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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1190210
審判番号 不服2004-11607  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-08 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2002- 41385「住宅ローン審査システム、方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開、特開2003-242350〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年2月19日の出願であって,平成16年4月26日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年6月8日に拒絶査定不服審判がされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので,特許請求の範囲については,本件補正前請求項1の「項目値に対して商品基準審査条件を適用することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその商品基準審査結果データを」,「取得したデータに基づいて個人信用情報審査を実行することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその個人信用情報審査結果データを」,「抽出しみなし評価額を算出した」,「「可」と判定され」とあったところを,それぞれ,「項目値に対して自動審査可能な商品基準審査条件が適用されて「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その商品基準審査結果データを」,「取得したデータに基づいた個人信用情報審査により「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その個人信用情報審査結果データを」,「抽出し,該申込案件のデータに含まれる売買契約金額と予め作成された掛目設定テーブルから取得した掛目とからみなし評価額を算出した」,「「可」と自動判定され」と限定するものであることから,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願補正発明は,次のとおりである。
「 【請求項1】
住宅ローンの申込案件に対してローン諾否の結果を判定するために互いに通信装置によりデータを授受するローンセンタサーバと,保証会社サーバと,進捗管理サーバとを有する住宅ローン審査システムにおいて,
(A)前記ローンセンタサーバが,
(a1)申込案件に関する複数の情報項目の入力データを登録すべく記憶装置に構築したデータベースと,
(a2)前記データベースに登録された入力データから取得した情報項目の項目値に対して自動審査可能な商品基準審査条件が適用されて「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その商品基準審査結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段と
(a3)前記抽出された申込案件について前記データベースに登録された入力データを通信装置により前記保証会社サーバへ送信する手段とを具備し,
(B)前記保証会社サーバが,
(b1)前記ローンセンタサーバから送信された前記申込案件に関するデータ並びに個人信用情報機関から取得したデータに基づいた個人信用情報審査により「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その個人信用情報審査結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段と,
(b2)前記ローンセンタサーバから送信された前記申込案件についてみなし評価額を算出可能なもののみを抽出し,該申込案件のデータに含まれる売買契約金額と予め作成された掛目設定テーブルから取得した掛目とからみなし評価額を算出した算出結果データを通信装置により前記進捗サーバへ送信する手段と,
(b3)少なくとも前記個人信用情報審査結果データ及び前記みなし評価額算出結果データに基づきローン諾否について「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについてローン諾否結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段とを具備し,
(C)前記進捗管理サーバが,
(c1)前記ローンセンタサーバから前記商品基準審査結果データを通信装置により受信する手段と,
(c2)前記保証会社サーバから前記個人信用情報審査結果データ,前記みなし評価額の算出結果データ及び前記ローン諾否結果データを通信装置により受信する手段と,
(c3)受信した前記各結果データを保存するデータ保存部と,
(c4)保存された前記各結果データを通信ネットワークを介してコンピュータ端末装置から参照可能とする通信手段とを具備することを特徴とする
住宅ローン審査システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-283005号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に以下の技術事項が記載されている。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ユーザに対し金融商品情報を提供するとともに,金融機関が行うユーザの資格審査を支援する,金融商品照会技術に関する。」

(b)「【0003】一方,金融機関は,ユーザから資格審査の依頼書等を受け取った場合,そのユーザに金融商品を販売することが可能かどうか,ユーザの資格審査を行う。資格審査は,例えば就業先,勤続年数,年収といったユーザ情報に基づいて行われるのが一般的である。」

(c)「【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の金融商品照会方法は,ユーザ情報を仮審査条件と照合することにより,金融機関に対して審査依頼を行うことができるかどうかを判断し,その判断結果をユーザに対し出力することを特徴とする。好適には,金融機関に対して審査依頼を行うことができると判断した場合に,ユーザが選択した金融商品情報に対応する金融機関に対して審査依頼情報を出力し,金融機関より審査結果情報を受け付け,審査合格/不合格の結果情報をユーザに対し出力する。」

