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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65H
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65H
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B65H
審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  B65H
管理番号 1190006
審判番号 無効2007-800152  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-01 
確定日 2008-12-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3908155号発明「ホースリール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3908155号の請求項1?7に係る発明についての出願は、特願2002-338918号(平成14年11月22日出願)であり、平成19年1月26日に設定登録(請求項の数7)されたものである。
そして、平成19年8月1日にプラコム株式会社より無効審判が請求され、平成19年11月1日付けで被請求人アイリスオーヤマ株式会社より答弁書が提出され、平成20年2月19日付けで請求人より弁駁書が提出されたものである。
平成20年2月26日に口頭審理が行われ、同日付けで請求人・被請求人より口頭審理陳述要領書が提出された。
さらに、平成20年3月11日付けで被請求人より上申書が提出された。

II.本件特許発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、
前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設け、前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたことを特徴とするホース
リール。
【請求項2】ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、
前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設ける一方、
前記フレーム下部に、該フレームより側方へ延出した展開状態と、前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたことを特徴とするホースリール。
【請求項3】前記天面を略平坦に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のホースリール。
【請求項4】前記天面に他のフレームを積載する積載部を設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のホースリール。
【請求項5】前記フレームの天面に、没入した凹部及び該凹部内に収容される取っ手を設け、該取っ手を、前記凹部内に収容された傾倒状態と起立した起立状態との間で回動自在に支持するとともに、
前記傾倒状態から前記起立状態へ移行する際に前記取っ手の自由端部が回動中心上部を通過し当該取っ手が傾斜した状態で回動を規制する規制手段を設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載のホースリール。
【請求項6】前記ドラムを、前記ホースが巻かれる胴部と、該胴部の両端部に設けられた鍔部とで構成し、前記フレームの内側面に、前記鍔部に近接するリブを突設したことを特徴とする請求項1から5にいずれか記載のホースリール。
【請求項7】前記リブの高さ寸法を、前記フレームの内側面から前記鍔部までの離間距離以上の高さに設定したことを特徴とする請求項6記載のホースリール。」(以下「本件特許発明1から7」という。)

III.請求人及び被請求人の主張の概略
1.請求人の主張
(1)主張1:特許第3908155号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明における「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」という記載事項は、願書に最初に添付した明細書に一切記載がなく、また、出願当初は下位概念の「回動」だけであるのに対し上位概念としての「移動」を新たに加えたものであり、上記記載事項のような補正は、特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たしていない。

(2)主張2:特許第3908155号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」という記載事項において、「開口部を閉鎖しない位置」の記載が不明確であり、発明が明確でないため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)主張3:特許第3908155号の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された発明は、新規性及び進歩性を有しておらず、特許法第29条第1項及び同条第2項に該当する。

証拠方法
甲第1号証:特許第3908155号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特開第2004‐168526号公報(本件公開公報)
甲第3号証:特許原簿(特許第3908155号)
甲第4号証:広辞苑(岩波書店発行,1990年1月8日発行日)抜粋
甲第5号証:拒絶理由通知(平成18年9月13日)および平成18年11 月22日付手続補正書
甲第6号証:特開平9‐195653号公報
甲第7号証:特開平11‐246123号公報
甲第8号証:実公平7‐8534号公報
甲第9号証:2000‐197472号公報
甲第10号証:特開2001-52797号公報
甲第11号証:特許庁発行「特許・実用新案審査基準」「第III部第1節新 規事項」抜粋
甲第12号証:特開2001-278402公報
甲第13号証:平成19年(ワ)第22449号における被告提出の被告第 3準備書面
甲第14号証:平成19年(ワ)第22449号における原告提出の準備書 面(原告(二))
甲第15号証:知財高裁 平成18年(行ケ)第10443号判決

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人の主張は、以下の通りである。
(1)主張1について
当初明細書に本件特許発明の請求項1に記載の「移動」の用語の定義が記載されていないから「どのような手段や挙動,構造でなされるか不明」であるとする請求人の主張は当を得たものではない。本件特許発明の請求項1の「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」との技術思想は当初明細書の記載から自明な事項であるというべきである。

