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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C10L
管理番号 1190060
審判番号 無効2007-800275  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-10 
確定日 2008-12-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3222117号発明「廃棄物固形化燃料及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3222117号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明

本件特許第3222117号発明の出願は、平成11年6月28日に特許出願され、平成13年8月17日にその特許権の設定の登録がされたものである。
これに対して、平成19年12月10日に請求人株式会社関商店より無効審判が請求され、平成20年1月17日付けで請求人より上申書が提出されるとともに手続補正書が提出されて審判請求書が方式補正され、平成20年5月7日付けで被請求人より答弁書が提出され、平成20年7月29日に特許庁第1審判廷において第1回口頭審理がされ、同日付けで請求人、被請求人両者より口頭審理陳述要領書が提出され、その後、平成20年8月29日付けで両者より上申書が提出されたものであって、その請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。また、併せて「本件発明」ともいう。)は、願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
「 流量層ボイラで使用される廃棄物固形化燃料であって、廃棄物固形化燃料は、破砕された廃プラスチック及び繊維質材料が所定の重量割合で混合された混合物が1g/cm^(3)の密度で、かつ、直径が35?50mm、長さが150mmに圧縮成形されていることを特徴とする廃棄物固形化燃料。」
【請求項2】
「 破砕された廃プラスチック及び繊維質材料を所定の重量割合で混合し、その混合物を1g/cm^(3)の密度で、かつ、直径が35?50mm、長さが150mmに圧縮成形されていることを特徴とする廃棄物固形化燃料の製造方法。」
【請求項3】
「 請求項2記載の廃棄物固形化燃料の製造方法であって、回収した廃プラスチック及び繊維質材料をプレスし締結部材によって所定重量のプラスチックブロックと繊維質ブロックとを作成した後、各ブロックを廃棄物固形化燃料の原料として使用することを特徴とする廃棄物固形化燃料の製造方法。」
【請求項4】
「 請求項3記載の廃棄物固形化燃料の製造方法であって、前記プラスチックブロックは、プラスチック製の包装材で全表面が覆われた包装ブロックに作られていることを特徴とする廃棄物固形化燃料の製造方法。」
(なお、第1回口頭審理調書によれば、請求項1の「流量層ボイラ」は、「流動層ボイラ」の誤記である。)

第2 請求人の主張の概要

請求人は、本件発明1?4に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、平成20年1月17日付けで提出された手続補正書により方式補正された審判請求書に添付して甲第1号証及び参考資料1?6を、また、平成20年8月29日付け上申書に添付して参考資料7を提出し、以下の無効理由を主張している。

無効理由1:
本件発明1の発明特定事項のうち「1g/cm^(3)の密度で」については、発明の詳細な説明にどのようにして「1g/cm^(3)の密度」にするのか記載されておらず、発明の詳細な説明は、本件発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件発明1に係る特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由2:
本件発明2の発明特定事項のうち「その混合物を1g/cm^(3)の密度で」については、発明の詳細な説明にどのようにして「1g/cm^(3)の密度」にするのか記載されておらず、発明の詳細な説明は、本件発明2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件発明2に係る特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由3:
特許請求の範囲の請求項3は、同請求項2を引用するものであるから、本件発明3は本件発明2に従属しているところ、発明の詳細な説明には本件発明2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。したがって、発明の詳細な説明は、本件発明3を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件発明3に係る特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由4:
特許請求の範囲の請求項4は、同請求項3を引用するものであるから、本件発明4は本件発明3に従属しているところ、発明の詳細な説明には本件発明4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。したがって、発明の詳細な説明は、本件発明4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件発明4に係る特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(証拠方法)
甲第1号証:桜内雄二郎著、「新版 プラスチック技術読本」、1975年5月10日、新版第9版発行、株式会社工業調査会、353?359頁

参考資料1:「本件特許第3222117号に基づく計算の例」と題された書面
参考資料2:無効2007-800018号(特許第3108720号無効審判事件)の被請求人環境資源株式会社が、平成19年4月19日付けで提出した答弁書の第1頁
参考資料3:特許第3108720号公報
参考資料4:無効2007-800018号の被請求人環境資源株式会社が、平成19年7月2日付けで提出した口頭審理陳述要領書
参考資料5:判定2002-60027号(特許第3108720号判定請求事件)の判定書
参考資料6:インターネット <URL:http://www.matsushita-paper.co.jp/museum/3.html> 株式会社松下のホームページ
参考資料7:特開平7-256644号公報

