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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1189970 |
審判番号 | 不服2007-887 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-11 |
確定日 | 2008-12-25 |
事件の表示 | 特願2002-132476「留守番機能付き電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月14日出願公開、特開2003-324518〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年5月8日の出願であって、平成18年12月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年1月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成18年4月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「発信者側から伝言メッセージについてのアクセス権限を証するアクセス認証情報の入力を受け付ける入力手段と、 伝言メッセージと、前記アクセス認証情報と、を関連付けて、記憶保持するメモリと、 不在応答の際に、前記伝言メッセージの操作要求信号を受信した場合、前記アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応するすべての伝言メッセージについての操作を許可する制御手段と、を備えたこと、 を特徴とする留守番機能付き電話機。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「発信者側から伝言メッセージについてのアクセス権限を証するアクセス認証情報の入力を受け付ける入力手段と、 伝言メッセージと、前記アクセス認証情報と、を関連付けて、記憶保持するメモリと、 不在応答の際に、前記伝言メッセージの操作要求信号を受信した場合、前記アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応するすべての伝言メッセージについての操作を許可する制御手段と、を備え、 前記アクセス認証情報は、回線網側から通知される発信者側の発信者番号の一部を発信者側で任意に選んで決定したものであること、 を特徴とする留守番機能付き電話機。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「アクセス認証情報」を「回線網側から通知される発信者側の発信者番号の一部を発信者側で任意に選んで決定したものであること」と限定して特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号の規定に適合している。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)どうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 A.原審の拒絶理由に引用された特開平10-257168号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0025】不特定話者(以下Xさんと呼ぶ)がアンサリング・システムの所有者にメッセージを伝える場合、先ずその所有者に電話する。すると、留守録設定のため固定応答メッセージ発生装置(60)より音声合成音が再生装置(50)で再生され送受信装置(10)から公衆回線に送出され、Xさんはその音声合成音に従って図2(a)のフローチャートに示すように、先ずIDを入力し、続いてメッセージを入力する。 【0026】例えば、“ただいま、留守にしています。IDを入力下さい。”と聞いてくるとXさんは、図2(a)のステップS1でグループ登録するメッセージであればグループIDを入力し、個人のメッセージであれば別のIDを入力する。もしグループIDを入力すると音声合成音で“グループ登録します。メッセージを入力し、終了したら#キーを押して下さい。”と聞いてくるので、それに従って入力する。また、個人登録であれば、“メッセージを入力し、終了したら#キーを押して下さい。”と聞いてくるので、それに従って入力する。これにより、図2(a)のステップS2によるID登録が行われ、続いてステップS3でメッセージを入力し、メッセージの録音を行わせる。」(第4頁6欄、段落【0025】?【0026】) ロ.「【0034】今、XさんがYさんにメッセージを送り、Yさんがそのメッセージを処理していない時、Xさんが再度Yさんに電話すると、先ず“ただいま、留守にしています。IDを入力下さい。”と固定応答メッセージで聞いてくるので図2(b)のフローチャートに示すように先ずステップS5で、先ほどと同じIDを入力する。入力したIDは、ID登録メモリー30に既に記録されている。IDと同一であるか否かをステップS6で判断され、既に記録されているIDと同一の場合はステップS7に進み、このステップS7で“メッセージを修正しますか、消去しますか。修正は1、消去は2と押して最後に#キーを押してください。”と聞いてくる。修正を行う場合は、ステップS8で1キー及び#キーを押し、ステップS9で修正メッセージを入力し最後に#キーを押すと、ステップS10で古いメッセージに代わり修正メッセージが個人用メッセージメモリー(70)に記憶される。消去を行う場合は、ステップS11で“2”キー及び#キーを押すと、ステップS12で既に入力していたメッセージが消去され、ステップS13で消去動作が完了する。」