(2)主張2について
「開口部を閉鎖しない位置」の記載を含む本件特許の請求項1の発明は明確でないから,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない,との請求人の主張は失当である。

(3)主張3について
本件特許発明1及び2と甲6発明乃至甲10発明とは,全く異なる発明であり,かつ本件特許発明1及び2は,甲6発明乃至甲10発明に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものでないことは明らかである。本件特許発明の請求項3乃至7に記載の発明もまた同様である。

証拠方法
乙第1号証の1:平成18年6月2日付の拒絶理由通知書写し
乙第1号証の2:平成18年8月11日付提出の意見書写し
乙第1号証の3:平成18年8月11日付提出の手続補正書写し
乙第1号証の4:平成18年9月13日付の拒絶理由通知書写し
乙第1号証の5:平成18年11月22日付提出の意見書写し
乙第1号証の6:平成18年11月22日付提出の手続補正書写し
乙第1号証の7:平成19年1月9日付の特許査定写し
乙第2号証:特許庁発行「特許・実用新案審査基準」の「第III部/第1節 新規事項/3.基本的な考え方」部分の写し

IV.当審の判断
1.主張1について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1記載の「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」との記載は,平成18年11月22日提出の手続補正書(乙第1号証の6,甲第5号証)により補正されたものである。
この補正が特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たしているか否かについて検討する。
まず、本件特許の出願当初の明細書(甲第2号証)の段落【0022】には「請求項6のホースリールにあっては、前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延出した展開状態と、当該フレーム下部に折り畳まれ前記開口部の下部に配置された折り畳み状態との間で開閉される脚部を設けた。」と記載されているように、当初明細書における脚部は「フレームより側方へ延出した展開状態」と「フレーム下部に折り畳まれ前記開口部の下部に配置された折り畳み状態」との二つの状態を取ることが記載されている。
したがって,当初明細書の上記記載によれば,本件特許発明の脚部は「フレーム側方へ延出した展開状態」から「フレーム下部に折り畳んだ状態で,フレーム底面の開口部が塞がれる」ような状態に開閉される旨記載されているのであるから、何らかの手段により開閉がなされるものであって、その開閉の具体的態様は実施例に示されている「回動」のみに限定的に解釈されるものではない。
また,「移動」という用語についても、上記のように脚部が開閉されることを通常の文言を用いて記載したものにすぎず、不適切な記載であるとはいえない。
したがって、本件特許発明の請求項1の「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」との記載が出願当初明細書の記載した事項の範囲内ではないということはできず、請求人の主張1は採用することができない。

2.主張2について
請求人は参考図aを示して、請求項1における脚部が「開口部を閉鎖しない位置」とは、本件ケース(フレーム)の側面を真っ直ぐに延ばした直下の位置Y1から水平となるY2で示す位置までの領域X1のみならず、Y2の位置から、さらに脚部が上方に回動してフレームの側面に当接するY3で示す位置までの領域X2を含んだ略180°の広い範囲となるから、請求項1における「開口部を閉鎖しない位置」の記載は、範囲が広く位置が特定できないから明確ではない旨、主張している。
しかし、開口部を閉鎖しない位置に関して、本件特許明細書の段落【0037】に「図1に示したように,両脚部67,67の先端が本体ケース11より側方へ延出し,かつ前記本体ケース11の底面61に当接して(図8参照)回動が規制された展開状態75」と記載されている。
この記載からすれば、脚部が開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との途中の段階を意味するものではないことは明らかであり、その記載が不明確であるとはいえない。

また、請求人の、本件特許の請求項1の「移動可能に取り付ける」の記載事項における「移動」の用語は明細書に一切記載がない、旨の主張する。
しかし、本件特許における脚部が「フレーム側方へ延出した展開状態」から「フレーム下部に折り畳んだ状態で,フレーム底面の開口部が塞がれる」ような状態に開閉されることは本件特許明細書及び図面の記載から明らかであるから、そのことを「移動」という通常用いられる文言を用いて記載したことにより、本件発明が不明確であるとはいえない。

