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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1190333
審判番号 不服2006-13649  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 平成 8年特許願第330048号「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月26日出願公開、特開平10-173767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成8年12月10日に出願したものであって,平成18年2月23日付けの拒絶理由通知に対して同年4月27日付けで手続補正がなされたところ,平成18年5月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年7月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年7月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月27日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,平成18年4月27日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1は,
「無線信号の送受信を行う無線部と,
自動応答のメッセージとして,録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージと伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージを記憶する自動応答メッセージ記憶部,発信者からの伝言メッセージを記憶する受信メッセージ記憶部を備える記憶部と,
表示部と,
発呼を受けて呼出を行い,呼出から一定時間に達したかを判断し,前記一定時間にオフフックが為されないときに,前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージを発信者に送信し,発信者からの伝言メッセージを受信して前記受信メッセージ記憶部に記憶し,発信者により回線切断されていない場合は前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記完了応答メッセージを送信して回線切断すると共に,伝言メッセージがある旨の表示を前記表示部に出力する制御部とを有することを特徴とする携帯電話機。」(以下,「補正後発明」という。)と補正された。
下線部は,実質的な補正箇所である。本件補正によれば,補正後の請求項1は,補正前の請求項1中の「自動応答メッセージ記憶部」に記憶する自動応答メッセージを「録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージと伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージ」と補正すると共に,同請求項1中の「制御部」により発信者に送信する「メッセージ」の内容を「前記録音する伝言の発声を促す伝言要求」と補正し,同「制御部」による制御内容に「発信者により回線切断されていない場合は前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記完了応答メッセージを送信して回線切断する」との処理を付加するものであるところ,これらの補正事項は,請求人が審判請求書で述べているように,本願の当初明細書に開示された事項であり,しかも,当該補正事項が付加されることによって,発明がさらに限定されたものということができるから,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで,補正後発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用発明
原審の拒絶の理由に引用された,本件出願前公知の刊行物である特開平6-78047号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の(ア)?(エ)が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,留守中録音機能付き携帯電話機に関するものである。」(第2頁第1欄)
(イ)「【0005】本発明は・・・(中略)・・・留守中録音機能付き携帯電話機を提供することを目的とする。」(第2頁第1欄?第2欄)
(ウ)「【0008】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の留守中録音機能付き携帯電話機の構成例を示すブロック図である。図示するように本装置はCPU1,信号処理装置2,無線装置3,録音装置4,メモリ5,入力装置6,表示装置7及び送受話器8で構成される。
【0009】同図においてCPU1は,信号処理装置2から得られるデ-タにより着信を判定し,・・・(中略)・・・。
【0010】信号処理装置2は,無線装置3からの信号をCPU1にデジタル変換して送り,又CPU1からのデ-タを無線装置3にアナログ変換して送る装置である。録音装置4はCPU1の命令を受けて,無線装置3により受信された信号から信号処理装置2より得られる音声の録音を開始し,CPU1の命令により前記録音を停止する装置である。又応答メッセ-ジの音声も録音する。・・・(中略)・・・。
【0011】・・・(中略)・・・表示装置7は,電話番号の登録を確認するための表示装置である。・・・(中略)・・・。」(第2頁第2欄)
(エ)「【0012】図4は本電話機の動作を示すフロ-チャ-トである。同図に従って説明する。基地局より着信メッセ-ジを受信し(ステップST1),着信があったことを認識する。呼出音がなり(ステップST2),呼出しがきたことを受信側に知らせる。呼出し音の回数を数えて受信側が留守かどうかを判定する(ステップST3)。呼出し音が4回以内で受信側が応答した場合は(ステップST4),在宅と判定して,通話の処理を行って相手に接続する(ステップST14)。
【0013】5回以上の場合は(ステップST4),留守と判定して,留守番モ-ドに切り替える(ステップST5)。・・・(中略)・・・。
【0014】さらに優先順位により図3に示す録音時間の制限時間を録音装置4に設定する(ステップST10)。次に「ただいま留守にしています。ピ-と鳴ったら×××秒以内でお話下さい。」と応答メッセ-ジを送出する(ステップST11)。続いて録音を開始し(ステップST12),前記設定された録音時間以内または発呼者からの送信終了した時点で録音を終了する(ステップST13)。」(第2頁第2欄?第3頁第3欄)

