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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1189923
審判番号 不服2005-11387  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-16 
確定日 2008-12-25 
事件の表示 特願2000-190864「竪型射出成形機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月8日出願公開、特開2002-1757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年6月26日に特許出願されたものであり,平成16年3月8日付けで拒絶理由が通知され,その指定期間内である同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出され,同年6月28日付けで拒絶理由が通知され,その指定期間内である同年8月30日に意見書及び手続補正書が提出され,平成17年4月28日付けで拒絶査定がされたところ,同年6月16日に審判が請求され,同年7月19日に手続補正書及び手続補正書(方式)が提出されたものであって,更に,当審において,平成19年7月11日付けで審尋がされ,同年9月18日に回答書が提出され,次いで,平成20年2月15日付けで,平成17年7月19日付け手続補正書によりされた手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに,同日付けで拒絶理由が通知され,その指定期間内である同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、それぞれ、平成20年4月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されるとおりの事項を発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)とする、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 (a)フレームと、
(b)該フレームに対して回転自在に配設されたテーブルと、
(c)該テーブルに取り付けられた二つの下金型と、
(d)前記テーブルを回転させ、前記各下金型を型締位置及び操作位置に置く駆動手段と、
(e)前記フレームより上方において、進退自在に配設された上プラテンと、
(f)前記型締位置に置かれた下金型と対向させて前記上プラテンに取り付けられた上金型と、
(g)前記上プラテンを進退させ、型閉じ、型締め及び型開きを行う型締装置と、
(h)前記フレーム及びテーブルのうちの一方の回転方向における2箇所に,各下金型ごとに配設され、固定された第1の位置決め手段と、
(i)前記フレーム及びテーブルのうちの他方に、前記型締位置及び操作位置に置かれた下金型に対応させて配設され、固定され、前記第1の位置決め手段に当接させられることによって各下金型の位置決めを行う一つの第2の位置決め手段と、
(j)該第2の位置決め手段が第1の位置決め手段に当接する前、及び当接した後において前記駆動手段を駆動し続け、前記第2の位置決め手段を第1の位置決め手段に当接させ、当接させた状態を保持する駆動制御手段とを有することを特徴とする竪型射出成形機。
【請求項2】 駆動ギヤ及び従動ギヤから成り、前記駆動手段を駆動することによって発生させられた回転をテーブルに伝達する伝動機構を有する請求項1に記載の竪型射出成形機。」

3.当審が通知した拒絶理由の概要
本願発明1及び2は,その出願前日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というにある。
引用文献1: 実願昭63-586号(実開平1-106212号)のマイクロフィルム