(第5頁7?8欄、段落【0034】) ここで、上記記載、関連図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例1の「アンサリング・システム」は、先に録音された個人のメッセージについてのIDの入力を受け付けるものであって、このIDは前記メッセージについてのアクセス権限を証するものである。また、前記メッセージは個人用メッセージメモリー(70)に記憶され、前記IDは前記メッセージと関連付けてID登録メモリー(30)に記憶されているものと認められる。また、「修整は1、消去は2」を押し、最後に「#キー」を押すことは、操作である。また、不特定話者は公衆回線からアンサリング・システムにアクセスしていることから、入力された前記IDは公衆回線側から通知されるものである。 したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。 「不特定話者からメッセージについてのアクセス権限を証するIDを入力を受付け、 メッセージと、前記IDと、を関連付けて、記憶保持するID登録メモリー(30)および個人用メッセージメモリー(70)と、 留守の際に、前記IDの入力を受け付けて、前記IDに対応するメッセージについての操作を許可し、 前記IDは公衆回線側から通知されるアンサリング・システム。」 B.同じく原審の拒絶理由に引用された特開2000-253139号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0018】通信装置17が着信し、留守モードで有れば、通信装置17は留守応答メッセージを再生し、リモート使用者が例えば第1端末の「*」キーを入力すれば、通信装置17は「パスワードを入力して下さい」というメッセージを再生する。 【0019】リモート使用者が正しいパスワードを入力すれば、制御部1はリモート再生モードである事を認識し第1端末から送信される信号を受信する(図2のS1)。」(第3頁3欄、段落【0018】?【0019】) したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。 「留守モードの際に、「*」キーの入力を受信した場合、パスワードの入力を受け付ける通信装置。」 C.同じく原審の拒絶理由に引用された特開平1-143456号公報(以下、「引用例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 「一方、加入者6はこの音声ガイダンスの指示によって発信番号とパスワードを入力する。すると、制御部4は、回線インターフェイス部1に設置されている操作信号受信部からこの発信番号とパスワードを受信する。そして、制御部4は、受信した発信番号とパスワードに日付と時刻を付加して蓄積部3に蓄積させ、続いて、音声ガイダンスによって加入者6に対して伝言入力を指示する。 加入者6が伝言を入力し始めると、音声符号復号化部2では回線インターフェイス部1を介して入力される伝言を符号化する。そして、蓄積部3では、この符号化した伝言を先ほど入力した発信番号などに続けて蓄積する。 このようにして伝言録音が終了した後、加入者6において伝言の訂正あるいは削除が生じた場合は、加入者6は再び加入者7に着信する。 そして、加入者6は先ほどと同様の音声ガイダンスに従って制御部4に対して訂正削除を指示する。また、このとき訂正あるいは削除したい伝言の発信番号とパスワード、および必要に応じて日付と時刻を入力する。 制御部4は、入力された発信番号とパスワード、および日付ならびに時刻と一致する伝言を蓄積部3より選択する。そしてその伝言内容を音声符号復号化部2によって音声に復号化し、回線インターフェイス部1と交換機5を介して加入者6に再生する。 加入者6は伝言を確認した後、訂正の場合は、訂正を制御部4に指示して、新しい伝言を入力する。一方、制御部4では訂正が指示されると、回線インターフェイス部1を介して入力される新しい伝言を音声符号復号化部2で符号化し、蓄積部3の伝言と入れ換える。 また、削除の場合は、削除を制御部4に指示する。そして、制御部4は、削除を指示されると蓄積部3の発信番号とパスワード、および日付ならびに時刻、さらには伝言内容を削除する。」(第2頁左下欄第16行目?第3頁左上欄第16行目) ここで、上記記載、関連図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例3の「音声蓄積装置」は、先に蓄積された伝言についての発信番号の入力を受け付けるものであって、この発信番号は前記伝言についてのアクセス権限を証するものである。 したがって、上記引用例3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が開示されている。 「加入者6から伝言についてのアクセス権限を証する発信番号の入力を受け付ける音声蓄積装置。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明1とを対比すると、 a.引用発明1の「不特定話者」はアンサリング・システムに対しての発信者であり、 b.引用発明1の「メッセージ」は留守録されるものであるから伝言メッセージであり、 c.引用発明1の「ID」はアンサリング・システムへのアクセスを認証するものであるからアクセス認証情報であり、 d.引用発明1の「アンサリング・システム」は、留守番電話装置で用いられるから、補正後の発明の「留守番機能付き電話機」と一致し、 e.引用発明1の「アンサリング・システム」は不特定話者からのメッセージについてのIDを受け付けていることから、受け付けるための入力手段が当然存在し、 f.引用発明1の「アンサリング・システム」は留守の際に、IDの入力を受け付けて、前記IDに対応するメッセージについての操作を許可しているので、そのための制御手段を自明的に有しており、 g.引用発明1の「留守の際」とは留守録を行う場合であるので、不在応答の際であり、 h.引用発明1の「公衆回線」は「回線網」の一種である。 したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「発信者からの伝言メッセージについてのアクセス権限を証するアクセス認証情報の入力を受け付ける入力手段と、 不在応答の際に、前記アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応する伝言メッセージについての操作を許可する制御手段と、を備え、 前記アクセス認証情報は、回線網側から通知されるものである、留守番電話機能付き電話機。」 (相違点1)「メモリ」に関し、補正後の発明は伝言メッセージと、前記アクセス認証情報と、を関連付けて、「メモリ」に記憶保持するのに対し、引用発明1はID登録メモリー(30)および個人用メッセージメモリー(70)の2つのメモリから成り立っている点。 (相違点2)「制御手段」に関し、補正後の発明は不在応答の際に「伝言メッセージの操作要求信号を受信した場合」アクセス認証情報を受け付けるのに対し、引用発明1は、伝言メッセージの操作要求信号を受信せずに、アクセス認証情報を受け付ける点。 (相違点3)「制御手段」に関し、補正後の発明は不在応答の際に、アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応する「すべての」伝言メッセージについて操作を許可するのに対し、引用発明1はアクセス認証情報と伝言メッセージが1対1であることが前提である点。 (相違点4)「アクセス認証情報」に関し、補正後の発明は、回線網側から通知される「発信者番号の一部を発信者側で任意に選んで決定したもの」であるのに対し、引用発明1のアクセス認証情報は、そのような限定がなされていない点。 まず、相違点1の「メモリ」について検討するに、伝言メッセージやアクセス認証情報といった、二種類以上の相互に関係する情報を記憶するメモリを、単一のもので構成するか、情報ごとに別個に構成するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。 ついで、相違点2の「制御手段」について検討するに、引用発明2の「*」キーの入力は、アクセス認証情報であるパスワードの入力を前提として行われるもので、補正後の発明の伝言メッセージの操作要求信号に相当するものであり、引用発明1と引用発明2は、ともに「留守番機能付き電話機」に関する発明という点では何ら相違するものではなく、しかも、引用発明1と引用発明2を組み合わせることに阻害要因はないから、引用発明1において、引用発明2の構成を付加し、引用発明1の「制御手段」を「不在応答の際に、伝言メッセージの操作要求信号を受信した場合、アクセス認証情報を受け付ける」とすることは当業者であれば容易である。 ついで、上記相違点3の「制御手段」について検討するに、一つのアクセス認証情報に複数の伝言メッセージを対応させて記憶し、前記アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応するすべての伝言メッセージについての操作を許可することは、例えば特開平11-252244号公報、特開平11-155018号公報あるいは特開平6-232960号公報に記載されているように周知であり、しかも、当該周知技術を引用発明1の「留守番機能付き電話機」に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明1の「制御手段」を「アクセス認証情報の入力を受け付けて、前記アクセス認証情報に対応するすべての伝言メッセージについて操作を許可する」とすることは、当業者であれば適宜成し得ることである。 さらに、上記相違点3の「アクセス認証情報」について検討するに、引用発明3の「加入者6」は補正後の発明の発信者であり、引用発明3の「伝言」は留守録されるものであるから補正後の発明の伝言メッセージであり、引用発明3の「音声蓄積装置」は電話機の留守録に用いられるので、本願発明の「留守番機能付き電話機」と一致する。ここで、補正後の発明の引用発明1と引用発明3は、ともに「留守番機能付き電話機」という点では何ら相違するものではなく、しかも、引用発明1と引用発明3を組み合わせることに阻害要因はないから、引用発明1において、引用発明3の構成を付加し、引用発明1の「アクセス認証情報」を「発信者番号」とすることは当業者であれば容易である。また、その際に、発信者番号の一部を発信者側で任意に選んで「アクセス認証情報」を決定することは、当業者が適宜成し得ることである。 そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明1、引用発明2、引用発明3、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明1、引用発明2、引用発明3、および周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成19年1月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正の却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明1、引用発明2、引用発明3は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-27 |
結審通知日 | 2008-10-28 |
審決日 | 2008-11-10 |
出願番号 | 特願2002-132476(P2002-132476) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶尾 誠哉、永井 啓司、稲葉 和生 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 松元 伸次 |
発明の名称 | 留守番機能付き電話機 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 木村 明隆 |
代理人 | 机 昌彦 |