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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1190211
審判番号 不服2004-17227  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-19 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2000-140438「情報処理システム、情報処理方法および記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-325276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月12日の出願であって、平成16年5月31日付(発送日:6月8日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成16年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年8月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 情報処理における作業のログを取得するログ取得手段と、
前記ログ取得手段にて取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、当該節点に対応する作業の推移条件を表す1または複数の枝で当該節点を接続して有向グラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフ作成手段により作成された前記グラフを視覚的に提示するグラフ表示手段とを備えたことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】 前記グラフを格納するグラフ格納手段と、
前記グラフ格納手段に格納された前記グラフを、任意の前記節点、前記枝または一連の前記節点及び前記枝からなるパスを検索キーとして検索する検索手段とをさらに備え、
前記グラフ表示手段は、前記検索手段により検出された前記グラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】 前記グラフを任意の場所で分割しまた任意の節点と任意の枝とを接続する編集を行うグラフ編集手段をさらに備え、
前記グラフ表示手段は、前記グラフ編集手段にて編集された前記グラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】 前記グラフをスクリプトとして用い、当該グラフの各節点にて特定される作業を、当該グラフの枝にて示される順序に従って機械的に実行する情報処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】 円周上に情報処理における作業の項目をとり、円の中心からの距離によって当該作業における条件を示すレーダーチャートを作成し、前記グラフの節点を当該レーダーチャートの所定の位置に配置して表示するレーダーチャート作成手段と、
前記レーダーチャート上の前記節点と当該節点に対応する作業の結果とを対応付けた一覧表を作成して表示する一覧表作成手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】 データベースから所望のデータを検索するデータベース検索手段と、
前記データベース検索手段による検索結果を表示する表示手段と、
円周上にデータ検索における作業の項目をとり、円の中心からの距離によって当該作業における条件を示すレーダーチャートを作成し、前記データベース検索手段にて実行した検索作業に該当する当該レーダーチャート上の位置に節点を配置し、当該節点間を枝で接続して、前記表示手段に表示させるレーダーチャート作成手段と、
前記レーダーチャート上の前記節点と当該節点に対応する検索の結果得られたデータとを対応付けた一覧表を作成し、前記表示手段に表示する一覧表作成手段とを備えたことを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】 前記表示手段にて表示された前記レーダーチャート上の前記節点を、前記レーダーチャートの径方向に移動させ、任意の位置に置くことにより、前記データベース検索手段に当該レーダーチャート上の位置が示す条件で前記データベースの検索を実行させ、前記一覧表作成手段に当該検索の結果を反映した一覧表を作成させるインタフェース手段をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】 情報処理における作業の推移条件を視覚的に評価可能な形式で記述する情報処理方法であって、
複数の作業からなる前記情報処理における個々の作業を前記形式における節点として設定し、
前記節点に対応する作業が実行された順序に対応させて各節点を接続する枝を設定し、
