• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A41H
管理番号 1189886
審判番号 無効2007-800144  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-07-25 
確定日 2009-01-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3692084号発明「衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.特許出願:平成14年2月13日
2.特許権設定の登録:平成17年6月24日
3.特許掲載公報び発行:平成17年9月7日
4.荒井通雄(以下、「請求人」という。)による本件無効審判の請求
:平成19年7月25日
5.特許権者:マルコ株式会社(以下、「被請求人」という。)に対する請 求書の副本の送達:平成19年8月15日
なお、被請求人に期間を指定して答弁を求めたが、期間を経過しても何 らの応答もなされなかった。
6.藤熊芳江(以下「参加人」という。)による被請求人側への参加申請書 の提出:平成19年11月12日
7.請求人、被請求人に対する参加申請書副本の送達
:平成19年11月29日発送
8.参加許否の決定(参加の申請の許可):平成20年1月11日発送
9.参加人による上申書の提出:平成20年1月16日
10.請求人、被請求人に対する上記8の上申書副本の送付
:平成20年1月25日発送
11.請求人による口頭審理陳述要領書の提出、被請求人による口頭審理陳 述要領書1及び2の提出、及び口頭審理の実施:平成20年3月6日
なお、被請求人側に口頭審理への出頭を求めたが何人も出頭しなかった。

第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1ないし12という。)は、登録時の明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで、該ヒップカップ計測手段は、前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ、前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項2】
前記ヒップ部の切り込みの内端位置は、ヒップトップの高さよりも下としたことを特徴とする請求項1記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項3】
身頃のウエスト部にウエストサイズを調節可能なウエスト計測手段を設けた請求項1又は2記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで、該ウエスト計測手段は、前記ウエスト部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でウエストサイズ調節可能とされ、前記一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項4】
身頃の脚囲部にその下端の脚口サイズを調節可能な脚口計測手段を設けた請求項1?3の
いずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで、該脚口計測手段は、前記脚囲部が脚口から略縦方向に切り込みを入れて分割され、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で脚口サイズ調節可能とされ、前記一片の他片との連結位置に脚口サイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項5】
前記脚口計測手段は、前記ヒップカップ計測手段と連続して形成されたことを特徴とする請求項4記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項6】
身頃の胴部に胴部サイズを調節可能な胴部計測手段を設けた請求項1?5のいずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで、該胴部計測手段は、前記胴部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で胴部サイズ調節可能とされ、前記一片の他片との連結位置に胴部サイズ計測用の目盛りが記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載のボトム計測サンプルに、カップ部を有するトップが付設されたオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項8】
前記トップは、前記ボトム計測サンプルに着脱可能に付設された請求項7記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項9】
前記トップは、バージスサイズを変えた複数のカップ受部と、1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり、カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項10】
前記トップは、バージスサイズを変えた複数のカップ受部と、1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と、一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部との組み合わせからなり、カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項11】
前記衣類が体型補正機能を有する衣類である請求項1?10のいずれかに記載のオーダーメイド用計測サンプル。
【請求項12】
ヒップサイズを変えた請求項1?11のいずれかに記載の計測サンプルを複数用意し、着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択して着用させ、カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式。」