(d)「【0030】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下に本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は,本発明の第1の実施形態である金融商品照会システムの構成をあらわすブロック図である。図1に示すように,本金融商品照会システム1は,商品情報記憶手段10,ユーザ情報記憶手段11,仮審査手段12,審査依頼手段13,審査結果提示手段14を含んで構成される。
【0031】ここで,本発明による金融商品照会システムは上記の各手段を備えていれば足り,物理的には金融商品照会用に専用化したシステム,あるいは汎用の情報処理装置のいずれでもよい。例えば,処理装置と入力手段と記憶手段と出力手段とを備えた一般的な構成の情報処理装置において,各手段の動作を規定したソフトウェアを起動して本発明の金融商品紹介方法を実施することにより,本発明の金融商品照会システムを実現することができる。なお,金融商品照会用に専用化したシステム又は情報処理装置は,単一のコンピュータにより構成されるものであっても,ネットワーク上に分散した複数のコンピュータにより構成されるものであっても良い。
【0032】商品情報記憶手段10は,金融商品情報を,当該金融商品を提供(販売)する金融機関の情報に対応づけて,複数記憶している。記憶の仕方としては,リレーショナルデータベース等の従来のデータベース技術を用いることができる。
【0033】ここで,金融商品には,住宅ローン契約,教育ローンなどの無担保ローン契約,クレジット(信販,キャッシュ)カードの発行契約,各種保険の請け負い契約などが含まれる。これらの金融商品は,商品名,商品種別など複数のパラメータにより特定することができる。例えば,ローン契約であれば,商品名,商品種別(変動金利型,固定金利型,期間固定金利型など),金利,融資金額,融資機関,返済月額,返済方法(元利均等型,元金均等型など),一部/全額繰り上げ返済の可否,優遇取扱の有無といったパラメータが考えられる。以下,かかる複数のパラメータを金融商品情報と呼ぶ。」

(e)「【0035】前記情報処理手段100は,ユーザからの入力を受け付けるとともに,ユーザに対し情報を出力することができる構成となっていればよく,各ユーザが保有する一般的なパソコンや携帯端末などを情報処理手段100として用いることができる。
【0036】前記情報処理手段100は,本金融商品照会システム1が備えるように構成してもよいし,外部の情報処理装置として構成してもよい。また,前記情報処理手段100と本金融商品照会システム1をインターネットなどの通信ネットワーク(有線,無線の両方を含む)を介して接続するように構成してもよい。この場合,前記情報処理手段100及び金融商品照会システム1は,通信ネットワークを介して通信するために必要な通常の構成を備える。例えば,インターネットを介して接続する場合であれば,PPPドライバおよびTCP/IPドライバを有する通信モジュールを備える。なお,情報処理手段100が携帯端末の場合は,外部にあるゲートウェイ(例えば,NTTドコモ社のiモードセンター等)を介して本金融商品照会システム1に接続されることになる。
【0037】商品情報記憶手段10は,例えば,図2に示すような画面情報を前記情報処理手段100に対し出力する。ユーザはかかる画面情報をもとに所定の金融機関(例えば記号200で示される「○○銀行」)をクリック等することにより指定する。」

(f)「【0041】ユーザ情報記憶手段11は,前記情報処理手段100に対し情報を入出力可能に構成されている。
【0042】ユーザ情報記憶手段11は,例えば,図4に示すような画面情報を前記情報処理手段100に対し出力する。ユーザはかかる画面情報をもとにユーザ情報を入力する。ユーザ情報記憶手段11は,前記情報処理手段100を介してユーザよりユーザ情報を受け付け,ユーザごとに記憶する。記憶の仕方としては,金融商品情報と同様にリレーショナルデータベース等の従来のデータベース技術を用いることができる。
【0043】ユーザ情報としては,例えば,氏名(漢字,カナ),自宅住所,自宅電話番号,E-mailアドレス,性別,生年月日(年齢),職業(職種),勤務先,勤務先住所,勤務先電話番号,役職,勤続年数,未婚/既婚,扶養人数,年収,住居の形態,居住年数,他のローン額,借入予定金額,借入予定期間,自己資金額,口座の有無といった個人情報項目と,物件名称,物件種類,物件用途,物件価格,物件所在地,築年月,不動産会社名,建設会社名といった物件情報項目が考えられる。なお,共同名義者がいる場合には,共同名義者についても自宅住所や年収等の情報を個人情報項目として記憶するようにしてもよい。ただし,かかる例は金融商品として住宅ローンを想定した場合の例である。ユーザ情報はかかる例に限定されるものではなく,対象とする金融商品に応じて定めることができる。
【0044】ユーザ情報を受け付けるタイミングについては設計に応じて定めることができる。例えば最初から全てのユーザ情報をユーザより受け付けるように構成してもよいし,最初は基本項目のユーザ情報だけを受け付け,残りのユーザ情報については仮審査等の処理を行うために必要となった時点で受け付ける(ユーザが入力する)ように構成してもよい。」