前記節点と1または複数の前記枝とを接続することにより、前記作業の推移条件を視覚的に評価可能な形式で記述することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】 前記情報処理における作業は、データベースから所望のデータを検索する作業であり、
前記節点に対応する各作業の単位は、決まった形式の検索式に対応することを特徴とする請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】 前記枝に、当該枝の前後の前記節点間における作業の推移条件を、ユーザの任意の表現で記述した注釈を付したことを特徴とする請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項11】 情報処理における作業のログを取得するステップと、
取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、当該節点に対応する作業の推移条件を表す1または複数の枝で当該節点を接続して有向グラフを作成するステップと、
作成された前記グラフを視覚的に提示するステップとを含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】 作成された前記グラフを保存し蓄積するステップと、
所定の一連の作業を示す所定の前記グラフまたはその一部を含み、かつその前または後の作業に対応する節点を有する他の前記グラフを検索するステップと、
前記所定のグラフに、前記他のグラフにおける共通部分の前または後の作業に対応する節点及び当該節点への枝を追加するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項13】 作成された前記グラフを保存し蓄積するステップと、
所定の作業結果を得ることができる一連の作業に対応した前記グラフを検索するステップと、
得られた前記グラフの中から所望のグラフを選択し、選択された当該グラフに対し、当該グラフに対応する作業にて得られる作業結果を用いた他の作業に対応するグラフを接続するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項14】 円周上に情報処理における作業の項目をとり、円の中心からの距離によって当該作業における条件を示すレーダーチャートを作成し、前記グラフの節点を当該レーダーチャートの所定の位置に配置して表示するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項15】 コンピュータに実行させるプログラムを当該コンピュータの入力手段が読取可能に記憶した記憶媒体において、
前記プログラムは、
情報処理における作業のログを取得する処理と、
取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、当該節点に対応する作業の推移条件を表す1または複数の枝で当該節点を接続して有向グラフを作成する処理と、
作成された前記グラフを蓄積する処理と、
任意の前記節点、前記枝または一連の前記節点及び前記枝からなるパスを検索キーとして所望の前記グラフを検索する処理と、
作成されまたは検索して得られた前記グラフを編集する処理と、
作成されまたは検索されまたは編集された前記グラフを視覚的に提示する処理とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項16】 前記プログラムは、作成されまたは検索されまたは編集された前記グラフをスクリプトとして用い、当該グラフの各節点にて特定される作業を、当該グラフの枝にて示される順序に従って機械的に実行する処理を、さらに前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項15に記載の記憶媒体。
【請求項17】 前記プログラムは、円周上に情報処理における作業の項目をとり、円の中心からの距離によって当該作業における条件を示すレーダーチャートを作成し、前記グラフの節点を当該レーダーチャートの所定の位置に配置して表示するステップを、さらに前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項15に記載の記憶媒体。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1、請求項8、請求項11、請求項15における「推移条件を表す枝」あるいは「前記節点と前記枝とを接続する」という構成について、「推移条件を表す1または複数の枝」あるいは「前記節点と1または複数の前記枝とを接続する」という補正をするものである。
この補正に関し、特許請求の範囲の実質的な減縮に当たるかどうかいくらかの疑義は残るものの、一応この補正を限定的な減縮と認め、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとする。
そこで、本件補正後の請求項1の発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由(平成16年2月13日付け拒絶理由通知書)に引用文献1として引用された特開平6-282589号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【0014】