第3 被請求人の答弁の概要

これに対し被請求人は、答弁書、口頭審理陳述要領書(乙第1号証添付)、上申書(乙第2号証、乙第3号証添付)を提出し、概略、次の答弁をしている。

特許明細書の段落0033?0034には、プラスチックブロックの大きさ、繊維質ブロックのプラスチックブロックに対する重量割合が記載され、段落0037?0040には、図4の説明が記載されている。
これらの記載に照らせば、解砕機21における解砕前後の体積比、すなわち嵩比は通常燃料製造装置の設計時に仕様として決定されていなければならず、解砕前のブロック合計体積と嵩比とから混合物4の体積を得ることができるから、圧縮成形機24には、一定重量かつ一定体積の混合物が投入されることになるのであり、混合物の密度も既知であるから、一定の圧縮比で混合物の圧縮がなされるよう制御して、所定の圧縮後密度1g/cm^(3)の廃棄物固形化燃料を得ることは自明である。
したがって、特許明細書には、発明の詳細な説明にどのようにして「1g/cm^(3)の密度」にするのか記載されており、発明の詳細な説明は、本件発明1?4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしており、無効理由1?4は、いずれも理由がない。

(証拠方法)
乙第1号証:プラスチックごみ最適処理技術研究会著、「廃棄物処理実務シリーズ・技術編(3)「プラスチックごみの処理処分」」、1996年8月20日、増補改訂版発行、株式会社日報、3?9頁
乙第2号証:「無効2007-800275 廃プラスチックブロックの実施品における重量計測に関する報告書」と題された書面、平成20年8月20日、環境資源株式会社 岡野敦作成
乙第3号証:「無効2007-8000275 圧縮成形機の実機における写真報告書」と題された書面、平成20年8月19日、環境資源株式会社 鴨沢卓郎作成

第4 甲号証、参考資料及び乙号証の内容

1.甲号証
・甲第1号証
353?359頁には、プラスチック性能表及びプラスチック材料の略号が記載され、357頁の「プラスチック性能表(5)」の「ポリプロピレン」の欄には、比重が「0.90-0.91」であることが記載され、354頁の「プラスチック性能表(2)」の「ポリエステル樹脂」の欄には、その比重が「1.8-2.3」であることが記載されている。
そして、353?359頁に記載されたもののうち、最も比重が小さいのが、上記ポリプロピレンの比重0.90であり、最も比重が大きいのが、上記ポリエステル樹脂の比重2.3である。

2.請求人提出の参考資料
・参考資料1
本件発明において、廃プラスチックの密度が0.910(g/cm^(3))の場合は、繊維質材料の密度は1.82(g/cm^(3))と計算され、また、廃プラスチックの密度が2.3(g/cm^(3))の場合は、繊維質材料の密度は0.31(g/cm^(3))と計算されることが示されている。
・参考資料2
無効2007-800018号事件は、特許第3108720号に対する無効審判事件であることが示されている。
・参考資料3
特許第3108720号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、「回収した廃プラスチック及び繊維質材料を原料として廃棄物固形化燃料を製造する燃料製造装置と、該燃料製造装置が製造した廃棄物固形化燃料を燃焼させる流動層ボイラとを備えているサーマルリサイクルシステムであって、前記燃料製造装置は、破砕された廃プラスチック及び繊維質材料を所定の重量割合で混合させた混合物を略1g/cm^(3)の密度に圧縮し所定の形状に成形する圧縮成形機を備えていることを特徴とするサーマルリサイクルシステム。」であることが示されている。
・参考資料4
無効2007-800018号の被請求人(本件の被請求人に同じ。)が提出した書類であって、その7頁2?3行には、「そもそも、破砕された廃プラスチック及び繊維質材料を所定の重量割合で混合させた混合物を正確に1g/cm^(3)の密度に圧縮することは不可能である。」と記載されている。
・参考資料5
判定書には、「廃プラスチック及び繊維質材料を所定の重量割合で混合させていない混合物について適宜圧縮して略1g/cm^(3)の密度とするためには、燃料製造装置は、通常、該混合物の比重を測定する手段や成分比を把握する等の技術的手段や工夫を必要とすると認められるところ、かかる技術手段や工夫については本件特許明細書に何ら記載も示唆もなく、かつ、これらが当業者にとっては自明の手段であると認めることはできない。」(4頁下から4行?5頁3行)と記載されている。
・参考資料6
「軽量新聞用紙、上質紙、晒クラフト紙、コート紙、グラシン紙及び和紙」について、密度がそれぞれ、「0.64g/cm^(3)、0.82g/cm^(3)、0.76g/cm^(3)、1.20g/cm^(3)、1.00g/cm^(3)及び0.3?0.8g/cm^(3)」であることが記載され、このうち最も密度が小さいのが和紙の0.3g/cm^(3)であり、最も密度が大きいのがコート紙の1.20g/cm^(3)であることが、示されている。
・参考資料7
「廃プラスチック材を含む廃棄物の減容固形化装置」の発明が記載され、その段落0010及び0036には、「短軸の回転速度を速くすると圧縮度合を高めることができる。」と記載されている。

