記した構成によって、前方の補助スポットにより、記録部材の記録状態の少なくとも一部が消去され、続く強度変調された記録スポットの照射により新しい信号のオーバライトが行われる。即ち、消去状態に相当する部分は、少なくとも同レベルの消去ビームが2度照射されるため、良好な消去状態を得ることができる。
【0012】【0013】・・・(省略)・・・。
【0014】(実施例1)図1は、本は発明の記録装置の概略図を示す。光学情報記録部材である光ディスク1は、一定の条件でディスクを回転させる第1の移動手段であるモータ2と、光ピックアップ3と、光ピックアップ3の位置を光ディスクの半径方向に移動させる第2の移動手段である移送部4と、制御部5と、それらの動作を支持するシステムコントローラ6から構成される。また、モータ2は、標準モードの線速度V1と高速記録モードの線速度V2(V2>V1)でディスクを回転させる。
【0015】光ピックアップ3が光ディスク1上に形成する光スポットは、図2に示すように、情報記録用の記録スポットS1と、補助スポットS2,S3,S4を備えた構成とする。補助スポットは、図のように複数のスポット列で構成する場合、あるいは記録スポットS1よりもガイドトラック7の方向に長い形状のスポットを用いることができる。また、それらの位置は、光ディスクのトラック方向に対し、スポットS1よりも移送方向に対し前方に傾斜した角度で配置する。
【0016】ここで、オーバライトの2つの動作について説明する。高速モードの動作時には、光ディスクの線速度をV2とし、線速度比(V2/V1)だけ高い転送レートの情報信号でバイアスパワーPb1とピークパワーPp1の間で強度変調した記録スポットS1を照射する。それと同時に、記録薄幕の温度を結晶化温度以上とするようなパワーPb1で補助スポットS2,S3,S4を照射する。前述のように補助スポットは、記録スポットよりも移送方向の先頭に位置するため、光ディスク上では、一旦補助スポットの照射された後に記録スポットS1が照射される。光ディスク上では、図2のように以前に記録されたアモルファスマーク8の上に、まず補助スポットS1,S2,S3のいずれかが照射される。照射部は、一旦加熱され結晶化温度以上となり、結晶化が始まる。しかし、線速度が高いために光照射による昇温時間が短く、以前のマークのアモルファス状態が一部が残り、消去残りマーク9となる。次に、この消去残りマーク9の上に記録スポットS1が照射される。このスポットS1のバイアスパワーPb1の照射された部分は、再び結晶化温度以上となり、前記消去残りマークは結晶状態に変化する。また、ピークパワーPp1の照射された部分は新たなアモルファスの新マーク10を形成する。この結果、記録ビーム単独の光照射では消去不足(結晶化不足)であった記録薄膜においても、補助ビームS2,S3,S4と記録ビームS1の少なくとも2回の光照射により良好な消去状態が形成され、良好なオーバライトが達成される。」
(4)「【0018】図3を用いて本発明の実施例をさらに詳しく説明する。光ディスク1は、基盤11と、基板上の記録薄膜12から構成されている。光ディスク1からの信号記録・再生時には、システムコントローラ6の指示により、モータ駆動回路13によりモータ2標準モードあるいは高速モードなどの記録条件に応じた線速度で光ディスクを回転させる。この状態でレーザー駆動回路14が、所定の電流で半導体レーザー16を駆動し、それに応じたパワーの出力される。なお、ここでは半導体レーザー16は複数の発光点を構造のものとし、レーザー駆動回路14は、記録スポットS1の発光点だけを駆動し、レーザー駆動回路15は、補助スポット用の発光点を駆動する。半導体レーザー16の光はコリメータレンズ17により平行光となり、ビーム整形用プリズム18、偏向ビームスプリッター19、1/4波長板20を透過し、対物レンズ21でもって光ディスクの記録薄膜12上に波長限界である直径約1μmの大きさの円形スポット列が集光される。記録薄膜12からの反射光は、対物レンズ21、1/4波長板20を経て、偏向ビームスプリッター19で反射され、光検出器22上に入射する。なお、光検出器22はできるだけ記録スポットS1だけの反射光を検出する位置に設ける。・・・(省略)・・・。」