第3 請求人の主張
1.請求の趣旨
請求人、上記第1、4の審判請求書において、
「特許第3692084号発明の請求項1ないし12に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、概略、次のように主張している。
本件特許発明1ないし12は、証拠方法に示す、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。
甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1号証発明」という。)には、「略半球形の腹部を包む部分について、上部から中央部に向かってV字状に切り込みを入れ、分割された一片と他片とが連結部材を解して着脱可能とされ、それにより調節を可能とし、体型に合わせて引き締めること」が開示されている。
すなわち、甲第1号証では、左右の前身頃(8a、8b)の間に切り込みを入れることにより、略半球形状について着脱自在に止着可能でサイズの調節が可能な技術が開示されている。
たしかに、左右の後身頃(9a、9b)について切り込みを設けることは直接記載されていない。
しかしながら、平面である型紙に沿って切り抜いた布地を縫製することにより立体形状である衣服を作成する場合において、例えば袖部材における肩部分を縫製する場合に、端部から中央部に向けて切り込みを入れて球形状を形成することは、当業者にとって広く知られた事項である。特に、衣服を形成するにあたり、球形状の部分を形成する場合、
(1)円弧状等を含む複数のパーツに生地を裁断して、これらのパーツを縫製する方法。
(2)熱や圧力を加えて整形するモールド加工により球形状に加工する方法。
(3)切り込みを入れて縫製する方法。
の3方法が通常行なわれている。
そして、装着者それぞれの体型に合わせた形状を形成する場合、切り込みを入れて縫製する方法が採用されることは、当業者が当然に採用し得る技術であるといえる。
すなわち、端部から中央部に向けて切り込みを入れて球形状を形成する技術を、球形状部分であるヒップカップ部分に適合させるために適用することは、甲第1号証に記載される発明を勘案すれば、当業者にとって容易に想到し得たことと認められる。そして、ヒップカップを調整するためにかかる技術を使用することについて、ヒップカップ以外の他の身体の球形状部分に適用することに比べ、有利な効果や技術的意義を有するものとは認められない。
また、ガードルは人体の装着するものであるから、略半球形状のヒップ部を覆うばかりではなく、脚口が当然に付けられているものである。
この場合、切れ込みを入れる部分は、ウエスト部から中央部に向かうか、股口から中央部に向かうかとなる。
ここで、略半球状の形状を作成するにあたり、球状の中央部に向かって切り込みを入れる場合には、中央部に近い部分から切り込みを入れることは、当業者にとって当然に選択されることである。
そして、人間の臀部は股口から除々に球形に形成されていることを考慮すれば、甲第1号証に記載される発明が、ウエスト部から除々に球形に形成された腹部に対応すべくウエスト部から切れ込みを入れていることからみても、股口から切り込みをいれることは、当業者にとって必要に応じて適宜なし得る程度の設計事項である。
以上により、ヒップカップを形成するにあたり、ヒップカップ部の股口から中央部に向かって切り込みを入れ、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱可能とすることは、甲第1号証に記載される発明から当業者が容易に想到し得るものであるといえる。

2.証拠方法
請求人は上記主張を立証するため、次の証拠方法を提出している。
(1)甲第1号証;特開2000-135233号公報
(2)甲第2号証;特表平9-504636号公報
(3)甲第3号証;特開平7-316909号公報
(4)甲第4号証;特開平8-158111号公報
(5)甲第5号証:「Dubuleve’(デューブルベ)」と称する株式 会社ワコールのセミオーダーシステムに関するカタログ
(6)甲第6号証;特開2000-64104号公報
(7)甲第7号証;「手作りランジェリー」レディブティックシリーズ通巻 1404号

第4 被請求人の主張
被請求人は、上述のとおり、審判請求書に対する答弁書を提出しておらず、また、口頭審理にも出頭せず、請求人の主張に対し、何ら反論をしていない。

第5 参加人の主張
参加人は、上申書において、「本件審判請求はいずれも成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上申書及び口頭審理陳述要領書1、2を総合すると概略次のとおり主張している。