3.乙号証
・乙第1号証
プラスチックごみの減容化技術について記載され、スクリュー押出式があることが示されている。


」(図1-1-3(5頁))


」(表1-1-2(7頁))
「ごみに混入してくるプラスチックの種類は千差万別であり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニール、メタクリル樹脂、ウレタンフォーム、発泡スチロール等の全く異質な樹脂製品が混入しているうえに、特定の樹脂ではその性能を多様化するために可塑剤等の化学物質も添加されている。」(9頁、2?6行)
・乙第2号証
A組合環境センター内で、廃プラスチック圧縮梱包設備により製造された廃プラスチックブロックを、一定期間、サンプリングして重量計測器により重量計測した結果が示されている。
・乙第3号証
被請求人の実施に係る圧縮成形機の実機の写真が示されている。

第5 当審の判断

1.特許明細書に記載された事項
特許明細書には、以下の事項が記載されている。
(a)「本発明は、所謂RDF(Refuse Derived Fuel)、すなわち、家庭や工場等から廃棄された廃プラスチックと古紙や木材等の繊維質材料とを原料とする廃棄物固形化燃料及びその製造方法に関するものである。」(段落0001)
(b)「廃棄物固形化燃料としては、例えば特開平7-118673号公報に示されているように、破砕された廃プラスチックに破砕された古紙やラミネート紙等の繊維質材料を20?30重量%の割合で混合させた混合物を所定の形状に圧縮成形したものが提案されている。
ところで、圧縮成形した廃棄物固形化燃料を流動層ボイラで燃焼させた場合には、比重が1より小さい廃棄物固形化燃料は流動層上部を浮遊し易く、比重が1より大きい廃棄物固形化燃料は流動層下方へ沈下し易い。しかし、従来の廃棄物固形化燃料は、個々の廃棄物固形化燃料間で比重(密度)が不均一である。
・・・従来の廃棄物固形化燃料は、流動層ボイラで燃焼させた場合には、比重が1より小さい廃棄物固形化燃料が流動層上部を浮遊し流動層ボイラの内壁面に付着して、該内壁面を汚損し易い。
・・・従来の廃棄物固形化燃料には、流動層ボイラで燃焼させた場合に、比重が1より小さい廃棄物固形化燃料は流動層上に浮上して燃焼が不安定となり易く、比重が1より大きい廃棄物固形化燃料は流動層下方へ沈下して不完全燃焼のまま流動層ボイラから排出され易く、従って、流動層ボイラの燃焼効率を悪化させ易いという問題点もある。」(段落0002?0006)
(c)「回収された廃プラスチック2は、ブロック化装置11により、所定重量づつ破砕されてプレスされ、締結部材としてのスチールバンドで結かれて、縦,横,高さがそれぞれ約1mのプラスチックブロック12にされる。このプラスチックブロック12は、梱包装置13により包装材としてのプラスチック製のテープ14(図4参照)を巻き付けられ、そのテープ14で全表面を覆われて包装ブロック15にされた後、廃プラスチック2の保管場所16に保管される。」(段落0033)
(d)「回収された繊維質材料3は、ブロック化装置17により、所定重量づつ破砕されてプレスされ、締結部材としてのスチールバンドで結かれて繊維質ブロック18とされる。このとき、各繊維質ブロック18の重量は、プラスチックブロック12の重量との合計重量に対して約20%の重量となるように設定されている。繊維質ブロック18は、繊維質材料3の保管場所19に保管される。」(段落0034)
(e)「図4は、図2に示すものの燃料製造装置を模式的に示す説明図である。図4に示すように、燃料製造装置20は、解砕機21と磁選機22と定量供給機23と圧縮成形機24とベルトコンベア25とを備えている。」(段落0037)
(f)「解砕機21には、保管設備10から搬入された包装ブロック15と繊維質ブロック18とが同個数づつ投入される。解砕機21は、包装ブロック15と繊維質ブロック18とを解砕し、解砕された廃プラスチック2及び繊維質材料3を混合させて混合物4とする。この混合物4は、ベルトコンベア25で定量供給機23へ搬送される。」(段落0038)
(g)「ベルトコンベア25の途中には磁選機22が配設されている。この磁選機22は、磁石を備えており、プラスチックブロック12及び繊維質ブロック18に使用されていたスチールバンドの破片等の異物5を混合物4から吸着除去して異物5保管場所へ落下堆積させる。定量供給機23は、供給スクリュウ23aを備えており、混合物4を一定量づつ圧縮成形機24へ供給する。」(段落0039)
(h)「この圧縮成形機24は、一定量の混合物4を1g/cm^(3)の密度に圧縮するように設定されており、一定量の混合物4を、1g/cm^(3)の密度で、直径が35?50mmに圧縮成形し円柱形状に成形後、約150mmの長さに切断し、廃棄物固形化燃料1として排出する。」(段落0040)
(i)「