【0019】ここで、半導体レーザー16の構成に付いて説明する。図4に複数の光源を有するマルチビームレーザーを示す。この図は4つの発光面を例であり、それぞれ記録スポットS1を形成する発光面L1、補助スポットS2,S3,S4を形成する発光面L2,L3,L4が存在する。上記の信号再生は、すべて記録スポットS1で行う。ここで示した半導体レーザーは、その製造の容易さを考慮し、同一平面状に位置し、発光波長はほぼ同等であることを前提としている。ここで発光点の間隔Dが100μmのものを用いた場合について説明する。光ピックアップのビーム整形用プリズム18の拡大率を3倍とすると、33μmの間隔で4つのビームが光ディスク上に集光される。また、各スポットは、情報の記録時に図2に示したように、補助スポットS2,S3,S4のいずれかが少なくとも1回照射された後に記録スポットS1が照射され、かつ記録ビームが照射された部分が補助ビームにより消去されないように配置する。即ち、光スポットの移動方向に対して前方であり、かつ移送方向に対しても前方となるように、半導体レーザー16あるいはピックアップ3全体の角度を調整する。」
(5)「【0022】また、ここまでは、記録スポットS1と、補助ビームS2,S3,S4を同一チップ上の光源から形成する方法について説明してきたが、他に、記録スポットと補助スポットの波長を変え、記録スポットは1個半導体レーザーから、補助スポットは複数の発光点を備えたマルチレーザーを用いる事も可能である。また、記録スポット、補助スポット共に1つの発光点の半導体レーザーを用い、補助ビームの光路中にグレーティング、あるいはプリズムを設けることによりビームを分割する方式である。これらの構成では、装置そのものは前述のものに比べて複雑になるが、記録ビームと補助ビームの距離を自由に設定できること。また、記録スポットと補助スポットの波長を変えることにより、補助スポットからの反射光が、サーボビームに混ざることを抑制することが可能となる。」

以上の摘示事項及び図面等を総合勘案して整理すると、刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
「モータ駆動回路13によりモータ2は、標準モードあるいは高速モードの記録条件に応じた線速度で光ディスクを回転し、
レーザー駆動回路14は、所定の電流で半導体レーザー16を駆動し、それに応じたパワーが出力され、記録スポット、補助スポットは共に1つの発光点の半導体レーザーを用い、
補助スポットS2?S4のいずれかが少なくとも1回照射された後に記録スポットS1が照射され、かつ記録ビームは照射された部分が補助ビームにより消去されないように半導体レーザー16あるいはピックアップ3全体の角度を調整して配置され、
高速モードの動作時に線速度をV2とし、線速度比(V2/V1)だけ高い転送レートの情報信号でバイアスパワーPb1とピークパワーPp1の間で強度変調した記録スポットS1を照射し、同時に、記録薄膜の温度を結晶化温度以上とするようなパワーPb1で補助スポットS2?S4を照射し、補助スポットは、記録スポットよりも移送方向の先頭に位置し、一旦補助スポットの照射された後に記録スポットS1が照射され、
まず補助スポットS2?S4のいずれかが照射され、照射部は、一旦加熱され結晶化温度以上となり、結晶化が始まるものの、線速度が高いために光照射による昇温時間が短く、以前のマークのアモルファス状態が一部が残り、消去残りマーク9となり、次に、この消去残りマーク9の上に記録スポットS1が照射され、記録スポットS1のバイアスパワーPb1の照射された部分は、再び結晶化温度以上となり、前記消去残りマークは結晶状態に変化し、ピークパワーPp1の照射された部分において新たなアモルファスの新マーク10を形成することで、記録ビーム単独の光照射では消去不足(結晶化不足)であった記録薄膜においても、補助ビームS2?S4と記録ビームS1の少なくとも2回の光照射により良好な消去状態が形成され、
良好なオーバライトが達成される高速のオーバライト光学情報記録方法。」(以下「刊行物発明」という。記号は図面との対応を容易とするために付した。)


3.対比・判断
〔判断〕
本願発明と刊行物発明とを対比する。
(i)刊行物発明の「記録ビーム」「補助ビーム」「記録スポット」「補助スポット」は本願発明の「メインビーム」「サブビーム」「メインスポット」「サブスポット」に、また刊行物発明の「レーザー駆動回路14は、所定の電流で半導体レーザー16を駆動し、それに応じたパワーが出力され、記録スポット、補助スポットは共に1つの発光点の半導体レーザーを用い」のビーム生成手段は、本願発明の各ビームのを生成する「メインビームとサブビームとを生成する段階」で共通する。