3.主張3について
請求人は、甲第6号証?甲第10号証及び甲第12号証を提出し、本件特許の請求項1?7に係る発明は、これらの各号証に記載された発明であり、又これらの発明から容易に発明できた発明であり、新規性及び進歩性を有していない、旨主張している。

(1)各号証の記載事項。
甲第6号証の記載事項
a:「【請求項1】 外郭を構成する本体と、この本体の上側を塞いで踏み板となる蓋体と、前記本体内に2個並列に連接して収納され互いの間で水の流れを許容すると共に個別にホースを巻き取る巻取りドラムと、各巻取りドラムの間に装着され各巻取りドラムの回転軸を回転可能に支持する中間支持体と、連接された2個の巻取りドラムの外側を回転可能に支持する外側支持体と、前記各巻取りドラムの間に前記中間支持体を挟んで装着されて各巻取りドラムの回転軸をその回転を許容した状態で掴んで支持する回転軸支持板と、各巻取りドラムの回転軸に外部から連結してこのドラムを回転させてホースを巻き取るハンドルとを備えて構成されたことを特徴とするホースリール付き踏み台。」(特許請求の範囲、図1から5)

b:「本発明は、洗車、水まき等に使用するホースの収納及び使い勝手並びに作業効率の向上を考慮して改良したホースリール付き踏み台に関する。」(段落【0001】)

c:「このホースリール付き踏み台1は、踏み台にホースリールを格納して一体品とし、ホースの収納、洗車等の際の使い勝手及び作業効率の改良を図ったものである。ホースリール付き踏み台1は具体的には、踏み台部2とホースリール部3とから構成されている。
踏み台部2は、外郭を構成する本体5と、この本体5の上側に着脱自在に取り付けられた蓋体6とから構成されている。
本体5は、図5から図10に示すように、4枚の壁板によって筒状に、かつ、頭部(上部)を除去した裁頭四角錐状に形成されている。この本体5は、蓋体6が被せられた状態でその上に人が乗るため、壁面の厚みを増したり、補強用リブ(図示せず)を設けたりして、十分な強度が持たされている。」(段落【0015】?【0017】)

上記の記載から、甲第6号証には、次の発明が記載されている。
ホースを巻き取るドラムが本体に回転可能に支持されたホースリールにおいて、
前記本体は、前記ドラムが収容される形状に形成し、当該本体に蓋体を設けるとともに、前記本体の底面に開口部を設けたホースリール。(以下「甲6発明」という。)

甲第7号証の記載事項
d:「【請求項1】左右一対のフレームの間にホース巻取り用のドラムが保持され、前記左右一対のフレームの下部が、前記ドラムの回転中心と直交する前後方向の両側部を下部連結軸を介してそれぞれ連結されるとともに、前記左右一対のフレームの上部が、前記下部連結軸と平行する上部連結軸を介して連結されたホースリールにおいて、
前記左右一対のフレームの前記両側部の双方の下部連結軸に、他方の下部連結軸との間に収容された非使用位置から、下方へ向かい回動され、前記左右一対のフレームの両側部よりも前記前後方向の外側に振り出されかつ回動限界に達した使用位置まで回動する踏板部を有するステップがそれぞれ軸支される一方、各々のステップに、前記非使用位置への回動に伴い前記左右一対のフレームの少なくともいずれか一方の裏面側にそれぞれ設けられた係合凸部に係合され、前記各々のステップの使用位置方向への回動を防止する被係合凸部が設けられたことを特徴とするホースリール。」(特許請求の範囲、図1から7)

e:「このホースリール1は主として本体2と、本体2に回動自在に保持されたドラム3とにより構成されている。本体2は、一対の左右フレーム4,5と、左右フレーム4,5の双方の上部を連結する上部連結軸であるグリップ6と、左右フレーム4,5の下部の双方の両側部を連結する下部連結軸である後述する連結パイプ13(図7参照)とから構成されており、この連結パイプ13にはステップ17がそれぞれ回動自在に軸支されている。」(段落【0023】)

f:「そして、双方のステップ17は、図7に示したように、踏板部19が左右フレーム4,5の下部において他方側の連結パイプ13との間に収容されるとともに、前記被係合凸部20が前述した断面L字型の係合凸部15に係合した非使用位置(aに示した位置)から、下方へ向かい回動され左右一対のフレーム4,5の両側部よりも前後方向の外側に振り出されるとともに、被係合凸部20が前述したネジ止め部16に当接して回動限界に達した使用位置まで回動するようになっている。」(段落【0028】)

