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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1190263
審判番号 不服2006-8363  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2001- 75951「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 9日出願公開、特開2001-276327〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成10年5月27日に出願された特願平10-146221号の一部を新たに平成13年3月16日に特許出願としたものであって、平成17年10月19日付の拒絶理由が通知され、これに対して平成17年12月27日付の意見書および手続補正書が提出され、平成18年3月2日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成18年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年5月29日付で手続補正がなされ、平成20年3月17日付で審尋がなされ、平成20年5月7日付の回答書が提出されたものである。

2.平成18年5月29日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月29日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正の内容と補正の適否
平成18年5月29日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成17年12月27日付の手続補正された下記1)の特許請求の範囲の請求項1を、下記2)の特許請求の範囲の請求項1とするものである。

1)平成17年12月27日付の手続補正による特許請求の範囲
「【請求項1】 各種のデータを格納するROM、ROMに格納されたデータに従って各種の制御動作を実行するマイクロプロセッサとを有する制御基板を備えたパチンコ機において、
前記制御基板は基板ボックスに収納され、前記ROMは該ROMに格納された各種データをチェックするROMチェッカとチェック用端子によって制御信号ライン及びデータ信号ラインを介して接続され、
前記ROMに格納された各種データの内、所定のデータ内容のチェックを制御するチェック制御信号が前記チェック用端子を介して前記ROMチェッカからROMに出力され、
前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMと前記マイクロプロセッサとを接続するデータ信号ラインに接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、
このROMから送出された所定のデータをチェックする前記ROMチェッカが、前記基板ボックスを閉じた状態で前記チェック用端子と接続されることを特徴とするパチンコ機。 」

2)平成18年5月29日付の手続補正による特許請求の範囲
「【請求項1】 各種のデータを格納するROM、ROMに格納されたデータに従って各種の制御動作を実行するマイクロプロセッサとを有する制御基板を備えたパチンコ機において、
前記制御基板は基板ボックスに収納され、
前記ROMは該ROMに格納された各種データをチェックするROMチェッカとチェック用端子によって制御信号ライン及びデータ信号ラインを介して接続され、
前記ROMに格納された各種データの内、所定のデータ内容のチェックを制御するチェック制御信号が前記チェック用端子を介して前記ROMチェッカからROMに出力され、
前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMが前記マイクロプロセッサに送出するのと同じデータ信号ラインを利用して、接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、
このROMから送出された所定のデータをチェックする前記ROMチェッカが、前記基板ボックスを閉じた状態で前記チェック用端子と接続されることを特徴とするパチンコ機。 」(以下、「本願補正発明」という。)

3)補正の適否
本願補正発明は、補正前の請求項1の「前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMと前記マイクロプロセッサとを接続するデータ信号ラインに接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し」の「と」を「が」に、「とを接続する」を「に送出するのと同じ」とし、次いで、「に」を「を利用して、」として、「前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMが前記マイクロプロセッサに送出するのと同じデータ信号ラインを利用して、接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、」としたものであるから、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合する補正と認められる。

そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)について以下に検討する。

[2]本願補正発明の独立特許要件の適否
(1)引用例について
1)先の拒絶理由に引用された特開平9-248364号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
・記載事項1
「 (57)【要約】
【課題】 遊技制御内容情報の検査を容易に行なうことが可能な遊技機を提供することである。
【解決手段】 遊技制御基板ボックス54の内部に遊技制御用基板113を収納し、その遊技制御基板ボックス54を開封不可能な構造にする。さらに、遊技制御基板ボックス54内にROM読出送信指令を受ける受信回路300と、遊技制御用のROM98aに記憶されたデータを外部へ送信する送信回路301を設ける。そして、受信回路300がROM読出送信指令を受けた場合に、ROM98aに記憶されている遊技制御用プログラムが送信回路301から遊技制御基板ボックス54の外部へ送信される。」
・記載事項2
「【0046】次に、パチンコ遊技機34の遊技制御用基板113に用いられる制御回路について説明する。図4および図5は、遊技制御用基板113の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0047】図4および図5を参照して、制御回路は、基本回路66、入力回路67、LED回路68、ソレノイド回路69、アドレスデコード回路70、定期リセット回路71、初期リセット回路72、情報出力回路73、電飾信号回路74、CRT回路75、ランプ回路76、電源回路77、受信回路300、送信回路301を含む。
【0048】基本回路66は、制御用プログラムに従ってパチンコ遊技機の各種機器を制御する。基本回路66の内部には、遊技制御用プログラムなどを記憶しているROMと、その遊技制御用プログラムに従って制御動作を行なうためのCPUと、CPUのワーク用メモリとして機能するRAMと、I/Oポートと、クロック発生回路とが含まれている。なお、基本回路66の内部構成については、ここでは図示を省略し、後述する。」
・記載事項3
「【0059】受信回路300は、後述するリモコン装置500からROM読出送信指令を受信し、その受信結果の情報を基本回路66へ与える。送信回路301は、遊技機制御用のROMに記憶された遊技制御用プログラムを基本回路66から受け、受けた遊技制御用プログラムを遊技制御基板ボックス54の外部へ送信するものであり、遊技制御用プログラムを一旦記憶する記憶部301aを含んでいる。」
・記載事項4
「【0139】図19は、遊技制御用プログラムの通信読出しを行なうためのシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0140】図19を参照して、遊技制御用プログラムの通信に際しては、リモコン装置500が用いられる。そのリモコン装置500は、検査者により携帯可能なものである。リモコン装置500は、送信回路501、受信回路502、操作回路503、表示回路504、および、制御回路505を含む。送信回路501は、パチンコ遊技機34からの制御用プログラム(以下ROMデータともいう)の送信を指示するための信号であるROM読出送信指令を送信するためのものである。ROM読出送信指令は、赤外線を用いた赤外線信号であり、その赤外線信号が送信回路501から発信される。受信回路502は、パチンコ遊技機34の送信回路301から送信されたROMデータを示す赤外線信号を受信するためのものである。
【0141】操作回路503は、リモコン装置500を操作するための操作スイッチを有する回路であり、検査者がその操作スイッチを操作することにより、リモコン装置500が動作させられる。表示回路504は、表示部を有し、リモコン装置500の動作に関する情報を表示するためのものである。表示回路504の表示部には、主に、パチンコ遊技機34から送信されてきた遊技制御用プログラムが一定の基準に合格した健全な遊技を行なうことができるものであるか否かの検査結果が表示される。制御回路505は、送信回路501、受信回路502、操作回路503、および、表示回路504に電気的に接続されており、リモコン装置500の全般的な制御を行なうためのものである。
【0142】次に、リモコン装置500を用いた遊技制御用プログラムの通信読出しの動作を具体的に説明する。パチンコ遊技機34から遊技制御用プログラムを通信により読出す場合には、検査者がリモコン500の操作回路503の操作スイッチを操作することにより、遊技制御用プログラムの通信を行なうための指令を制御回路505に与える。その指令信号に応答して制御回路505は、送信回路501からROM読出送信指令を送信させるための制御信号を送信回路501へ与える。そして、その制御信号に応答して、送信回路501からROM読出送信指令がパチンコ遊技機34の受信回路300へ向けて送信される。」
・記載事項5
「【0143】パチンコ遊技機34においては、リモコン装置500の送信回路501から送信されたROM読出送信指令を受信回路300が受信する。受信回路300は、ROM読出送信指令を受けた場合に、その指令を受けた旨を示す信号をCPU96a(96b)に与える。CPU96a(96b)は、ROM読出送信指令を受信したことを示す信号が受信回路300から与えられた場合に、図20を用いて後述する情報送信処理を実行する。その情報送信処理が実行されることにより、遊技制御用のROM98a(98b)から遊技制御用プログラム(ROMデータ)がCPU96a(96b)に読出され、その遊技制御用プログラムと、送信回路301にROMデータを受付けさせるためのデータ受付信号とが送信回路301に与えられる。
【0144】送信回路301は、CPU96a(96b)からデータ受付信号を受けたことに応答してROMデータを記憶部301aに書込むとともに、その書込んだROMデータを赤外線信号に変換して遊技制御基板ボックス54の外部へ向けて送信する。
【0145】リモコン装置500においては、受信回路502が、パチンコ遊技機34の送信回路301から送信されたROMデータを受信する。受信回路502は、受信した赤外線信号を電気信号に変換することにより、受信したROMデータを制御回路505へ与える。制御回路505は、受信回路502から受けたROMデータが、一定の基準に合格した健全な遊技を行なうことができる遊技制御用プログラムであるか否かを判断する処理を行なう。
【0146】制御回路505は、そのように判断したROMデータのチェック結果を表示するための信号を表示回路504へ与える。表示回路504は、制御回路505から与えられたROMデータのチェック結果を表示する。このように、リモコン装置500においては、表示回路504により表示されたROMデータのチェック結果を検査者が見ることにより、パチンコ遊技機34のROM98a(98b)に記憶されている遊技制御用プログラム(ROMデータ)が不正改造されたものであるか否かを確認することができる。」
・記載事項6
「【0158】次に、遊技制御基板ボックス54の具体的な構造を説明する。図22は、遊技制御基板ボックス54の分解斜視図である。
【0159】遊技制御基板ボックス54は、ボックス本体200、ボックス裏面カバー部209およびボックス本体カバー部201を備えている。ボックス本体200は、合成樹脂よりなり、上部に開口部を有する箱形状をなしている。ボックス裏面カバー部209は、合成樹脂製の板状の部材である。ボックス本体カバー部201は、合成樹脂製の透明な板状の部材である。
【0160】ボックス裏面カバー部209は、ボックス本体200の底面にボックス本体200の内側から取付けられ、外側からは取外せないようになっている。遊技制御用基板113は、ボックス本体200内において、ボックス裏面カバー部209上に取付けられる。遊技制御用基板113は、ボックス裏面カバー部209を介してボックス本体200の底面上にねじ止めによって固定される。
【0161】遊技制御用基板113上には、CPU96a、RAM97a、ROM98a、CPU100、ROM101、RAM102、受信回路300、および、送信回路301等の電気部品が取付けられている。」

