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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60Q |
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管理番号 | 1189951 |
審判番号 | 不服2006-20890 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-20 |
確定日 | 2008-12-25 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第155011号「ドアエントランスレール」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月 9日出願公開、特開平 8- 2320号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成7年6月21日(パリ条約による優先権主張1994年6月23日、ドイツ国)の出願であって、平成18年6月15日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年9月20日に本件審判が請求されるとともに、同年10月19日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。 第2 平成18年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1. 補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「 【請求項1】 車両における表示物を形成するドアエントランスレール(5)であって、 見える側、即ち表側(21)と、見えない側、即ち裏側(14)とを有する壁部分(6)が設けられていて、該壁部分(6)は表示物を形成する開口(10,11,12,13)を有しており、 発光シート(15)が、壁部分(6)の裏側(14)に取り付けられていて、前記発光シート(15)の照明が、照明される領域を形成するための前記開口(10,11,12,13)から見え、ガラス状の中間部分(16)が前記壁部分(6)と発光シートとの間に設けられており、 前記中間部分(16)が前記開口(10,11,12,13)内に突入した隆起部(17,18,19,20)を有しており、これにより該隆起部(17,18,19,20)が、壁部分(6)の見える側、即ち表側と面一に形成されていて、 中間部分(16)を壁部分(6)に固定するための手段を有しており、 発光シート(15)を、少なくとも1つの壁部分(6)および中間部分(16)に固定する接着テープが設けられていて、 発光シート(15)がコンバータ(26)を介して車両の給電網に接続されており、 車両がドアコンタクトスイッチ(28)を備えており、このドアコンタクトスイッチ(28)により発光シートが切り替えられることを特徴とする、車両における表示物を形成するドアエントランスレール。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「中間部分(16)が前記壁部分(6)と発光シートとの間に設けられ」ることについて、その設け方を限定し、「発光シート」について、その発光方法を限定するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2. 引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平5-104997号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「この発明は車両の照明装置に係り、詳しくは、乗降時等にドア開口部廻り、いわゆる乗員の乗降時の足下を重点的に照明できるようにした照明装置に関する。」(段落【0001】) (イ)「【0008】図1において、11はドア開口11aが形成された車体であり、車体11にはドア開口11aに開閉可能にドア12がヒンジ等で取り付けられている。図2に示すように、この車体11にはドア開口11の下縁に中空構造のサイドシル13が形成され、このサイドシル13が車室床面Fよりも上方に膨出する。また、図示しないが、車体11にはドア開口11aの近傍にドア12の開閉動を検出するリミットスイッチが設けられ、このリミットスイッチがコントローラに接続する。なお、33はカーペットである。 【0009】サイドシル13には、上面に帯状の発光体15が設けられ、また、この発光体15を覆うガーニッシュ(被覆部材)16が設けられる。発光体15は、エレクトロルミネッセンスあるいは白熱球等から構成され、コントローラに接続されてドア12の開閉動等に応じ点灯、消灯が制御される。なお、図示しないが、コントローラにはイグニッションキーのオン、オフ操作および挿入等を検出するセンサが接続する。 