(g)「【0046】仮審査手段12は,図5に示すように,仮審査条件を記憶する条件記憶手段120と仮審査の判断を行う判断手段121を備えている。
【0047】条件記憶手段120は,例えば図6に示す表形式で,仮審査条件を記憶している。仮審査条件とは「金融機関に資格審査を依頼することができるかどうか」の判断をするために用いる条件である。
【0048】図6に示す例では,ユーザが直接入力するユーザ1次情報(図中において項目番号204が付されているもの)及びユーザ1次情報から算出することのできるユーザ2次情報(図中において項目番号204が付されていないもの)の2種類のユーザ情報について,リジェクト条件205及びクロスリジェクト条件206の2種類の仮審査条件が記憶されている。ユーザ2次情報については,ユーザ1次情報に基づく算出式207も記憶されている。なお,算出式中の番号はユーザ1次情報に付された項目番号を示している。
【0049】リジェクト条件205は,ユーザ情報が当該条件に当てはまる(成立する)場合に仮審査不合格と判断するために用いられるものである。例えば,図6に示すA銀行においては,項目番号6についてのリジェクト条件に関し,ユーザの税込み年収が100万円未満の場合は仮審査不合格と判断される。
【0050】また,クロスリジェクト条件は,ユーザ情報が当該条件に当てはまる場合には,リジェクト条件が成立していない場合であっても,仮審査不合格と判断するために用いられるものである。例えば,図6に示すA銀行においては,項目番号9についてのクロスリジェクト条件に関し,希望融資金額が物件購入価格×80%を超える場合(クロスリジェクト条件が成立している場合)には,希望融資金額が10万以上1億円以下である場合(リジェクト条件が成立していない場合)であっても,仮審査不合格と判断される。
【0051】かかる例では,仮審査条件は金融機関ごとに記憶されているが,仮審査条件を金融商品情報ごとに記憶するように構成してもよい。また,仮審査条件は各項目ごとに記憶されているが,複数の項目を組み合わせた仮審査条件(例えば,借入予定金額/年収<7,など)を記憶するように構成してもよい。なお,ユーザ情報全てについて仮審査条件を設定しておく必要はなく,例えば図6において仮審査条件の欄が空欄となっているものは対応する項目について仮審査条件が設定されていないことを意味する。
【0052】判断手段121は,前記情報処理手段100に対し情報を入出力可能に構成されている。判断手段121は,前記情報処理手段100を介してユーザから金融機関又は金融商品情報の指定を受け付け,かかる指定に基づいて,仮審査の対象とする金融機関を選択する。次に,ユーザ情報記憶手段11よりユーザ情報を読み出し,条件記憶手段120より前記選択した金融機関に対応する仮審査条件を読み出す。そして,前記読み出したユーザ情報を前記読み出した仮審査条件と照合することにより,金融機関ごとに仮審査合格/不合格を判断する。
【0053】合格/不合格の判断方法としては,例えば,読み出したユーザ情報が金融機関について設定されているリジェクト条件(及びクロスリジェクト条件)全てについて成立している場合,当該金融機関について仮審査不合格とし,それ以外の場合には合格とするといった方法が考えられる。」

(h)「【0056】判断手段121は,前記情報処理手段100を介し,仮審査の判断結果をユーザに対し出力する。この場合,判断結果に応じてメッセージを出力するように構成してもよい。メッセージとしては,例えば,合格の場合「融資に特に問題ないと思われます」,準合格の場合「融資に問題が生じる可能性があります」,不合格の場合「融資に問題があります」等が考えられる。
【0057】ここで,仮審査において複数のリジェクト条件等が成立している場合,各条件ごとに個別にメッセージを出力するように構成してもよい。この場合,成立している条件全てについてメッセージを出力するのではなく,各条件に対して予め優先順位を定めておき,成立している条件のうち優先順位の高いものについて所定数(例えば3つ)のメッセージを出力するように構成してもよい。このように構成することで,ユーザに対し重要な条件に関するメッセージを優先して出力することができる。」