図1は、本発明の一実施例の情報検索プロセスの視覚化表示蓄積及び再利用を行なうシステムの構成を示すブロツク図である。
【0015】
図1において、11は、検索コマンドや検索条件のユーザ入力を受け付け、検索処理部12へ指示を出す検索コマンド入力部であり、12は、検索コマンド入力部11からの指示に基づき検索処理を実行する検索処理部である。13は、ユーザ入力データと検索結果のデータをもらい、検索プロセスとして構成し蓄積・管理する検索プロセス管理部であり、14は、その検索プロセスを図形化し画面表示する視覚化表示部である。また、15は、検索プロセス管理部13が作成する検索プロセスデータを記憶する検索プロセスデータ記憶部である。16は検索の対象となるデータが格納された検索対象データベース、17はプロセスデータパターン格納部、18はプロセス図形の対応表格納部である。」
(イ)「【0016】
図2は、視覚化表示部14の画面出力の例であり、各プロセスを検索処理21,21aや文書内容取出し26のように楕円で示し、その入力データ(検索条件など)を検索キー20,25や条件指定23のように矩形(ボツクス)で示し、出力データ(検索結果など)をタイトル一覧22や絞り込んだタイトル一覧24のように、影付き矩形で示す。そして、検索対象データ件数27や抽出データ件数28のように、データ内容をそれぞれその矩形の中に示す。また、タイトル一覧ウインドウ29のように、データ量の多いものはスクロール表示可能とすると共に、タイトル一覧22や絞り込んだタイトル一覧24のような出力データの場合は、データ量が多い程影が大きくなる。図2では、タイトル一覧22の方が抽出データが100件で、絞り込んだタイトル一覧24の抽出データ30件よりも多いので、影が大きくなつている。」
(ウ)「【0017】
つぎに、検索プロセス管理部13での処理について図1及び図4を用いて説明する。図4は、検索プロセス管理部13の処理フローチヤートである。検索プロセス管理部13では、まず、検索コマンド入力部11からのユーザ入力データと、検索処理部12からの検索処理結果のデータを受取る(ステツプ41)。つぎに、これら受け取つたデータの中から必要なデータを一連の検索プロセスを構成する単位(図2の矩形や楕円等の枠単位)で抽出する。この際、例えば図2に示すように、入力データからは検索キー20を抽出し、出力データ(検索結果)からは検索対象データ件数27と抽出データ件数28を抽出するというように、受け取つたデータと抽出するデータの対応関係を表わしたプロセスデータのパターン集43(プロセスデータパターン格納部17に格納)を参照しながらプロセスの種類別にデータを抽出する(ステツプ42)。抽出したデータに基づいてプロセスデータを作成し(ステツプ44)、検索プロセスデータ記憶部15に格納する(ステツプ45)。格納されたプロセスデータは、後の検索時に再利用される。」
(エ)「【0018】
つぎに、視覚化表示部14での処理について、図1及び図5を用いて説明する。
【0019】
視覚化表示部14では、まず、検索プロセス管理部13で作成された検索プロセスデータを受け取る(ステツプ51)。そして、例えば図2に示すように、入力データならば矩形、処理データならば楕円というように、各プロセスと図形の対応表53(プロセスと図形の対応表格納部18に格納)を参照して表示図形の選定を行い(ステツプ52)、プロセスフローの視覚化表示を行う(ステツプ54)。その後、表示された図形の中に表示データを埋込み(ステツプ55)、図2に示すようなプロセスフローが表示される。さらに、視覚化表示部14で表示された一連の検索プロセスを編集した場合(ステツプ56,58)には、編集した検索プロセスデータを検索プロセスデータ記憶部15に送ると共に、コマンド形式に変換されて(ステツプ59)、検索コマンド入力部11に送られ、次回の検索処理に再利用される。視覚化表示部14での編集は、検索キー20や条件指定23のような入力データを変更できることは勿論、タイトル一覧22のような出力データのボツクスを削除したり、入力データを一緒にして1つのボツクスにすることもできる。また、その中の検索結果表示に関しては、検索対象データ件数27や抽出データ件数28のようなデータ件数と、タイトル一覧ウインドウ29のタイトル一覧のような検索結果を記録するかどうかを、ユーザが指定することができる。図3は、図2の検索キー20と条件指定23を一緒にし(検索キー30)、24のボツクスの検索対象データ27と、タイトル一覧ウインドウ29を記録しないように指定した(絞り込んだタイトル一覧32)例である。検索キー20と条件指定23を一緒にしたことにより、中間結果のタイトル一覧22は、自動的に削除されている。
【0020】
つぎに、検索処理時間の算出について、図6を用いて説明する。図6の処理は実際には図4におけるステツプ41とステツプ42との間に入る。まず、検索プロセス管理部13で受け取つたデータが検索コマンドか否かを判定し(ステツプ61)、検索コマンドである場合、この時の検索開始時刻を検索コマンド別時刻データ64として記録する(ステツプ63)。ステツプ61において、受け取つたデータが検索コマンドでない場合、今度はそのデータが検索結果であるか否かを判定する(ステツプ62)。検索結果でない場合には終了し、受け取つたデータが検索結果である場合には、検索処理が終了したことを表わしているので、検索コマンド別時刻データ64から検索結果に対応する検索開始時刻データを読み出し(ステツプ65)、読み出した時刻データと検索終了時の時刻データとから処理時間を算出する(ステツプ66)。算出された検索処理時間は、プロセスデータのパターン集に基づいて抽出される。」
(オ)「【0021】
なお、上記実施例において、検索プロセスデータ記憶部14には、後の検索時に再利用するため、視覚化表示部14で編集をする前及び編集をした後の一連の検索プロセスを共に記憶しておいてもよい。これらの記憶された検索プロセスは、次回に同一検索条件で検索を行なう場合や、これに若干の修正変更を加えて検索を行なう場合などに再利用される。」

これら(ア)ないし(オ)の記載、ならびに図1ないし図5の記載を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。
「検索コマンドや検索条件のユーザ入力を受け付け、検索対象データベースを前記ユーザ入力に基づいて検索して、出力データ(検索結果)を得る処理を行う検索処理部と、ユーザ入力データと検索処理結果、および検索処理時間のデータから検索プロセスデータを得る検索プロセス管理部とを備え、
前記得られた検索プロセスデータは、検索プロセスデータ記憶部に格納して、後の検索に再利用されるとともに、
一連の検索プロセスデータは、視覚化表示部によって、検索条件、検索結果が矩形で、検索処理(時間)が楕円で表され、それらを有向矢印で接続した図形(図2や図3)で表示される、
視覚化表示システム」

(3)対比
補正発明の「作業のログ」とは、段落【0018】、【0046】?【0048】等の記載からすると、決まった形式の検索式、あるいはデータベースから所望のデータを検索する一連の作業の内容(履歴)というような意味に解されるところ、引用発明における「検索プロセスデータ」は、検索コマンドや検索条件のユーザ入力に基づいてデータを検索し所望の検索処理結果を得るまでの一連の検索プロセスにおけるデータであり、検索処理に対して作成され記録されるデータであるから、引用発明の「検索プロセスデータ」は、補正発明の「作業のログ」に対応し、したがって、引用発明の「ユーザ入力データと検索処理結果のデータから検索プロセスデータを得る検索プロセス管理部」は、実質的に補正発明の「情報処理における作業のログを取得するログ取得手段」に対応しているといえる。
そして、補正発明の「各作業」とは、検索という情報処理の作業でいえば、検索条件の入力、該条件に基づく検索処理及び検索結果の出力という一連のプロセスからなる検索作業の一つの単位の意味に解されるところ、引用発明における「楕円」や「矩形」(2図参照)は、検索条件や検索結果、検索処理(時間)等を表現した図形であり、図2でいえば検索条件である20、検索処理である21、検索結果である22は、その3つで、ある検索条件に基づき実行した一つの検索作業を意味するものであり、また、次の検索条件である23、検索処理である21a、検索結果である24もまた、その3つで一つの検索作業を意味するものであるから、引用発明において、矩形で表された検索条件(検索キー)と検索処理、検索結果を合わせたものが、補正発明の「各作業」に対応しているといえる。
補正発明でいう「グラフ」は、明細書の記載ならびに図面から見て「図形で表した図表」と解釈でき、また「節点」とは、作業という概念を図形(実施例では円)で表現したものと解釈できるから、補正発明における「各作業をグラフ上の節点として設定する」とは、作業という概念を図形として図面の上に表すことを意味すると解され、さらに「枝」とは、段落【0028】の記載および図面からみて、注釈、条件分岐や場合分けを表現するもので表現上では矢印と解釈できる。
したがって、補正発明の「枝で当該節点を接続して有向グラフを作成する」とは、作業という概念を表した図形(節点)を有向の枝(矢印)で接続してグラフを作成するという意味に解釈することができる。
一方、引用発明は、検索条件や検索処理といった個々のプロセス(検索条件、検索処理、検索結果)の概念を楕円や矩形という図形として図面の上に表し、その図形を有向の矢印で接続する図表を作成し、視覚化表示部によって表示しており、しかも、異なる作業(図2でいえば、20,21,22という一連のプロセスと23,21a,24という一連のプロセス)の間も矢印で接続した図表となっている。
したがって、引用発明の「一連の検索プロセスデータは、視覚化表示部によって、検索条件、検索結果が矩形で、検索処理(時間)が楕円で表され、それらを有向矢印で接続した図形(図2や図3)で表示される」ことは、補正発明の「前記ログ取得手段にて取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、枝で当該節点を接続して有向グラフを作成するグラフ作成手段と、前記グラフ作成手段により作成された前記グラフを視覚的に提示するグラフ表示手段とを備えた」ことに対応しているといえる。

したがって、引用発明と補正発明は、