【0010】ガーニッシュ16は、図3に詳示するように、発光体15をほぼ完全に覆い、サイドシル13の前後方向全域にわたって延在する。このガーニッシュ16は、透光性材料から成り、上部に略棒状の4本の補強部材16bが前後方向に延設され、また、車体幅方向内方の縁部にシール部16dが一体的に形成される。 【0011】ガーニッシュ16はガラス、大理石あるいは樹脂等から一部あるいは前部が透明に構成され、また、補強部材16bは金属あるいは樹脂から構成され、ガーニッシュ16は補強部材16bで補強される。シール部16dはドア12が開口11aを閉じた時にドア12の下部と密着する。 【0012】この実施例にあっては、ドア12が開かれた時、ドアノブが操作されて作動した時、イグニッションキーがオフ操作された時あるいはイグニッションキーがキー穴から抜かれた時に、コントローラがリミットスイッチの出力信号等に基づき発光体15を通電して点灯させる。ここで、発光体15は、ドア開口11aの下部のサイドシル13に設けられ、乗降時の地面を近くに位置する。このため、十分な明るさで足下を中心として照明でき、乗員は足下を確認して安全に乗降できるようになる。」(段落【0008】-【0012】) (ウ)「【発明の効果】以上説明したように、この発明にかかる車両の照明装置によれば、車体のドア開口部の下縁、いわゆるサイドステップに照明用の発光体を設けたため、乗降時に足下を中心として照明でき、また、サイドステップを容易に視認できるようになるという効果が得られる。また、この発明は、光拡散あるいは光収束部を設けることで必要とする場所を重点的に照明でき、さらに、点灯と消灯とをイグニッションキーの操作あるいはドアの開閉動に基づき制御するため運転者の操作負担が少なく良好な使い勝手が得られる。」(段落【0015】) ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。 ・ 記載事項(イ)の「ガーニッシュ16は、透光性材料から成り、上部に略棒状の4本の補強部材16bが前後方向に延設され、また、車体幅方向内方の縁部にシール部16dが一体的に形成される」、「ガーニッシュ16はガラス、大理石あるいは樹脂等から一部あるいは前部が透明に構成され、また、補強部材16bは金属あるいは樹脂から構成され、ガーニッシュ16は補強部材16bで補強される。」の記載、及び、図1?3に図示されたガーニッシュ16や補強部材16bの形状を見ると、「補強部材16b」は、図1で見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する金属製の補強部材といえる。 また、「補強部材16b」は、照明される領域を形成する開口を有するものともいえる。 ・ 記載事項(イ)の「サイドシル13には、上面に帯状の発光体15が設けられ、また、この発光体15を覆うガーニッシュ(被覆部材)16が設けられる」の記載、図3図示の発光体15が補強部材16bの見えない側、すなわち裏側に位置する態様から、発光体15は、補強部材の裏側に取り付けられているものといえる。 ・ 記載事項(イ)の「発光体15」は、「エレクトロルミネッセンス・・・から構成され」、かつ「帯状の発光体15」であるので、「発光シート」といえる。 また、その光は「発光シートの照明」といえる。 ・ 記載事項(イ)の「発光体15」は、「ドア開口11aの下部のサイドシル13に設けられ、乗降時の地面を近くに位置する」ものであり「このため、十分な明るさで足下を中心として照明でき、乗員は足下を確認して安全に乗降できるようにな」り、図3図示の様に、発光体15の光が図3上方から補強部材16bの開口から見える構造であることが明らかであるので、発光体15の光、すなわち発光シートの照明は、照明される領域を形成するための開口から見えるものといえる。 ・ 記載事項(イ)の「発光体15」は、「ドア12が開かれた時、ドアノブが操作されて作動した時、イグニッションキーがオフ操作された時あるいはイグニッションキーがキー穴から抜かれた時に、コントローラがリミットスイッチの出力信号等に基づき発光体15を通電して点灯させる」ものであるので、車両の給電網に接続されているものといえる。 また、「発光体15」、すなわち発光シートは、ドア12が開かれた時、発光シートが点灯・消灯切り替えられるものともいえる。 ・ 記載事項(イ)の「ガーニッシュ16」の「補強部材16b」、「シール部16d」以外の主体部分は、「ガラス、大理石あるいは樹脂等から」「透明に構成され」たものであることは明らかであり、図3図示の構成を見ると、「補強部材16b」、「シール部16d」以外の主体部分が、補強部材と発光体との間に設けられたものといえる。 さらに、該「ガーニッシュ16」の「補強部材16b」、「シール部16d」以外の部分、即ち、透明の主体部分は、図3図示の構成を見ると、補強部材の開口内に突入した隆起部を有したものといえる。 ・ 記載事項(イ)の「発光体15」はガーニッシュ16により覆われるものであり、図1に図示されているガーニッシュ16の形状が一方向に長い、所謂レール状と認識されるものであるので、「発光体15」及び「ガーニッシュ16」からなる集合体は、全体としてレール状ということができる。 また、該集合体は、記載事項(ウ)の様に「車体のドア開口部の下縁、いわゆるサイドステップに照明用の発光体を設け・・・照明」するものであるので、車体のドア開口部の下縁に設けた照明装置ということができる。 ・ 記載事項(イ)の「発光体15」は、「ドア12が開かれた時・・・リミットスイッチの出力信号等に基づき発光体15を通電して点灯させる」ものであり、かつ、該リミットスイッチは「ドア12の開閉動を検出するリミットスイッチ」であるので、ドア12の開閉動を検出するリミットスイッチにより発光シートが切り替えられるものということができる。 すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 「車体のドア開口部の下縁に設けたレール状の足下を中心として照明でき、また、サイドステップを容易に視認できるようにする照明装置であって、 見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する金属製の補強部材が設けられていて、該補強部材は照明される領域を形成する開口を有しており、 発光シートが、補強部材の裏側に取り付けられていて、前記発光シートの照明が、照明される領域を形成するための前記開口から見え、ガーニッシュ16の透明の主体部分が、補強部材と発光シートとの間に設けられており、 前記ガーニッシュ16の透明の主体部分が補強部材の開口内に突入した隆起部を有しており、 発光シートが車両の給電網に接続されており、 車両がドア12の開閉動を検出するリミットスイッチを備えており、このドア12の開閉動を検出するリミットスイッチにより発光シートが切り替えられる、車体のドア開口部の下縁に設けたレール状の照明装置」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願昭61-184021号(実開昭63-88554号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「不透光性のナンバープレート本体に、所定の抜き文字を形成し、この抜き文字部分に透光性樹脂材を設けるとともに、背後に配設した光源により透光表示するようにした字光式ナンバープレートにおいて、上記ナンバープレート本体の抜き文字部分表面側に上記樹脂材で文字形態を形成するとともに、上記プレート本体の裏面側には抜き文字部分全体に連なる透光板部を上記樹脂材で一体形成し、さらに上記透光板部に面して電界発光型照明パネルを配したことを特徴とする字光式ナンバープレート。」(実用新案登録請求の範囲) ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。 記載事項(ア)の「不透明性のナンバープレート本体に、所定の抜き文字を形成」したものは、「この抜き文字部分に透光性樹脂材を設けるとともに、背後に配設した光源により透光表示するようにした」ものであるので、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」ということができる。 (3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願昭61-184022号(実開昭63-88555号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「不透光性のナンバープレート本体に、所定の抜き文字を形成し、この抜き文字部分に透光性樹脂材を設けるとともに、背後に配設した光源により透光表示するようにした字光式ナンバープレートにおいて、上記ナンバープレート本体の抜き文字部分表面側に上記樹脂材で文字形態を形成するとともに、上記プレート本体の裏面側には抜き文字部分全体に連なる透光板部を上記樹脂材で一体形成し、上記透光板部の外周に後方に向かって立上がるリブを形成し、このリブの内周にほぼ沿う形状の電界発光型照明パネルを配したことを特徴とする字光式ナンバープレート。」(実用新案登録請求の範囲) ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。 記載事項(ア)の「不透光性のナンバープレート本体に、所定の抜き文字を形成」したものは、「この抜き文字部分に透光性樹脂材を設けるとともに、背後に配設した光源により透光表示するようにした」ものであるので、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」ということができる。 (4)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平1-130692号(実開平3-69190号)のマイクロフィルム(以下「引用例4」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「1.