本件特許発明は、ヒップカップサイズの調節を可能とするものであり、【図2】(本件特許発明のボトム計測サンプルを示す背面図)では左右の後身頃にそれぞれヒップカップ計測手段(9)が設けられていることから、左右それぞれのヒップカップのサイズ調節が行われているものである。
これに対し、甲第1号証発明は、段落【0051】において「腸骨の本来の回動方向とベルトによる引き締め方向との間にずれが生じることなく、正常な骨盤矯正効果を得ることができる」とあるように、骨盤の矯正を目的とするものである。骨盤の矯正は、骨盤を全体として引き締めて初めて効果が得られることは周知であり、ヒップの左右で異なる矯正を施したのでは左右のズレを増長することになりかねないから、左右の後身頃に別々に調節部を設けることは、甲第1号証において示唆されていると解釈する余地もない。
よって、甲第1号証には、左右の後身頃に切り込みを設けることは何ら記載されていない。
従来、パンティガードルにおいてサイズを構成するのは、ウェスト部の周径方向の長さ(ウェストサイズ)とヒップトップ部の周径方向の長さ(ヒップトップサイズ)である。オーダーメイド商品の場合でも、採寸を行うのはこの2点のサイズであり、これと独立してヒップカップサイズの計測をすることはない。女性のヒップの丸みに対する対応手段としては、素材自体の伸縮性を利用したり、ヒップ部の生地に若干のゆとりを持たせて縫製することによりある程度の幅のヒップ形状に対応できるようにしたりしているのが従来技術である。
これに対して、本件特許発明においては、ヒップカップ部に切り込みを入れ、この部分にサイズ調節機能と採寸用の目盛を設けることにより、着用者個々のヒップカップ形状の際にまで対応できるようにしたものである。このように、切り込みによりヒップカップサイズを調節することの意義は、従来技術ではなしえなかった着用者個々のヒップカップ形状に適合するパンティガードルの製造を可能とする計測サンプルを提供する点にあり、従来存在しなかった顕著な作用効果を発揮するものである。そして、このような技術思想は、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも示唆されていないものである。
仮に当業者が、甲第1号証発明のV字状切り込みを、ヒップカップサイズの調節に転用することに思い至ったとしても、切り込みを、股口からそれぞれのヒップカップ部の略中央に掛けてのものとすることは容易想到ではない。
甲第1号証発明は、あくまでも骨盤の矯正を目的とするものであるところ、人体における骨盤の位置からして、ウェスト部に近い部分を締め付けなければ骨盤矯正の効果が得られないことは常識である。とすれば、甲第1号証を前提とする限り、当該V字状切り込みをヒップカップサイズ調節に転用するとしても、当該サイズ調節部は必然的にウェスト部に設けることにならざるを得ないのである。
また、特に本件特許発明のように体型補整を目的とする場合、ヒップのうち着用者がもっとも補整をしたいと欲する部分はヒップトップから脚口に掛けてのヒップ下部であるが、ヒップカップサイズ調節部を股口からヒップカップの略中央に掛けて設けることにより、このヒップ下部の締め付け具合を調節することができるようになり、着用者の体型や好みに応じたヒップ補整が可能となる。このように、股口からヒップカップの略中央部に掛けて切り込みを入れることにより、体型補整の点で、他の部分に同機の切り込みを設ける場合には見られない顕著な効果が生じるものであり、立体構成上の利点がある。
甲第1号証発明はあくまでも矯正用のパンティガードルであり、装着者の身体特徴に合わせて調整可能な、製品として完結するパンティガードルとはいえないことは明らかである。
また、仮に甲第1号号証を製品として完結するパンティガードルと解したとしても、オーダーメイド用ボトム計測サンプルとするためには、それ自体が計測手段を備えていなければならない。
しかし、完成品のパンティガードルではそのような計測を行うことは不可能であり、着用者の体型変化が生じた場合には全く対応できないことは明白である。
よって、甲第1号証を製品として完結するパンティガードルと解したとしても、これをオーダーメイド用ボトム計測サンプルに転調することは容易想到ではない。

第6 当審の判断
1.甲第1号証に記載された発明
特開2000-135233号公報(以下「甲第1号証」という。)には、ブラジャーに関し、図面とともに次のように記載されている。
(a)「【0006】本発明は、従来のパンティーガードルが有している上記のような問題点に鑑み、骨盤における左右の腸骨をその本来の回動方向に向かって引き締めることができ、正常な骨盤矯正作用が得られるようにするとともに、腰部の筋肉の弛みをとることができ、しかも腰まわりの長さを調節しうるようにしたパンティーガードルを提供することを目的としている。」
(b)「【0031】ベルト(13)は、その左端部近傍のみが左前身頃(8a)に縫着されている。(13a)は、その縫着部である。結合手段(14)は、図3に示すように、ベルト(13)の右端に設けられた複数個(1個としてもよい)のフック(15)と、このフック(15)の個数と同数のものを1段として、複数段(この例では3段)をベルト(13)の長手方向に並べてベルト(13)の左端部に設けられ、かつフック(15)が選択的に係合しうるようにしたリング状の受け(16)とからなるものとし、ベルト(13)の実効長を調節できるようにしている。」(段落【0031】)
(c)「【0037】・・・ベルト(13)より幅広とした同様のベルト(20)を、全長に亘って、前身頃(8a)(8b)及び後身頃(9a)(9b)の内面に縫着するとともに、左右の前身頃(8a)(8b)の間で開閉しうる前開きとし、その左右の前身頃(8a)(8b)のいずれか一方に上記と同様の複数のフック(15)を設け、かつ他方に、このフック(15)の個数と同数のものを1段として、複数段(この例では4段)のリング状の受け(16)をほぼベルト(20)の長手方向に並ぶようにして設け、上記フック(15)をいずれかの段の受け(16)に選択的に係合することにより、前面の開口部を閉じるとともに、ベルト(20)の実効長を調節できるようにしている。すなわち、この実施形態においても、フック(15)と受け(16)とが、間接的にベルト(20)の結合手段(14)となっている。・・・」(段落【0037】)
(d)「【0039】・・・フック(15)に係合する複数段の受け(16)の列を、下方に向かって収束するほぼV字状の配置とし、パンティー部(1)の上部を体形に合わせて引き締めることができるようにしている。」(段落【0039】)
(e)「【0051】
【発明の効果】
請求項1及び6?8記載の発明によると、ベルトの両端部がパンティー部の前面において内下方に向かって延出し、着用者の骨盤における左右の腸骨を、その本来の回動方向に向かって引き締めることができるので、腸骨の本来の回動方向とベルトによる引き締め方向との間にずれが生じることがなく、正常な骨盤矯正効果を得ることができるとともに、腹部の筋肉の弛みをとることができる。
すなわち、腸骨の本来の回動方向とベルトによる引き締め方向との間のずれにより、腸骨と仙骨その他の骨(図示略)との連結部にストレスが生じ、矯正効果に悪影響を及ぼすといったことがない。」
(f)【図6】には、前身頃が、パンティー部上端の前面中央部(臍近傍)から下方に向けて切り込みを入れて前身頃(8a)と前身頃(8b)とにV字状に分割され、一方の前身頃(8b)に複数個のフック(15)、他方の前身頃(8a)に、フック(15)と同数の受け(16)が複数段配置されている態様が図示されており、着用者に合わせ、複数のフック(15)と係合する受け(16)の段を選択することにより、前身頃(8a)と前身頃(8b)の重ね合わせ量を調節することが示されている。

