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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1189843
審判番号 不服2005-10592  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-09 
確定日 2008-12-22 
事件の表示 平成 8年特許願第 71572号「電子部品接着材料の塗布方法及び塗布装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-260823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
出願 :平成 8年 3月27日
拒絶理由通知 :平成16年 7月20日付け
意見書提出 :平成16年 9月17日付け
手続補正 :平成16年 9月17日付け
拒絶理由通知(最後) :平成17年 1月 6日付け
意見書提出 :平成17年 2月21日付け
拒絶査定 :平成17年 4月25日付け
審判請求 :平成17年 6月 9日
手続補正(請求の理由) :平成17年 6月30日付け
手続補正(明細書) :平成17年 6月30日付け
前置報告 :平成17年 8月16日付け
審尋 :平成19年10月 4日付け
回答書提出 :平成19年11月22日付け
補正の却下の決定〔平成17年6月30日付け手続補正(明細書)〕
:平成20年 7月 7日付け
拒絶理由通知(最後) :平成20年 7月 7日付け
意見書提出 :平成20年 8月26日付け
手続補正 :平成20年 8月26日付け

[2]平成20年8月26日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成20年8月26日付けの手続補正を却下する。

【理由】
1.本件手続補正の内容
本件手続補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正事項を含んでおり、この補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「塗布条件」、「データ」、「所望する塗布形状」に関し、補正後の請求項1において、それぞれ、「各種電子部品を接着するのに要する塗布形状、及び吐出圧力と吐出時間を含む塗布条件」、「塗布面積と塗布時間との一次式データを含むデータ」、「接着すべき電子部品に対応した所望する塗布形状」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件手続補正後の前記請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2.本件手続補正後の本願発明
本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、平成20年8月26日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 間欠的に動作する塗布ノズルにより接着材料を所定形状にスポット塗布する電子部品接着材料の塗布方法において、各種接着材料ごとに、各種電子部品を接着するのに要する塗布形状、及び吐出圧力と吐出時間を含む塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果の、塗布面積と塗布時間との一次式データを含むデータを予め登録しておき、使用する接着材料の種類及び接着すべき電子部品に対応した所望する塗布形状が入力されると、予め登録された、塗布面積と塗布時間との一次式データを含むデータから所望のデータを参照して塗布ノズルの吐出量を自動制御することを特徴とする電子部品接着材料の塗布方法。」

3.引用刊行物とその記載事項
平成20年7月7日付け拒絶理由通知に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-263851号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開平5-309295号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)引用例1:特開平7-263851号公報
(1a)「【0004】
【課題を解決するための手段】・・・本発明は基板上にチップ部品を組み立てるために所定の作業を行う部品組立装置に於いて、後工程の部品装着装置により前記基板上にチップ部品を装着する際の装着に関するデータを前工程の塗布装置により該基板に塗布剤を塗布する際の塗布に関するデータに変換する変換装置を設けたものである。
【0005】
【作用】以上の構成から、後工程の部品装着装置でプリント基板にチップ部品を装着する際の装着に関するデータが、変換装置により前工程の塗布装置により前記基板に塗布剤を塗布する際の塗布に関するデータに変換される。」

(1b)「【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面に基づき詳述する。図2に示す1は図示しない上流側装置から供給コンベア2を介してXY移動可能なXYテーブル3上に供給されるプリント基板4に複数本設置された塗布ノズル5を介してシリンジ6内に貯蔵されている塗布剤としての接着剤を塗布する塗布装置である。・・・」

(1c)「【0017】・・・塗布装置1の塗布に関するデータが該塗布装置1のRAM13に格納される。以下、塗布に関するデータの作成動作について説明する。コンピュータ42を介して作成したRAM36内に格納された前記装着に関するデータをコンピュータ42内で塗布装置1による塗布に関するデータに変換する。該コンピュータ42に設けられたデータ変換スイッチ部46をタッチすると前記装着に関するデータが塗布に関するデータに変換される。即ち、塗布装置1に準備されたノズル5の吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応したコンピュータ42内のRAM47に格納されている例えば図9に示す各種部品に対応する各種塗布直径の対応表を基にCPU49は前記装着データ内のリール番号に関するデータ(「R-NO」)を図4に示す塗布データ内の塗布条件データ(「D-NO」)に変換する。このとき、図9の部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データ(「D-NO」)を図5の塗布条件データ内から選択し、図4の塗布データ内に設定する。・・・」