上記引用例記載事項及び図面から,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザから金融機関又は金融商品の指定を受け,かかる指定に基づいて,仮審査の対象として選択された金融機関に対して,ユーザ情報を仮審査条件と照合することにより,審査依頼を行うことができるかどうかを判断するための金融商品照会システムにおいて,
金融商品照会システムは,
選択された金融機関について仮審査のために,ユーザから受け付けたユーザ情報である,氏名(漢字,カナ),自宅住所,自宅電話番号,E-mailアドレス,性別,生年月日(年齢),職業(職種),勤務先,勤務先住所,勤務先電話番号,役職,勤続年数,未婚/既婚,扶養人数,年収,住居の形態,居住年数,他のローン額,借入予定金額,借入予定期間,自己資金額,口座の有無といった個人情報項目と,物件名称,物件種類,物件用途,物件価格,物件所在地,築年月,不動産会社名,建設会社名といった物件情報項目を記憶するユーザ情報記憶手段を具備し,
金融機関に資格審査を依頼することができるかどうかの判断に用いられる条件である金融商品情報ごとに記憶された仮審査条件としてのリジェクト条件(例えば,ユーザの税込み年収が100万円未満の場合は仮審査不合格)を,読み出したユーザ情報と照合することにより,金融機関ごとに仮審査合格/不合格を判断し,
仮審査の判断結果を通信ネットワークを介して一般的なパソコンや携帯端末などの情報処理手段に対し出力する
金融商品照会システム。」

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを比較する。

引用発明の「ユーザから金融機関又は金融商品の指定を受け,かかる指定に基づいて,仮審査の対象として選択された金融機関に対して,ユーザ情報を仮審査条件と照合することにより,審査依頼を行うことができるかどうかを判断する」ことは,ユーザが行う審査依頼の目的は,住宅ローンサービスを受けることができるか否かであることからであることから,本願補正発明の「住宅ローンの申込案件に対してローン諾否の結果を判定する」ことに相当する。

引用発明の「金融商品照会システム」と,本願補正発明の「住宅ローン審査システム」は,ローンセンタサーバの機能を含む「住宅ローン審査システム」であることで共通する。

引用発明の「選択された金融機関について仮審査のために,ユーザから受け付けたユーザ情報である,氏名(漢字,カナ),自宅住所,自宅電話番号,E-mailアドレス,性別,生年月日(年齢),職業(職種),勤務先,勤務先住所,勤務先電話番号,役職,勤続年数,未婚/既婚,扶養人数,年収,住居の形態,居住年数,他のローン額,借入予定金額,借入予定期間,自己資金額,口座の有無といった個人情報項目と,物件名称,物件種類,物件用途,物件価格,物件所在地,築年月,不動産会社名,建設会社名といった物件情報項目を記憶するユーザ情報記憶手段」は,本願補正発明の「申込案件に関する複数の情報項目の入力データを登録すべく記憶装置に構築したデータベース」に相当する。

引用発明の「金融機関に資格審査を依頼することができるかどうかの判断に用いられる条件である金融商品情報ごとに記憶された仮審査条件としてのリジェクト条件(例えば,ユーザの税込み年収が100万円未満の場合は仮審査不合格)」は,本願補正発明の「商品基準審査条件」に相当する。

引用発明の「金融機関に資格審査を依頼することができるかどうかの判断に用いられる条件である金融商品情報ごとに記憶された仮審査条件としてのリジェクト条件(例えば,ユーザの税込み年収が100万円未満の場合は仮審査不合格)を,読み出したユーザ情報と照合することにより,金融機関ごとに仮審査合格/不合格を判断」は,本願補正発明の「前記データベースに登録された入力データから取得した情報項目の項目値に対して自動審査可能な商品基準審査条件が適用されて「可」と自動判定」を行うことに相当する。

コンピュータが処理結果のデータを保存し端末から参照可能とすることは慣用手段であるから,引用発明において,仮審査合格/不合格の判断結果のデータを保存するデータ保存手段を具備することは自明のことであり,該「仮審査合格/不合格の判断結果のデータを保存するデータ保存手段」は,本願補正発明の「受信した前記各結果データを保存するデータ保存部」と,「商品基準審査結果データを保存するデータ保存部」として共通する。

引用発明の「仮審査の判断結果を通信ネットワークを介して一般的なパソコンや携帯端末などの情報処理手段に対し出力する」と,本願発明の「保存された前記各結果データを通信ネットワークを介してコンピュータ端末装置から参照可能とする」は,以下の点で相違するものの,保存された商品基準審査結果データを通信ネットワークを介してコンピュータ端末装置から参照可能とすることで共通する。

そうすると,本願補正発明と,引用発明とは,次の点で一致する。

<一致点>
「住宅ローンの申込案件に対してローン諾否の結果を判定するローンセンタサーバからなるローン審査システムにおいて,
前記ローンセンタサーバが
申込案件に関する複数の情報項目の入力データを登録すべく記憶装置に構築したデータベースを具備し,
前記データベースに登録された入力データから取得した情報項目の項目値に対して自動審査可能な商品基準審査条件が適用されて「可」と自動判定され,
商品基準審査結果データを保存するデータ保存部と,
保存された商品基準審査結果データを通信ネットワークを介してコンピュータ端末装置から参照可能とする
ローン審査システム」

一方で,両者は,次の点で相違する。

<相違点>
[相違点1]
本願補正発明では,住宅ローン審査システムが,ローンセンタサーバで行う判定処理とは異なる判定処理を行うための「保証会社サーバ」を具備し,保証会社サーバで実行される判定処理の内容として,「保証会社サーバ」が,「前記ローンセンタサーバから送信された前記申込案件に関するデータ並びに個人信用情報機関から取得したデータに基づいた個人信用情報審査により」「自動判定」すること,「該申込案件のデータに含まれる売買契約金額と予め作成された掛目設定テーブルから取得した掛目とからみなし評価額を算出」すること,「前記個人信用情報審査結果データ及び前記みなし評価額算出結果データに基づきローン諾否について」「自動判定」し,データの流れとして,ローンセンタサーバが「申込案件について前記データベースに登録された入力データを通信装置により前記保証会社サーバへ送信」した申込案件に関するデータを保証会社サーバが受信する構成であるのに対し,引用発明では,住宅ローン審査システムが,ローンセンタサーバを具備するのみであり,「保証会社サーバ」を具備する構成とはなっておらず,保証会社サーバで実行される判定処理を行うものではなく,そのためのデータの流れも発生していない点。

[相違点2]
本願補正発明は,住宅ローン審査システムが,ローン諾否の各判定処理及び算出処理の各結果データを保存するための「進捗管理サーバ」を具備しており,保存される結果データは,ローンセンタサーバから送信される結果データ及び保証会社サーバから送信される結果データであり,結果データは,可否の判定が行われる処理については「可」の場合の結果データのみ保存する構成となっており,そのため,本願補正発明は,データの流れについては,ローンセンタサーバが「前記抽出された申込案件について前記データベースに登録された入力データを通信装置により前記保証会社サーバへ送信」し,保証会社サーバが「「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その個人信用情報審査結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信」し,保証会社サーバが「みなし評価額を算出した算出結果データを通信装置により前記進捗サーバへ送信」し,保証会社サーバが「「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについてローン諾否結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信」し,進捗管理サーバが「前記ローンセンタサーバから前記商品基準審査結果データを通信装置により受信」し,進捗管理サーバが「前記保証会社サーバから前記個人信用情報審査結果データ,前記みなし評価額の算出結果データ及び前記ローン諾否結果データを通信装置により受信」する構成となっているのに対し,引用発明では,ローンセンタサーバが結果データを保存するデータ保存部を備え,ローンセンタサーバの処理の結果データを保存する構成となっているものの,住宅ローン審査システムが,ローンセンタサーバとは異なる「進捗管理サーバ」を具備しておらず,保証会社サーバの判定結果データ及び算出結果データを進捗管理サーバに保存する構成とはなっておらず,ローンセンタサーバ及び保証会社サーバにおいて実行される可否の判定が行われる処理について,「可」の場合の結果データのみ保存する構成とはなっておらず,進捗管理サーバに保存された保証会社サーバからの判定結果データ及び算出結果を参照可能とする構成とはなっていない点。