したがって、以上の記載及び各図の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されているものと認められる。
「左右の前身頃に両者の重ね合わせ量を調節可能な調節手段を設けたパンティーガードルで、該調節手段は、パンティー部上端の前面中央部から下方に向かって切り込みを入れてV字状に分割され、分割された前身頃(8a)と前身頃(8b)とが、一方に設けた複数個のフック(15)と、他方に設けた、フック(15)と同数の段を複数備えた受け(16)を介して着脱自在に止着可能で、複数個のフック(15)と止着する受け(16)の段を選択することにより、両前身頃(8a、8b)の重ね合わせ量を調節可能とされるパンティーガードル。」

(2)甲第2号証に記載された技術的事項
特表平9-504636号公報(以下「甲第2号証」という。)には、注文服の製造に関し、図面とともに次のように記載されている。
(a)「この発明は、一般的に、注文仕立により身体に合うように作られる衣服の注文製造に関し、より具体的には、多くの試着用衣服とシステムを用いて注文仕様の衣服を製造する装置及び方法に関する。」(14頁技術分野1-3行)
(b)「望ましい実施例において、試着服(10)は、それら寸法のサイズ変化に応じて、棚(20)の中に保存される。例えば、婦人用ズボンの場合、ウエストサイズ24の試着服(10)は、棚(20)の第1カラムの中に入れられ、各区画部(30)では同じヒップサイズの試着服が5着収容される。ヒップサイズは、5着の試着服(10)が入れられた各区画部(30)毎に1インチずつ大きくなっている。区画室(30)の中には、ウエストとヒップが特定の組合せの試着服(10)が5着ずつ収容されており、各試着服の股上の寸法値は、夫々異なっている。」(20頁16-22行)
(c)「本発明の方法及び装置によれば、顧客は試着服(10)を選択し、サイズ合わせした情報を店員に報告し、システム(40)の中に入力される。もし最初の選択したものが顧客の要望に合わない場合、システム(40)は、顧客のサイズ合わせ情報に応じて次の試着服(10)を試すように奨める。」(20頁28行-21頁2行)