甲第8号証の記載事項
g:「【請求項1】ホース巻取ドラム1の両端に円板鍔2,2を設け、該ホース巻取ドラム1の一方中心に回転ハンドル3を取付ける取付軸4を設け、他方中心に巻取用ホース接続管5と連設した入水管6を設け、入水管6の外周に、先端ホース接続部7を設けた被覆管8を具備し、且つ前記取付軸4は枠体9の一方装着孔10に軸着すると共に被覆管8は枠体9の他方装着孔11に装着し、又枠体9は合成樹脂製で下広巾部12に立設部13を設けた側面板14,14を対設すると共に対設した下広巾部12,12の下方両側に2本の下方杆15,15と立設部13,13の上方に把持杆16とを架設して形成し、且又枠体9を形成した一対の立設部13,13の夫々の内方に、把持杆16の両端を取付けた取付部24,24よりも下方に位置すると共に取付部24,24より離れた個所に食み出した突出片20,20を立設部13,13と一体的に形成し、更に立設部13,13より突出した夫々の突出片20,20はその下縁部17,17を円板鍔2,2の周縁部18,18上に近接して設けたことを特徴とする散水ホース用巻取器。」(実用新案登録請求の範囲、図1から2)

甲第9号証の記載事項
h:「【請求項1】上部に開口部の設けられたタバコを収納する縦長の箱体と、該箱体に収納したタバコを一本づつ載架し持ち上げて開口部から箱体の外部へ搬出する可動搬送部と、前記開口部を閉鎖するとともにスライドさせて閉鎖している開口部を開口させた後に前記可動搬送部を上方に移動させるスライド片と、移動した該スライド片を元の状態に戻すためにスライド片と箱体との間に係止されている弾性体とからなることを特徴とするタバコディスペンサ。」(特許請求の範囲、図1から6)

i:「スライド片40は、箱体の上面を水平に摺動する細長片で、一端は箱体の開口部を閉鎖する蓋部となる。図2乃至図4で示すようにスライド片40のタバコディスペンサの内側になる裏面の2箇所に突片42aと42b が下方に向って延設されている。
図5で示す通りスライド片の上面にはスライド片を水平に移動する為の凸凹部44が設けられており、上から指で凸凹部44を押さえつけて左右に移動すると平板状のスライド片40が左右に移動する。スライド片を図面の左側(矢印方向)に移動すると、第一段階として、箱体の端部に設けられた開口部22が蓋を取った状態となって外部に開口が開く。第二段階としてさらに左に移動すると、図3に示すように一方のが前記可動搬送部30の係合突起38と当接する。」(段落【0014】)

甲第10号証の記載事項
j:「【請求項1】 機器ケース本体と、この機器ケース本体に少なくとも一部が着脱可能な部分ケースと、この部分ケースに取り付けられた外部機器との電気的接続部材とを具備したことを特徴とする電子機器の構造。」(特許請求の範囲)

k:「次に本発明に係る実施の形態3について説明する。図8、図9は電子機器の他の例を示すもので、カバーを備えた丸型携帯電子機器の正面図を示す。17は丸型携帯電子機器であり、円状ケース本体18を備えており、該円状ケース本体18は、図10に示す図8の矢視B-B方向の断面図から明らかなように、上ケース18a、下ケース18b及び裏ケース17fの組合せで構成される。19はカバーケースであり前記円状ケース本体18に回転自在に周設される。上記カバーケース19を回転させ、円状ケース本体18の内部の一部を露出した部位には固定した接続用コネクタ20が備えられている。該接続用コネクタ20は外部の電子機器例えば携帯電話等のコネクタに接続される。」(【0034】、図8から10)