パッケージダミーの表板に所定の文字、模様を印刷しないで打抜き、若しくは印刷した上で輪郭のみを残し打抜き透光部を形成し、この板面の裏面に面発光体を貼着すると共に、パッケージ内の裏板に上方又は下方より取り入れる光源を反射する反射板を一体に貼着してなるタバコ自動販売機用ダミータバコ。 2.パッケージダミーの表板に所定の文字、模様を印刷しないで打抜き、若しくは印刷した上で輪郭のみを残し打抜き透光部を形成し、この表面に面発光体を貼着すると共に、パッケージ内の裏板に上方又は下方より取り入れる光源を反射する反射板を一体に貼着し、且つ表板にスティックダミーを設け、この着火位置となる先端部にLEDを配設し発光させるタバコ自動販売機用ダミータバコ。 3. パッケージダミーの表板に所定の文字、模様を印刷しないで打抜き、若しくは印刷した上で輪郭のみを残し打抜き透光部を形成し、この板面の裏面に面発光体を貼着すると共に、パッケージ内の裏板に上方又は下方より取り入れる光源を反射する反射板を一体に貼着し、且つ表板にスティックダミーを設け、この着火位置となる先端部に面発光体を配設し発光させるタバコ自動販売機用ダミータバコ。」(実用新案登録請求の範囲) ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。 記載事項(ア)の「パッケージダミーの表板に所定の文字、模様を印刷しないで打抜き・・・透光部を形成」したものは、「この板面の裏面に面発光体を貼着する」ものであるので、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」ということができる。 (5)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願昭63-32595号(実開平1-136985号)のマイクロフィルム(以下「引用例5」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「標示窓を有するツマミキャップと、 このツマミキャップの内側に取付けられたツマミベースと、 ツマミ内部に設けられたLEDまたは、ランプとを備えたツマミにおいて、 導光材によって形成された上記ツマミベースに、標示窓へ嵌め込まれる標示部を一体的に設けたことを特徴とするツマミの標示構造。」(実用新案登録請求の範囲) (イ)「従来のツマミの標示構造は、第3図に示すものが多数提供されていた。」(明細書第1頁第20行?第2頁第1行) (ウ)「第1図及び第2図はこの考案に係るツマミの標示構造の実施例・・・。 第3図は従来のツマミの標示構造を示す側断面図である。 主な符号の説明、 1:ツマミ 2:ツマミベース 2A:標示部 3:ツマミキャップ 3A:標示窓 4:LED。」(図面の簡単な説明) ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。 記載事項(ア)の「標示窓へ嵌め込まれる標示部」は、第2図の図示形状を見ると、「ツマミベースの凸部である標示部が、ツマミキャップの表側と面一に形成され」たものということができる。 また、記載事項(ア)の「標示窓を有するツマミキャップ」は、ツマミキャップが「内部に・・・LEDまたは、ランプとを備えた」ものであり、かつ、ツマミキャップ3の底面部が第2図において、標示窓として機能する開口部を有し、表面の大きさに対して小さな厚みを有する所謂板状体として記載されているので、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」ということができる。 よって、「この考案に係るツマミの標示構造」は、「(ツマミベースの)凸部が、光源の前面に配される開口部を有する板状体の表側と面一に形成され」たものともいうことができる。 さらに、記載事項(イ)で「従来・・・多数提供されていた」もの、すなわち第3図に係る従来技術のものにおいても、上記「(ツマミベースの)凸部が、ツマミキャップの表側と面一に形成され」たものということができること、及び、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」ということができることに変わりは無いので、「(ツマミベースの)凸部が、光源の前面に配される開口部を有する板状体の表側と面一に形成され」たものは周知慣用の構成ということもできる。 3. 本願補正発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 ・引用発明の「車体のドア開口部の下縁に設けたレール状の」「照明装置」は、本願補正発明の「車両における」「ドアエントランスレール」に相当する。(ただし、「表示物を形成する」点については除く。) ・引用発明の「補強部材」は、見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する板状体(所謂「壁」)であるので、本願補正発明の「壁部分」に相当する。 