(ii)刊行物発明の「補助スポットS2?S4のいずれかが少なくとも1回照射された後に記録スポットS1が照射され、かつ記録ビームは照射された部分が補助ビームにより消去されないように」及び「バイアスパワーPb1とピークパワーPp1の間で強度変調した記録スポットS1を照射し、同時に、記録薄膜の温度を結晶化温度以上とするようなパワーPb1で補助スポットS2?S4を照射し、補助スポットは、記録スポットよりも移送方向の先頭に位置し、一旦補助スポットの照射された後に記録スポットS1が照射され」は、光ディスク上への記録ビームと補助ビームの照射による形態と相互ビームの配置についての記載であり、そのうち「補助スポットは、記録スポットよりも移送方向の先頭に位置」は、本願発明では「サブビームを光ディスク上に照射して光ディスクのトラック方向に沿ってメイン光スポットより所定距離だけ先立って」及び「サブ光スポットを形成する」に相当し、さらに、「補助スポットS2?S4のいずれかが照射され、照射部は、一旦加熱され結晶化温度以上となり、結晶化が始まるものの、線速度が高いために光照射による昇温時間が短く、以前のマークのアモルファス状態が一部が残り、消去残りマーク9となり」は、補助スポットのマークへの影響について記載しているもので、本願発明では「サブビームを光ディスク上に照射して光ディスクのトラック方向に沿って」及び「マークを一次的に消去するサブ光スポットを形成する段階とを含み」に相当するから、結局本願発明の「メインビームを光ディスク上に照射してメイン光スポットを形成し、サブビームを光ディスク上に照射して光ディスクのトラック方向に沿ってメイン光スポットより所定距離だけ先立ってマークを一次的に消去するサブ光スポットを形成する段階とを含み」と共通する。
(iii)刊行物発明の「次に、この消去残りマーク9の上に記録スポットS1が照射され、記録スポットS1のバイアスパワーPb1の照射された部分は、再び結晶化温度以上となり、前記消去残りマークは結晶状態に変化し、ピークパワーPp1の照射された部分において新たなアモルファスの新マーク10を形成」であるが、そのうち「スポットS1のバイアスパワーPb1の照射された部分は、再び結晶化温度以上となり」は、記録スポットによる再消去の状態であり、さらに「ピークパワーPp1の照射された部分において新たなアモルファスの新マーク10を形成」とは既存マークを消去してあらたな記録マークを形成することであり、これらは「一旦補助スポットの照射された後」に「記録スポットS1」の「ピークパワーPp1が照射」されるまでの処理工程であるから、結局本願発明の「記録しようとするマーク長に該当する記録信号によってメイン光スポットによりマークを記録する間に、サブ光スポットで既存マークを一次的に消去した後、記録信号の間にサブ光スポットにより一次的に消去された位置を、記録信号と記録信号との間の消去信号によりメイン光スポットにより再消去することで、メイン光スポットは新たなマークの記録及び既存マークの消去を行い、サブ光スポットは既存のマークの消去のために用いられ」に相当する。
(iv)刊行物発明の「高速のオーバライト光学情報記録方法」は本願発明の「マーク記録及び/または消去を可能にした光記録方法」に相当する。

結局のところ、本願発明と刊行物発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
「メインビームとサブビームとを生成する段階と、
前記メインビームを光ディスク上に照射してメイン光スポットを形成し、前記サブビームを前記光ディスク上に照射して前記光ディスクのトラック方向に沿って前記メイン光スポットより所定距離だけ先立ってマークを一次的に消去するサブ光スポットを形成する段階とを含み、記録しようとするマーク長に該当する記録信号によって前記メイン光スポットによりマークを記録する間に、前記サブ光スポットで既存マークを一次的に消去した後、前記記録信号の間にサブ光スポットにより一次的に消去された位置を、前記記録信号と前記記録信号との間の消去信号により前記メイン光スポットにより再消去することで、前記メイン光スポットは新たなマークの記録及び既存マークの消去を行い、前記サブ光スポットは既存のマークの消去のために用いられ、マーク記録及び/または消去を可能にした光記録方法。」