以上の記載事項1?6及び図19、図22によれば、

「データや遊技制御用プログラム(ROMデータ)を記憶した パチンコ遊技機34のROM98a、同ROM98aに記憶したデータに従って各種の制御動作を実行するCPU96aを有する遊技用制御基板113を備え、
遊技用制御基板113は、遊技制御基盤ボックス54に収納され、
前記ROM98aは、前記ROM98aに記憶したデータや遊技制御用プログラム(ROMデータ)をチェックするリモコン装置500とリモコン装置500の送信回路501と受信回路502と、遊技用制御基板113の受信回路300と送信回路301とによって赤外線信号を介して接続され、
前記ROM98aに記憶されたデータや遊技制御用プログラム(ROMデータ)の内、遊技制御用プログラムのチェックを制御するROM読出送信指令が前記送信回路501と受信回路300を介して前記リモコン装置500からROM98aに出力され、
前記ROM98aは、前記ROM読出送信指令に基づきROM98aに記憶された遊技制御用プログラムを該ROM98aが赤外線信号を利用して、接続された前記送信回路301と受信回路502を介して前記リモコン装置500に送出し、
このROM98aら送出された遊技制御用プログラムをチェックする前記リモコン装置500が、前記遊技制御基盤ボックス54を赤外線で接続される遊技機。」 (以下、「引用例1発明」という。)

2)先の拒絶査定の理由に引用された特開平8-323029号公報(以下、「引用例2」という)
「演算制御装置13内の遊技状態情報S’を読み出す検査機15と遊技機の演算制御装置13の間において、赤外線または通信線31により、双方向に情報のやりとりを行い、通信線31を用いる際には、通信ポート29、30を介して、検査機15と遊技機の演算制御装置13を接続する遊技機。」(以下、「引用例2に記載の技術」という。)

3)周知慣用技術
「制御信号ラインとデータ信号ラインからなる通信線の両端もしくは一端を端子を用いて、装置間を双方向データ通信可能に接続すること。」例えば、下記4)の特開平9-239129号公報には、データ、アドレス情報を転送することおよびリード線4の一端をコネクタ12で接続することが記載されている。(段落【0017】?【0019】、図1、図9)(以下、「周知慣用技術」という。)

4)周知技術
特開平9-239129号公報、特開平9-220317号公報および特開平8-47566号公報等
「遊技制御回路基板においてROMとCPUの間、もしくは前記ROMやCPUと外部装置との間において、相互にもしくは一方に信号を伝達する際に、遊技制御回路基板においてバスを用いて、双方向信号をやりとりすること。」(以下、「周知技術」という。)

