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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1189972
審判番号 不服2007-1649  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-17 
確定日 2008-12-25 
事件の表示 平成 8年特許願第351068号「灌水管」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月 7日出願公開、特開平10-178942〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年12月27日の出願であって、平成18年12月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月15日に手続補正がなされた。
その後、平成20年7月10日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成20年9月9日に回答書が提出された。

【2】平成19年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年2月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成19年2月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、次のように補正しようとする補正事項を含む。
(補正前)
「【請求項1】 中間層が繊維強化不飽和ポリエステル樹脂製であり、その内周部および外周部にスチレン系樹脂からなる内層および外層を一体に成形したパイプからなることを特徴とする灌水管。
【請求項2】 耐水圧が10kg/cm^(2)であることを特徴とする請求項1記載の灌水管。
【請求項3】 スチレン系樹脂からなる内層をパイプ状に押出成形した後、中間層を構成する不飽和ポリエステル樹脂含浸強化繊維を連続的に被覆して前記中間層を成形し、さらにこの外周にスチレン系樹脂の外層を一体的に押出成形し、ついで、このようにして連続的に成形されたパイプ状物を冷却水中に入れて外層を冷却固化した後、熱湯漕中を通過させ、中間層の熱硬化性樹脂を加熱硬化させることを特徴とする潅水管の製造方法。」を、
(補正後)
「【請求項1】中間層が繊維強化不飽和ポリエステル樹脂製であり、その内周部および外周部にスチレン系樹脂からなる内層および外層を一体に成形したパイプからなり、耐水圧が10kg/cm^(2)であり、スパン長さを3.5mとして二点で支持したときの満水状態でのたわみ量が2.0cm以上3.0cm以下であることを特徴とする灌水管。
【請求項2】スチレン系樹脂からなる内層をパイプ状に押出成形した後、中間層を構成する不飽和ポリエステル樹脂含浸強化繊維を連続的に被覆して前記中間層を成形し、さらにこの外周にスチレン系樹脂の外層を一体的に押出成形し、ついで、このようにして連続的に成形されたパイプ状物を冷却水中に入れて外層を冷却固化した後、熱湯漕中を通過させ、中間層の熱硬化性樹脂を加熱硬化させることを特徴とする潅水管の製造方法。」とする。
上記補正事項は、実質的に、補正前の請求項1を削除し、請求項1を引用する請求項2に係る発明において、さらに、灌水管が本来有している特性である「たわみ量」を限定するものといえるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願の補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭56-167981号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(イ)「熱可塑性樹脂製パイプを芯材とし、その表面にパイプの軸方向および円周方向の両方向に強度、剛性を持たせた繊維強化熱硬化性樹脂で被覆し、更にその表面に熱可塑性樹脂を被覆してなることを特徴とする耐食性、耐摩耗性、強度、剛性等を著しく向上せしめた樹脂複合管。」(特許請求の範囲)
(ロ)「本発明でのパイプを構成する熱可塑性樹脂およびFRPを被覆する熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプチレンなどのオレフイン系、スチロール、AS、ABSなどのポリスチレン系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、フツ素系樹脂、例えばポリフツ化ビニル、ポリ三フツ化エチレンなどが用いられる。・・・中間層のFRPに使用する熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和モノカルボン酸変性ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等が有用である。」(2頁右上欄13行?同左下欄9行)
(ハ)「実施例
硬質塩化ビニル樹脂を内径39mm、外径41mmのパイプに・・・押出成形し、水冷却の後、・・・本複合管の芯材とし、次に13μのガラス繊維を400本集束したガラスロービングに、・・・ポリライトNS-260(大日本インキ化学工業(株)製不飽和ポリエステル樹脂)を含浸させて、芯材の軸方向に1段50本を4段重ねて、更にその含浸ロービングの上に、同様のガラスロービングを時計の回転方向及びその逆方向に夫々16本づつ、ループ状に巻回させ、・・・引き抜き成形して不飽和ポリエステルを硬化させて、補強FRP中間層を形成し、・・・ポリエチレン樹脂でもつて、FRP中間層の外表面を被覆し、冷却させることにより樹脂複合管を得た。」(2頁右下欄3行?3頁左上欄4行)
これら(イ)?(ハ)の記載事項及び第1図を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「中間層が繊維強化不飽和ポリエステル樹脂製であり、その内周部および外周部に熱可塑性樹脂からなる芯材および表面被覆層を一体に成形したパイプからなる樹脂複合管。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