[相違点]
本願発明のものは、サブ光スポットについて「記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポット」とするものであるが、刊行物発明のものはこの点についての言及がされていない点。

〔判断〕
刊行物発明は、補助ビーム形成の際、「記録スポット、補助スポット共に1つの発光点の半導体レーザーを用い」るものであり、すなわち、専用の補助ビーム光源を設けることなく記録スポットと共用するものである。そして、共用する以上、記録していく際には記録パワーの一部が補助ビームとして使用されることになるのであるから、刊行物発明において、サブ光スポットは上記記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポットの構成となるとも解釈できるものであるし、ないしサブ光スポットを上記記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポットとすることは当業者が容易に想到できることである。

-補足-
本願発明の構成要件であり相違点である「記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポット」の技術的意義について論及する。
1.「パルス状とされた前記サブ光スポット」について、願書に最初に添付した明細書又は図面には以下の記載がある。(下線は当審での付与。)
(a)「【0011】ここで、前記メインビームの消去光パワーをPme、前記サブビームの消去光パワーをPseとする時、前記メインビーム及びサブビームの消去光パワーは関係式Pme≦Pseを満たすようになったことが望ましい。
【0012】この際、前記メインビームの消去光パワーPmeは所定大きさの一定の光パワーであり、前記サブビームの消去光パワーPseはパルス状である。」
(b)「【0017】また、光ディスク10上にメイン光スポットSmとサブ光スポットSsとを形成するために光ディスク10に入射されるメインビームI及びサブビームIIの光ディスク10の入射面における消去光パワーは、メインビームIの消去光パワーをPme、サブビームIIの消去光パワーをPseとする時、数式(1)を満たすことが望ましい。
【0018】 Pme≦Pse (1)
【0019】ここで、前記メインビームIの消去光パワーは一定の値(以下、DC消去光パワー)であり、サブビームIIの消去光パワーは記録信号と同一なパルス状である。」
(c)「【0027】光ディスク10のトラックに沿ってメインビームIよりサブビームIIが先に照射されるために、前記のようにメインビームI及びサブビームIIが1つの光源13から出射されて分岐される構造である場合、パルス状の記録信号の間にサブ光スポットSsはメイン光スポットSmに先立って不完全ながらも既存のマークを一次的に消去する。もちろん、この時のサブ光スポットSsは記録信号の間に光源13から出力されるパルス状出力光を分岐して形成されたものなので、記録信号と同一に変化されるパルス状である。
【0028】したがって、信号消去中にメイン光スポットSmは信号記録中にサブ光スポットSsにより一次的に消去された位置を再消去するために、消去動作を高速で進行しつつ優秀な消去率を達成しうる。
【0029】一方、図3はDC消去光パワーPeによる消去効果を示す図面である。図3は波長が405nm光を出射する光源13及び開口数0.65の対物レンズ21を具備する光学系を適用し、DC消去光パワー(Pe:光ディスク10の入射面での光パワー)によって、非晶質状態の変化を観察したものである。図3の結果は、図4に示されたように、バイアスパワーPb0.1mWに対してDC消去光パワーPeを2.0mW、2.2mW、2.4mW、2.6mWに変化させて得たものである。」
【0030】図3から分かるように、DC消去光パワーPeが増加するほど結晶化がよく進行するが、DC消去光パワーPe2.6mWではむしろ再非晶質化される現象が生じる。このような非晶質化は消去光パワーが適正の範囲を超えて、記録可能な温度となるからである。したがって、適正DC消去光パワーPeは2.2mWないし2.4mWである。