上記(ア)?(エ),及び当該分野の技術常識を加味すれば,引用文献には,
「無線信号の送受信を行う無線装置3と,
応答メッセージの音声,及び前記無線装置3により受信された発呼者からの音声を録音する録音装置4と,
電話番号の登録を確認するための表示装置7と,
着信があったことを認識し呼出音が鳴ると,呼出音の回数を数え,該呼出音の回数が5回以上で受信側が応答しない場合は留守と判定して留守モードに切り替え,発呼者に応答メッセージを送出し,続いて発呼者からの音声録音を開始し,発呼者からの送信が終了した時点で録音を終了するCPU1と,
を有する留守中録音機能付き携帯電話機。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(3)対比
そこで,補正後発明と引用発明とを比較すると,
(ア)引用発明は「無線信号の送受信を行う無線装置3」を有するから,「無線信号の送受信を行う無線部」を有する点で,補正後発明と一致する。
(イ)引用発明は,「応答メッセージの音声,及び前記無線装置3により受信された発呼者からの音声を録音する録音装置4」を有し,前記「応答メッセージ」,「発呼者からの音声」は,「伝言要求メッセージ」,「伝言メッセージ」といえ,また,前記「録音装置」には,前記「伝言要求メッセージ」を記憶する録音部位と,「無線装置3により受信された発呼者からの音声」を記憶する録音部位とを当然備えており,録音することは記憶であり,録音装置は記憶部であるといえるから,「自動応答のメッセージとして,録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージを記憶する自動応答メッセージ記憶部,発信者からの伝言メッセージを記憶する受信メッセージ記憶部を備える記憶部」を有する点で,補正後発明と一致する。
(ウ)引用発明は,「電話番号の登録を確認するための表示装置7」を有するから,「表示部」を有する点で,補正後発明と一致する。
(エ)引用発明は,「着信があったことを認識し呼出音が鳴ると,呼出音の回数を数え,該呼出音の回数が5回以上で受信側が応答しない場合は留守と判定して留守モードに切り替え,発呼者に応答メッセージを送出し,続いて発呼者からの音声録音を開始し,発呼者からの送信が終了した時点で録音を終了するCPU1」を有している。
上記構成において,「着信があったこと」は,「発呼を受け」たことであり,また,呼出(着信)から応答メッセージ送出までの期間を,呼出音の回数あるいは経過した時間により計測することは,原査定に引用された特開平4-144354号公報に記載されているように,どちらも,周知・慣用技術であるから,引用発明の「呼出音の回数を数え,該呼出音の回数が5回」を一定時間に変更することは,単なる周知・慣用手段の変更にすぎない。また,前記「受信側が応答しない場合」は,「オフフックが為されないとき」であり,更に,前記「発呼者からの送信が終了した時点で録音を終了する」と「回線切断」することは,留守番電話機における自明の機能であり,更にまた,前記「CPU」は「制御部」といえる。
以上のとおりであるから,引用発明の「着信があったことを認識し呼出音が鳴ると,呼出音の回数を数え,該呼出音の回数が5回以上で受信側が応答しない場合は留守と判定して留守モードに切り替え,発呼者に応答メッセージを送出し,続いて発呼者からの音声録音を開始し,発呼者からの送信が終了した時点で録音を終了するCPU1」と,補正後発明の「発呼を受けて呼出を行い,呼出から一定時間に達したかを判断し,前記一定時間にオフフックが為されないときに,前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージを発信者に送信し,発信者からの伝言メッセージを受信して前記受信メッセージ記憶部に記憶して回線切断する制御部」に,実質的な差異はない。
(オ)引用発明は,「留守中録音機能付き携帯電話機」であるから,「携帯電話機」である。