甲第12号証の記載事項
l:「さらに底面板6及び7は、本体枠1の底面開口を閉塞するに十分な大きさであって、均等な大きさからなる左右一対の金属板により構成され、一端を本体枠1の正面壁2・2における左右両側の底部またはその付近に凸設された脚部4・4に、それぞれ対称側の脚部4・4との間に各側面壁3・3と平行に架け渡された軸5・5により形成された蝶番機構5a・5aを介して観音開き状に開閉自在に取り付けられているとともに、それぞれの自由端には脚部6b・6bおよび7b・7bが取り付けられている。」(段落【0011】、図1から4)

m:「またコンテナ内に積載した廃棄物をあける場合には、フォークリフトの駆動力により左右のフォーク爪FP・FPを相互に引き寄せる方向に突出部2a・2a上にまで移動させると、これに伴ってフォーク爪FP・FPがピン12・13を支点として図3に矢印で示したように下方部が相互に開き、これによって一対の底面板6・7が蝶番機構5a・5aを支点に観音開き状に下方に向けて開き、コンテナにおける本体枠1の底面開口が開放され、内容物である廃棄物が落下する。」(段落【0019】)

(2)対比・判断
[本件特許発明1について]
甲6発明においては「本体」及び「蓋体」によって形成される空間にホースを巻き取るドラムが収容されており、ケース状の形態をしているといえるものであり、一方、本件特許発明1において「前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し」という特徴点は単にケース状ということを意味するのみでフレームの具体的な特徴点について限定しているわけではないから、甲6発明の「本体」及び「蓋体」は、本件特許発明1の「フレーム」に相当し、また、甲6発明の「蓋体」は本件特許発明1の「天面」に相当する部分を形成しているから、これらの点を考慮して、甲6発明と本件特許発明1とを比較すると、
ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設けたホースリール、である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は、フレームの脚部が開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けられているのに対し、甲6発明は、そのような構成を有していない点。

この相違点1について判断する。
甲第7号証の段落【0028】には「踏板部19が左右フレーム4、5の下部において、他方側の連結パイプ13との間に収容される位置と、下方へ向かい回動され左右一対のフレーム4、5の両側部よりも前後方向の外側に振り出される位置とがある」との記載があるが、甲第7号証に記載の発明における踏板部19は回動はするが、開口部を閉鎖する機能を有するものではないので、本件特許発明1のフレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたという技術事項を示しているものとはいえない。
甲第8号証に記載された発明は、フレームの脚部が独立して設けられているものではなく、枠体の下広巾部が脚部としての働きをしているものであって、枠体の下広巾部が開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けられているものではなく、上記相違点1を何ら示唆するものではない。
甲第9号証には、スライド片40が箱体の開口部を閉鎖する位置と、閉鎖しない位置との間で移動することが記載されており、甲第10号証には、カバーケース19が円状ケース本体18に回転自在に周設されていることが記載されており、甲第12号証には、底面板がフレーム底面の開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能となっている構造が記載されている。
しかし、甲第9,10及び12号証の記載は、開口部を何らかの手段で閉鎖したり、開口したりすることが公知であるということを一般的に示すものであって、ホースリールにおいて開口部の閉鎖開口を行うことを開示するものではないし、ましてホースリールのフレームの脚部が移動して開口部の開口や閉鎖を行うことを開示や示唆するものではない。
本件無効審判において請求人が主たる引用例として提示している甲第6号証には、ホースリール付き踏み台が記載されており、そのフレームには脚部が設けられているが、このホースリールは踏み台としての機能も有するものであるから、その脚部は踏み台の脚部としての機能を果たすことが重要な機能であって、その脚部を可動とし更に他の機能までも果たすという動機付けがただちに生じるものではない。
してみれば、甲第7号証のようにホースリールの踏板部(本件特許発明1の脚部に相当。)が可動のものであったり、甲第9,10及び12号証のように開口部を閉鎖したり開口したりすることが一般的に公知であるとしても、甲第6号証に記載されているホースリールの脚部を移動可能なものとし、かつ開口部の閉鎖や開口を行わせるということが当業者が容易になし得ることはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲第6?10及び12号証に記載された発明とは認められず、また、それらに基づいて当業者が容易に発明できたものとも認められない。