【0031】図5(A)ないし図5(C)はパルス状の信号によりマークが消去される程度を示す図面である。図5(A)ないし図5(C)は波長405nmの光及び開口数0.65の対物レンズ21を使用し、最小マーク長3Tが0.30μmである条件で4Tマークを5.84m/sの線速度で図6のパルス状の記録信号を使用して光ディスク10に記録した後、その記録位置に2.2mW、3.0mW、5.0mWのパルス状の消去光パワー(Pe-pulse:すなわち、記録信号の間のサブ光スポットSs)を照射して得た結果である。図6において得ようとするマーク(nominal mark)の長さより狭幅に記録信号を加えるのは相変化により形成されるマークの温度による拡散を考慮したからである。
【0032】表1は4Tトーンマーク(tone mark)に図3及び図4のようにDC消去光パワーPe及びパルス状の消去光パワー(Pe-pulse)を加えた時、キャリアレベル(C/L:carrier level)変化を比較したものである。表1は線速度5.84m/s、記録光パワーPw 6.5mW、消去光パワーPe 2.2mW、バイアス光パワーPb 0.3mW、再生光パワーPr 0.4mW、C/N(Carrier to Noise ratio)=54.0dBである場合に対して得られた結果である。ここで、キャリアレベルはマークの再生信号をスペクトル分析器で分析してdBm単位に示したものである。
【0033】【表1】・・・(省略)・・・
【0034】表1を説明すれば、消去光パワーが加えられていない初期4Tマークのキャリアレベルは-30dBmである。この4Tマークに2.2mWの適正DC消去光パワーPeを加えると、消去が正常に行われてその部分のキャリアレベルは-60dBmに減少される。
【0035】一方、同じ大きさの2.2mWのパルス状消去光パワーを加えると、その部分のキャリアレベルは-33dBmとなって消去がほとんど行われない。
【0036】しかし、5.0mWのパルス状消去光パワーを加えると、その部分のキャリアレベルは-45dBmまで減少するので、その部分を再び2.2mWのDC消去光パワーPeで再消去すれば十分な消去率が得られる。
【0037】したがって、本発明のように、信号記録中に適正パワーを有するパルス状のサブ光スポットSsで一次的に消去した後、信号消去中にメイン光スポットSmで再消去すれば高速でも十分な消去率が得られる。」
等の記載がある。

2.上記記載から判断して、本願発明は「サブビームの消去光パワーPseはパルス状」としているが、これは記録信号がある場合に限られ、記録信号がないような場合にはメイン光スポット位置においての直流の消去信号と比例した値の直流電流となる。これは『一次的に消去』が常にパルス状において実行されるものでないことが明らかで、請求項の記載は実施例と対応しないことで不明な事項がある。
そして、「信号消去中にメイン光スポットSmは信号記録中にサブ光スポットSsにより一次的に消去された位置を再消去するために、消去動作を高速で進行しつつ優秀な消去率を達成しうるとする。」作用効果について、
【0033】の【表1】の説明には 『適正DC消去光パワーPeを加えると、消去が正常に行われてその部分のキャリアレベルは-60dBmに減少される。』と、
【0035】には『5.0mWのパルス状消去光パワーを加えると、その部分のキャリアレベルは-45dBmまで減少するので、その部分を再び2.2mWのDC消去光パワーPeで再消去すれば十分な消去率が得られる。』と、記載がある。
加えて、『したがって、本発明のように、信号記録中に適正パワーを有するパルス状のサブ光スポットSsで一次的に消去した後、信号消去中にメイン光スポットSmで再消去すれば高速でも十分な消去率が得られる。』との記載も参酌すると、パルス状としたサブ光スポットとしたことについて(パルス状でなくとも良いのであるから)高速記録における記録マークを消去していく技術的意義は認めれらないものである。
結局は、DC消去光パワーで再消去することで、十分な消却率を得ていくものでサブ光スポットがパルス状でなく直流である場合とで技術的な差異があるとは解されない。

3.上記2.の解釈について関連する、当審からの平成20年2月29日付け拒絶理由に対して、請求人は以下の意見書を提出してきた。
『拒絶理由通知における指摘(1)