」(図4)
(j)「なお、以上説明した廃棄物固形化燃料1では、廃プラスチック2中に繊維質材料3が20重量%程度の割合で混合されている。しかし、廃棄物固形化燃料1における繊維質材料3の重量割合は、20%程度に限定されるものではない。従って、例えば、廃棄物固形化燃料1の主原料となる廃プラスチック2の種類等に応じて前記重量割合を適宜変更することができるのは勿論のことである。」(段落0059)
(k)「更に、廃棄物固形化燃料1では、繊維質材料3は、家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類とされている。しかし、繊維質材料3は、紙類に限定されず、例えば、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等であっても良い。そして、この木材や古布等を紙類と共に、あるいは紙類に代えて使用しても良い。」(段落0060)

2.無効理由2について
(1)事案にかんがみ、先ず無効理由2について検討し、次いで無効理由3、4、最後に無効理由1について検討する。
無効理由2は、「第2」に示したとおり、「本件発明2について、発明の詳細な説明にどのようにして「1g/cm^(3)の密度」にするのか記載されていない」というものである。
本件発明2は、「第1」に記載したとおりのものであるところ、本件発明2の発明特定事項である「廃プラスチック及び繊維質材料」について、特許請求の範囲の記載からでは、必ずしも明確にされているともいえない。そこで、発明の詳細な説明を検討すると、「廃プラスチック」については、どんなプラスチックが含まれ何が含まれないのかについて特に説明されていないから、通常の廃プラスチック、すなわち、「様々な箇所から廃棄される様々な種類のプラスチック」を意味するといえ、「繊維質材料」は、記載事項(k)から、「家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等」を意味するといえる。
また、特許明細書には、従来技術として、「廃棄物固形化燃料としては、例えば特開平7-118673号公報に示されているように、破砕された廃プラスチックに破砕された古紙やラミネート紙等の繊維質材料を20?30重量%の割合で混合させた混合物を所定の形状に圧縮成形したものが提案されている。ところで、圧縮成形した廃棄物固形化燃料を流動層ボイラで燃焼させた場合には、比重が1より小さい廃棄物固形化燃料は流動層上部を浮遊し易く、比重が1より大きい廃棄物固形化燃料は流動層下方へ沈下し易い。しかし、従来の廃棄物固形化燃料は、個々の廃棄物固形化燃料間で比重(密度)が不均一である。」(記載事項(b))と記載され、本件発明2の「廃棄物固形化燃料の製造方法」は、このような、「従来の廃棄物固形化燃料は、個々の廃棄物固形化燃料間で密度が不均一である」という課題を解決するためになされたものであるから、本件発明2の発明特定事項である「廃棄物固形化燃料の製造方法」は、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の製造方法」であるといえる。
そうすると、本件発明2は、実質的には、
「破砕された様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック及び家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等の繊維質材料を所定の重量割合で混合し、その混合物を1g/cm^(3)の密度で、かつ、直径が35?50mm、長さが150mmに圧縮成形されていることを特徴とする、個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の製造方法。」
であるといえるから、これについて、無効理由2に理由があるか否か検討する。

(2) 本件発明の廃棄物固形化燃料は、特許明細書の段落0037?0040に具体的に記載された方法(記載事項(e)?(h))で製造されるところ、「この圧縮成形機24は、一定量の混合物4を1g/cm^(3)の密度に圧縮するように設定されており、一定量の混合物4を、1g/cm^(3)の密度で、直径が35?50mmに圧縮成形し円柱形状に成形後、約150mmの長さに切断し、廃棄物固形化燃料1として排出する。」(記載事項(h))なる記載から、密度を調整するのは圧縮成形機であるので、本件発明における圧縮成形機がどのような圧縮成形機であり、どのような機能を有するものであるのかについて検討する。
被請求人が提出した乙第1号証は、本件発明と同じく廃プラスチックの減容化技術について記載されるものであり、これによると、その減容化方式には、「表1-1-2」(7頁)に示されるようにいくつもの種類があることがわかる。
そこで、乙第1号証の4?6頁の図と特許明細書の第4図に「24」で示される圧縮成形機の図とを比べると、本件発明における圧縮成形機は乙第1号証の「図1-1-3 スクリュー押出方式」(5頁)に似ていること、本件発明で得られる固形化燃料は円筒状であるところ、乙第1号証の上記「表1-1-2」によると、「成形物の形状」として「円筒状」が示されているのはスクリュー押出式のみであること、また、被請求人が口頭審理陳述要領書及び上申書で本件発明の圧縮成形機はスクリュー押出式である旨述べ、請求人もこのことに反論していないことから、これらのことを併せ考慮すると、本件発明において用いている圧縮成形機は、スクリュー押出式である、と認められる。
そして、スクリュー式圧縮成形機で、スクリューの回転速度を高めることにより圧縮度合を高め、スクリューの回転速度を低くすることで圧縮度合を低くすることができることは、請求人の提出した参考資料7、被請求人の提出した乙第3号証からも窺えるから、スクリュー式圧縮成形機は、圧縮度合すなわち圧縮比を調整する機能を有するものであることがわかる。