[本件特許発明2について]
甲6発明と本件特許発明2とを比較すると、
ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、
前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設けたホースリール、である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:本件特許発明2は、フレーム下部に、該フレームより側方へ延出した展開状態と、開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けているのに対し、甲6発明は、そのような構成を有していない点。

この相違点2について判断する。
甲第7号証の段落【0028】には「踏板部19が左右フレーム4、5の下部において、他方側の連結パイプ13との間に収容される位置と、下方へ向かい回動され左右一対のフレーム4、5の両側部よりも前後方向の外側に振り出される位置とがある」との記載があり、甲第7号証に記載の発明における踏板部19は回動し、収容される位置と外側に振り出される位置をとるものではあるが、開口部を閉鎖する機能を有するものではないので、本件特許発明2のフレームより側方へ延出した展開状態と、開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けているという技術事項を示しているものとはいえない。
甲第8号証に記載された発明は、フレームの脚部が独立して設けられているものではなく、枠体の下広巾部が脚部としての働きをしているものであって、枠体の下広巾部がフレームより側方へ延出した展開状態と、開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉されるように取り付けられているものではなく、上記相違点2を何ら示唆するものではない。
甲第9号証には、スライド片40が箱体の開口部を閉鎖する位置と、閉鎖しない位置との間で移動することが記載されており、甲第10号証には、カバーケース19が円状ケース本体18に回転自在に周設されていることが記載されており、甲第12号証には、底面板がフレーム底面の開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能となっている構造が記載されている。
しかし、甲第9,10及び12号証の記載は、開口部を何らかの手段で閉鎖したり、開口したりすることが公知であるということを一般的に示すものであって、ホースリールにおいて開口部の閉鎖開口を行うことを開示するものではないし、ましてホースリールの脚部がフレームより側方へ延出した展開状態と、開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉されることを開示や示唆するものではない。
本件無効審判において請求人が主たる引用例として提示している甲第6号証には、ホースリール付き踏み台が記載されており、そのフレームには脚部が設けられているが、このホースリールは踏み台としての機能も有するものであるから、その脚部は踏み台の脚部としての機能を果たすことが重要な機能であって、その脚部を可動とし更に他の機能までも果たすという動機付けがただちに生じるものではない。
してみれば、甲第7号証のようにホースリールの踏板部(本件特許発明2の脚部に相当。)が可動のものであったり、甲第9,10及び12号証のように開口部を閉鎖したり開口したりすることが一般的に公知であるとしても、甲第6号証に記載されているホースリールの脚部を移動可能なものとし、かつ開口部の閉鎖や開口を行わせるということが当業者が容易になし得ることはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲第6?10及び12号証に記載された発明とは認められず、また、それらに基づいて当業者が容易に発明できたものとも認められない。

[本件特許発明3から7について]
本件特許発明3から7は、本件特許発明1又は2を引用して記載された発明であるから、本件特許発明1又は2の特定事項をすべて備えた発明であるから、上記した理由により甲第6?10及び12号証に記載された発明とは認められず、また、それらに基づいて当業者が容易に発明できたものとも認められない。

V.むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
また、他に本件特許を無効とする理由は発見できない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-31 
結審通知日 2008-04-02 
審決日 2008-04-15 
出願番号 特願2002-338918(P2002-338918)
審決分類 P 1 113・ 561- Y (B65H)
P 1 113・ 113- Y (B65H)
P 1 113・ 121- Y (B65H)
P 1 113・ 537- Y (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 信一木村 立人  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
石原 正博
登録日 2007-01-26 
登録番号 特許第3908155号(P3908155)
発明の名称 ホースリール  
代理人 羽切 正治  
代理人 安江 邦治  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
代理人 小野 友彰  

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