[3]対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「芯材」、「表面被覆層」は、それぞれ、補正発明の「内層」、「外層」に相当する。
また、補正発明の「スチレン系樹脂」は「熱可塑性樹脂」の一種であり、「灌水管」は「樹脂複合管」である。
そうすると、両者は、
「中間層が繊維強化不飽和ポリエステル樹脂製であり、その内周部および外周部に熱可塑性樹脂からなる内層および外層を一体に成形したパイプからなる樹脂複合管。」
の点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:熱可塑性樹脂が、補正発明では「スチレン系樹脂」であるのに対し、引用文献1記載の発明では、熱可塑性樹脂の種類は限定されておらず、引用文献1には、熱可塑性樹脂としてAS、ABSなどのスチレン系樹脂が例示されているものの、スチレン系樹脂を使用した実施例は記載されていない点。
相違点2:補正発明では、樹脂複合管が灌水管として用いられ、耐水圧が10kg/cm^(2)であり、スパン長さを3.5mとして二点で支持したときの満水状態でのたわみ量が2.0cm以上3.0cm以下であるのに対して、引用文献1記載の発明では、そのような用途に限定はされておらず、耐水圧及びたわみ量は不明な点。

[4]判断
上記相違点1について検討すると、積層体を形成する際に、相互に親和性のある樹脂を積層することは、本願出願前周知であり、不飽和ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が親和性のあることも知られている(例えば、特開平3-26531号公報参照)。
そうすると、引用文献1記載の発明において、例示された熱可塑性樹脂の中で、不飽和ポリエステル樹脂と親和性のあることが知られているスチレン系樹脂を選択することは当業者が容易になしうることである。
上記相違点2について検討すると、引用文献1において、樹脂複合管の用途は明記されていないが、芯材の寸法として、内径39mm、外径41mmのパイプが実施例として例示されており(記載事項(ハ))、該寸法は、本願明細書で、実施例(比較例も含め)として例示されている寸法と同様の範囲であり、かつ、引用文献1記載の発明は、全体として、強度、剛性等の向上を目的としているものである。
そして、灌水管として、従来から強度が高く耐圧性がある金属パイプが用いられており、それに代わるものとして合成樹脂製の管が用いられていることからみれば、灌水管として強度が高く耐圧性があるもの、地面より高い部位に配設する管であれば、水を通してもたわみのないものが求められることは自明の課題であり、引用文献1記載の発明の強度、剛性の高い樹脂複合管を灌水管として用いることは、当業者が容易に思い付くことにすぎない。
また、その際、各層の厚み等を設定して、耐圧性やたわみの程度を許容範囲内とすることは適宜なしうることであり、補正発明の「耐水圧が10kg/cm^(2)であり、スパン長さを3.5mとして二点で支持したときの満水状態でのたわみ量が2.0cm以上3.0cm以下」のものとすることは、使用状況に応じた許容範囲を設定したにすぎない。
そして、補正発明全体の効果も、引用文献1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。
したがって、補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
平成19年2月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年4月24日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】中間層が繊維強化不飽和ポリエステル樹脂製であり、その内周部および外周部にスチレン系樹脂からなる内層および外層を一体に成形したパイプからなることを特徴とする灌水管。」

[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明を特定するために必要な事項である「耐水圧が10kg/cm^(2)であり、スパン長さを3.5mとして二点で支持したときの満水状態でのたわみ量が2.0cm以上3.0cm以下である」との限定事項を削除したものに相当する。
そして、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、上記【2】[4]で述べたとおり、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-24 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-10 
出願番号 特願平8-351068
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 家田 政明
伊波 猛
発明の名称 灌水管  
代理人 一色国際特許業務法人  

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