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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1189953
審判番号 不服2006-22951  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-11 
確定日 2008-12-25 
事件の表示 平成 9年特許願第200608号「航空機用空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月16日出願公開、特開平11- 44463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は,平成9年7月25日の出願であって,その請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「航空機のエンジン又は補助動力部から高温高圧の圧縮空気を抽出し,これを空調部で調温,調圧した後,予圧室に供給するようにしたものにおいて,
予圧室と空調部の入口とを電動コンプレッサを有する再循環ラインを介して接続し,予圧室から排出される空気の一部を圧縮して空調部に導き再循環させるようにし,空調部の入口における再循環ラインが接続する地点よりも前にプレッシャレギュレータを配置したことを特徴とする航空機用空気調和装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前である平成3年4月17日に頒布された「特開平3-91630号公報 」(以下「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

ア.「本発明は,室内を快適な居住環境に整えるための空気調和装置に関するものである。」(第1ページ左下欄第14-15行目)

イ.「ところで,この種の空気調和装置を,例えば高層ビルや航空機等のように空気の希薄な場所で使用する場合には,室内を外気よりも高い圧力に与圧する必要がある。しかるに,従来のものでは,与圧分のポテンシャルをもった空気を排気系路から大量に排気するため,これに見合う大量の新鮮空気を室外から取り込んで与圧しなければならない。このため,高圧空気源に掛かる負担が必要以上に増大している不具合がある。しかも,給気系路は冷暖房を兼ねているため,取り込んだ外気は一旦与圧圧力以上に加圧されなければならず,加減圧機構に掛かる負担も極めて大きいものとなっている。
本発明は,このような課題に着目してなされたものであって,高圧空気源及び加減圧機構に掛かる負担を有効に軽減することにより,従来に比して効率良く稼動させることのできる空気調和装置を提供することを目的としている。」(第1ページ右下欄6行-第2ページ左上欄第3行目)

ウ.「このような構成により,与圧状態にある室内空気の大半を循環系路を循環させつつ加減圧することによって冷暖房し,給気系路からは0_(2)を補充するために与圧された新鮮空気を室外から室内に導入し,排気系路からはそれに見合う汚れた空気を室内の圧力を損なわないようにして室外に排気するようにする。しかして,このような構成によると,給気系路では従来ほど大量の外気を取り込んで与圧する必要がなくなり,高圧空気源に掛かる負担を有効に軽減することができる。また,循環系路においても,冷暖房のために必要なヘッド差を少なくとも与圧圧力の分だけ低減できるので,加減圧機構に掛かる負担も同時に軽減されたものとすることができる。さらに,循環系路の途中に給気系路の終端を接続しておくと,循環系路の人口に電動コンプレッサ等を配置した場合に,途中から導入される新鮮空気の分だけ該電動コンプレッサの所要動力を小さく抑えることができることになる。」(第2ページ左上欄第16行-同右上欄第14行目)

エ.「この実施例の空気調和装置は,航空機のキャビン(或いはコクピット)を対象としており,図面に示すように,キャビン1の空気を加減圧機構2を介して循環させ冷暖房を行う循環系路3と,前記キャビン1にエンジン4(高圧空気源)からブリードエアを導入する給気系路5と,導入されるブリードエアと略同量の汚れた空気を前記キャビン1から機外に導出する排気系路6とを備えた上に,更に循環系路3の途中に給気系路5の終端を接続している。加減圧機構2は,タービン・コンプレッサ,熱交換機,水分離器等を備えた一般的なもので,上流に電動コンプレッサ2aを配置して予めある程度にまで昇圧するようにしている。」(第2ページ右上欄第18行-同左下欄第10行目)

