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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1189966
審判番号 不服2007-283  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-09 
確定日 2008-12-25 
事件の表示 平成10年特許願第 49741号「複層ガラス用のスペーサ及び複層ガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月14日出願公開、特開平11-247540〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成10年3月2日の出願であって、平成18年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月9日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

【2】補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年1月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容・目的
平成19年1月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前(平成18年10月16日付け手続補正書を参照。)に、

「【請求項1】
複数枚のガラス板と、該複数のガラス板相互間に中空層が形成されるように複数のガラス板の周縁部に介在配置されるスペーサと、該スペーサとガラス板との間に介在される一次シール材と、前記スペーサの中空層に直面しない側の基底面とガラス板の周縁部とで形成される凹部に充填された二次シール材とを備えた複層ガラスにおいて、
前記スペーサは、前記中空層に直面する面板部とガラス板面に対向する側板部と中空層に直面しない側の基底板部とを備えた硬質樹脂製のスペーサ本体部と、前記面板部を除く両側板部と基底板部とに被着された金属製の透湿防止部とからなることを特徴とする複層ガラス。」
とあったものを、

「【請求項1】
複数枚のガラス板と、該複数のガラス板相互間に中空層が形成されるように複数のガラス板の周縁部に介在配置されるスペーサと、該スペーサとガラス板との間に介在される一次シール材と、前記スペーサの中空層に直面しない側の基底面とガラス板の周縁部とで形成される凹部に充填された二次シール材とを備えた複層ガラスにおいて、
前記スペーサは、前記中空層に直面する面板部とガラス板面に対向する側板部と中空層に直面しない側の基底板部とを備えた硬質樹脂製のスペーサ本体部と、前記面板部を除く両側板部と基底板部との外面に被着された金属製の透湿防止部からなり、
かつ前記一次シール材は、前記透湿防止部の側面部と該側面部に対向する前記ガラス板面との間に介在する、
ことを特徴とする複層ガラス。」
と補正しようとするものである。

本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「一次シール材」が「透湿防止部の側面部と該側面部に対向するガラス板面との間に介在する」ことを限定したものと認められるから、本件補正は、少なくとも、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで、上記本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか、について以下に検討する。

2.特許法第29条第2項違反について
2-1.引用刊行物
(1)刊行物1
本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-229172号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(1a)「2枚のガラス板の外周間に、中空で内部に乾燥剤が充填され、内周面に通気孔が形成された方形のスペーサを気密状態で介設してなる複層ガラスであって、上記スペーサをガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂の押出形材により形成すると共に、そのコーナー部を斜めに切断して突き合せ溶着し、スペーサと各ガラス板との間及びスペーサの外周にシール材を充填してなることを特徴とする複層ガラス。」(【請求項1】)
(1b)「【作用】上記構成によれば、スペーサを形成するガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂が、強度及び耐熱性に優れ、線膨張率及び熱伝導率が低いという性質を有しているため、金属製或いは単なる樹脂製のスペーサを用いたものよりも断熱性の高い複層ガラスが得られる。・・・」(段落【0007】)
(1c)「図1において、1は複層ガラスで、この複層ガラス1は2枚のガラス板2の外周間に、中空で内部(中空部)3に乾燥剤4が充填され、内周面に通気孔5が形成された方形のスペーサ6を気密状態で介設して構成されている。このスペーサ6は、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂の押出形材により形成され、・・・
上記スペーサ6は、図2に示すように中空の断面ほぼ凸状に形成され、後述するシール材との密着性をよくするために、両側部には複数の線状溝7が長手方向に形成されると共に、外周側となる部分には両側から中央に向って階段状に隆起した段部8が形成されていることが好ましい。そして、上記スペーサ6は2枚のガラス板2間に挟持され、各ガラス板2とスペーサ6との間及びスペーサ6の外周にはシール材9が充填されている。・・・そして、上記スペーサ6は2枚のガラス板2間に挟持され、各ガラス板2とスペーサ6との間及びスペーサ6の外周にはシール材9が充填されている。シール材9としては、スペーサ6の材質との間で化学変化を生じ難いシール材、例えばブチルゴムが好ましい。」(段落【0009】?【0010】)
(1d)「・・・次に、図6に示すようにスペーサ6の両側部に一次シール材(ブチルゴム、110?130℃)9aを塗布して、図7に示すように2枚のガラス板2を密着させ、図8に示すように両ガラス板2間のスペーサ6の外周に二次シール材(ブチルゴム或いはホットメルト等)9bを充填することにより内部が密封状態の複層ガラス1が完成する。・・・」(段落【0013】)

