• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H03K
管理番号 1189952
審判番号 不服2006-21025  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2008-12-25 
事件の表示 特願2002-304142「遅延回路」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-179471〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月18日(パリ条約による優先権主張2001年10月19日、米国)の出願であって、平成18年7月19日付で手続補正がされたが、同年8月8日付で拒絶査定され、同年9月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月20日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年10月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正
平成18年10月20日付け手続補正書(以下、「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲について、次のように補正するものである。

(補正前)
「【請求項1】 遅延時間を設定する遅延回路であって、
電源供給電圧に結合された抵抗器と、
入力端で前記抵抗器に接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力端に接続された比較器と、
前記比較器及びアースの間に設けられたコンデンサとを備え、
前記コンデンサは、前記カレントミラー回路の出力端に接続され、前記遅延時間を設定するための電圧ランプ信号を前記比較器に入力すべく放電電流を発生することを特徴とする遅延回路。
【請求項2】 前記コンデンサ及び前記電源供給電圧との間に設けられ且つリセット信号に応じて動作するスイッチを備えることを特徴とする請求項1記載の遅延回路。
【請求項3】 前記コンデンサは、前記スイッチの動作に応じて前記放電電流の発生の開始及び停止を行うことを特徴とする請求項2記載の遅延回路。
【請求項4】 前記比較器は、前記スイッチを介して前記電源供給電圧に接続されていることを特徴とする請求項2又は3記載の遅延回路。
【請求項5】 前記抵抗器は、前記カレントミラー回路に入力すべき入力電圧を決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項6】 前記比較器には、当該比較器のトリップ点を決定するためのバイアス信号が入力されることを特徴とする請求項5記載の遅延回路。
【請求項7】 前記遅延時間は、前記コンデンサが前記放電電流の発生を開始してから、前記電圧ランプ信号の電圧値が前記バイアス信号の電圧値に到達するまでの時間であることを特徴とする請求項6記載の遅延回路。
【請求項8】 前記コンデンサが前記放電電流を発生している間、前記電圧ランプ信号の電圧値は、直線的な傾斜で下方に遷移することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の遅延回路。」