(4)判断
[相違点1]
判定処理の内容として,個人信用情報の審査のために他の機関から個人の信用情報を取得すること,そして,取得した個人の信用情報に基づき,個人信用情報の審査を行うことは,特開2002-49752号公報(【従来の技術】の記載参照),営業店業務の基礎知識 テキスト3 融資・外為業務と証券業務 初版,第一勧銀総合研究所,1999年3月25日,p.28-37(特に,33頁の「1 融資対象者(一例)」の項の記載参照)にあるように,住宅ローンの審査業務における周知の事項に過ぎない。
また,判定処理の内容として,みなし評価額を算出すること,ローン諾否の判定をすることは,営業店業務の基礎知識 テキスト3 融資・外為業務と証券業務 初版,第一勧銀総合研究所,1999年3月25日,p.28-37(特に,33頁の「3 融資金額」の項の記載参照),生命保険新実務講座編集委員会・財団法人生命保険文化研究所編,生命保険実務講座 第5巻 ファイナンス 初版,有斐閣,1990年11月30日,p.209(「2.2.3 住宅ローンの審査実務」の項の記載参照)にあるように,住宅ローンの審査業務における周知の事項に過ぎず,みなし評価額の算出について,どのような計算手法を採用して算出を行うかについても,当業者が適宜決定し得た事項に過ぎない。
そして,住宅ローン審査における判定処理の内容について,どの判定処理を採用すること,判定処理の判定順序をどうするかは,当業者が適宜なし得た設計的事項に過ぎず,また,引用例には,上記摘記事項(d)にあるように「なお,金融商品照会用に専用化したシステム又は情報処理装置は,単一のコンピュータにより構成されるものであっても,ネットワーク上に分散した複数のコンピュータにより構成されるものであっても良い。」と記載されていることから,個人信用情報の審査,みなし評価額を算出及びローン諾否の判定を行うためのサーバ,すなわち,「保証会社サーバ」を設ける構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項に過ぎない。
このとき,ローンセンタサーバと保証会社サーバとの間で,必要なデータの授受が行われることは業務上自明の事項であり,データを送信又は受信するための手段が必要であることは,当業者であれば容易に推考できる事項に過ぎない。
したがって,相違点1に係る本願補正発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]
上記[相違点1]で検討したように,保証会社サーバが行う判定処理は当業者が容易に想到し得た事項であり,上記引用例には,上記摘記事項(h)にあるように,金融商品照会システムが備える「判断手段121は,前記情報処理手段100を介し,仮審査の判断結果をユーザに対し出力する。」及び同「ここで,仮審査において複数のリジェクト条件等が成立している場合,各条件ごとに個別にメッセージを出力するように構成してもよい。」と記載されていることから,引用発明は,各条件ごとに結果を出力をすることを可能としており,引用発明において,各条件ごとの結果についてのデータを保存していることは,当業者であれば推考できる事項であることから,判定処理及び算出処理が追加された場合,その追加された各結果データについても保存する構成とすることは当業者が適宜なし得た事項に過ぎず,さらなる判定処理の結果データを保存すること,すなわち,ローンセンタサーバで行われる判定処理の結果データの保存のみならず保証会社サーバで行われる判定及び算出結果データを保存する構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項であり,このとき,特開2001-306805号公報(【0034】-【0038】において,融資が可能な場合,全ての担保対象物(車両)について担保価値の判定を行い,各判定処理終了時に契約情報DBに記憶する構成となっている点。),特開2001-338089号公報(機器の修理について修理の開始等,状況に変更があったときに,その旨をアップデートする構成となっている。)にあるように,判定結果の保存を各判定処理が終了するときに行うことは進捗管理の技術分野における周知技術であり,一方で,上記引用例には,上記摘記事項(d)にあるように「なお,金融商品照会用に専用化したシステム又は情報処理装置は,単一のコンピュータにより構成されるものであっても,ネットワーク上に分散した複数のコンピュータにより構成されるものであっても良い。」と記載されていることから,ローンセンタサーバからの処理の結果データに加えて,保証会社サーバからの判定結果データ及び算出結果データを保存するために,住宅ローン審査システムが,各処理が終了するときに保存するサーバとしてローンセンタサーバとは異なる「進捗管理サーバ」を備える構成とすることは,当業者が容易になし得た事項に過ぎない。
ここで,引用発明は,可否の判定の結果を行う処理について,判定の可否に関係なく全ての結果を保存する構成となっているものの,保存される判定結果について,「可」の場合の結果のみを保存する構成とするか,不可の場合の結果まで保存する構成とするかは,当業者が適宜選択し得た事項に過ぎず,「可」の場合の結果のみ保存する構成とすることで,格別顕著な作用効果を生ずるものとも認められないことから,可否の判定の結果を行う処理について,判定結果が「可」の場合の結果のみを保存する構成とすることは,当業者が容易になし得た事項に過ぎない。
このとき,上述したように,判定結果の保存を各判定処理が終了するときに行うことは進捗管理の技術分野における周知技術であることから,各判定処理が終了して保存された判定結果を参照できる構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。
したがって,相違点2に係る本願補正発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