(1d)「【0018】以下、動作について説明する。先ず、・・・塗布装置1のXYテーブル3上に基板4が位置決めされた状態で載置されると、塗布装置1のCPU15は、図4及び図5に示す塗布に関するデータに基づいて塗布動作を開始する。先ず、塗布順番を示す塗布ステップ番号(M-NO)の1番目「0001」に設定されたX、Yデータに基づいてXYテーブル3を移動させて塗布条件データ「001」に設定された条件であるノズル番号1の塗布ノズル5の下方に最初の塗布位置を位置させる。そして、該塗布ノズル5を図示しない上下動機構が選択固定した状態で該上下動機構を介して下降させて、該ノズル5の先端から予め図示しないエア供給機構によりシリンジ6に塗布条件データで設定されたゲージ圧(本実施例では各ノズル5にゲージ1、ゲージ2で設定されている2種類の加圧力を選択する。)で圧縮エアを所定塗布時間(吐出時間)供給して、ノズル5先端に吐出させておいた接着剤が塗布される。このとき、後工程で装着する部品の角度に対応してθ回転させるように設定されていればノズル5を図示しない回動機構により回動させた状態で塗布する。塗布終了後、ノズル5は上昇される。
【0019】以下、同様にして塗布動作が図4の塗布データに設定された塗布ステップ順に続けられる。1基板への塗布動作が終了したら、基板4は部品装着装置21の供給コンベア20により下流側の該部品装着装置21へ搬送される。・・・」

(1e)「【0023】本実施例では図9に示す部品に対応する接着剤の塗布直径を図5の塗布条件データ内から検索して、その結果を図4の塗布データ内に設定しているが、これに限らず、例えばその塗布直径が得られるノズル5をピックアップしてその中の最適なノズル5を判定して、塗布データ及び塗布条件データを完成させるようにしても良い。この場合各ノズル5使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との下記の関係式がコンピュータ42のRAM47内に格納しておく。
【0024】
【数1】 X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D
【0025】(A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)
そして、この関係式から各ノズル5に対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかCPU49内の図示しない計算装置により計算する。この結果、該塗布直径を得ることが可能なピックアップされた複数本のノズル5のうち該塗布直径を得るための塗布時間(吐出時間)が最短になるものを優先し、そのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定すると共に塗布データ内に該塗布条件番号を設定する。」

(2)引用例2:特開平5-309295号公報
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板上に塗布ノズルでシリンジ内の塗布剤を塗布する塗布装置に於いて、前記塗布ノズル先端に塗布剤を吐出させるため前記シリンジ内にエア源より供給される吐出エアを吹き込むバルブと、塗布ノズルが最下限位置にある間にシリンジ内の圧力が大気圧となるように該バルブの開動作指令信号を制御する制御装置とを設けたことを特徴とする塗布装置。」

(2b)「【0017】(28)は図3に示す塗布動作に関するNCデータ等のデータや図20に示す吐出圧に対する当該吐出圧からの立下がり時間(バルブ1、2(19)、(20)をOFFしてから大気圧に戻るまでの時間)の関係を示す実験データから求められた吐出圧に対する立下がり時間の近似式
【0018】
【数1】 F(P)=AP+B
【0019】を記憶する記憶装置としてのRAMで、メモリA乃至メモリIの領域を有する。尚、メモリAにはXYテーブルの移動時間が記憶され、メモリBには{メモリI-ノズル下限到達時間}が記憶され、メモリCには{ノズル下限到達時間-メモリIの時間}が記憶され、メモリDには{メモリA-ノズル下降時間}が記憶され、メモリEには{メモリI-最大吐出許容時間}が記憶され、メモリFには{最大吐出許容時間-メモリI}が記憶され、メモリGには{XYテーブル移動時間-テーブル移動許容時間}が記憶され、メモリHには立下がり時間が記憶され、メモリIには{吐出時間(バルブON時間)+立下がり時間}が記憶されている。」

(2c)「【0042】尚、前記近似式は例えば粘度等が異なる接着剤の種類等に応じて複数個記憶しておき、使用する接着剤の種類に応じて適宜な近似式を用いるようにしてもよい。・・・」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-246886号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3)引用例3:特開平4-246886号公報
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板上に塗布ノズルでシリンジ内の塗布剤を塗布する塗布装置に於いて、ある所定条件に達した場合シリンジへの加圧条件を異ならせて複数点塗布された塗布剤の量を認識する認識装置と、該認識装置により認識された各塗布量を計算する計算装置と、該計算装置により計算された計算結果を基に加圧条件に対する塗布量の関係式を算出する算出装置と、該算出装置により算出された関係式を記憶する記憶装置と、該記憶装置に記憶された関係式を基に以降の塗布作業を行なうように制御する制御装置とを設けたことを特徴とする塗布装置。」