(補正後)
「【請求項1】 遅延時間を設定する遅延回路において、
一端が電源供給電圧に結合された抵抗器と、
入力端で前記抵抗器の他端に接続され当該抵抗器から第1のバイアス信号が入力されるカレントミラー回路と、
第1の入力端が前記カレントミラー回路の第1の出力端に接続された比較器と、
前記比較器の前記第1の入力端及びアースの間に設けられたコンデンサとを備え、
前記比較器は、当該比較器の前記第1の入力端としてのゲートを有する第1のトランジスタと、当該比較器の前記第2の入力端としてのゲートを有する第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタの間の回路節点に接続された第3のトランジスタと、前記第2のバイアス信号が供給され且つ前記第3のトランジスタのドレインに接続された第4のトランジスタとを含み、
前記コンデンサは、前記カレントミラー回路の第2の出力端に接続され、前記遅延時間を設定するための電圧ランプ信号を、前記電源供給電圧の電圧変動に実質的に影響されることがないように前記第1のバイアス信号の電圧値に基づいて放電電流を発生することにより、前記比較器の前記第1の入力端に入力し、
前記カレントミラー回路は、前記比較器のトリップ点を決定するための第2のバイアス信号を前記第1のバイアス信号の電圧値に基づいて発生して、前記比較器の第2の入力端に入力することを特徴とする遅延回路。
【請求項2】 前記コンデンサ及び前記電源供給電圧の間に設けられ且つリセット信号に応じて動作するスイッチを備え、前記コンデンサは、前記スイッチの動作に応じて前記放電電流の発生の開始及び停止を行うことを特徴とする請求項1記載の遅延回路。
【請求項3】 前記比較器の前記第1の入力端は、前記スイッチを介して前記電源供給電圧に接続されていることを特徴とする請求項2記載の遅延回路。
【請求項4】 前記抵抗器は、前記カレントミラー回路の前記入力端に入力すべき前記第1のバイアス信号の電圧値を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項5】 前記遅延時間は、前記コンデンサが前記放電電流の発生を開始してから、前記電圧ランプ信号の電圧値が前記第2のバイアス信号の電圧値に到達するまでの時間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項6】 前記コンデンサが前記放電電流を発生している間、前記電圧ランプ信号の電圧値は、直線的な傾斜で下方に遷移することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項7】 前記電源供給電圧の電圧変動は、前記比較器に入力されるまでの間に、該電源供給電圧の公称値から当該公称値よりも低い電圧値までの所定の範囲内で変動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項8】 前記カレントミラーの第1の出力端にゲートが接続され、アースにソースが接続され、且つ前記スイッチを介して前記電源供給電圧にドレインが結合された第5のトランジスタを備えることを特徴とする請求項2記載の遅延回路。
【請求項9】 前記第5のトランジスタの前記ドレインには、前記コンデンサ及び前記第1のトランジスタの前記ゲートの間の回路節点が接続されることを特徴とする請求項8記載の遅延回路。
【請求項10】 遅延時間を設定する遅延回路において、
一端が電源供給電圧に結合された抵抗器と、
入力端で前記抵抗器の他端に接続され当該抵抗器から第1のバイアス信号が入力されるカレントミラー回路と、
第1の入力端が前記カレントミラー回路の第1の出力端に接続された比較器と、
前記電源供給電圧と前記比較器の前記第2の入力端に接続された第1のトランジスタと、
前記比較器の前記第1の入力端及びアースの間に設けられたコンデンサとを備え、
前記コンデンサは、前記カレントミラー回路の第2の出力端に接続されており、前記遅延時間を設定するための電圧ランプ信号を、前記電源供給電圧の電圧変動に実質的に影響されることがないように前記第1のバイアス信号の電圧値に基づいて放電電流を発生することにより、前記比較器の前記第1の入力端に入力し、
前記第1のトランジスタ及び前記カレントミラー回路内の第2のトランジスタを用いて、前記比較器のトリップ点を決定するための第2のバイアス信号を前記第1のバイアス信号の電圧値に基づいて発生して前記比較器の第2の入力端に入力することを特徴とする遅延回路。
【請求項11】 前記コンデンサ及び前記電源供給電圧の間に設けられ且つリセット信号に応じて動作するスイッチを備え、前記コンデンサは、前記スイッチの動作に応じて前記放電電流の発生の開始及び停止を行うことを特徴とする請求項10記載の遅延回路。
【請求項12】 前記比較器の前記第1の入力端は、前記スイッチを介して前記電源供給電圧に接続されていることを特徴とする請求項11記載の遅延回路。
【請求項13】 前記抵抗器は、前記カレントミラー回路の前記入力端に入力すべき前記第1のバイアス信号の電圧値を決定することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項14】 前記遅延時間は、前記コンデンサが前記放電電流の発生を開始してから、前記電圧ランプ信号の電圧値が前記第2のバイアス信号の電圧値に到達するまでの時間であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項15】 前記コンデンサが前記放電電流を発生している間、前記電圧ランプ信号の電圧値は、直線的な傾斜で下方に遷移することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項16】 前記電源供給電圧の電圧変動は、前記比較器に入力されるまでの間に、該電源供給電圧の公称値から当該公称値よりも低い電圧値までの所定の範囲内で変動することを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項17】 前記カレントミラーの第1の出力端にゲートが接続され、アースにソースが接続され、且つ前記スイッチを介して前記電源供給電圧にドレインが結合された第3のトランジスタを備えることを特徴とする請求項11記載の遅延回路。
【請求項18】 前記第3のトランジスタの前記ドレインには、前記コンデンサ及び前記比較器の第1の入力端の間の回路節点が接続されることを特徴とする請求項17記載の遅延回路。
【請求項19】 前記比較器は、当該比較器の前記第1の入力端としてのゲートを有する第4のトランジスタと、当該比較器の前記第2の入力端としてのゲートを有する第5のトランジスタとを含むことを特徴とする請求項10乃至18のいずれか1項に記載の遅延回路。
【請求項20】 前記比較器は、さらに、前記第4のトランジスタと前記第5のトランジスタの間の回路節点に接続された第6のトランジスタと、前記第2のバイアス信号が供給され且つ前記第5のトランジスタのドレインに接続された第7のトランジスタとを含むことを特徴とする請求項19記載の遅延回路。」

(2)補正の適否
本件補正により、請求項の数は補正前の8から補正後の20へと増加するものである。補正後の請求項10-20に係る発明は、補正前の請求項1-8に係る発明に対応するものの、補正後の請求項1-9に係る発明については、補正前のいずれの請求項に係る発明にも対応するものがないから、この請求項の数の増加は択一的引用形式の変更により形式的に増加したものではない。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正による特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月19日付けで補正された明細書の記載からみて、前記補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるが、以下に再掲する。

「【請求項1】 遅延時間を設定する遅延回路であって、
電源供給電圧に結合された抵抗器と、
入力端で前記抵抗器に接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力端に接続された比較器と、
前記比較器及びアースの間に設けられたコンデンサとを備え、
前記コンデンサは、前記カレントミラー回路の出力端に接続され、前記遅延時間を設定するための電圧ランプ信号を前記比較器に入力すべく放電電流を発生することを特徴とする遅延回路。」