(2)対比
引用例1発明と本願補正発明を対比すると、引用例1発明の「データや遊技制御用プログラム(ROMデータ)」は、本願補正発明の「各種のデータ」に相当し、以下同様に、「記憶」は「格納」に、「パチンコ遊技機34のROM98a」は「ROM」に、「CPU96a」は「マイクロプロセッサ」に、「遊技用制御基板113」は「制御基板」に、「遊技制御基盤ボックス54」は「基板ボックス」に、「リモコン装置500」は「ROMチェッカ」に、「遊技機」は「パチンコ機」に、それぞれ相当している。

そして、引用例1発明については、以下のことがいえる。
1)引用例1の記載事項1の【要約】の「・・・【解決手段】遊技制御基板54の内部に遊技制御用基板113を収納し、その遊技制御基板ボックス54を開封不可能な構造にする。・・・」なる記載に基づけば、遊技用制御基板113は、遊技制御基盤ボックス54に開封不可能な状態で収納されていることは明らかであり、また、そうである以上、リモコン装置500が開封不可能な状態で、言い換えると遊技制御基盤ボックス54を閉じた状態で、リモコン装置500の送信回路501と受信回路502と、遊技用制御基板113の受信回路300と送信回路301とが接続されていると解される。
そして、上記に示したように、「遊技用制御基板113」は「制御基板」に、「遊技制御基盤ボックス54」は「基板ボックス」に、「リモコン装置500」は「ROMチェッカ」に、相当している。
そうすると、引用例1発明は、実質的に「制御基板は、開封不可能な基板ボックスに収納され、」なる構成および「ROMチェッカが、前記基板ボックスを閉じた状態で前記ROMチェッカと、遊技用制御基板113とが接続される」なる構成を備えているということができる。

上記の点を考慮すると、本願補正発明と引用例1発明は、

「各種のデータを格納するROM、ROMに格納されたデータに従って各種の制御動作を実行するマイクロプロセッサとを有する制御基板を備え、
制御基板は、基板ボックスに収納され、
前記ROMは、該ROMに格納された各種のデータをチェックするROMチェッカと接続され、
前記ROMに格納された各種データの内、所定のデータ内容のチェックを制御するチェック制御信号が前記ROMチェッカからROMに出力され、
前記ROMは、前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMが前記ROMチェッカに送出し、
このROMから送出された所定のデータをチェックする前記ROMチェッカが、前記基板ボックスを閉じた状態で接続されるパチンコ機。」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<相違点1>
ROMチェッカとパチンコ機のROMとの間を双方向通信可能に接続する際に、本願補正発明においては、ROMチェッカとパチンコ機のROMにそれぞれ信号出力用チェック用端子と信号受信用チェック用端子を設け、ROMチェッカの制御信号出力用チェック端子とパチンコ機のROMの制御信号受信用チェック端子を制御信号ラインで接続するとともに、パチンコ機のROMのデータ信号出力用チェック端子とROMチェッカのデータ信号受信用チェック端子をデータ信号ラインで接続するものであるのに対して、引用例1発明においては、ROMチェッカとパチンコ機のROMにそれぞれ信号出力用送信回路501、301と信号受信用受信回路300、502を設け、ROMチェッカの制御信号出力用送信回路501とパチンコ機のROMの制御信号受信用受信回路300を赤外線で接続するとともに、パチンコ機のROMのデータ信号出力用送信回路301とROMチェッカのデータ信号受信用受信回路502を赤外線で接続する点。

<相違点2>
所定のデータをパチンコ機の制御基板のROMからROMチェッカに送出する際に、本願補正発明においては、制御基板のマイクロプロセッサに送出するのと同じデータ信号ラインを利用しているのに対して、引用例1発明においては、遊技用制御基板上のマイクロプロセッサにデータを送出する信号ラインと同じラインを利用しているか否か不明な点。