(3b)「【0025】・・・前記塗布量に関するデータは塗布された接着剤の直径である。即ち、Rデータ「001」ではNOZZLE1のノズル(16)にREGULATOR1のレギュレータ(46)で加圧時間[70mSEC]だけ加圧されて、接着剤が塗布されると、その接着剤は直径[0.8mm]となる。」

(3c)「【0036】・・・計算装置はこれらの所定加圧時間T_(A),T_(B)及び平均塗布面積S_(A),S_(B)をRAM(28)内に記憶された塗布量補正のための塗布量補正式
【0037】
【数1】
T=a(S-S_(A)+T_(A)/a) 但し a=(T_(A)-T_(B))/(S_(A)-S_(B))
【0038】に入力して、目標塗布面積Sを得るための所定加圧時間Tの関係式(図12参照)が得られる。この関係式は、RAM(28)内に記憶される。従って、以降の塗布動作時には、この関係式を基に目標塗布面積を得るための最適な加圧時間を計算し、その加圧時間で塗布作業が行なわれる。即ち、前記Rデータ「001」ではNOZZLE1のノズル(16)にREGULATOR1のレギュレータ(46)でその補正加圧時間だけ加圧されると直径[0.8mm]の接着剤が塗布される。」

4.引用例1記載の発明
引用例1の上記摘記(1a)?(1e)の記載を総合すると、引用例1には、次の「接着剤の塗布方法」についての発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「後工程の部品装着装置によりプリント基板上にチップ部品を装着する際の装着に関するデータを前工程の塗布装置により該基板に塗布剤を塗布する際の塗布に関するデータに変換することを含む塗布剤としての接着剤の塗布方法であって、塗布装置に準備されたノズルの吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応した、例えば、各種部品に対応する各種塗布直径の対応表のデータ等をコンピュータ内のRAMに格納しておき、該対応表を基にRAM内に格納された装着データ内のデータを塗布データ内の塗布条件データに変換し、このとき、部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データを塗布条件データ内から選択するか、又は、各ノズル使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAM内に格納しておき、この関係式から各ノズルに対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかを計算し、該塗布直径を得るためのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定するかして、該塗布直径を得るための塗布条件データを塗布データ内に設定し、塗布装置のXYテーブル上に基板を位置決め載置し、塗布に関するデータに基づいて塗布動作を開始し、塗布ステップ番号に設定されたX、Yデータに基づいてXYテーブルを移動させて塗布条件データに設定された条件であるノズル番号の塗布ノズルの下方に塗布位置を位置させ、該塗布ノズルを下降させて、該ノズルの先端から予めエア供給機構によりシリンジに塗布条件データで設定されたゲージ圧で圧縮エアを所定塗布時間供給して接着剤を塗布し、以下同様にして塗布動作が塗布データに設定された塗布ステップ順に続けられる接着剤の塗布方法。」

5.対比・判断
本願補正発明1と引用例1発明を対比すると、
(ア)引用例1発明における「チップ部品」は、本願補正発明1における「電子部品」に相当し、以下同様に、「接着剤」は「接着材料」に、「ノズル」は「塗布ノズル」に、「ゲージ圧」乃至「塗布圧」は、「吐出圧力」に、それぞれ相当する。
(イ)引用例1発明における「塗布直径」は、本願補正発明1における「塗布形状」に対応するものといえる。
(ウ)引用例1発明は、XYテーブルの各移動位置において接着剤の塗布を行うから、間欠的に動作するノズルによりスポット塗布するといえる。
(エ)引用例1発明における「塗布条件データで設定されたゲージ圧で圧縮エアを所定塗布時間供給して接着剤を塗布」することは、本願補正発明1における「予め登録されたデータから所望のデータを参照して塗布ノズルの吐出量を自動制御」することに相当するといえる。