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭55-45250号公報(以下、「引用例」という。)には、従来のタイマー回路として図面とともに次の記載がある。

イ.「第1図は従来のタイマー回路の構成図である。図において1はコンパレータ(電圧比較回路)で、このコンパレータ1の非反転入力端には電源と接地点との間に直列接続された2つの抵抗2,3の直列接続点の電圧が基準電圧V_(REF)として入力される。一方反転入力端には、抵抗4を介して充電される容量5の端子電圧V_(c)が入力される。そしてコンパレータ1はその非反転入力端および反転入力端それぞれの入力電圧の値に応じて、その出力信号が正電圧あるいは零に変化するようになつている。さらに上記容量5と並列にスイツチ6が接続されている。」
(第1頁左下欄第19行-右下欄第10行)

ロ.「このように接続された回路において、いま第2図に示すタイミングで、いままで閉じていたスイツチ6が開放する。スイツチ6が開放することにより容量5は充電可能な状態となり、この後容量5は抵抗4を流れる電流により充電を行うことになる。そして充電時における容量5の端子電圧V_(c)は第2図に示すように順次上昇する。この電圧V_(c)の値が基準電圧V_(REF)にまで達していない期間では、コンパレータ1の出力信号Sは第2図に示すように正電圧になつている。上記電圧V_(c)が基準電圧V_(REF)に到達すると、コンパレータ1の出力信号Sは零に反転する。すなわち、上記回路はスイツチ6の開放後から一定時間Tのあいだ信号Sが正電圧となるタイマー回路として作用し、信号Sが正電圧となつている時間すなわちタイマー時間Tは基準電圧V_(REF)の値により設定される。」
(第1頁右下欄第10行-第2頁左上欄第7行)

ハ.「このためさらに従来では第3図に示すように、前記抵抗4の代わりにPNP型のトランジスタ7,8からなるカレントミラー回路と抵抗9とにより構成された定電流回路10を設け、この定電流回路10から出力される定電流によつて容量5を充電するようにしている。なお上記回路を集積回路化する場合には、容量5および抵抗9は集積回路装置に外付けされる。上記容量5を定電流によつて充電すると、その端子電圧V_(c)’は第4図に示すように一定の傾斜で上昇していく。このためあらゆる長さのタイマー時間Tを精密に設定することが可能となる。」
(第2頁左上欄第14行-右上欄第5行)

ニ.「またカレントミラー回路ではI_(1)と同じ値の電流がトランジスタ8にも流れるわけであるから、容量5の充電電流I_(2)はI_(1)に等しい。」
(第2頁右上欄第15-17行)

上記イ.?ニ.及び関連する図面並びに技術常識を考慮すると、

(a)引用例の第3図には従来のタイマー回路の構成図が記載されており、当該図面における抵抗9の下端は接地点に接続されていることが読みとれる。このことから、当該下端の電圧については、接地電圧が与えられているということができる。

(b)カレントミラー回路の技術常識に照らせば、引用例の第3図におけるカレントミラー回路は、ダイオード接続されたPNP型トランジスタ7がカレントミラー回路の入力側にあたり、該PNPトランジスタ7のベース・コレクタの共通接続端を「カレントミラー回路の入力端」ということができる。さらに、抵抗9との関係でいえば、「カレントミラー回路の入力端」には抵抗9が接続されているということができる。

(c)上記(b)からして、引用例の第3図におけるPNP型トランジスタ8のコレクタ端を「カレントミラー回路の出力端」ということができる。さらに、コンパレータ1との関係でいえば、「カレントミラー回路の出力端」にはコンパレータ1が接続されているということができる。

(d)第3図に記載された容量5は、コンパレータ1(の反転入力端)及び接地点の間に設けられていることを読みとれる。

(e)上記(c)と関連して、第3図に記載された容量5は、上記(c)の「カレントミラー回路の出力端」に接続されているということもできる。そして、摘記ハ.の「上記容量5を定電流によつて充電すると、その端子電圧V_(c)’は第4図に示すように一定の傾斜で上昇していく。」という記載、第4図における端子電圧V_(c)’の波形の記載、及び第3図の記載を勘案すると、容量5は、“一定の傾斜を有する電圧信号”(容量5の端子電圧V_(c)’、第4図におけるV_(c)’の波形のうち傾斜を有した部分。)がコンパレータ1に入力すべく、充電電流I_(2)(第3図及び摘記ニ.)を発生させるものであると解することができる。
さらに、第4図の記載からタイマー時間Tは、スイッチ6の開放により始まる“一定の傾斜を有する電圧信号”(容量5の端子電圧V_(c)’)がV_(REF)に至るまでの時間で規定されていることを読みとることができること、及び摘記ハ.の「このためあらゆる長さのタイマー時間Tを精密に設定することが可能となる。」との記載をも併せて勘案すると、“一定の傾斜を有する電圧信号”はタイマー時間Tを設定するためのものであることも明らかである。