以上の記載事項(1a)?(1d)から見て、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「2枚のガラス板2と、該2枚のガラス板2の外周間に介設されるスペーサ6と、該スペーサ6とガラス板2との間に充填された一次シール材9aと、両ガラス板2間のスペーサ6の外周に充填された二次シール材とを備えた複層ガラスにおいて、
前記スペーサ6は、内周面、両側部、外周側となる部分とを備えたガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂製である複層ガラス。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-111600号(実開昭61-26886号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(2a)「従来、第2図(a)(b)に示すように、所定の間隔をおいて一対のガラス板10a,10bを対峙させ、該ガラス板10a,10bの端部間に、乾燥剤11入りの筒状サッシ12を介装した複層ガラスにおいて、前記筒状サッシ12をアルミニーュム或いは鉄で形成した複層ガラスが知られている。」(明細書2頁3?9行)
(2b)「・・・10は複層ガラス本体で、一対のガラス板10a,10bを所定間隔をおいて対峙してなる。
20は乾燥剤11を介在した断面6角形の筒状サッシで、前記複層ガラス本体10のガラス板10a,10bの両側端部間に上下方向に介装されている。また、該筒状サッシ20は一体に押出し成型してなり、前記ガラス板10a,10bの両側端側の一側板21の外側をステンレス部材で、内側を透明性の合成樹脂部材で形成し、また、前記ガラス板10a,10bの中央部側の他側板22を透明性の合成樹脂部材で形成している。
尚、11は前記筒状サッシ20内に収容された乾燥剤、13はガラス板10a,10bの両側端と該筒状サッシ20の一側板21の外側に形成されるスペースに充填されたシール部材、・・・」(明細書4頁3?17行)
(2c)「また、本考案に係る複層ガラスの筒状サッシ20は合成樹脂部材により形成されているから、金属製のものに比べ熱伝達率が低く外気温度の影響を受けにくくなり、ガラス板10a,10bの内側に結露が生じにくくなる。また、筒状サッシ20はガラス板10a,10bの両側端側の一側板21外側をステンレス部材で形成していることから、複層ガラス本体10外部の湿気は一側板21により遮断され、透湿を防ぎ、この点においても結露が防止される。」(明細書5頁11?20行)

以上の記載事項(2a)?(2c)から見て、刊行物2には、以下の技術が記載されているものと認められる。

「所定の間隔をおいて対峙させた一対のガラス板10a,10bの端部間に介装された筒状サッシにおいて、
筒状サッシにおけるガラス板10a,10bの両側端側を構成する合成樹脂製の一側板21の外側にステンレス部材を配することによって、積層ガラス本体10外部からの湿気を遮断する技術。」(以下、「刊行物2記載の技術」という。)

2-2.対比・判断
本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「2枚のガラス板2」、「両ガラス板2間のスペーサ6の外周」、「内周面」、「両側部」、「外周側となる部分」および「ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂製」が、本件補正発明の「複数枚のガラス板」、「スペーサの中空層に直面しない側の基底面とガラス板の周縁部とで形成される凹部」、「中空層に直面する面板部」、「ガラス板面に対向する側板部」、「中空層に直面しない側の基底板部」および「硬質樹脂製」に相当しており、刊行物1記載の発明においても2枚のガラス板2の間にスペーサを介設することによって2枚のガラス間に中空層が形成されることは明らかであるから、両者は、

「複数枚のガラス板と、該複数のガラス板相互間に中空層が形成されるように複数のガラス板の周縁部に介在配置されるスペーサと、該スペーサとガラス板との間に介在される一次シール材と、前記スペーサの中空層に直面しない側の基底面とガラス板の周縁部とで形成される凹部に充填された二次シール材とを備えた複層ガラスにおいて、
前記スペーサは、前記中空層に直面する面板部とガラス板面に対向する側板部と中空層に直面しない側の基底板部とを備えた硬質樹脂製である、
複層ガラス。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本件補正発明は、スペーサの面板部を除く両側板部と基底板部との外面に、金属製の透湿防止部が被着されており、一次シール材が、透湿防止部の側面部と該側面部に対向するガラス板面との間に介在するのに対して、刊行物1記載の発明は、スペーサは金属製の透湿防止部を備えるものではない点。

相違点について検討する。
刊行物1記載の発明において、積層ガラス内部に湿気を侵入させることが好ましくないことは当業者にとって自明であり、該湿気の侵入を防止すべく刊行物2記載の技術を採用することは当業者が容易に想到することである。
そして、刊行物2記載の技術においては、金属製の透湿防止部であるステンレス板は一側板21(基底板部と両側板部の外方側の一部)に設けられるものであって、面板部を除く両側板部と基底板部の全部分に設けられるものではないが、金属製の透湿防止部をスペーサ本体のどの程度の範囲に設けるかは、防湿性能や断熱性能等を考慮して当業者が適宜決定すべき事項であって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を採用するに際して、より透湿性能を向上させるべく金属製の透湿防止部を基底板部と両側板部の全部分にわたって設けることは当業者が必要に応じて適宜決定できることである。
また、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を採用した際に、一次シール材を透湿防止部の側面部と該側面部に対向するガラス板面との間に介在させることは、シール材を設ける技術的意味から考えて、当然採用すべき構成に過ぎない。
そして、本願補正発明が奏する作用効果が、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術が奏する作用効果に比べて格別のものとは認められない。
したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定のむすび
以上より、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり、決定する。

【3】本願発明
1.請求項1に係る発明は、平成18年10月16日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記のとおりのものと認める。(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1、及び、上記刊行物2には、「【2】 2. 2-1」に記載したとおりの技術が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から「一次シール材」の限定事項である「透湿防止部の側面部と該側面部に対向するガラス板面との間に介在する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「【2】 2. 2-2」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることが出来たものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-21 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-12 
出願番号 特願平10-49741
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人久保 省二  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 複層ガラス用のスペーサ及び複層ガラス  

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