(3)ところで、「様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック」は、特許明細書に「縦,横,高さがそれぞれ約1mのプラスチックブロック12」(記載事項(c))とされてはいるものの、その重量は記載されておらず、かつ、被請求人が提出した乙第1号証に、「ごみに混入してくるプラスチックの種類は千差万別であり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニール、メタクリル樹脂、ウレタンフォーム、発泡スチロール等の全く異質な樹脂製品が混入している」と記載され、ごみに混入してくるプラスチックの種類が千差万別であれば、当然その密度も様々である(甲第1号証参照)から、「様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック」は、「縦,横,高さがそれぞれ約1mのプラスチックブロック12」毎に、その密度は異なるものである。
また、同様に「家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等の繊維質材料」は、やはり、種々のものが混合しており、「各繊維質ブロック18の重量は、プラスチックブロック12の重量との合計重量に対して約20%の重量となるように設定されている」(記載事項(d))ことは特許明細書に記載されているものの、体積は記載されていないから、「各繊維質ブロック18」毎に、その密度は異なるものである。
そして、このようなプラスチックブロック12と繊維質ブロック18は、特許明細書の記載事項(c)及び(d)の要件、すなわち、プラスチックブロックの体積及びその重量に対する繊維質ブロックの重量割合についての要件を満たせばよいのであるから、この要件を満たす範囲で様々な密度のものがランダムに解砕機に投入されていると考えられ、圧縮成形機に供給されるまでに、何ら密度を調整されていないのであるから、圧縮成形機に供給される混合物はその時毎に密度が異なるものであるといえる。

(4)そうすると、その時毎に圧縮成形機に供給される混合物の密度は異なっているのであるから、様々に異なる密度の混合物を圧縮成形機に供給して、密度が1(以下、密度について「1」とは、「1g/cm^(3)」を意味する。)という極めて限られた範囲で、個々の廃棄物固形化燃料間で常に均一な密度を有する廃棄物固形化燃料を得ようとしたら、スクリュー式圧縮成形機に、「供給される混合物の密度を正確に計測し、その密度がちょうど1になるような圧縮比を求め、求めた圧縮比のとおりになるようにスクリューの回転速度を正確に調整する」、という手段が装備されていなければならない。
すなわち、少なくとも、供給される混合物の密度を瞬時に正確に計測する手段が圧縮成形機に装備され、かつ、圧縮比とスクリュー回転速度との厳密な関係が理論的もしくは実験的に明確に示されている必要がある。
しかしながら、特許明細書には単に圧縮成形機と記載されるのみで、このような手段についても、圧縮成形機における圧縮比とスクリュー回転速度との厳密な関係についても、何ら記載されておらず、また、これらのことが周知であるとするに足る資料も何ら提出されていない。
そうしてみると、スクリュー式圧縮成形機に圧縮比を調整する機構が備わっているからといって、発明の詳細な説明の記載からでは、様々な密度を有する廃プラスチック及び繊維質材料から、どのようにして、密度が1という極めて限られた範囲で、個々の廃棄物固形化燃料間で常に均一な密度を有する廃棄物固形化燃料が得られるのか、わからないといわざるを得ない。