4.本願発明1に対する拒絶理由通知の妥当性についての検討
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には,以下の記載がある。
ア: 「(1) 回転テ-ブル上に金型を設けた射出成形機において,回転テ-ブルに形成されたストツパと,該ストツパに対して係止,離脱可能なテ-ブル位置決めピンと,回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイツチとを有し,回転テ-ブルが停止位置に近付いた時に上記テ-ブル位置決めピンをストツパに係止させる手段と,上記近接スイツチのオンにより回転テ-ブルに低速の回転を与える手段を設けたことを特徴とする射出成形機テ-ブル回転による金型破損防止装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
イ: 「合成樹脂の射出成形機は,従来例えば第6図に示すような構造になっている。
図において,1は固定プラテンで,該プラテン1は架台2上に支持,固定されており,かつ複数本のタイバー3が摺動可能に貫通している。4は可動プラテンで,前記固定プラテン1の上部に位置するように複数本のタイバー3の一端に装着されている。5は型締め板で,前記固定プラテン1の下部に位置するように複数本のタイバー3の他端に,前記架台2内に収容されるように装着されている。6は回転テ-ブルで複数本のタイバー3のうちの1本に回転可能かつ,一定ストローク摺動可能に嵌入されると共に可動プラテン4側の固定プラテン1上に載置されている。
該回転テ-ブル6の中央下面には前記固定プラテン1の厚さより一定量(回転テ-ブル6の固定プラテン1に対するストローク量に等しい)長いボス部6’が形成されており,該ボス部6’の下端面にはタイバー3に摺動可能に嵌入された回転テ-ブル駆動歯車7が連接されている。8は型締め装置で固定プラテン1の下面に装着したシリンダ9とロッドの先端部を型締め板5に装着したピストンロッド10とにより構成されている。11は回転テ-ブル駆動用原動機で該原動機11は,前記架台2に装着したブラケット12上に載置されるとともにピニオン13が前記駆動歯車7に噛合している。…
18は前記可動プラテン4に装着された上金型,19は回転テ-ブル6上に等間隔に複数個配設された下金型であり,該下金型19にはノックピン孔20が穿設されている。21はノックピン22の突き出しシリンダで,前記架台2に装着されている。」(第2ページ第7行?第4ページ第3行)
ウ: 「次に,従来の射出成形機の動作を第7図の動作フローチャートにより説明する。
回転テ-ブル6駆動用原動機11を駆動し,ピニオン13及び駆動歯車7を介して回転テ-ブル6を回転させ,下金型19を射出装置15の下に移動させる。
…ステップ(5):こうして回転テ-ブル6が,射出装置15の下にくると型締め位置にあった下金型19は,ノックピン22の上部まで移動され型締めが開始される。
ステップ(6):そして第2型締めがオンされ,型締め装置8を作動し,可動プラテン4を固定プラテン1側に移動させる。」(第4ページ第9行?第5ページ第12行。なお,「(5)」は,引用文献1の記載においては,数字「5」を「○」で囲んだものであるが,特許庁のシステム上の都合により,書き換えて表記したものである。「(6)」,及び,後記の摘示オについても同様である。)
エ: 「(作用)
本考案によれば,回転テ-ブルが回転して停止位置近くになると,テ-ブル位置決めピンがストツパに係止して回転テ-ブルの回転を停止させる。この時,回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイツチがオンして回転テ-ブルに低速の回転力を与え,この状態で型締めが開始される。テ-ブル位置決めピンがストツパに押しつけられ,正確な型締め位置が維持される。」(第6ページ第15行?第7ページ第3行)
オ: 「(実施例)
以下,本考案の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
第1図は本考案の射出成形テ-ブル回転による金型破損防止装置の回転テ-ブルの平面図…である。
図において,19は下金型であり,回転テ-ブル6の上に等間隔に複数個設けられている。
上記回転テ-ブル6の下には,ストッパ23が形成されていて回転テ-ブル6と共に回転する。また,架台側には回転テ-ブル6の軸方向に上下降して前記ストッパ23に対して係止,離脱するテ-ブル位置決めピン24が設けられる。
上記テ-ブル位置決めピン24は,下金型19が射出装置15の下に来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。
なお,該テ-ブル位置決めピン24は,必ずしも上下に昇降する必要はなく,ストッパ23に対して係止,離脱するものであれば何でもよい。」(第7ページ第4行?第8ページ第2行)
カ: 「回転テ-ブル6側部には,近接スイッチ25が配置されていて,回転テ-ブル6側の適宜部分を検知してオンされる。
そして,回転テ-ブル6が第1,第2の減速位置26,27に来た時,回転テ-ブル6の回転を減速するための手段,及び上記近接スイッチ25のオンによって第3の減速した回転力を回転テ-ブル6に与える手段が設けられる。
次に,…本考案の金型破損防止装置の動作フローを示す。
ステップ(11):回転テ-ブル6が回転して第1,第2の減速位置26,27に来ると,回転テ-ブル6は,適宜手段によって減速させられ次第に低速になる。
ステップ(12):テ-ブル位置決めピン24は,回転テ-ブル6が停止位置に近付いて来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。
ステップ(13):テ-ブル6側部の近接スイッチ25が回転テ-ブル6側の適宜部分を検知してオンしたかどうか判定され,オンであれば,ステップ(14)に行く。
ステップ(14):安全のため500ms待ち,再度回転テ-ブル6が停止しているかどうかを近接スイッチ25で検知する。
ステップ(15):回転テ-ブル6が停止しており近接スイッチ25がオンであれば,ステップ(16)に行き,オフであれば,ステップ(13)に戻る。
ステップ(16):上記近接スイッチ25のオン信号によって,第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力が与えられ,テ-ブル位置決めピン24は,ストッパ23に押しつけられる。
ステップ(17):型締め位置にあった下型は,ノックピンの上部まで移動され型締めが開始される。
ステップ(18):そして第2型締めがオンされ,型締め装置を作動し,可動プラテンを固定プラテン側に移動させる。
ステップ(19):回転テ-ブル6のテ-ブル出力がオフにされる。
ここで,上記実施例においては,回転テ-ブル6の回転が停止され,近接スイッチがオンになると第3の減速速度によって回転テ-ブルに回転力が与えられる。従って,テ-ブル位置決めピンは,ストッパに押しつけられ,該状態において直ちに型締めが開始される」(第8ページ第3行?第10ページ第7行)
キ: 「回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイッチがオンして回転テ-ブルに低速の回転力を与え,この状態で型締めが開始されるため,テ-ブル位置決めピンがストッパに押しつけられ正確な型締め位置が維持される。」(第12ページ第19行?第13ページ第3行)
ク: 図面の第1図




ケ: 図面の第6図




(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には,摘示アの「回転テ-ブル上に金型を設けた射出成形機において,…を特徴とする射出成形機テ-ブル回転による金型破損防止装置」との記載から,特定の射出成形機テ-ブル回転による金型破損防止装置を備える射出成形機に関する発明が記載されていると認められる。
そして,射出成形機に備えられる該金型破損防止装置は,
摘示アのとおり「回転テ-ブルに形成されたストツパと,該ストツパに対して係止,離脱可能なテ-ブル位置決めピンと,回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイツチとを有し,回転テ-ブルが停止位置に近付いた時に上記テ-ブル位置決めピンをストツパに係止させる手段と,上記近接スイツチのオンにより回転テ-ブルに低速の回転を与える手段を設け」てあるものであって,
更に,摘示カの「回転テ-ブル6が回転して第1,第2の減速位置26,27に来ると,回転テ-ブル6は,適宜手段によって減速させられ次第に低速になる。」,「テ-ブル位置決めピン24は,回転テ-ブル6が停止位置に近付いて来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。」(ステップ(11),(12))との記載から,回転テ-ブル6が,適宜手段によって減速させられ低速で回転して,停止位置に近付いて来ると,テ-ブル位置決めピン24がストッパ23に係止当接するものであって,
次いで,摘示カの「テ-ブル6側部の近接スイッチ25が回転テ-ブル6側の適宜部分を検知してオンしたかどうか判定され,オンであれば,ステップ(14)に行く。」,「安全のため500ms待ち,再度回転テ-ブル6が停止しているかどうかを近接スイッチ25で検知する。」(ステップ(13),(14))との記載から,近接スイッチ25がオンであれば,500ms待ち,再度近接スイッチ25で検知を行うものであって,
また,摘示カの「近接スイッチがオンになると第3の減速速度によって回転テ-ブルに回転力が与えられる。従って,テ-ブル位置決めピンは,ストッパに押しつけられ,該状態において直ちに型締めが開始される」(ステップ(19))及び摘示キの「回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイッチがオンして回転テ-ブルに低速の回転力を与え,この状態で型締めが開始されるため,テ-ブル位置決めピンがストッパに押しつけられ正確な型締め位置が維持される」との記載から,型締め開始の直前から,少なくとも型締め開始直後までの間は,テ-ブル位置決めピンがストッパに押しつけられるものであり,
加えて,摘示オの「架台側には回転テ-ブル6の軸方向に上下降して前記ストッパ23に係止,離脱するテ-ブル位置決めピン24が設けられる。」及び「テ-ブル位置決めピン24は,必ずしも上下に昇降する必要はなく,ストッパ23に対して係止,離脱するものであれば何でもよい。」との記載から,「テ-ブル位置決めピン24」は,架台2に固定して配設されている態様を包含する,と認められる。
また,該射出成形機の構造は,摘示イに開示される従来の射出成形機と軌を一にするものであると認められるから,
固定プラテン1が,架台2上に支持,固定され,
回転テ-ブル6が,固定プラテン1上に載置され,
回転テ-ブル上に等間隔に複数個の下金型19が配設され,
回転テ-ブル6駆動用原動機11を駆動し,ピニオン13及び駆動歯車7を介して回転テ-ブル6を回転させ,下金型19を射出装置15の下に移動させるものであり,
可動プラテン4が,固定プラテン1の上部に位置するように複数本のタイバー3の一端に装着され,
上金型18が,可動プラテン4に装着され,
型締め板5が,複数本のタイバー3の他端に,架台2内に収容され,
型締め装置8が,固定プラテン1の下面に装着したシリンダ9とロッドの先端部を型締め板5に装着したピストンロッド10とにより構成されてなるものである。
更に,従来の射出成形機に関する摘示ウの「ステップ(5):こうして回転テ-ブル6が,射出装置15の下にくると型締め位置にあった下金型19は,ノックピン22の上部まで移動され型締めが開始される。
ステップ(6):そして第2型締めがオンされ,型締め装置8を作動し,可動プラテン4を固定プラテン1側に移動させる。」の記載,及び,摘示オの「ステップ(17):型締め位置にあった下型は,ノックピンの上部まで移動され型締めが開始される。
ステップ(18):そして第2型締めがオンされ,型締め装置を作動し,可動プラテンを固定プラテン側に移動させる。」との記載から,回転テ-ブル6の回転によって,下金型は,少なくとも,「型締め位置」と「ノックピンの上部」の位置とに置かれるものであり,型締め装置8は,可動プラテンを固定プラテン側に移動させるものと認められ,
また,可動プラテン4が,固定プラテン1の上部に位置することから,竪型射出成形機の範疇に属するものと認められる。

これらを総合すると,引用文献1には,
「回転テ-ブルに形成されたストツパと,架台2に配設され固定された,ストツパに対して係止,離脱可能なテ-ブル位置決めピンと,回転テ-ブルの停止位置を検出する近接スイツチとを有し,回転テ-ブルが低速で回転して停止位置に近付いた時に上記テ-ブル位置決めピンをストツパに係止させる手段と,近接スイッチ25がオンであれば,500ms待ち,再度近接スイッチ25で検知を行い,近接スイツチのオンにより回転テ-ブルに低速の回転を与える手段を設け,かつ,型締め開始の直前から,少なくとも型締め開始直後までの間は,テ-ブル位置決めピンがストッパに押しつけられる竪型射出成形機であって,
固定プラテン1が,架台2上に支持,固定され,
回転テ-ブル6が,固定プラテン1上に載置され,
回転テ-ブル上に等間隔に複数個の下金型19が配設され,
回転テ-ブル6の回転によって,下金型は,少なくとも,「型締め位置」と「ノックピンの上部」の位置とに置かれ,
回転テ-ブル6駆動用原動機11を駆動し,ピニオン13及び駆動歯車7を介して回転テ-ブル6を回転させ,下金型19を射出装置15の下に移動させるものであり,
可動プラテン4が,固定プラテン1の上部に位置するように複数本のタイバー3の一端に装着され,
上金型18が,可動プラテン4に装着され,
型締め板5が,複数本のタイバー3の他端に,架台2内に収容され,
可動プラテンを固定プラテン側に移動させる型締め装置8が,固定プラテン1の下面に装着したシリンダ9とロッドの先端部を型締め板5に装着したピストンロッド10とにより構成されてなる,該竪型射出成形機」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1(以下,「前者」という。)と引用発明(以下,「後者」という。)とを対比すると,
後者における「架台」は,前者における「フレーム」に,
後者における「回転テ-ブル6」は,前者における「フレームに対して回転自在に配設されたテ-ブル」に,
後者における「可動プラテン4」は,前者における「フレームより上方において,進退自在に配設された上プラテン」に,
後者における「下金型19」は,回転テ-ブル上に配設されているものであるから,前者における「テ-ブルに取り付けられた下金型」に,
後者における「回転テ-ブル6駆動用原動機11」は,前者における「テ-ブルを回転させ,前記各下金型を型締位置及び操作位置に置く駆動手段」の「駆動手段」に,
後者における「上金型18」は,下金型と対向して,型閉じ型締めされることにより成形キャビティを形成するためのものであることは当業者の技術常識であり,しかも,固定プラテン1の上部に位置する可動プラテン4に装着されるものであるから,前者における「フレームより上方において,進退自在に配設された上プラテンに取り付けられた上金型」に,
後者における「可動プラテンを固定プラテン側に移動させる型締め装置8」は,固定プラテン1の上部に位置する可動プラテン4を進退させて,型開閉と型締めを行うものであることが当業者に自明であるから,前者における「上プラテンを進退させ,型閉じ,型締め及び型開きを行う型締装置」に,
後者における「回転テ-ブルに形成されたストツパ」は,前者における「フレーム及びテ-ブルのうちの一方に,配設され,固定された第1の位置決め手段」に,
後者における「架台2に配設され固定された,ストツパに対して係止,離脱可能なテ-ブル位置決めピン」は,前者における「フレーム及びテ-ブルのうちの他方に,配設され,固定され,第1の位置決め手段に当接させられることによって各下金型の位置決めを行う第2の位置決め手段」に,
それぞれ相当すると認められるから,両者は,
「フレームと,
該フレームに対して回転自在に配設されたテ-ブルと,
該テ-ブルに取り付けられた複数の下金型と,
前記テ-ブルを回転させる駆動手段と,
前記フレームより上方において,進退自在に配設された上プラテンと,
前記型締位置に置かれた下金型と対向させて前記上プラテンに取り付けられた上金型と,
前記上プラテンを進退させ,型閉じ,型締め及び型開きを行う型締装置と,
前記フレーム及びテ-ブルのうちの一方に,配設され,固定された第1の位置決め手段と,
前記フレーム及びテ-ブルのうちの他方に,前記型締位置及び操作位置に置かれた下金型に対応させて配設され,固定され,前記第1の位置決め手段に当接させられることによって各下金型の位置決めを行う第2の位置決め手段と,
を有する竪型射出成形機」において一致し,

テ-ブルに取り付けられた下金型の個数に関して,前者においては「テ-ブルに取り付けられた二つの下金型」と数が特定されているのに対して,後者においては「回転テ-ブル上に等間隔に複数個の下金型19が配設され」るとされる点(相違点1),
テ-ブルを回転させる駆動手段が,前者においては,「各下金型を型締位置及び操作位置に置く」ものであるのに対して,後者においては,「下金型は,少なくとも,「型締め位置」と「ノックピンの上部」の位置とに置かれるものである点(相違点2),
第1の位置決め手段が,前者においては,「回転方向における2箇所に,各下金型ごとに配設」されるのに対して,後者においては,該第1の位置決め手段に当たる「ストッパ」の配設について特定がない点(相違点3),
第2の位置決め手段が,前者においては,「一つ」であるのに対して,後者においては,該第2の位置決め手段に当たるテ-ブル位置決めピンの数について特定がない点(相違点4),及び,
前者が,「第2の位置決め手段が第1の位置決め手段に当接する前,及び当接した後において前記駆動手段を駆動し続け,前記第2の位置決め手段を第1の位置決め手段に当接させ,当接させた状態を保持する駆動制御手段とを有する」を備えるのに対して,後者が,「回転テ-ブルが低速で回転して停止位置に近付いた時に上記テ-ブル位置決めピンをストツパに係止させる手段と,近接スイッチ25がオンであれば,500ms待ち,再度近接スイッチ25で検知を行い,近接スイツチのオンにより回転テ-ブルに低速の回転を与える手段を設け」るものであるものの,該特定の駆動を行う「駆動制御手段」を備えるかどうかが特定されていない点(相違点5)において相違する。

(4)相違点1ないし5についての検討
(i)相違点1についての検討
引用文献1には,摘示オに「第1図は本考案の射出成形テ-ブル回転による金型破損防止装置の回転テ-ブルの平面図…である。
図において,19は下金型であり,回転テ-ブル6の上に等間隔に複数個設けられている。」と記載され,摘示クである第1図には,回転テ-ブル6の「3時」と「6時」の位置(第1図の紙面上方向を「12時」と表記する。)に2つの下金型が具体的に示されている。摘示オの「等間隔に複数個」との記載を踏まえると,「等間隔」という以上,同じ長さの「間隔」が複数存在することを意味するのであるから,摘示クの第1図に示される回転テ-ブル上には,「12時」と「9時」の位置にも金型が設けられているが,具体的な図示が省略されているものと解するのが合理的である。すなわち,引用文献1には,第1図として,「回転テ-ブル上に等間隔に4個の下金型19が配設され」てなる射出成形機が記載されているものと認められる。
さらに,引用文献1には,摘示イとして,「合成樹脂の射出成形機は,従来例えば第6図に示すような構造になっている。…
6は回転テ-ブルで複数本のタイバー3のうちの1本に回転可能かつ,一定ストローク摺動可能に嵌入されると共に可動プラテン4側の固定プラテン1上に載置されている。
該回転テ-ブル6の中央下面には前記固定プラテン1の厚さより一定量(回転テ-ブル6の固定プラテン1に対するストローク量に等しい)長いボス部6’が形成されており,該ボス部6’の下端面にはタイバー3に摺動可能に嵌入された回転テ-ブル駆動歯車7が連接されている。…11は回転テ-ブル駆動用原動機で該原動機11は,前記架台2に装着したブラケット12上に載置されるとともにピニオン13が前記駆動歯車7に噛合している。…
18は前記可動プラテン4に装着された上金型,19は回転テ-ブル6上に等間隔に複数個配設された下金型であり,該下金型19にはノックピン孔20が穿設されている。21はノックピン22の突き出しシリンダで,前記架台2に装着されている。」と記載され,摘示ケの第6図には,回転テ-ブル6上に,ボス部6’に対称の位置に,2つの下金型19が記載されている。すなわち,引用文献1には,従来技術に関する記載として,「回転テ-ブル6上に等間隔に複数個配設された下金型」として,摘示ケの第6図に示された,180°の等間隔に配設された2つの下金型が記載されているものと認められる。摘示イ及び摘示ケは,いずれも「従来」技術に関わる記載であるが,摘示オ及び摘示クの「本考案」に関わる記載と同じく,「回転テ-ブル6上に等間隔に複数個配設された下金型」について述べているものであり,「等間隔に複数個配設」という記載表現においても完全に一致していることから「複数個」が異なる意味を有するものとは認められない。
してみれば,引用発明における「複数個の下金型」の意味するところを検討するに,明らかに「二つの下金型」も包含されているものと認めることができるし,また,第1図に具体的に示された4個の下金型の配設構造を2つの下金型の配設構造に設計変更することは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。
したがって,相違点1は,実質的なものではないか,又は,当業者が容易に想到することができる程度のことである。

なお,この点,請求人は,平成20年4月28日付け意見書において,「引用例においては,第3ページ第19行?第4ページ第2行に,「回転テ-ブル6」上に複数の「下金型19」が配設される点が記載されているが,第1図には,二つの「下金型19」間に配設された一つの「ストッパ23」が示されているだけであり,複数の「下金型19」をどのように「射出成形位置」に置くか不明である。」と主張している。
しかしながら,引用文献1には,請求人が摘示する「第3ページ第19行?第4ページ第2行」には,従来技術に関わって,「19は回転テ-ブル6上に等間隔に複数個配設された下金型であり,」と記載され(摘示イ参照),更に,引用発明に関わっては,摘示オにおいて「19は下金型であり,回転テ-ブル6の上に等間隔に複数個設けられている。」と同様の趣旨が記載されているのであるから,複数の下金型は,等間隔に配設されているものであって,個数が定まれば,自ずと配設の態様が定まるものであって,「複数の「下金型19」をどのように「射出成形位置」に置くか不明である。」ということはできないし,先に述べたとおり,第1図には,「回転テ-ブル上に等間隔に4個の下金型19が配設され」てなる射出成形機が記載されているものと認められるものである。
よって,請求人の主張は採用しない。