オ.「このような構成により,循環系路3ではキャビン1の与圧空気を循環させて加減圧することにより冷暖房するようにし,給気系路5からは必要な0_(2)摂取量が得られるだけのブリードエアを熱交換器7を通じて冷却した後に循環系路3の途中に導入するようにし,排気系路6からはそれに見合う汚れた空気(CO_(2)を比較的多量に含む)をキャビン1の圧力を損なわないようにして機外に排気するようにする。しかして,このような構成によると,給気系路5では従来ほど大量のブリードエアを取り込む必要がなくなるため,抽気はエンジン4の低圧段から取っても十分賄うことができる。このため,エンジン推力が大巾に低下することを有効に防止することが可能になる。また,循環系路3においても,冷暖房のために必要なヘッド差を従来に比して少なくとも与圧圧力分は確実に低減することができるので,電動コンプレッサ2a等に掛かる負担も同時に軽減されたものとすることができる。さらに,新鮮空気を電動コンプレッサ2aの下流に導入するようにしておくと,例えばキャビン1の冷暖房を適切に行うために必要な循環空気量をωとし,新鮮空気導入量をω_(B)とすれば,電動コンプレッサ2aの賄う空気量はω-ω_(B)で済むことになり,これに対応した分だけ前記電動コンプレッサ2aの所要動力を一層低減することが可能になる。また,循環系路3がこのような電動コンプレッサ2aを備えていると,コントローラ等を通じて回転数制御を行うことにより,システムの最適制御を図ることも容易となる。さらに,図示装置では熱交換器7において給気と排気とを熱交換させるようにしているので,排気が有する冷熱を給気に与えて加減圧機構2に掛かる負担をより一層軽減することが可能になる。さらにまた,給気系路5(バルブ,熱交換器等)が従来に比してスケールダウンするので,系の軽量化が果たされ,保守・整備性・信頼性の面でも向上されたものとすることができる。」(第2ページ左下欄第15行-第3ページ左上欄第11行目)

したがって,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「航空機のエンジンからブリードエアを抽出し,これを加減圧機構で温調・調圧した後,キャビンに供給するようにしたものにおいて,キャビンと加減圧機構との入口とを電動コンプレッサを有する循環系路を介して接続し,キャビンから排出される空気の一部を圧縮して加減圧機構に導き再循環させるようにし,給気系路と循環系路とを加減圧機構の入口より前の地点で接続した空気調和装置。」

3.対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「ブリードエア」は,本願発明の「高温高圧の圧縮空気」に相当し,同様に,「加減圧機構」は「空調部」に,「キャビン」は「予圧室」に,「循環系路」は「再循環ライン」に,「空気調和装置」は「航空機用空気調和装置」に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「給気系路」は,本願発明の抽気ラインのうち,「空調部の入口における再循環ラインが接続する地点より前」のものに相当する。

したがって,両者は,

「航空機のエンジンから高温高圧の圧縮空気を抽出し,これを空調部で調温,調圧した後,予圧室に供給するようにしたものにおいて,予圧室と空調部の入口とを電動コンプレッサを有する再循環ラインを介して接続し,予圧室から排出される空気の一部を圧縮して空調部に導き再循環させるようにした航空機用空気調和装置。」

である点で一致し,次の点で相違する。

<相違点>

本願発明では,「空調部の入口における再循環ラインが接続する地点よりも前にプレッシャレギュレータを配置」しているのに対し,引用発明では,そのような構成を有していない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

空気を供給側から負荷側に供給するものにおいて,供給側から供給される空気の状態に関わりなく,負荷側に対し所定圧力に調整して空気の供給を可能とするために,供給側にプレッシャレギュレータ(圧力調整手段)を配置することは,本願出願前,周知の技術(例えば,特開平3-117831号公報,特開昭62-120296号公報を参照。)である。

そして,引用発明の「給気系路」が,空気の供給側の構成であることは,当業者にとって明らかである。

したがって,引用発明において,周知技術を適用し,給気系路にプレッシャレギュレータを配置して,上記相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

5.むすび

したがって,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-22 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-11 
出願番号 特願平9-200608
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫長崎 洋一  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
豊島 唯
発明の名称 航空機用空気調和装置  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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