また、このことにともなって、引用発明の「見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する金属製の補強部材」は、本願補正発明の「見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する壁部分」に相当し、同様に「補強部材と発光シートとの間」は「壁部分と発光シートとの間」に相当する。 ・引用発明の「ガーニッシュ16の透明の主体部分」は、本願発明の「ガラス状」(本願出願に係る平成16年11月30日付意見書【意見の内容】(ト)記載の様に「『ガラス状』とは、発明の詳細な説明の段落【0010】の記載の通り、ガラスのように透明という意味」)と同様に透明であり、かつ、補強部材と発光シートとの間(所謂中間の部分)に設けられたものであるので、本願補正発明の「ガラス状の中間部分」及び「中間部分」に相当する。 また、このことにともなって、引用発明の「ガーニッシュ16の透明の主体部分が補強部材の開口内に突入した隆起部を有し」は、本願補正発明の「中間部分が」「開口内に突入した隆起部を有し」に相当する。 ・引用発明の「足下を中心として照明でき、また、サイドステップを容易に視認できるようにする」照明装置は、光で照らして明るくする(所謂照明)機能を用いたものである点において、本願補正発明の「表示物を形成する」ドアエントランスレールと共通するものである。(本件願書に添付された明細書においても「照明」なる表現が使用されている。) ・引用発明の「照明される領域を形成する開口」は、(開口が文字列や記号等の表示物を形成するものではないものの)照明される領域を形成する開口である点において、本願補正発明の「表示物を形成する開口」と共通するものである。 (2)両発明の一致点 「車両における光で照らして明るくする機能を用いたドアエントランスレールであって、 見える側、即ち表側と、見えない側、即ち裏側とを有する壁部分が設けられていて、該壁部分は照明される領域を形成する開口を有しており、 発光シートが、壁部分の裏側に取り付けられていて、前記発光シートの照明が、照明される領域を形成するための前記開口から見え、ガラス状の中間部分が、前記壁部分と発光シートとの間に設けられており、 前記中間部分が前記開口内に突入した隆起部を有しており、 発光シートが車両の給電網に接続されており、 車両における光で照らして明るくする機能を用いたドアエントランスレール」 (3)両発明の相違点 (ア) ドアエントランスレールの光で照らして明るくする機能が、本願補正発明は「表示物を形成する」のに対して、引用発明は、「足下を中心として照明でき、また、サイドステップを容易に視認できるように」するものであって、本願補正発明の様に「表示物を形成する」もの(本願補正発明は、明細書【発明が解決しようとする課題】に記載されている様に、このことにより「文字列、記号又は類似物のための領域を形成」している)ではない点。 (イ) 照明される領域を形成する開口が、本願補正発明は「表示物を形成する開口」であるのに対して、引用発明は、(開口が「表示物を形成する」ことにより「文字列、記号又は類似物のための領域を形成」するものではなく、単に周囲を照らし、また、サイドステップを容易に視認できるようにするための)「照明される領域を形成する開口」であって、文字列等の「表示物を形成する開口」でない点。 (ウ) 開口内に突入した隆起部が、本願補正発明は「隆起部が、壁部分の見える側、即ち表側と面一に形成されて」いるのに対して、引用発明の隆起部は、「壁部分の見える側、即ち表側と面一に形成」されたものでない点。 (エ) 壁部分、発光シート、中間部分の固定に関して、本願補正発明は「中間部分を壁部分に固定するための手段を有しており、 発光シートを、少なくとも1つの壁部分および中間部分に固定する接着テープが設けられ」ているのに対して、引用発明は、(壁部分に相当する)補強部材、(発光シートに相当する)発光体、(中間部分に相当する)ガーニッシュ16の透明の主体部分の相互固定について具体的な特定がなされていない点。 (オ) 発光シートの車両の給電網への接続に関して、本願補正発明は「コンバータ(26)を介して(車両の給電網に接続)」であるのに対して、引用発明は、「コンバータ(26)を介して」接続する特定がなされていない点。 4. 容易推考性の検討 (1)相違点(ア)(イ)に関して、 引用例2?4には、「光源の前面に配される開口部を有する板状体」が記載されており、その開口は形状が文字等であるので「表示物を形成する開口」といえるものである。 そして、引用例2、3記載の「字光式ナンバープレート」も、引用例4記載の「ダミータバコ」も、EL等の発光シートからなる光源と、その前面に配される開口部を有する板状体を有し、光で照らして明るくする(所謂照明)機能を用いた装置(すなわち、表示を意図したものも包含した、広義の照明装置。)である点で、引用発明と共通する技術分野に属するものといえる。 