(ii)相違点2についての検討
相違点2は,前者における「操作位置」と,後者における「ノックピンの上部」の位置とが,同一かどうかの問題に帰着する。
そこで,本願発明1における「操作位置」について検討するに,本願明細書には,
「制御装置の型閉制御手段は,前記モータ61を駆動してトグル機構29を作動させ,トグルプレート18を後退させ,上プラテン17を前進させることによって型閉じを行い,その後,前記制御装置の型締制御手段は,トグル機構29によって型締力を発生させ,該型締力によって前記上金型22を一方の下金型21に押し付け,型締めを行う。この間,操作位置S2において,前の工程で成形された成形品を他の下金型21から取り出すとともに,次の工程で成形を行うためのインサートを他の下金型21にセットする。」(段落【0036】)と記載されているから,操作位置とは要するに,複数の下金型の一つが上金型と型締め状態にあるとき,他の金型から成形品を取り出すとともに,次いで,次の工程で成形を行うためのインサートをセットするなどの「操作」をするための位置であると解されるところ,後者における「ノックピンの上部」の位置とは,成形品を突き出すために設けられるノックピンの位置に対応する位置を意味するから,成形品を取り出す操作を行う位置ということができる。
してみれば,前者における「操作位置」と,後者における「ノックピンの上部」の位置とは,実質的に異なるものではない。
したがって,相違点2は,実質的なものではない。

(iii)相違点3についての検討
引用文献1には,(i)で述べたように,実施例としては,第1図として,「回転テ-ブル上に等間隔に4個の下金型19が配設され」てなる射出成形機が実質的に記載されているものと認められる。その場合,4個の金型は,回転テ-ブルの回転によって,どれも同じように正確な型締め位置又は射出位置に位置決めされなければならないことは当業者に自明の技術的事項であり,その点において等価であるといえる。
引用文献1の第1図に示される「23:ストッパ」は,「6:回転テ-ブル」の時計回り回転に伴って,「24:テ-ブル位置決めピン」に当接するものであることは,「26:第1減速位置」,「27:第2減速位置」及び「25:近接スイッチ」が時計回りに配列していることからも当業者に明らかであるから,該図示されている「23:ストッパ」は,「3時」に位置する「19:下金型」と「6時」に位置する「19:下金型」の一方のみを正確に位置決めするために機能するものであって,更に,他方を正確に位置決めするために機能することはあり得ないものである。
してみると,引用文献1の第1図には,(i)で述べたように図示が省略されているものを含む,等価である4個の下金型の各々に対応して,図示された「23:ストッパ」と同様の「ストッパ」が,回転テ-ブルの回転方向に沿って設けられており,その図示が省略されているものと認められる。
したがって,引用発明における「回転テ-ブルに形成されたストツパ」は,等価である複数の各下金型ごとに,回転テ-ブルの回転方向において複数配設されているものであると認められる。

そして,(i)で述べたとおり,相違点1は,実質的なものではないか,又は,当業者が容易に想到することができる程度のことであるから,引用発明において,「複数の下金型」として「二つの下金型」を配設することは,当業者にとって何ら困難なことではない。
「複数の下金型」として「二つの下金型」を配設する場合は,「回転テ-ブルに形成されたストツパ」は,等価である二つの各下金型ごとに配設されていることとなるから,「回転方向における2箇所に各下金型ごとに」配設されるものといえる。
したがって,相違点3は,相違点1と同様に,実質的なものではないか,又は,当業者が容易に想到することができる程度のことである。

なお,この点,請求人は,平成20年4月28日付け意見書において,「引用例においては,…第1図には,二つの「下金型19」間に配設された一つの「ストッパ23」が示されているだけであ」る旨を主張している。
確かに,引用文献1の第1図には,「23:ストッパ」が,「3時」に位置する「19:下金型」と「6時」に位置する「19:下金型」との間,具体的には,中間近傍の位置に配設されていることが窺える。
しかしながら,先に述べたように,該図示されている「23:ストッパ」は,「3時」に位置する「19:下金型」と「6時」に位置する「19:下金型」の一方のみを正確に位置決めするために機能するものであって,更に,他方を正確に位置決めするために機能することはあり得ないものであるから,引用文献1の第1図には,図示が省略されているものを含む,等価である4個の下金型の各々に対応して,図示された「23:ストッパ」と同様の「ストッパ」が,回転テ-ブルの回転方向に沿って設けられており,その図示が省略されているものと認められる。
よって,請求人の主張は採用しない。

(iv)相違点4についての検討
引用文献1には,第2の位置決め手段に当たるテ-ブル位置決めピンに関して,摘示オに,「(実施例)」として,「回転テ-ブル6の下には,ストッパ23が形成されていて回転テ-ブル6と共に回転する。また,架台側には回転テ-ブル6の軸方向に上下降して前記ストッパ23に対して係止,離脱するテ-ブル位置決めピン24が設けられる。
上記テ-ブル位置決めピン24は,下金型19が射出装置15の下に来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。
なお,該テ-ブル位置決めピン24は,必ずしも上下に昇降する必要はなく,ストッパ23に対して係止,離脱するものであれば何でもよい。」と記載され,摘示クの第1図として,「24テ-ブル位置決めピン」が1つ示されている。
してみると,テ-ブル位置決めピンの数としては,少なくとも「一つ」の場合を包含しているものと認められ,他方,「一つ」を排除する理由は見当たらない。
したがって,相違点4は実質的なものではない。

(v)相違点5についての検討
a.「駆動制御手段」の有無についての検討
まず本願発明1における「駆動制御手段」の意味するところについて検討する。
本願明細書の段落【0035】の「駆動制御手段は,前記モータ54を駆動してテ-ブル16を正方向(矢印A方向)に回転させる。テ-ブル16の回転に伴って,位置決め部材78が第2のストッパ77に当接すると,テ-ブル16は,一方の下金型21が型締位置S1に,他方の下金型21が操作位置S2に置かれる第1の停止位置で停止させられる。」,
同じく段落【0038】の「続いて,前記駆動制御手段は,モータ54を駆動してテ-ブル16を逆方向(矢印B方向)に回転させる。テ-ブル16の回転に伴って,位置決め部材78が第1のストッパ76に当接すると,テ-ブル16は,前記一方の下金型21が操作位置S2に,他方の下金型21が型締位置S1に置かれる第2の停止位置で停止させられる。したがって,操作位置S2に置かれた一方の下金型21から成形品を取り出すことができるとともに,型締位置S1に置かれた他方の下金型21及び上金型22によって,型締めを行うことができる。」,及び,
同じく段落【0040】の「同様に,前記テ-ブル16を回転させ,位置決め部材78が第2のストッパ77に当接したときに,テ-ブル16を第2の停止位置で正確に停止させ,一方の下金型21を操作位置S2に置き,他方の下金型21を型締位置S1に置くことができるので,下金型21の位置決めを行うことができる。また,前記駆動制御手段は,位置決め部材78が第2のストッパ77に当接した状態を保持するために,モータ54を駆動し続けるので,テ-ブル16が第2の停止位置から移動することがない。」,
との記載からみると,要するに,テ-ブルの回転,停止という駆動の制御を行う手段を意味し,具体例にあっては,テ-ブルの回転,停止を行うモータの駆動を制御する手段を意味するものであると認められる。
これに対して,引用発明にあっては,「回転テ-ブル6駆動用原動機11を駆動し,ピニオン13及び駆動歯車7を介して回転テ-ブル6を回転させ」るものであり,更に,摘示カのとおり,少なくとも「回転テ-ブル6が回転して第1,第2の減速位置26,27に来ると,回転テ-ブル6は,適宜手段によって減速させられ」(ステップ(11))たり,「近接スイッチ25のオン信号によって,第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力」(ステップ(16))を与えたりするものであって,回転の制御が行われているのであるから,モータの駆動を制御する手段が備えられていることは当業者に自明の技術的事項である。
すなわち,引用発明は駆動制御手段を備えるものと認められる。
b.駆動制御の内容についての検討
本願発明1において駆動制御手段が実行する駆動制御の内容は,「第2の位置決め手段が第1の位置決め手段に当接する前,及び当接した後において前記駆動手段を駆動し続け,前記第2の位置決め手段を第1の位置決め手段に当接させ,当接させた状態を保持する」ものとして特定されている。
これに対して,引用発明は,「回転テ-ブルが低速で回転して停止位置に近付いた時に上記テ-ブル位置決めピンをストツパに係止させる手段と,近接スイッチ25がオンであれば,500ms待ち,再度近接スイッチ25で検知を行い,近接スイツチのオンにより回転テ-ブルに低速の回転を与える手段を設け」るものであるから,「第2の位置決め手段」である「テ-ブル位置決めピン」を,「第1の位置決め手段」である「ストツパ」に係止させるのは,「回転テ-ブルが低速で回転して停止位置に近付いた時」,すなわち,「回転テ-ブルが低速で回転」しているときであるので,引用発明においては,「第2の位置決め手段が第1の位置決め手段に当接する前」に回転テ-ブルを回転させる駆動手段を駆動していることが明らかである。

次いで,引用発明において,第1に「当接した後において前記駆動手段を駆動し続け」ているかどうか,第2に「当接させた状態を保持」しているかどうか,について検討する。
引用文献1には,摘示カとして,「ステップ(11):回転テ-ブル6が回転して第1,第2の減速位置26,27に来ると,回転テ-ブル6は,適宜手段によって減速させられ次第に低速になる。
ステップ(12):テ-ブル位置決めピン24は,回転テ-ブル6が停止位置に近付いて来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。
ステップ(13):テ-ブル6側部の近接スイッチ25が回転テ-ブル6側の適宜部分を検知してオンしたかどうか判定され,オンであれば,ステップ(14)に行く。
ステップ(14):安全のため500ms待ち,再度回転テ-ブル6が停止しているかどうかを近接スイッチ25で検知する。
ステップ(15):回転テ-ブル6が停止しており近接スイッチ25がオンであれば,ステップ(16)に行き,オフであれば,ステップ(13)に戻る。
ステップ(16):上記近接スイッチ25のオン信号によって,第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力が与えられ,テ-ブル位置決めピン24は,ストッパ23に押しつけられる。」と記載されている。
すなわち,「ステップ(12)」において,「テ-ブル位置決めピン24」が,「ストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止め」,次いで,「ステップ(14)」及び「ステップ(15)」において,「回転テ-ブル6が停止」していることを検知した後に,「ステップ(16)」において,「第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力が与えられ,テ-ブル位置決めピン24は,ストッパ23に押しつけられる」ことが記載されている。

まず第2の「当接させた状態を保持」しているかどうか,について検討すると,「ステップ(12)」において,「テ-ブル位置決めピン24」が,「ストッパ23に係止当接」してから,「ステップ(15)」に至るまで,「回転テ-ブル6が停止」し続け,「ステップ(16)」に至ってから,「第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力が与えられ」るのであるから,「テ-ブル位置決めピン24」が,「ストッパ23に係止当接」した後も,該当接が維持されていると認められ,してみれば,引用文献1には,「当接させた状態を保持」することが記載されているものといえる。
次に,第1の「当接した後において前記駆動手段を駆動し続け」ているかどうか,について検討する。
「ステップ(12)」を精査するに,「テ-ブル位置決めピン24は,回転テ-ブル6が停止位置に近付いて来ると上昇してストッパ23に係止当接し回転テ-ブル6の回転を止める。」ものであるから,回転テ-ブル6の回転を停止させる主体は,「テ-ブル位置決めピン24」であって,回転テ-ブルを回転させる駆動手段については,これを駆動しているのか,駆動を完全に停止しているのかどうか,引用文献1の記載としては明らかではないが,「当接させた状態を保持」するものである以上は,例えば,微弱電流を流し続けるなどして,回転テ-ブルを回転させる駆動手段を単に,駆動し続けることは当業者が適宜なし得る程度のことである。
なお,「ステップ(16)」においては,「第3の減速速度によって回転テ-ブル6に回転力が与えられ」るものであるが,それ以前のステップにおいて,回転テ-ブルを回転させる駆動手段を駆動しているのかどうかは,記載上明らかではないものの,該駆動手段の駆動を阻害する要因も格別見い出せない。

したがって,相違点5は,当業者が容易に想到し得る程度のことである。

(5)本願発明1についてのまとめ
そして,相違点1ないし5を発明特定事項として備える本願発明1が奏する,「テ-ブルを停止位置で正確に停止させることができる」(段落【0051】),「空圧シリンダ,位置決めピン等を配設する必要がなくなり,位置決めのための機構を簡素化することができる」(段落【0052】)という効果は,当業者であれば,通常予測することができる程度のものと認められる。
よって,本願発明1は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本願発明2に対する拒絶理由通知の妥当性についての検討
本願発明2は,「駆動ギヤ及び従動ギヤから成り,前記駆動手段を駆動することによって発生させられた回転をテ-ブルに伝達する伝動機構を有する請求項1に記載の竪型射出成形機。」であるから,本願発明2と引用発明を対比すると,本願発明1について述べた先の相違点1ないし5に加えて,更に,本願発明2が「駆動ギヤ及び従動ギヤから成り,前記駆動手段を駆動することによって発生させられた回転をテ-ブルに伝達する伝動機構を有する」点(相違点6)において,相違する。
そして,相違点1ないし5については,既に検討済みである。

(1)相違点6についての検討
引用文献1には,「回転テ-ブル6の中央下面には前記固定プラテン1の厚さより一定量(回転テ-ブル6の固定プラテン1にタイするストローク量に等しい)長いボス部6’が形成されており,該ボス部6’の下端面にはタイバー3に摺動可能に嵌入された回転テ-ブル駆動歯車7が連接されている。…11は回転テ-ブル駆動用原動機で該原動機11は,前記架台2に装着したブラケット12上に載置されるとともにピニオン13が前記駆動歯車7に噛合している。」(摘示イ参照),及び,「回転テ-ブル6駆動用原動機11を駆動し,ピニオン13及び駆動歯車7を介して回転テ-ブル6を回転させ,下金型19を射出装置15の下に移動させる。」(摘示ウ参照)ことが記載されている。
してみれば,引用文献1には,回転テ-ブル駆動用原動機の駆動により,ピニオン及び駆動歯車を介して回転テ-ブルを回転させることが記載されているから,「ピニオン」,すなわち,小歯車が「駆動ギア」に,「駆動歯車」が「従動ギヤ」に,それぞれ相当するものといえる。
したがって,相違点6は,実質的なものではない。

(2)本願発明2についてのまとめ
よって,本願発明2は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
本願発明1及び2は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶を免れない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-15 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願2000-190864(P2000-190864)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 晋也大島 祥吾  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 山本 昌広
野村 康秀
発明の名称 竪型射出成形機  
代理人 清水 守  
代理人 川合 誠  

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