(3)甲第3号証に記載された技術的事項
特開平7-316909号公報(以下「甲第3号証」という。)、体型把握用洋服に関し、図面とともに次のように記載されている。
(a)「衿なし洋服の左右の前身頃(1)と左右の後身頃(2)の複数箇所に生地を重ねた縫合部(3.4.5.6.8.9.10)を設けて分断し、肩の縫合部(7)と袖の縫合部(11.12)も生地を重ねて分断し、その各分断箇所に目盛部(13.14.15.16.17.18.19.20.21)を設けたことを特徴とする技術。」(2頁【0004】1-7行)
(b)「本発明は上記のように構成されているので採寸時に体型把握用洋服を試着することによって各人の体型の厚み、反り、前かがみ、肩の上り、下がり、肩の左右の勾配の違いなどをそれぞれの縫合部の合わせを浅くしたり深くしたりすることによって服地を無理なく身体に添わせることができ、分断箇所に設けてある目盛で分断箇所の開き具合の採寸も同時に容易に行うことができる。」(2頁【0005】1-8行)
(c)「上半身の体型に服地を添わせてそれぞれの縫合部で調整し採寸を行う。各縫合部に接着具(マジックテープ等)を設ければ、待ち針、しつけ縫いを必要としない。」(2頁【0006】26-28行)

(4)甲第4号証に記載された技術的事項
特開平8-158111号公報(以下「甲第4号証」という。)、ファウンデーション、すなわちブラジャーに関し、図面とともに次のように記載されている。
(a)「バストを収容するカップ部及びこのカップ部の周縁に形成されたカップ止着部を有する一対のカップ部材と、上記各カップ部材の形状に略々適合する一対のカップ用凹部及びこれら各カップ用凹部の周縁に形成されて上記各カップ部材のカップ止着部が係脱可能に係着する一対のカップ係着部を有し、上記一対のカップ部材を身体胸部に装着する装着手段とを具備することを特徴とするファウンデーション。」(請求項1)
(b)「上記カップ部については、その形状、サイズ、材質等に制限されるものではないので従来公知のものをそのまま採用してもよいが、好ましくは、カップ部の外形が同じで肉厚が異なって収容できるバストのサイズが異なるもの等を各バストサイズ毎に設けるのが望ましい。」(2頁【0009】1-6行)
(c)「上記カップ係着部は、カップ部の周縁と適合するカップ用凹部の周縁に設けられ、上記カップ止着部を係止できるものであると共に、肌に直接触れる場合があるから肌触りの良い柔軟性のあるものであればよく、例えば、表面に多数の柔軟パイルを有するテープを上記カップ用凹部の周縁全体に設ければよい。また、上記柔軟パイルとしては、例えば、ベルベットファスナーの雌ファスナーや、ポリエステル製、ナイロン製、綿製等の起毛パイルで形成された縁取りテープ、更にはフィルムファスナーと称される面状ファスナー等を挙げることができ、肌触りやカップ止着部との固着性の観点からパイル高さ1?5mm程度の起毛パイル製の縁取りテープが好ましい。」(2頁【0011】1-13行)
(d)「左右のカップ部のサイズは、それぞれ対応するバストのサイズに合ったものを各々選ぶことができるので、各カップ部と各バストとの間の隙間を無くすことができ、左右両方のカップ部を左右両方のバストにフィットさせることができる。」(4頁【0025】1-5行)
(e)「このブラジャーB1は、基本的には、バストを収容するカップ部2a及びそのカップ部の周縁に形成されたカップ止着部2bからなる一対のカップ部材2と、上記各カップ部2aの周縁と適合する一対のカップ用凹部1a及びそのカップ用凹部1aの周縁に形成されたカップ係着部1bを有し、上記カップ部2aを身体胸部に装着する装着手段1とで構成されている。」(4頁【0028】3-10行)
(f)「着用者は、アンダーバストにあわせて装着手段1を選択し、右バストに合ったカップ部を有するカップ部材2を選択し、左バストに合ったカップ部を有するカップ部材2を選択した後、カップ部材のカップ止着部2b、2bをそれぞれ装着手段のカップ係着部1b、1bに係止することで、右バスト、左バスト、アンダーバスト全てにフィットするファウンデーションを着用することができる。」(4頁【0030】1-8行)
6頁【図2】には、装着手段1、カップ用凹部1a、カップ係着部1b、カップ部2a、カップ止着部2bの図が示され、装着手段1にカップ部2aを装着する図が記載されている。