(5)スクリュー式圧縮成形機に、「供給される混合物の密度を瞬時に正確に計測する手段」は装備されていなくても、「排出された燃料の密度を計測し、密度が1よりも小さければ回転速度を上げて圧縮比が高くなるように調整し、密度が1よりも大きければ回転速度を下げて圧縮比が低くなるように調整し、調整後に排出された燃料の密度を計測し、という調整方法を繰り返し、排出された燃料の密度を1に近づけていく」、という手作業による原始的調整方法を採用すれば、密度1のものは得られる、という反論があるかもしれない。
しかしながら、密度の異なる混合物が次々と圧縮成形機に供給されているのであるから、上記したような手作業による調整方法では、密度を計測した燃料と、これから製造しようとしている燃料とで、用いられる混合物の密度が同じであるとは限らないから、何度調整を繰り返しても密度1のものが均一に得られるとはいえない。
さらに、用いられるプラスチックブロックと繊維質ブロックの密度が常に一定であるから、該混合物の密度も一定になり、上記の手作業による調整方法でも密度1の廃棄物固形化燃料が得られる、という反論もあるかもしれない。
しかしながら、用いられるプラスチックブロックと繊維質ブロックの密度が常に一定であるというようなことは、特許明細書には記載されておらず、技術常識であるともいえず、反対に、上記(1)に示したとおり、プラスチックブロックも繊維質ブロックも様々な密度を有するものがランダムに投入されるものである、と解さざるを得ない。
したがって、手作業による調整方法を採用するのでは、密度が1という極めて限られた範囲で、個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料が得られるとすることはできない。

(6)以上のとおり、特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「破砕された様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック及び家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等の繊維質材料」を用いて、密度が1という極めて限られた範囲で、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の製造方法」について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
したがって、無効理由2には、理由がある。

3.無効理由3及び4について
本件発明3及び4は、いずれも本件発明2を引用しているものであるから、上記「2.」に示したのと同様の理由により、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
したがって、無効理由3及び4には、理由がある。

4.無効理由1について
(1)無効理由1は、「第2」に示したとおり、「本件発明1について、発明の詳細な説明にどのようにして1の密度にするのか記載されていない」というものである。
本件発明1は、「第1」に記載したとおりのものであるところ、本件発明1の発明特定事項である「廃プラスチック及び繊維質材料」については、上記「2.(1)」に示したとおり「様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック及び家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等の繊維質材料」の意味である。また、特許明細書の従来技術に関する記載から、本件発明1の廃棄物固形化燃料は、上記「2.(1)」に示したように、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料」であるといえ、これは、「1本の燃料が密度1のものであれば足る」ということではなく、「流動層ボイラで使用されるに足る量の燃料が、すべて密度1という均一な密度を有する廃棄物固形化燃料の集合体」という意味であるといえる。
そうすると、本件発明1は、実質的には、
「流動層ボイラで使用される廃棄物固形化燃料であって、廃棄物固形化燃料は、破砕された様々な箇所から廃棄される様々な種類の廃プラスチック及び家庭から廃棄された古紙やラミネート紙等の紙類、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等の繊維質材料が所定の重量割合で混合された混合物が1g/cm^(3)の密度で、かつ、直径が35?50mm、長さが150mmに圧縮成形されていることを特徴とする、個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の集合体。」
であるといえるから、これについて、無効理由1に理由があるか否か検討する。

(2)本件発明1の、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の集合体」は、特許明細書の段落0037?0040に記載の方法(記載事項(e)?(h))で製造される、といえるところ、該方法によっては、「密度が1という極めて限られた範囲で、個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料」が得られないことは、上記「2.(1)?(6)」に示したとおりである。
また、他の方法によって得られることは特許明細書には記載されておらず、どのような方法であるにしろ、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の集合体」が得られたという実施例もない。
たまたま、圧縮成形機から排出された廃棄物固形化燃料の密度を計測したら密度がちょうど1である、ということはあるかもしれない。しかしながら、本件発明1は、上記(1)に示したとおり、「1本の燃料が密度1のものであれば足る」というものではないから、「密度が1という極めて限られた範囲のものが常に得られる」という製造方法が特許明細書に記載されていない以上、「個々の廃棄物固形化燃料間で密度が均一な廃棄物固形化燃料の集合体」である本件発明1が、特許明細書に記載されている、ということはできない。
したがって、本件発明1に関しても、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、無効理由1には、理由がある。

第6 被請求人の答弁についての判断

被請求人は、答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書を提出して、請求人の主張に対し答弁・主張しているところ、その具体的内容は、次の1.?3.のとおりである。(なお、(あ)等の記号は審決で付与したものである。)

1.答弁書において、被請求人は、次のように答弁する。
(あ)解砕機21に投入される包装ブロック15と繊維質ブロック18との重量及び体積はそれぞれ既知である。
(い)解砕機21において、各ブロックがそれぞれ解砕され、プレスされた状態から細粒化されることにより、搬出される混合物4の体積は、投入されたブロックの合計体積より増加するが、この解砕前後での体積の比、すなわち嵩比は、通常、燃料製造装置の設計時に仕様として決定されていなければならない。混合物4は、ベルトコンベア25上に載置されて定量供給機に搬送されるところ、ベルトコンベアにより混合物を搬送する単位時間当たりの搬送能力を決定するために、既知である解砕前のブロック合計体積と一定量の嵩比とが必要となることは技術常識であるからである。
(う)解砕前のブロック合計体積と嵩比とから、混合物4の体積を得ることができるから、圧縮成形機24には、一定重量かつ一定体積の混合物が投入されることになるのであり、この混合物の重量及び体積はいずれも既知であるから、混合物の密度も既知である。
(え)圧縮成形機において、一定の圧縮比で混合物の圧縮がなされるように制御することは、押圧力を調整することなどにより容易になし得ることであるから、既知の圧縮前密度の混合物から所定の圧縮後密度(1g/cm^(3))の廃棄物固形化燃料を得ることは自明である。

2.口頭審理陳述要領書において、被請求人は、次のように主張する。
(お)解砕機21に投入される包装ブロック15のサイズは、本件特許明細書の【0033】欄に記載のとおり、約1,000mm×約1,000mm×約1,000mm(体積約1.0m^(3))であり、その重量は、約600kgである。繊維質ブロック18のサイズは、約500mm×約500mm×約1,200mm(体積約0.3m^(3))であり、その重量は、本件特許明細書記載のとおり、プラスチックブロック12の重量との合計重量に対して約20%の重量である約150kgである。
(か)被請求人実施に係る圧縮成形方式は、スクリュー押出式であり、乙第1号証7頁表1-1-2に記載されるとおり、減容率に優れると共に成形が容易である利点を有し、最も多く採用されている方式である。
(き)被請求人実施に係る圧縮成形機においては、スクリュー押出式圧縮成形機のスクリュー回転速度を可変に設定することが可能であり、このスクリュー回転速度を所定値に調整することにより、混合物の1g/cm^(3)の密度への圧縮成形を実現している。スクリュー押出式圧縮成形機には、単位時間当たり一定量が連続的に供給されるから、押出成形用スクリューの回転速度を調整することにより、過度の試行錯誤を要することなく、混合物を1g/cm^(3)の密度に圧縮成形することができる。

3.上申書において、被請求人は、次のように主張する。
(く)乙第2号証は、被請求人がある市町村自治体組合との委託契約に基づき、廃プラスチックブロックの製造を行っている環境センター内において、分別収集された廃プラスチックから被請求人実施に係る廃棄物固形化燃料製造設備内の廃プラスチック圧縮梱包設備により実際に製造された廃プラスチックブロックを、平成20年1月4日から7月31日まで、各日1時間おきに製造された約5ないし7個のうち毎時1個をサンプリングして重量計測器により重量計測した結果を示す。
現状、廃プラスチックブロックを所定サイズ1.0m×1.0m×1.0mで製造すれば、ほとんどブロック間での重量のバラツキはなく、ほぼ600kg近傍の重量の廃プラスチックが得られているのである。
各繊維質ブロックは、このプラスチックブロックの重量との合計重量に対して約20%の重量である約150kgに調整されており、また、分別収集された廃棄物は通常木材等をほとんど含むものではないから、繊維質ブロックは専ら紙のみから成るものであってその比重には大きなバラツキはなく、・・・のサイズで製造されている。
(け)解砕混合処理が進行するにつれ、所定時間経過すると混合物は一定の体積に収束し、混合物は定量供給機に投入され、供給スクリューにより単位時間当たり一定の体積及び重量のものが圧縮成形機に供給されるのである。
(こ)圧縮成形機においては、圧縮成形後の廃棄物固形化燃料の密度を一定に調整するために、回転スクリューの回転速度は可変に設定可能であるが、毎回調整を要するようなものではなく、通常は所定の回転速度値にほぼ固定されている。
乙第3号証には、圧縮成形機には操作盤が設けられ、この操作盤には回転スクリューの回転速度を0?100rpmまで調整可能な速度調整ダイヤルが設けられていることが示されている。

4.上記の答弁・主張についての判断
(1)これらの(あ)?(こ)の答弁・主張のうち、(あ)、(お)、(く)は、「解砕機に投入される包装ブロックと繊維質ブロックとの重量及び体積はそれぞれ既知であり、包装ブロックは体積約1.0m^(3)で重量約600kgであり、繊維質ブロックは体積約0.3m^(3)で重量約150kgである」、というものである。
ところで、「第5 2.(3)」でも示したように、被請求人が提出した乙第1号証には、「ごみに混入してくるプラスチックの種類は千差万別であり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニール、メタクリル樹脂、ウレタンフォーム、発泡スチロール等の全く異質な樹脂製品が混入している」ことが記載されており、ごみに混入してくるプラスチックの種類が千差万別であれば、当然その比重・密度も様々であると思われる(甲第1号証参照)から、「包装ブロックは、その体積は通常約1.0m^(3)で、その重量は通常約600kgである」とは解しがたい。
また、それにもかかわらず乙第2号証において単位体積当たりほぼ一定重量の廃プラスチックが得られているということは、何らかの方法により特定の廃プラスチック原料を選択して、単位体積当たりの重量が一定であるような廃プラスチックブロックを製造していると解されるが、特許明細書にはこのような特定の廃プラスチック原料を選択して単位体積当たりの重量が一定であるプラスチックブロック12を製造すること及びその具体的な方法は記載されていないので、この主張は特許明細書の記載に基づくものではなく、採用することはできない。
さらに、繊維質ブロックの重量につき、被請求人は上記(く)で、「各繊維質ブロックは、このプラスチックブロックの重量との合計重量に対して約20%の重量である約150kgに調整されており」、「分別収集された廃棄物は通常木材等をほとんど含むものではないから、繊維質ブロックは専ら紙のみから成るものであってその比重には大きなバラツキはなく、」と主張する。
しかしながら、特許明細書には、「廃棄物固形化燃料1における繊維質材料3の重量割合は、20%程度に限定されるものではない。」こと(記載事項(j))、「繊維質材料3は、紙類に限定されず、例えば、家庭や工場等から廃棄された木材や古布等であっても良い。そして、この木材や古布等を紙類と共に、あるいは紙類に代えて使用しても良い。」こと(記載事項(k))が明記されているのであるから、この主張も、特許明細書の記載に基づくものではない。
したがって、被請求人の(あ)、(お)、(く)の主張は採用できない。

(2)上記答弁・主張のうち、(い)、(う)、(け)は、「混合物4の体積は、投入されたブロックの合計体積より増加するが、所定時間経過すると混合物は一定の体積に収束し、この解砕前後での体積の比、すなわち嵩比は、通常、燃料製造装置の設計時に仕様として決定されているものであるから、圧縮成形機に供給される混合物の密度は既知である」というものである。
解砕機で解砕されれば、見かけの体積が増加することは技術常識といえるものの、どの程度増加するか、すなわち、嵩比がどの程度になるかについて特許明細書には何ら記載されておらず、嵩比の具体的数値までが技術常識であるとはいえず、嵩比の値までもを技術常識であるとするに足る資料は何ら提出されていないので、この主張は特許明細書の記載に基づくものではない。
さらに、仮に嵩比が通常、燃料製造装置の設計時に仕様として決定されているものであったとしても、そもそも、解砕機に投入される廃プラスチックブロックと繊維質ブロックの密度が一定でないのであるから、圧縮成形機に供給される混合物の密度が常に一定であるとは到底いえず、したがって、被請求人の(い)、(う)、(け)の主張は採用できない。

(3)上記答弁・主張のうち、(え)、(か)、(き)、(こ)は、「本件発明における圧縮成形機はスクリュー押出式であり、この圧縮成形機には操作盤が設けられ、この操作盤には回転スクリューの回転速度を0?100rpmまで調整可能な速度調整ダイヤルが設けられており、スクリューの回転速度を調整することにより、一定の圧縮比で混合物の圧縮がなされるように制御し、過度の試行錯誤を要することなく、混合物を1g/cm^(3)の密度に圧縮成形することができる。」というものである。
しかしながら、スクリューの回転速度を0?100rpmまで調整可能な速度調整ダイヤルが設けられていても、圧縮成形機に供給される混合物の密度を瞬時に計測する手段が装備されていないのであるから、どのような試行錯誤を要しても、密度が1という極めて限られた範囲の廃棄物固形化燃料を均一に得ることができないことは、「第5 2.(1)?(6)」に示したとおりである。
したがって、被請求人の(え)、(か)、(き)、(こ)の主張は採用できない。

5.まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書での答弁・主張は、当審の判断に影響しない。

第7 むすび

以上のとおり、請求人の主張する無効理由1?4は、いずれも理由があり、本件発明1?4についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-21 
結審通知日 2008-10-27 
審決日 2008-11-07 
出願番号 特願平11-181422
審決分類 P 1 113・ 536- Z (C10L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 健司平塚 政宏  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
唐木 以知良
登録日 2001-08-17 
登録番号 特許第3222117号(P3222117)
発明の名称 廃棄物固形化燃料及びその製造方法  
代理人 三好 秀和  
代理人 豊岡 静男  
代理人 瀧澤 匡則  
代理人 小西 恵  
代理人 下田 容一郎  
代理人 茅野 直勝  

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