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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26D
管理番号 1189861
審判番号 不服2006-17108  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-07 
確定日 2008-12-24 
事件の表示 特願2003- 36272「ロールテープ自動切断機のテープ切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 17279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成15年2月14日の出願(優先権主張 平成14年6月18日 韓国)であって、平成18年5月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年8月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月5日付けで明細書についての手続補正がなされ、当審において平成19年11月12日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成20年3月12日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
さらに、平成20年4月17日に面接がなされ、同年5月19日付けで技術説明書がファクシミリで提出され、同年5月23日に審判官より電話にて説明を求め、同年6月23日に請求人代理人より電話にてさらなる説明は困難との連絡を受けたものである。

2.本願の特許請求の範囲の請求項1の記載内容
平成20年3月12日付けの手続補正書により補正された、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下「本願請求項1」という。)には、以下のように記載されている。

「【請求項1】
固定刃と、可動刃と、該固定刃に対する遠近方向に移動する二つの突起を有する駆動手段とを備え、ロールテープが装着され、テープが引き出された後、該テープを切断するロールテープ自動切断機のテープ切断装置において、
テープ引出スロットを有し、背面両側に可動刃案内チャネルを有し、切断機ケースに着脱可能に取り付けられるフレームと、
前記フレームの背面に取り付けられる前記固定刃と、
前記フレームの背面側に、前記固定刃と対向するように配される前記可動刃と、
前記固定刃と前記可動刃とのうちの少なくとも一方の刃の面であって、前記切断機ケースと反対側で前記テープが引き出される方向側の面に潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、
を有し、
前記可動刃には、前記駆動手段の前記二つの突起のうちの一方の突起が入り込み、前記遠近方向に対して垂直な方向に長い水平長孔と、該水平長孔に対して該垂直な方向に並び、前記二つの突起のうちの他方の突起が入り込み、前記遠近方向に伸びつつ該垂直な方向にも伸びている傾斜長孔が形成されている、
ことを特徴とする、ロールテープ自動切断機のテープ切断装置。」

3.当審において平成19年11月12日付けで通知した拒絶の理由の内容
当審において平成19年11月12日付けで通知した拒絶の理由のうち、特許法第36条に関するものの内容は、以下のとおりである。

(ア)請求項1の「該固定刃に対する遠近方向に移動する二つの突起を有する駆動手段」との記載は、単に当該駆動手段が固定刃に対して遠近方向に直線的な往復動を行うだけのものも含むものである。
しかし、そのように単純な往復動を行うだけの場合には、その後の「前記可動刃には、前記駆動手段の前記二つの突起のうちの一方の突起が入り込み、前記遠近方向に対して垂直な方向に長い水平長孔と、前記二つの突起のうちの他方の突起が入り込み、前記遠近方向に伸びつつ該垂直な方向にも伸びている傾斜長孔が形成され」との記載において、どちらの孔も遠近方向に対して垂直な方向に長く伸びていることとの関係が不明である。
また、単に「・・・遠近方向に移動する二つの突起を有する駆動手段」と記載しただけでは、駆動手段の具体的構造及び駆動手段と突起とがどのように結合されているのかが不明確である。
(二つの突起は単に遠近方向に移動するだけではなく、同一の円弧運動を行うのではないか? また、当該駆動手段は単一の部材であり、二つの突起は駆動手段と一体構造であって、駆動手段と二つの突起は全て同一の円弧運動をするのではないか?)