したがって、引用例には

「タイマー時間Tを設定するタイマー回路であって、
接地電圧に結合された抵抗9と、
入力端で前記抵抗9に接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力端に接続されたコンパレータ1と、
前記コンパレータ1と接地点の間に設けられた容量5とを備え、
前記容量5は、前記カレントミラー回路の出力端に接続され、前記タイマー時間Tを設定するための一定の傾斜を有する電圧信号を前記コンパレータ1に入力すべく充電電流I_(2)を発生するタイマー回路。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明における「タイマー時間T」は、“一定の傾斜を有する電圧信号”がV_(REF)に至るまでの、スイッチ6の開放を基準時点とした遅延時間とみることができるから、本願発明の「遅延時間」と実質的に同じものである。したがって、引用発明の「タイマー時間Tを設定するタイマー回路」は、本願発明の「遅延時間を設定する遅延回路」に相当する。

(b)引用発明の「接地電圧に結合された抵抗9」と、本願発明の「電源供給電圧に結合された抵抗器」とは、結合されている電圧の態様は異なるものの、所定の電圧が抵抗器に結合されている点では共通している。

(c)引用発明の「コンパレータ1」「容量5」及び「接地点」は、各々、本願発明の「比較器」「コンデンサ」及び「アース」と同じものである。

(d)時間に対して一定の傾斜を有する信号をランプ信号と称するのは技術常識であるから、引用発明の「一定の傾斜を有する電圧信号」は、本願発明の「電圧ランプ信号」に相当する。そして、上記(a)の対応関係も考慮すると、引用発明の「タイマー時間Tを設定するための一定の傾斜を有する電圧信号」は、本願発明の「遅延時間を設定するための電圧ランプ信号」に相当することも明らかである。

(e)「コンデンサ」(容量5)の動作に関し、引用発明の「充電電流I_(2)を発生すること」と、本願発明の「放電電流を発生すること」とは、発生する電流の態様は相違するものの、「電流を発生する」点では共通している。

したがって、引用発明と本願発明とは

「遅延時間を設定する遅延回路であって、
所定の電圧に結合された抵抗器と、
入力端で前記抵抗器に接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力端に接続された比較器と、
前記比較器及びアースの間に設けられたコンデンサとを備え、
前記コンデンサは、前記カレントミラー回路の出力端に接続され、前記遅延時間を設定するための電圧ランプ信号を前記比較器に入力すべく電流を発生する遅延回路。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
抵抗器に結合される所定の電圧の態様に関し、本願発明は「電源供給電圧」であるのに対し、引用発明は「接地電圧」である点、

(相違点2)
コンデンサが発生する電流の態様に関し、本願発明は「放電電流」であるのに対し、引用発明では「充電電流I_(2)」である点。


(4)当審の判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
一般に「充放電」と総称される様に、コンデンサ(容量)に充電電流または放電電流を供給してその電圧を変化させることは、電子回路における周知の慣用手法であるが、例えば、コンデンサにカレントミラー回路の出力電流を供給することで、コンデンサに電圧ランプ信号を発生させる形式の遅延回路についても、カレントミラー回路を、電源供給電圧に結合した抵抗器を入力側に備えた電流吸い込み型のカレントミラー回路とし、(電荷が吸い込まれることで)コンデンサが発生する放電電流によりコンデンサに電圧ランプ信号を発生させることは、拒絶査定で周知例として引用された特開平11-326559号公報(第4図、段落26-30)に記載されているように、周知技術である。
ここで、当該周知技術を引用発明の遅延回路に適用することに格別の困難はないから、抵抗器に結合される所定の電圧を「電源供給電圧」とし、コンデンサが発生する「放電電流」により電圧ランプ信号を発生させるようにすることは、当業者が容易になし得たものである。


(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-23 
結審通知日 2008-10-27 
審決日 2008-11-10 
出願番号 特願2002-304142(P2002-304142)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H03K)
P 1 8・ 121- Z (H03K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 稔  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 柳下 勝幸
石井 研一
発明の名称 遅延回路  
代理人 村松 聡  
代理人 別役 重尚  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