(5)甲第5号証に記された技術的事項
「Dubuleve’(デューブルベ)」と称する株式会社ワコールのセミオーダーシステムに関するカタログ(以下「甲第2号証」という。)は、1頁目の下端に「カタログ有効期間:2000年8月1日?2001年1月31日」と記載されていることから、遅くとも本願出願日である平成13年(2001年)1月16日以前に頒布された刊行物ということができる。
そして、甲第2号証2頁目の右欄には、ブラジャーのセミオーダーシステムに関連して次のように記載されている。
(a)「本来ブラの役割は、バストラインを美しくととのえて下垂を防ぐこと。」
(b)「しかも、トップとアンダーだけの採寸だけでなく、オリジナル測定器(バージスメジャー)でバストの底面周径サイズ(バージスサイズ)の測定や、ゲージブラでのフィット感の確認等を行ったうえで、コンサルタントがブラの「フィット診断」を行い、全1248サイズのブラの中から最適なブラをご提案。」

(6)甲第6号証に記載された技術的事項
特開2000-64104号公報(以下「甲第6号証」という。)、には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「図示の通り、左右一対の乳房を覆うカップ部1L,Rは下カップ布11L,Rと上カップ布12L,Rをそれぞれ縫着して形成されており、下カップ布11L,Rのそれぞれの下縁湾曲部(下方の湾曲した縁部)には、半円弧状のワイヤ2L,R(図2参照)が縫い込まれたカップワイヤー部21L,Rが縫着されている。このワイヤ2L,Rは、形状記憶合金などの金属や剛性のあるプラスチック等で成形されており、乳房のパージスラインに好適にフィットする形状をなしている。」(4頁【0041】1-10行)

(7)甲第7号証に記載された技術的事項
「手作りランジェリー」レディブティックシリーズ通巻1404号(以下「甲第7号証」という。)は、本願出願日前の1999年3月20日発行された刊行物であり、その第52頁、第53頁のイラストには、ブラジャーが胸布A、B(カップ部に相当)と、胸布A、Bと組み合わされるベルトA(カップ受け部に相当)及びベルトAと連結されるベルトB(バック部に相当)で構成することが図示されている。

2.本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲第1号証発明との対比
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、甲第1号証発明の左右の前身頃(8a、8b)も、切り込みを入れて分割されたものであり、連結部材である複数個のフック(15)及びこのフック(15)と同数の段を複数備えた受け(16)により着脱自在に止着可能でサイズ調整可能なものとといえる。
そして、甲第1号証発明の「パンティーガードル」と本件特許発明1の「オーダーメイド用ボトム計測サンプル」とは、「ボトム」の限りで一致するから、本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「身頃を調節可能なボトムで、身頃が切り込みを入れて分割され、分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でサイズ調整可能なボトム。」
〈相違点〉
本件特許発明1は、身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルであって、ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割されており、一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されているのに対し、甲第1号証発明は、前身頃がパンティー部上端の前面中央部から下方に向かって切り込みを入れてV字状に分割されており、両前身頃(8a、8b)の重ね合わせ量を調節可能としたパンティーガードルである点。