(イ)請求項1の「前記可動刃の刃先及び前記固定刃の刃先は、いずれも、前記テープが引き出される方向側とは反対側に突出している」との記載では、可動刃及び固定刃がテープ切断装置の他の構成要素に対して具体的にどのような位置関係となるように配置することを意味するのか不明確である。
また、明細書には、「刃先」を突出させるという記載は見あたらない。
さらに、上記の記載は図3の記載と整合しているとは考えられない。
(図3では、可動刃と固定刃は正対しており、可動刃と固定刃のいずれの刃先も「テープが引き出される方向側とは反対側に突出」しているとは考えられない。また、図3において、どの部分を「刃先」としているのかが不明確である。)

(ウ)請求項2の「内臓」は、内蔵、の誤記と考えられる。

(エ)請求項2の「前記潤滑油供給部材」に対応する「潤滑油供給部材」との記載が、当該記載以前に見あたらない。(当該記載以前に記載されているのは「潤滑油供給手段」と「潤滑油貯蔵部材」である。)

(オ)明細書の段落【0026】の「・・・その駆動手段6には、水平長孔31及び傾斜長孔32に狭まった状態で作動され、可動刃30を上昇させる一対の固定突起6aが形成されている。すなわち、駆動手段6が上昇すると、固定突起6aが、水平長孔31及び傾斜長孔32に掛かって上昇する。可動刃30は、水平長孔31が形成された方が先に上昇し、傾斜長孔32が形成された方が引き続き上昇するようになり、傾斜した状態で固定刃20に接触する。そして、水平長孔31と傾斜長孔32の傾斜角により、可動刃30が、固定刃20との接触間に各刃の中心が正確に一致することになり、テープを正確に切断することになる。」及び段落【0027】の「以上のように、上昇する可動刃30は、案内チヤネル12に案内されながら上部に移動するので円滑に移動するのであり、所定の傾斜角が維持された状態で上昇するため、刃の間隔が狭い状態でも、テープを正確に切断することができる。・・・」との記載では、具体的に駆動手段がどのような軌道で移動するのか、そして可動刃がどのような軌道で移動するのかが不明確である。
案内チヤネルに案内されている可動刃が傾斜した状態となるためには、案内チヤネルと可動刃の両側端とが点接触を維持しつつ可動刃が回動するように、案内チヤネルの形状と可動刃の両側端の形状を設定しなければならないと考えられるが、図2,4の記載は、案内チヤネルと可動刃の両側端とが点接触を維持しつつ可動刃が回動するような位置関係となっているようには見えない。
具体的に駆動手段がどのような軌道で移動するのか、そして可動刃がどのような軌道で移動するのか、その際の案内チヤネルと可動刃の両側端との位置関係がどのようになっているのか、といった点が明確となるよう、意見書等で、可動刃が上昇して下降するまでの一連の動作状態を時系列的に図示するなどして具体的に説明されたい。

上記通知した拒絶の理由のうち、本審決関係部分は、要するに以下のとおりである。

(1)特許請求の範囲の請求項1の記載では、固定刃に対して遠近方向に直線的な単純な往復動を行うだけの駆動手段の二つの突起と、二つの突起が入り込むよう可動刃に形成された水平長孔と傾斜長孔とがどちらも遠近方向に対して垂直な方向に長く伸びていることとの関係が不明であり、また、駆動手段の具体的構造及び駆動手段と突起とがどのように結合されているのかが不明確であるから、請求項1に係る発明すなわち特許を受けようとする発明が明確でない。(拒絶の理由(ア) 特許法第36条第6項第2号)

(2)本願明細書の段落【0026】?【0027】の記載では、具体的に駆動手段がどのような軌道で移動するのか、そして可動刃がどのような軌道で移動するのか、その際の案内チヤネルと可動刃の両側端との位置関係がどのようになっているのかが不明確である。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない。(拒絶の理由(オ) 特許法第36条第4項)

4.当審の判断
(1)請求項1の記載について
本願請求項1には「該固定刃に対する遠近方向に移動する二つの突起を有する駆動手段」、「背面両側に可動刃案内チャネルを有し、切断機ケースに着脱可能に取り付けられるフレーム」、「前記フレームの背面に取り付けられる前記固定刃」、「前記フレームの背面側に、前記固定刃と対向するように配される前記可動刃」、「前記可動刃には、前記駆動手段の前記二つの突起のうちの一方の突起が入り込み、前記遠近方向に対して垂直な方向に長い水平長孔と、該水平長孔に対して該垂直な方向に並び、前記二つの突起のうちの他方の突起が入り込み、前記遠近方向に伸びつつ該垂直な方向にも伸びている傾斜長孔が形成されている」との記載がある。
上記本願請求項1の記載では、フレームの背面両側の可動刃案内チャネルの具体的形状・構造及び可動刃案内チャネルに案内される可動刃の具体的形状・構造が不明であり、そのため、フレームの背面側に固定刃と対向するように配される可動刃が、どのようにフレームの背面両側の可動刃案内チャネルと接しているのか、また、可動刃案内チャネルが可動刃をどのように案内しているのかが不明である。
その結果、上記本願請求項1の記載からでは、固定刃に対して単に遠近方向に移動するだけの駆動手段の二つの突起と、二つの突起が入り込むよう可動刃に形成された水平長孔と傾斜長孔との関係によって、可動刃にどのような動作を与えることになるのかを把握することができない。

審判請求人は平成20年3月12日付け意見書において、概略、本発明では、一方の長孔(水平長孔)が固定刃と可動刃との遠近方向に対して垂直な方向に伸び、他方の長孔(傾斜長孔)が該遠近方向に伸びつつ該垂直な方向にも伸びていることにより、添付の参考図に示すように、可動刃30は、固定刃に対して、遠近方向である上下方向V、遠近方向に対して垂直な横方向H、回転方向Rに移動する旨を述べ、その理由として、参考図(a)に示すように、最下部に位置している駆動手段の二つの突起部6a,6aが上昇すると、参考図(b)に示すように、可動刃30の水平長孔31が形成されている側は、この水平長孔31に対して突起6aが相対的に上昇することができない関係であるため、ほぼ突起6aの上昇分だけ上昇する一方、可動刃30の傾斜長孔32が形成されている側は、この傾斜長孔32に対して突起6aが相対的に上昇することができる関係であるため、その上昇量が突起6aの上昇分より少なくなり、この結果、可動刃30は、二つの突起部6a,6aの上昇により、上昇しつつ傾斜するものであり、また、突起6aに対して傾斜長孔32が相対的に横方向に移動するため、可動刃30は、突起6a,6aの上昇により、横方向にも移動するものであると主張する。
しかしながら、可動刃は重力によって常に鉛直方向下方に付勢されているのであるから、仮に、可動刃案内チャネルが可動刃の両側方に対して離間している場合には、可動刃は、二つの突起のいずれかが水平長孔あるいは傾斜長孔の一端に接した状態となるか、あるいは、可動刃の側方の一端が可動刃案内チャネルの一方に接した状態となるまで重力によって下降しつつ側方に移動し、その状態が可動刃の初期状態の姿勢となるから、その後に固定刃に対して単に遠近方向に移動するだけの駆動手段の二つの突起により可動刃を動作させれば、可動刃は二つの突起のいずれかが水平長孔と傾斜長孔の端に接した初期状態の姿勢を維持したまま、固定刃に対して単に遠近方向に移動するだけとなり、上記請求人が主張するような「上昇しつつ傾斜する」という動きは生じ得ない。
また、平成20年3月12日付け意見書の【参考図】では、可動刃の形状が略長方形の如く示されているが、仮に、略長方形の形状を有する可動刃に対して略直線状の可動刃案内チャネルが可動刃の両側方に対して接するよう案内している場合には、可動刃はいずれの側方にも移動不可能となるから、そのような状態で固定刃に対して単に遠近方向に移動するだけの駆動手段の二つの突起により可動刃を動作させれば、可動刃は二つの突起のいずれかが水平長孔あるいは傾斜長孔のどこかに接した状態で、固定刃に対して単に遠近方向に移動するだけとなる。
そうすると、可動刃案内チャネル及び可動刃の具体的形状・構造が不明であり、可動刃がどのように可動刃案内チャネルと接しているのか、また、可動刃案内チャネルが可動刃をどのように案内しているのかが不明である上記本願請求項1の記載事項のみから、直ちに上記審判請求人が主張するような可動刃の動きが常に生じるということはできない。
したがって、本願請求項1の記載からでは、二つの突起と、水平長孔と傾斜長孔との関係によって、可動刃にどのような動作を与えることになるのかを把握することができず、本願請求項1の記載事項がいかなる技術的事項を意味するのかを理解することができないから、請求項1に係る発明すなわち特許を受けようとする発明は明確でない。