そして、引用発明の様な車体のドア開口部の下縁に設けた照明装置も含み、照明装置(広義の照明装置)において、その発光部の形状を、文字列や記号、その他任意の形状として意匠上の効果を期待することが周知慣用技術(例えば、実願平4-58840号(実開平6-18078号)のCD-ROM【0007】には、車両のサイド・ステップ部を照明する照明装置において、「照明装置9の不透明部12bによって囲まれる適宜形状、適宜模様の透明部12aは、・・・適宜形状の文字、数字、図柄を・・・表示するので・・・電飾し、見映えがする」ことが記載されている。)である以上、引用発明に発光部形状が文字列や記号等であることによる意匠上の効果を期待して、引用例2?4記載の上記構成を採用することに格別困難を伴うことはない。 そうすると、引用発明に、この引用例2?4記載の上記構成を用いて、照明される領域を形成する開口を、「表示物を形成する開口」として、本願補正発明の相違点(イ)に係る構成とすると共に、「足下を中心として照明でき、また、サイドステップを容易に視認できるように」することを意図した、ドアエントランスレールの光で照らして明るくする機能を、「表示物を形成する」ものとして、本願補正発明の相違点(ア)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。 (2)相違点(ウ)に関して、 2.(5)に記載した様に、引用例5には、ツマミの標示構造に関して「(ツマミベースの)凸部が、光源の前面に配される開口部を有する板状体の表側と面一に形成され」たものが周知慣用構成であることが記載されている。 引用例5記載の「ツマミの標示構造」も、光源と、その前面に配される開口部を有する板状体を有し、光で照らして明るくする(所謂照明)機能を用いた装置である点で、引用発明と共通する技術分野に属するものであり、「凸部(標示部2A)」は、板状体の開口部内に突入した部分であるので、引用発明の「開口内に突入した隆起部」に対応するものである。 そして、引用発明の照明される領域を形成する開口内に突入した隆起部に、引用例5により例示される上記周知慣用の構成を採用することに格別困難を伴うことはない。 (なお、拒絶理由通知において、「開口に透明部材が嵌合し開口から光を放出する照明構造において、開口の表面と透明部材とが面一である点は、・・・照明の技術分野における周知慣用技術である。」として例示された刊行物は、上記引用例5のみであるが、当該技術は、他にも、実願平1-92059号(実開平3-33737号)のマイクロフィルム、実願昭58-80854号(実開昭59-186888号号)のマイクロフィルム、特開平4-355016号公報にも示されている様に、いろいろな態様で周知のものである。) そうすると、引用発明に、該周知慣用構成を用いて、開口内に突入した隆起部を、「光源の前面に配される開口部を有する板状体の表側と面一に形成され」たものとして、本願補正発明の相違点(ウ)に係る構成とすることは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項といえる。 (3)相違点(エ)に関して、 部品固定に接着テープを用いることは周知慣用技術(例えば、前記実願平4-58840号(実開平6-18078号)のCD-ROMの【0025】には、「上カバー12Aと下カバー12Bとの衝合部分は両面テープ等のシール材14を介してプレート本体7に水密に取付けられ」と、実願平2-2690号(実開平3-94335号)のマイクロフィルムの明細書第4頁第12行?第5頁第1行には、「警告表示灯1は、その裏面に両面テープ6を貼着し、これを車両用ドア・・に装着して使用する」と記載されている。)である。 そして、引用発明の様な車体のドア開口部の下縁に設けた照明装置も含んだ照明装置において、その構成部品を相互に固定して独立した一つの製品とすることも周知慣用技術(例えば、前記実願平4-58840号(実開平6-18078号)のCD-ROM記載の照明装置であるキッキング・プレートは、発光部8を有する照明装置9がプレート本体7に取り付けられて、図2図示の様な製品形態をなしており、前記実願平2-2690号(実開平3-94335号)のマイクロフィルム記載の照明装置である警告表示灯1は、「発光素子2,2・・を・・固定した後・・透光性弾性シート5を被覆して」一つの製品をなしている。)である以上、引用発明の光で照らして明るくする(所謂照明)機能を用いたドアエントランスレールにおいて、その構成要素である、(壁部分に相当する)補強部材、(発光シートに相当する)発光体、(中間部分に相当する)ガーニッシュ16の透明の主体部分を相互に固定して、独立したドアエントランスレールなる一つの製品とすること、及び、その固着手段として上記周知慣用の接着テープを用いることに格別困難を伴うことはない。 そうすると、引用発明に、該周知慣用技術を用いて、「中間部分を壁部分に固定するための手段を有した」ものとすること、及び、「発光シートを、少なくとも1つの壁部分および中間部分に固定する接着テープが設けられ」たものとして、本願補正発明の相違点(エ)に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項といえる。 (4)相違点(オ)に関して、 エレクトロルミネッセンス素子等を光源とする照明装置において、コンバータを介して給電網に接続することは、周知慣用技術(例えば、前記実願平4-58840号(実開平6-18078号)のCD-ROM記載の発光パネル8′は、「電源から公知のインバータ回路を介して発光パネル8′に電流が供給される」ものであり、前記実願平1-92059号(実開平3-33737号)のマイクロフィルム記載の発光パネル10は「車載電源12にドアスイッチ4及び公知のインバータ回路13を介して接続されている」ものである。)である。 そして、引用発明の発光シートの車両の給電網との接続において、該周知の接続方法を用いて、「コンバータを介して」接続するものとして、本願補正発明の相違点(オ)に係る構成とすることは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項といえる。 (5)総合判断 そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用例2?5に記載の事項、及び、前記周知慣用技術から、当業者であれば予測できた範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2?5に記載の事項、及び、前記周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5. むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 第3 本願発明について 1. 本願発明 平成18年10月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-7に係る発明は、平成16年11月30日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-7に記載されたものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。 「【請求項1】 車両における表示物を形成するドアエントランスレール(5)であって、 見える側、即ち表側(21)と、見えない側、即ち裏側(14)とを有する壁部分(6)が設けられていて、該壁部分(6)は表示物を形成する開口(10,11,12,13)を有しており、 発光シート(15)が、壁部分(6)の裏側(14)に取り付けられていて、前記発光シート(15)の照明が、照明される領域を形成するための前記開口(10,11,12,13)から見え、ガラス状の中間部分(16)が前記壁部分(6)と発光シートとの間に設けられており、 前記中間部分(16)が前記開口(10,11,12,13)内に突入した隆起部(17,18,19,20)を有しており、これにより該隆起部(17,18,19,20)が、壁部分(6)の見える側、即ち表側と面一に形成されていることを特徴とする、車両における表示物を形成するドアエントランスレール。」 2. 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?5とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。 3. 対比・判断 本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明(下線部分が限定を付加した部分)が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、引用例2?5に記載の事項、及び、前記周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、引用例2?5に記載の事項、及び、前記周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 4. むすび したがって、本願発明(請求項1に係る発明)については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-28 |
結審通知日 | 2008-07-30 |
審決日 | 2008-08-14 |
出願番号 | 特願平7-155011 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60Q)
P 1 8・ 121- Z (B60Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小宮 寛之、平田 信勝 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
岸 智章 中川 真一 |
発明の名称 | ドアエントランスレール |
代理人 | 杉本 博司 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |