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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1189842
審判番号 不服2005-10164  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2008-12-22 
事件の表示 平成11年特許願第272264号「はんだ材料およびをそれを用いた接合体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月23日出願公開、特開2000-173253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月27日(国内優先権主張 平成10年9月30日)の出願であって、拒絶理由通知の応答期間内である平成15年12月1日付で手続補正がされたが、平成17年4月20日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年5月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月28日付で手続補正がされたものである。

2.平成17年6月28日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年6月28日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正後の本願発明
平成17年6月28日付手続補正(以下、「本件補正」という。)のうち、特許請求の範囲についての補正は、補正前の
「【請求項1】Sn、Ag、Bi、InおよびCuを含む合金からなるはんだ材料。
【請求項2】Agを1.0?4.0重量%、Biを2.0?6.0重量%、Inを1.0?15重量%、Cuを0.1?1.0重量%含み、残部がSnである合金からなる請求項1記載のはんだ材料。
【請求項3】Agを3?3.5重量%、Biを2.5?3重量%、Inを2.5?3重量%、Cuを0.5?0.7重量%含み、残部がSnである合金からなる請求項2記載のはんだ材料。
【請求項4】部品装着基板と電極との間に、請求項1?3のいずれかに記載のはんだ材料からなる接合部を有する接合体。」を
「【請求項1】Agを1.0?4.0重量%、Biを2.0?6.0重量%、Inを1.0?15重量%、Cuを0.1?1.0重量%含み、残部がSnである合金からなる携帯機器用はんだ材料。
【請求項2】Agを3?3.5重量%、Biを2.5?3重量%、Inを2.5?3重量%、Cuを0.5?0.7重量%含み、残部がSnである合金からなる請求項1記載の携帯機器用はんだ材料。
【請求項3】部品装着基板と電極との間に、請求項1または2記載の携帯機器用はんだ材料からなる接合部を有する接合体。」
と補正するものである。

上記補正は、補正前の請求項1を削除して、以下の請求項の項番を順次繰り上げるとともに、請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「はんだ材料」について、「携帯機器用」との限定事項を付加するものであって、補正後の請求項1及び請求項1を引用する各請求項についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平10-71488号公報(平成10年3月17日公開。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】Ag:3?4重量%、Bi:2?6重量%、In:2?6重量%を含有し、残部Snからなる錫-銀系半田合金」(特許請求の範囲。以下、「引用例1発明」という。)

(3) 対比
引用例1発明におけるAgの含有量3?4重量%は、本願補正発明の1.0?4.0重量%に包含され、引用例1発明におけるBiの含有量2?6重量%は、本願補正発明の含有量2.0?6.0重量%と実質的に一致する。
引用例1発明におけるInの含有量2?6重量%は、本願補正発明の1.0?15重量%に包含され、引用例1発明と本願補正発明とは、残部Snからなる点において共通する。
引用例発明の「半田合金」と、本願補正発明の「合金からなるはんだ材料」との間に実質的な相違はない。

そこで、本願補正発明と引用例1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「Agを1.0?4.0重量%、Biを2.0?6.0重量%、Inを1.0?15重量%含み、残部がSnである合金からなるはんだ材料。」である点。

[相違点1]
本願補正発明が、「Cuを0.1?1.0重量%含む」のに対し、引用例1発明は、Cuを含む点について特定されていない点。
[相違点2]本願補正発明が、「携帯機器用」であるのに対し、引用例1発明では用途が特定されていない点。

(4)判断
[相違点1]について
本願優先日当時、鉛を含まないはんだ合金において、機械的強度改善等の目的でCuを0.1重量%?3重量%程度添加することは周知である。(例えば、特開平9-94687号公報の段落[0014]には、0.1?3重量%添加することが記載されている。また、特開平9-216089号公報の段落[0013]には、0.1?0.7重量%添加することが記載されている。そして、特開平9-326554号公報の段落[0011]には、0.1?2.0重量%添加することが記載されている。)
そうすると、引用例1発明において、0.1?1.0重量%程度のCuを添加することは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願明細書における実施例と比較例とを比較しても、Cuを0.1?1.0重量%含有することによる格別な効果があると認めることはできない。

[相違点2]について
引用例1発明のはんだは、汎用のものであって特定の用途を意図するものではないから、これを「携帯機器用」に用いることは、当業者が容易に想到しうることであって、特段の阻害理由があるということはできない。
また、「携帯機器用」に用いることにより、予測し得ない効果が奏されるものとも認めることができない。

そして、上記相違点について総合的に判断しても、本願補正発明の作用効果は引用例1から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、その優先日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年6月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成15年12月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりである。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】Sn、Ag、Bi、InおよびCuを含む合金からなるはんだ材料。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比
本願発明と、引用例1発明とを比較すると、両者は、「Sn、Ag、BiおよびInを含む合金からなるはんだ材料。」である点で一致する一方、本願発明がCuを含むのに対し、引用例1発明は、Cuを含む点について特定されていない点で相違する。

(3)判断
本願優先日当時、鉛を含まないはんだ合金において、機械的強度改善等の目的でCuを添加することが周知であったことは、上記2.(4)で述べたとおりである。
そうすると、引用例1発明においてCuを添加することは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願明細書における実施例と比較例とを比較しても、Cuを含有することによる格別な効果があると認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は、平成15年12月1日付の意見書において、引用例1に比較例として記載された半田合金(アロイH)はCuを含んでおり、引用例1発明の実施例の合金にCuを含ませることは引用例1発明の目的に反する旨主張している。
しかし、アロイHがBiを7.5重量%含むのに対し、引用例1発明はBiの含有量が6重量%を超えると「伸び」がアロイHを下回る旨記載されている(段落[0003]、[0007]の記載事項、及び、[0010]の表参照。)。
そうすると、アロイHがCuを含むことが、さらにCuを含ませることについての阻害理由になるということはできないから、上記請求人の主張を採用することはできない。

(3)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-21 
結審通知日 2008-10-23 
審決日 2008-11-07 
出願番号 特願平11-272264
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 衣川 裕史  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 樫本 剛
江畠 博
発明の名称 はんだ材料およびをそれを用いた接合体  
代理人 石井 和郎  
代理人 仲 晃一  
代理人 河崎 眞一  

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