(2)発明の詳細な説明について
本願明細書の段落0026には、「駆動手段6が上昇すると、固定突起6aが、水平長孔31及び傾斜長孔32に掛かって上昇する。可動刃30は、水平長孔31が形成された方が先に上昇し、傾斜長孔32が形成された方が引き続き上昇するようになり、傾斜した状態で固定刃20に接触する」と記載され、段落0027には、「上昇する可動刃30は、案内チヤネル12に案内されながら上部に移動するので円滑に移動するのであり、所定の傾斜角が維持された状態で上昇する」と記載されている。
しかしながら、ここに記載された事象を生じせしめるために、可動刃案内チャネルがどのような具体的形状・構造を有しているのか、また、可動刃案内チャネルに案内される可動刃がどのような具体的形状・構造を有しているのか、そして、可動刃がどのような軌道で移動するのか、そのために可動刃案内チャネルが可動刃をどのような接触状態となるように案内しているのかについては、本願明細書の他の記載及び図面を参照しても不明である。例えば、図2、図4では、可動刃案内チャネルと可動刃との接触状態や案内機構が不明であるとともに、可動刃がどのような軌道で移動するのかについても不明である。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面は、段落0026に記載の「可動刃30は、水平長孔31が形成された方が先に上昇し、傾斜長孔32が形成された方が引き続き上昇するようになり、傾斜した状態で固定刃20に接触する。」及び段落0027に記載の「上昇する可動刃30は、案内チヤネル12に案内されながら上部に移動するので円滑に移動するのであり、所定の傾斜角が維持された状態で上昇する」について、当該動作を実現するための具体的構成を開示しておらず、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない。

審判請求人は上記案内チャネル及び可動刃の具体的形状・構造、並びに、可動刃がどのような軌道で移動するのか、そのために可動刃案内チャネルが可動刃をどのような接触状態となるように案内しているのかについて、平成20年5月19日付け技術説明書において参考図1?3を示して、二つの突起の上下方向への移動に伴い、可動刃30が上下方向へ移動しつつ、その傾きが変わることを主張する。
しかしながら、上記した可動刃の動作を実現するためには、当該参考図1?3に示された案内チャネル及び可動刃の具体的形状・構造並びに可動刃案内チャネルと可動刃との接触状態や案内構造が必要と解されるところ、そのような構成は、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面に一切記載されておらず、また、当該参考図1?3に示された案内チャネル及び可動刃の具体的形状・構造並びに可動刃案内チャネルと可動刃との接触状態や案内構造が当業者にとって自明な事項であるとも認められない。

なお、上記した記載不備に関して、審判合議体は面接等により不備内容についての具体的な指摘を行うとともに、上記動作を実現するための具体的構成が、本願明細書及び図面のどの記載事項に基づいて想起し得るのか、あるいはどのような技術常識(例えば、機構学などの機械技術における基礎的な学術文献等の記載事項)によって想起し得るのか、といった点について、前記1.のとおり、審判請求人の主張を裏付ける根拠となる資料の提出を再三にわたって求めたが、そのような資料は提出されなかった。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は特許法第36条第6項2号及び第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件出願のその余の拒絶の理由について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-12 
出願番号 特願2003-36272(P2003-36272)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B26D)
P 1 8・ 537- WZ (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 槻木澤 昌司
豊原 邦雄
発明の名称 ロールテープ自動切断機のテープ切断装置  
代理人 三品 岩男  

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