(3)判断
上記相違点1、2について、以下に検討する。

<相違点1について>
引用例2の図9には、双方向データ通信可能な通信線が示され、同図3、6、7の無線通信とは明確に区別されているのであるから、引用例2に記載の技術は、「演算制御装置13内の遊技状態情報S’を読み出す検査機15と遊技機の演算制御装置13の間において、通信線31により、双方向に情報のやりとりを行い、通信線31を用いる際には、通信ポート29、30を介して、検査機15と遊技機の演算制御装置13を接続する遊技機。」が記載されていると言い換えできる。
また、引用例2の演算制御装置が各種データを格納するROMを備えていることは例示するまでもない技術常識であり、双方向通信が可能となるべく、制御信号ラインとデータ信号ラインからなる通信線の両端を端子を用いて装置間を接続することは、2.[2](1)3)で述べたように、周知慣用技術に過ぎない。
そして、引用例1発明および引用例2に記載の技術はともに、パチンコ機の技術分野において、パチンコ機のROMのデータを外部より読み取る技術において関連するのであるから、相互に技術利用することに格別の困難性を見出すことはできない。
そうすると、上記周知慣用技術を参酌しつつ、引用例1発明の赤外線通信に代えて、引用例2に記載の技術の通信線を適用し、その際に、ROMを備えた制御基板を有するパチンコ機とROMチェッカにそれぞれチェック端子を設けることにより、ROMの各種のデータを読み出すROMチェッカとROMを備えたパチンコ機のマイクロプロセッサの間において、制御信号ラインとデータ信号ラインにより、チェック用端子を介して、双方向の通信を行って、ROMチェッカとパチンコ機の制御基板のマイクロプロセッサのROMを接続すること、すなわち、本願補正発明の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことと言うことができる。

<相違点2について>
遊技制御回路基板においてROMとCPUの間、もしくは前記ROMやCPUと外部装置との間において、相互にもしくは一方に信号を伝達する際に、遊技制御回路基板において共用バスを用いることは、2.[2](1)4)で述べたように周知技術にすぎない。
したがって、引用例1発明の信号線において、上記周知技術を適用して、遊技用制御回路基板のCPUに信号を送出する信号線とROMチェッカへの信号を送出する信号線を共用するようにすること、すなわち本願補正発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(4)作用効果とまとめ
本願補正発明によって奏する効果も、引用例1発明、引用例2に記載の技術および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあると認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2に記載の技術および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正却下の判断
上記のとおり、本願補正発明は、上記改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、平成18年5月29日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本件拒絶理由と同日付の下記のとおりの平成18年5月29日付の手続補正に対する補正却下の決定により、平成18年5月29日付の手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年12月27日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】 各種のデータを格納するROM、ROMに格納されたデータに従って各種の制御動作を実行するマイクロプロセッサとを有する制御基板を備えたパチンコ機において、
前記制御基板は基板ボックスに収納され、前記ROMは該ROMに格納された各種データをチェックするROMチェッカとチェック用端子によって制御信号ライン及びデータ信号ラインを介して接続され、
前記ROMに格納された各種データの内、所定のデータ内容のチェックを制御するチェック制御信号が前記チェック用端子を介して前記ROMチェッカからROMに出力され、
前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMと前記マイクロプロセッサとを接続するデータ信号ラインに接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、
このROMから送出された所定のデータをチェックする前記ROMチェッカが、前記基板ボックスを閉じた状態で前記チェック用端子と接続されることを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例について
引用例の記載事項は、上記2.[2](1)引用例について記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明の請求項1の「前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMが前記マイクロプロセッサに送出するのと同じデータ信号ラインを利用して、接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、」の「が」を「と」に、「に送出するのと同じ」をと「とを接続する」し、次いで、「を利用して、」を「に」として、「前記ROMは前記チェック制御信号に基づきROMに格納された所定のデータを該ROMと前記マイクロプロセッサとを接続するデータ信号ラインに接続されたチェック用端子を介して前記ROMチェッカに送出し、」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.[2](2)対比?(4)作用効果およびまとめに記載したとおり、引用例1発明、引用例2に記載の技術および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明、引用例2に記載の技術および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載の技術および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-30 
結審通知日 2008-11-04 
審決日 2008-11-20 
出願番号 特願2001-75951(P2001-75951)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 池谷 香次郎
小原 博生
発明の名称 パチンコ機  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  
代理人 山中 郁生  
代理人 田中 裕人  

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