したがって,両者は,
「無線信号の送受信を行う無線部と,
自動応答のメッセージとして,録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージを記憶する自動応答メッセージ記憶部,発信者からの伝言メッセージを記憶する受信メッセージ記憶部を備える記憶部と,
表示部と,
発呼を受けて呼出を行い,呼出から一定時間に達したかを判断し,前記一定時間にオフフックが為されないときに,前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記録音する伝言の発声を促す伝言要求メッセージを発信者に送信し,発信者からの伝言メッセージを受信して前記受信メッセージ記憶部に記憶して回線切断する制御部とを有する携帯電話機。」の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
「自動応答メッセージ記憶部に記憶する自動応答メッセージ」について,補正後発明は「伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージ」も備えており,また,制御部が「発信者により回線切断されていない場合は前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記完了応答メッセージを送信して回線切断すると共に,伝言メッセージがある旨の表示を前記表示部に出力する」のに対して,引用発明は「伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージ」は備えておらず,また「発信者により回線切断されていない場合は前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記完了応答メッセージを送信して回線切断すると共に,伝言メッセージがある旨の表示を前記表示部に出力する」構成もない。
(4)判断
そこで,検討すると,
留守番電話機の機能として,伝言の録音終了に伴い,完了応答メッセージを送出した後,回線を切断することは,例えば,特開昭63-39252号公報(第3頁右上欄18行?左下欄15行等参照)に記載されているように周知技術にすぎない。また,留守番電話機の機能として,伝言メッセージがあることを表示部に表示することも,例えば,特開昭64-23656号公報(第4頁右上欄9行?14行等参照),特開平2-87854号公報(第3頁左上欄10行?右上欄1行等参照)に記載されているように周知技術にすぎない。
してみると,引用発明の「自動応答メッセージ記憶部に記憶する自動応答メッセージ」に「伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージ」を付加する程度のことは,単なる周知技術の付加にすぎず,また,「伝言の録音完了を知らせる完了応答メッセージ」を送信する場合,「発信者により回線切断されていない」ことはほとんど自明の前提といえ,「伝言メッセージがあることを表示部に表示すること」も周知技術である以上,制御部が「発信者により回線切断されていない場合は前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された前記完了応答メッセージを送信すると共に,伝言メッセージがある旨の表示を前記表示部に出力する」ことは,2つの周知技術の付加,変更の域を出ず,当業者が容易になし得ることである。

そして,上記相違点に係る変更によって格別な作用・効果を奏するに至ったともいえない。

(5)むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)平成18年7月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成18年4月27日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される
「無線信号の送受信を行う無線部と,
自動応答のメッセージを記憶する自動応答メッセージ記憶部,発信者からの伝言メッセージを記憶する受信メッセージ記憶部を備える記憶部と,
表示部と,
発呼を受けて呼出を行い,呼出から一定時間に達したかを判断し,前記一定時間にオフフックが為されないときに,前記自動応答メッセージ記憶部に記憶された自動応答のメッセージを発信者に送信し,発信者からの伝言メッセージを受信して前記受信メッセージ記憶部に記憶し,伝言メッセージがある旨の表示を前記表示部に出力する制御部とを有することを特徴とする携帯電話機。」(以下,「本願発明」という。)である。

(2)引用発明
原審の拒絶の理由に引用された刊行物,及び,その記載事項は,前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明の構成要件にさらに限定要件である前記構成を付加したものに相当する補正後発明が,前記2.(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-07 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-27 
出願番号 特願平8-330048
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀樹  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 柳下 勝幸
萩原 義則
発明の名称 携帯電話機  
代理人 阪本 清孝  
代理人 船津 暢宏  

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