(2)相違点についての検討及び判断
本件特許発明1の相違点に係る構成の技術的意義について検討する。
本件明細書の段落【0002】?【0008】、段落【0017】?【0020】に、本件特許発明1の目的、作用効果に関連して次のように記載されている。
「【0002】
【従来の技術】
ガードル等のフィット性及び/又は体型補正機能のある衣類は、様々な型の既製品が市販されており、着用者はその中から目的に応じて体型に合うものを購入する。ガードルは、前身、後身、股下部及び必要に応じて股口に連設される脚囲部を備えており、ヒップ部頂部の周長であるヒップサイズ、ヒップ部の膨らみ具合であるヒップカップサイズ及びウエストの最もくびれた部分の周長であるウエストサイズが重要である。
【0003】
しかし、上記サイズのすべてを組み合わせたガードルを用意するのは、膨大な数となってコストがかかってしまう。そのため、市販されている既製品はほぼ標準体型のサイズのものとなってしまい、着用者が完全に体型に合ったものを見つけるのは難しいものとなっていた。
【0004】
体型に合わず、身体に適度にフィットしないものを着用してしまうと体型補正機能等の目的を達成できないばかりか、適度なフィット感が得られず不快感を感じてしまう。特に、きつすぎる場合には圧迫により苦痛を感じ、血流が悪くなる等して、身体に悪影響が及ぼされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、幾種類か標準サイズのガードルを予め用意しておき、カスタムサイズに修正する方式が採用されている。すなわち、複数の標準サイズのものから着用者の体型に近似したサイズのものを選び、試着させる。そして、サイズが大きくて合わない部分がある場合は、その部分をつまみ、つまみの長さを計測し、その分だけ小さくなるように修正していた。
【0006】
しかしながら、標準サイズからカスタムサイズに修正するためには熟練した技術を要し、修正ミスが起こりやすい難点があった。また、着用者が仕上り製品の正確な着用感をあらかじめ疑似体験できないという難点があった。さらに、サンプルのサイズが小さい場合には、どの程度小さいのかが実際に計測できないため、勘が頼りとなってしまい、正確に修正するのは困難であった。
【0007】
そこで、仕上がり状態と寸法的に同様な計測用サンプルを試着して実際の着用感を体感でき、また体形補正を目的として、あるいは着用者の好みに合わせて細かい寸法調整のできる衣類のオーダーメイド方式が望まれていた。
【0008】
本発明の目的とするところは、着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。また、着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ、そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする。」
「【0017】
そこで、本発明は、後身のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたボトム計測サンプルを提供するものである。この構成によると、ボトム計測サンプルを顧客の身体に当ててヒップカップサイズを顧客のヒップカップサイズに調節できる。したがって、カスタムサイズのヒップカップサイズを有するボトム計測サンプルを試着させることができ、同時にその調節されたヒップカップサイズを計測することができる。
【0018】
ここで、ヒップカップサイズとは、(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)で表され、脚の付根の水平方向における周長が短い程、ヒップの膨らみの具合は大きくなり、ヒップカップサイズは大きくなる。また、ヒップ部とは、後身のうち左右一対のヒップカップ部と、その間の臀裂部とを含む概念であり、ヒップカップ部とは、臀部の膨らみを包み込む部位を意味する。
【0019】
ヒップカップ計測手段は、ヒップカップサイズを調節する機能と、その調節量を計測する機能とを併せ持っている。ヒップカップサイズを調節する機能は、前身の下端縁、後身の下端縁及び股下部の側縁によって囲まれた股口のうち、後身の下端縁からヒップカップ部側に切り込みを入れて分割し、分割した一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とする態様で発現できる。また、身頃の股口の一部を錐形につまんで周方向に折返した折返部を形成し、この折返部を折返した側の股口に止着し、又は離反可能とする態様により、ヒップカップサイズを調節する機能を発揮できるようにしてもよい。この折返しの量を変えることにより、ヒップカップサイズを調節することができる。また、ヒップカップ調節量を計測する機能は、ウエスト計測手段と同様な構成によって発現される。
【0020】
また、切り込み(又は折返し)の内端位置は、ヒップトップの高さよりも下としたほうが好ましい。この位置をヒップトップの高さよりも高い位置とすると、ヒップカップサイズの調節時にヒップサイズまでもが変わってしまうからである。また、切り込み(又は折返し)は、ヒップカップ部の略中央に向かって形成すれば、ヒップカップ調節時にヒップカップのカップ形状が壊れにくいので好ましい。上記のヒップ計測手段は、ボトム計測サンプルにおいて、単独で、また、ウエスト計測手段と組み合わせて適用することができる。」

上記記載によれば、本件特許発明1は、ボトムのヒップ部が、股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割されており、着用者の股口において、分割された一片と他片を合わせることにより、ボトムの脚周りを着用者の脚の付根の水平方向における周長に合わせるとともに、ヒップカップ部の略中央側の切り込み端部を頂点とする円錐形が形成され、ヒップトップを頂点とした着用者のヒップ部に適合してヒップカップを形成し、一片の他片との連結位置に記されたヒップカップサイズ計測用の目盛により、ボトムをオーダーメイドで作製する際のサンプルを形成するものと解することできる。