そうすると、両者は、
「間欠的に動作する塗布ノズルにより接着材料を所定形状にスポット塗布する電子部品接着材料の塗布方法において、予め登録されたデータから所望のデータを参照して塗布ノズルの吐出量を自動制御する電子部品接着材料の塗布方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明1では、
「各種接着材料ごとに、各種電子部品を接着するのに要する塗布形状、及び吐出圧力と吐出時間を含む塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果の、塗布面積と塗布時間との一次式データを含むデータを予め登録しておき、使用する接着材料の種類及び接着すべき電子部品に対応した所望する塗布形状が入力され」、予め登録されたデータが「塗布面積と塗布時間との一次式データを含む」ものであるのに対し、
引用例1発明では、「塗布装置に準備されたノズルの吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応した、例えば、各種部品に対応する各種塗布直径の対応表のデータ等をコンピュータ内のRAMに格納しておき、該対応表を基にRAM内に格納された装着データ内のデータを塗布データ内の塗布条件データに変換し、このとき、部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データを塗布条件データ内から選択するか、又は、各ノズル使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAM内に格納しておき、この関係式から各ノズルに対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかを計算し、該塗布直径を得るためのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定するかして、該塗布直径を得るための塗布条件データを塗布データ内に設定」する点

以下、上記相違点について検討する。
引用例1発明では、「ノズルの吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応した、例えば、各種部品に対応する各種塗布直径の対応表のデータ等をコンピュータ内のRAMに格納しておき、該対応表を基にRAM内に格納された装着データ内のデータを塗布データ内の塗布条件データに変換し、このとき、部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データを塗布条件データ内から選択するか、又は、各ノズル使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAM内に格納しておき、この関係式から各ノズルに対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかを計算し、該塗布直径を得るためのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定するかして、該塗布直径を得るための塗布条件データを塗布データ内に設定」しており、装着される各チップ部品に対応した接着剤の塗布直径が得られるように、接着剤を塗布する際の各チップ部品に対応したゲージ圧や塗布時間を設定しているものと認められるから、接着材料(接着剤)について、吐出圧力(ゲージ圧)、塗布時間等の塗布条件と、塗布形状(塗布直径)の関係を予め登録しているといえる。それ故、上記相違点のうち、接着材料について「各種電子部品を接着するのに要する塗布形状、及び吐出圧力と吐出時間を含む塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータを予め登録して」おく点、及び、「接着すべき電子部品に対応した所望する塗布形状が入力される」点は、実質的な相違とはいえない。

それ以外の相違点について検討するに、引用例2の摘記(2a)?(2c)には、引用例1発明と同様の、プリント基板上に塗布ノズルで塗布剤としての接着剤を塗布する接着剤塗布技術において、接着剤の塗布条件を、粘度等が異なる接着剤の種類等に応じて複数個記憶しておくことが記載されており、各種接着材料ごとに塗布条件を予め登録しておくことが示唆されているといえる。
また、引用例3の摘記(3a)?(3c)には、引用例1発明と同様の、プリント基板上に塗布ノズルで塗布剤としての接着剤を塗布する接着剤塗布技術において、接着剤の塗布量データとして、接着剤の直径(塗布直径)と同様に塗布面積を用いる旨、所定の塗布面積(塗布量)を得るための塗布時間(加圧時間)の計算式として、塗布面積と塗布時間との一次式データを用いる旨が記載されている。

そして、引用例1発明は、接着剤の種類等の各種条件に対応したデータや、塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAMに格納するものであり、また、引用例2に示唆された各種接着材料ごとに塗布条件を予め登録しておく旨、引用例3に記載された接着剤の直径(塗布直径)と同様に塗布面積を用いる旨、所定の塗布面積(塗布量)を得るための塗布時間(加圧時間)の計算式として、塗布面積と塗布時間との一次式データを用いる旨、及び、塗布直径と塗布面積とが所定の関係を有することは、当業者に自明の事項であることを併せ考慮すると、引用例1発明において、「塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータ」の登録などを各種接着材料ごとに行い、使用する接着材料の種類を入力するようにし、塗布量の指標として塗布直径の代わりに塗布面積を採用し、予め登録しておくデータを「塗布面積と塗布時間との一次式データを含む」ものとして、前記相違点で示される本願補正発明1の特定事項を構成することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明1の奏する効果も、引用例1?3の記載から予測することができる程度のものであって、格別顕著であるとは認められない。
したがって、本願補正発明1は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件手続補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、上記補正事項を含む本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明について
1.本願発明
平成20年8月26日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成16年9月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 間欠的に動作する塗布ノズルにより接着材料を所定形状にスポット塗布する電子部品接着材料の塗布方法において、各種接着材料ごとに塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータを予め登録しておき、使用する接着材料の種類及び所望する塗布形状が入力されると、予め登録されたデータから所望のデータを参照して塗布ノズルの吐出量を自動制御することを特徴とする電子部品接着材料の塗布方法。」