<一致点>
「情報処理における作業のログを取得するログ取得手段と、
前記ログ取得手段にて取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、枝で当該節点を接続して有向グラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフ作成手段により作成された前記グラフを視覚的に提示するグラフ表示手段とを備えたことを特徴とする情報処理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
補正発明は、グラフ上に設定(表示)された各作業が、一つの節点(図面上では円という図形)として表されているのに対し、引用発明では、補正発明でいう各作業に対応するものが複数の図形(矩形と楕円と矢印の組)で表されている点。
<相違点2>
補正発明では、節点を接続する枝が「当該節点に対応する作業の推移条件を表す1または複数の枝」であるのに対し、引用発明では、作業の推移を表すことは明らかであるが一つの枝(矢印)である点。

(4)判断
<相違点1>について
上でも述べたように、引用発明(図2参照)において、検索条件20、検索処理21および検索結果22とそれらを接続する矢印で表現された図形(同じく、検索条件23、検索処理21a、検索結果24とそれらを接続する矢印で表現された図形も)は、ある検索キーに基づいて検索作業が行われて検索結果を得るまでの作業を細かく表現したものである。
一方、補正発明は、ある検索条件に基づいて行った検索作業を一つの図形(節点)として表現したものである。
そして、複数の検索作業にわたるフローを図表で表現する際、各作業をどの程度詳細に表現するかは当業者が任意に設定し得る事項にすぎないので、引用発明のように検索作業をいくつかの図形で表現したものを、補正発明のように一つの図形(節点)で表現するように換える程度のことは、当業者が適宜なし得るものと認められる。
<相違点2>について
引用発明における「節点に対応する作業の推移条件を表す枝」の意味は、本願明細書の記載をみても判然としないが、段落【0031】や段落【0042】の記載からすると、注釈や場合分けの記述がある枝のことをいうものと解釈できる。
一方、引用発明は、矢印(枝)が作業の推移を表すものであるから、この矢印にその推移に係る注釈や場合分けの記述を付加する程度のことは当業者が容易に想到できるものと認められる。
そして、補正発明は「1または複数の枝」という選択的な要件で特定されているから、枝が1つの場合は、引用発明との相違はないといえる。
したがって、引用発明における1つの矢印を、作業の推移条件を表す1つの枝とすることは当業者が容易に想到できるものと認められる。
なお、枝を「複数」とした場合でも、ある検索結果に基づいて異なった複数の検索条件で検索を続けることは普通に行われることであるから、ある検索結果を元にして異なった複数の検索を行った場合の推移を複数の枝で表現することは当業者が容易に想到できるものと認められる。

その他、補正発明の効果を勘案しても、補正発明の容易性を覆す格別の点を認めることはできない。
よって、補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)補正前の発明
平成16年8月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年5月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 情報処理における作業のログを取得するログ取得手段と、
前記ログ取得手段にて取得された前記ログにおける各作業をグラフ上の節点として設定し、当該節点に対応する作業の推移条件を表す枝で当該節点を接続して有向グラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフ作成手段により作成された前記グラフを視覚的に提示するグラフ表示手段とを備えたことを特徴とする情報処理システム。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明から「1または複数の」という限定を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明についての検討・判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-01 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願2000-140438(P2000-140438)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨平井 誠  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 長 由紀子
手島 聖治
発明の名称 情報処理システム、情報処理方法および記憶媒体  
復代理人 古部 次郎  
代理人 坂口 博  

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