「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが異なるような場合(例:「記録しようとするマーク長が3T」で消去する「既存マークが13T」等)において、「記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポットで既存マークを一次的に消去できない」マーク部分が残ると考えられる。
これを次に「前記記録信号と前記記録信号との間の消去信号の間に前記メイン光スポットにより再消去」でどの様に消去するのか不明である。
この御指摘につきましては、以下のようにご説明いたします。
まず、本願発明の場合には、基本的には、「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが同じ場合に最も信頼性の高い高速消去が可能です。しかし、「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが異なる場合でも、もちろん実施可能です。
まず、基本的にサブ光スポットを消去パワーレベルにするので、既存マークのうち記録マーク長さ部分(3T)に該当する部分は消去され、残り部分は消去されない(1次消去されない)可能性があります。
しかし、記録信号と記録信号との間の消去信号の間に与えられる消去信号に応じてメイン光スポットにより再消去が行われます。すなわち、サブ光スポットによって1次消去が行われない部分は、メインビームによってだけ消去が行われます。したがって「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが異なる場合であっても、問題ありません。
このように、「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが同じ場合に特に、サブ光スポットによって、部分的に消去することができますので、サブビームを用いた1次的な消去を実行しない場合に比べて、全体として消去動作を高速で行いながらも優れた消去率を達成することができます。
・・・(中略)・・・
c3.そして、上記(a)で指摘するように「前記記録信号と同一に変化されるパルス状とされた前記サブ光スポット」で一次消去が完全にできない「既存マーク」があるのであれば「サブ光スポット」乃至「消去信号」のいずれか一つで消去する拒絶の査定で引用した文献と格別な相違はないと判断でき、上記補正に基づく目的効果も不明である。
確かに、「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが異なるような場合、「サブ光スポット」乃至「消去信号」のいずれか一つで消去することになります。
しかし、「記録しようとするマーク長」と「既存マーク長」の長さが同じ場合には、「サブ光スポット」乃至「消去信号」の両方で消去することになり、より優れた消去率を達成することができます。このような技術思想は、引用例1にも引用例2にも開示も示唆もされておりません。』
上記意見書からも記録信号と同一に変化するパルス状のサブ光スポットは必ずしもより優れた消去率を達成するものでもなく、サブ光スポットがあり、(完全でなくとも)少なからず一次消去されていれば、この後でのメインスポットで再消去することで高速消去が可能であるという程度のものである。この点で、刊行物発明のものが、(明確な記載がないということで(上記〔判断〕参照)パルス状のサブ光スポットでないとしても、記録信号と同一に変化するパルス状のサブ光スポットにそもそも格別な技術的意義があるものではなく、パルス状のサブ光スポットとすること自体刊行物発明のものから適宜なし得ることができるものであるから、本願発明は刊行物発明から当業者が容易に想到できるとした判断に誤りはない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-11 
出願番号 特願2001-262209(P2001-262209)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 聡岩井 健二  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 吉川 康男
小松 正
発明の名称 高速光記録方法及び装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
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