2.刊行物とその記載事項
平成20年7月7日付け拒絶理由通知に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1、2の記載事項は、上記[2]3.に記載したとおりである。

3.対比・判断
引用例1には、上記[2]4.に記載したとおりの引用例1発明が記載されていると認められる。

本願発明1と引用例1発明を対比すると、両者は、
「間欠的に動作する塗布ノズルにより接着材料を所定形状にスポット塗布する電子部品接着材料の塗布方法において、予め登録されたデータから所望のデータを参照して塗布ノズルの吐出量を自動制御する電子部品接着材料の塗布方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明1では、
「各種接着材料ごとに塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータを予め登録しておき、使用する接着材料の種類及び所望する塗布形状が入力される」のに対し、
引用例1発明では、「塗布装置に準備されたノズルの吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応した、例えば、各種部品に対応する各種塗布直径の対応表のデータ等をコンピュータ内のRAMに格納しておき、該対応表を基にRAM内に格納された装着データ内のデータを塗布データ内の塗布条件データに変換し、このとき、部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データを塗布条件データ内から選択するか、又は、各ノズル使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAM内に格納しておき、この関係式から各ノズルに対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかを計算し、該塗布直径を得るためのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定するかして、該塗布直径を得るための塗布条件データを塗布データ内に設定」する点

以下、上記相違点について検討する。
引用例1発明では、「ノズルの吐出径や接着剤の種類等の各種条件に対応した、例えば、各種部品に対応する各種塗布直径の対応表のデータ等をコンピュータ内のRAMに格納しておき、該対応表を基にRAM内に格納された装着データ内のデータを塗布データ内の塗布条件データに変換し、このとき、部品に対応した塗布直径が得られる塗布条件データを塗布条件データ内から選択するか、又は、各ノズル使用時のゲージ圧(塗布圧)と塗布時間と塗布直径との関係式X=At^(3)+Bt^(2)+Ct+D (A、B、C、Dは実験値から求まるが、各値が「0」の場合があり、Xは塗布直径、tは塗布時間である。)をコンピュータのRAM内に格納しておき、この関係式から各ノズルに対しどの位の塗布時間で加圧すれば該塗布直径が得られるかを計算し、該塗布直径を得るためのノズル番号と塗布時間を塗布条件データに設定するかして、該塗布直径を得るための塗布条件データを塗布データ内に設定」しており、装着される各チップ部品に対応した接着剤の塗布直径が得られるように、接着剤を塗布する際の各チップ部品に対応したゲージ圧や塗布時間を設定しているものと認められるから、接着材料(接着剤)について、吐出圧力(ゲージ圧)、塗布時間等の塗布条件と、塗布形状(塗布直径)の関係を予め登録しているといえる。それ故、上記相違点のうち、接着材料について「塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータを予め登録して」おく点、及び、「所望する塗布形状が入力される」点は、実質的な相違とはいえない。

それ以外の相違点について検討するに、引用例2の摘記(2a)?(2c)には、引用例1発明と同様の、プリント基板上に塗布ノズルで塗布剤としての接着剤を塗布する接着剤塗布技術において、接着剤の塗布条件を、粘度等が異なる接着剤の種類等に応じて複数個記憶しておくことが記載されており、各種接着材料ごとに塗布条件を予め登録しておくことが示唆されているといえる。
そして、引用例1発明は、接着剤の種類等の各種条件に対応したデータをコンピュータのRAMに格納するものであり、また、引用例2に示唆された各種接着材料ごとに塗布条件を予め登録しておく旨を併せ考慮すると、引用例1発明において、「塗布条件を変化させた場合の各々の塗布形状の変化を認識してその結果のデータ」の登録などを各種接着材料ごとに行い、使用する接着材料の種類を入力するようにして、前記相違点で示される本願発明1の特定事項を構成することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明1の奏する効果も、引用例1、2の記載から予測することができる程度のものであって、格別顕著であるとは認められない。
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願平8-71572
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
P 1 8・ 575- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 陽征長屋 陽二郎  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 真々田 忠博
粟野 正明
発明の名称 電子部品接着材料の塗布方法及び塗布装置  
代理人 石原 勝  

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