これに対し、甲第1号証発明は、パンティー部の前面中央部から下腹部に向けて切り込みを入れてV字上に分割され、分割された前身頃(8a)と前身頃(8b)とが、一方に設けた複数個のフック(15)と、他方に設けた、フック(15)と同数の段を複数備えた受け(16)を介して着脱自在に止着可能になっており、複数個のフック(15)と止着する受け(16)の段を選択することにより、前身頃(8a)と前身頃(8b)の下端結合部、すなわち切り込み始端部を起点として、切り込み終端部に到る両者の重ね合わせ量を調節することが示されている。
しかしながら、甲第1号証の摘示事項(a)、(e)を参酌すれば、甲第1号証発明は、前身頃(8a)と前身頃(8b)の重ね合わせ量を調節することにより、着用者の骨盤における左右の腸骨を、その本来の回動方向に向かって引き締めることにより正常な骨盤矯正効果を得るとともに、腹部の筋肉の弛みを取ることをその技術的課題としているものである。
してみると、甲第1号証発明においては、前身頃(8a)と前身頃(8b)の重ね合わせ量を調節することにより、体型に応じて左右の腸骨に対する所望の引き締め作用を奏すればよいものであって、パンティーガードルの立体形状を、前身頃(8a)と前身頃(8b)の切り込み始端側から終端側にかけての着用者の身体の立体形状に合わせる必然性は何ら存在せず、現に、甲第1号証のいずれにも、前身頃(8a)と前身頃(8b)の切り込み始端を装着者の身体のどの部分に対応させるのかについて何ら記載されていない。
すなわち、甲第1号証は、切り込み終端側で周長を合わせるとともに、切り込み始端部を頂点とする円錐形を形成するという技術思想を何ら示唆するものではなく、ましてや、着用者の股口において、分割された一片と他片を合わせることにより、ボトムの脚周りを被計測者の脚の付根の水平方向における周長に合わせるとともに、ヒップカップ部の略中央側の切り込み端部を頂点とする円錐形を形成し、ヒップトップを頂点とした被計測者のヒップ部に適合してヒップカップを形成するという本件特許発明1の技術思想について、甲第1号証には何らの記載も示唆もなされていないというべきである。
そして、甲第1号証は、そもそも、分割された前身頃(8a)と前身頃(8b)とが、一方に設けた複数個のフック(15)と、他方に設けた、このフック(15)と同数の段を複数備えた受け(16)を介して着脱自在に止着可能とすることにより、1つのパンティーガードルにより、種々の着用者の体型に合わせ、前身頃(8a)と前身頃(8b)の重ね合わせ量を調節可能とするものであり、製品として完結したものといえ、これをパンティーガードルをオーダーメイドで作製する際のサンプルとする技術的背景や動機付けは何ら見当たらない。
したがって、甲第2号証、甲第3号証に、試着服、体型把握用洋服等の計測サンプルを用いて採寸することや、分断箇所に目盛を設けることが記載されているからといって、甲第1号証発明における前身頃(8a)と前身頃(8b)の連結位置に計測用の目盛を記すことが当業者が容易に想到し得ることとは到底いえない。
また、請求人が提出した甲第2号証ないし甲第7号証のいずれにも、本件特許発明1の相違点に係る構成や、上述した技術的意義について、何らの記載も示唆もなされていないし、請求人の主張を勘案してもこれらが本願出願前より周知の技術であるとの根拠も見いだせないから、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された技術的事項や周知技術をいかに組み合わせたとしても、本件特許発明1が、当業者にとって容易に想到し得るものであるということはできない。
以上のとおりであるから、本件特許発明1を、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号ないし甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が特許出願前に容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本件特許発明2ないし12について
本件明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし12をみてみると、請求項2は請求項1を引用する従属項であり、以下同様に、請求項3は請求項1又は2を、請求項4は請求項1ないし3を、請求項5は請求項4を、請求項6は請求項1ないし5を、請求項7は請求項1ないし6を、請求項8は請求項7を、請求項9及び請求項10は請求項7又は8を、請求項11は請求項1ないし10を、そして、請求項12は請求項1ないし11を引用する従属項である。
そうすると、請求項2ないし12は、いずれも請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項のすべてを含み、さらに新たな構成を発明を特定するために必要な事項として付加したものに相当する。
したがって、上記のとおり、本件特許発明1が、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号ないし甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者がその本願出願前に容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明1の構成をすべて含む本件特許発明2ないし12が、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえないことは検討するまでもないことである。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1ないし12は、いずれも本件出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1ないし12についての特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。
また、他に本件特許発明1ないし12を無効とすべき理由も見当たらない。
なお、審判に関する費用の負担については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条により請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-15 
結審通知日 2008-04-23 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願2002-34888(P2002-34888)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A41H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 寺本 光生
松縄 正登
登録日 2005-06-24 
登録番号 特許第3692084号(P3692084)
発明の名称 衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式  
代理人 小原 順子  
代理人 佐藤 久容  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 飯島 歩  
代理人 東野 修次  
代理人 後藤 誠司  
復代理人 登山 桂子  
代理人 横井 知理  
代理人 大島 泰甫  
代理人 中山 務  
代理人 栗山 貴行  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