以上より,相違点1-2に係る本願補正発明の構成は,引用例に記載された発明の構成及び上記周知技術に基づき,当業者が容易に想到し得た事項に過ぎず,その奏する技術的作用効果も当業者の予測し得た範囲内の事項に過ぎない。
よって,本願補正発明は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年6月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成16年2月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
住宅ローンの申込案件に対してローン諾否の結果を判定するために互いに通信装置によりデータを授受するローンセンタサーバと,保証会社サーバと,進捗管理サーバとを有する住宅ローン審査システムにおいて,
(A)前記ローンセンタサーバが,
(a1)申込案件に関する複数の情報項目の入力データを登録すべく記憶装置に構築したデータベースと,
(a2)前記データベースに登録された入力データから取得した情報項目の項目値に対して商品基準審査条件を適用することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその商品基準審査結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段と,
(a3)前記抽出された申込案件について前記データベースに登録された入力データを通信装置により前記保証会社サーバへ送信する手段とを具備し,
(B)前記保証会社サーバが,
(b1)前記ローンセンタサーバから送信された前記申込案件に関するデータ並びに個人信用情報機関から取得したデータに基づいて個人信用情報審査を実行することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその個人信用情報審査結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段と,
(b2)前記ローンセンタサーバから送信された前記申込案件についてみなし評価額を算出可能なもののみを抽出しみなし評価額を算出した算出結果データを通信装置により前記進捗サーバへ送信する手段と,
(b3)少なくとも前記個人信用情報審査結果データ及び前記みなし評価額算出結果データに基づきローン諾否について「可」と判定され抽出された申込案件のみについてローン諾否結果データを通信装置により前記進捗管理サーバへ送信する手段とを具備し,
(C)前記進捗管理サーバが,
(c1)前記ローンセンタサーバから前記商品基準審査結果データを通信装置により受信する手段と,
(c2)前記保証会社サーバから前記個人信用情報審査結果データ,前記みなし評価額の算出結果データ及び前記ローン諾否結果データを通信装置により受信する手段と,
(c3)受信した前記各結果データを保存するデータ保存部と,
(c4)保存された前記各結果データを通信ネットワークを介してコンピュータ端末装置から参照可能とする通信手段とを具備することを特徴とする
住宅ローン審査システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から「項目値に対して商品基準審査条件を適用することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその商品基準審査結果データを」の限定事項である「項目値に対して自動審査可能な商品基準審査条件が適用されて「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その商品基準審査結果データを」との構成を省き,「取得したデータに基づいて個人信用情報審査を実行することにより「可」と判定され抽出された申込案件のみについてその個人信用情報審査結果データを」の限定事項である「取得したデータに基づいた個人信用情報審査により「可」と自動判定され抽出された申込案件のみについて,その個人信用情報審査結果データを」との構成を省き,「抽出しみなし評価額を算出した」の限定事項である,「抽出し,該申込案件のデータに含まれる売買契約金額と予め作成された掛目設定テーブルから取得した掛目とからみなし評価額を算出した」との構成を省き,「「可」と判定され」の限定事項である「「可」と自動判定され」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,引用例及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-23 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-11 
出願番号 特願2002-41385(P2002-41385)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 正二丹治 彰  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 松田 直也
山本 穂積
発明の名称 住宅ローン審査システム、方法及びプログラム  
代理人 小島 高城郎  

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