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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1190366
審判番号 不服2007-5625  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 平成10年特許願第366242号「止水用鋼矢板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月11日出願公開、特開2000-192451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月24日の出願であって、平成19年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月22日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同年3月26日に手続補正がなされたものである。その後、平成20年7月10日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成20年9月11日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成19年3月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 継手部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する継手部の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面15に、他方の継手部の嵌合内接面16と接する間隔保持用突起状体を一体に設け、前記鋼矢板の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面の所定範囲に、吸水膨潤性止水材を一体に設けたことを特徴とする止水用鋼矢板。
【請求項2】 前記間隔保持用突起状体は、前記継手部の嵌合内接面15に1箇所又は複数箇所設けたことを特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。
【請求項3】 前記間隔保持用突起状体を前記継手部の嵌合内接面15の長手方向全長に、または所定範囲に亘って設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の止水用鋼矢板。
【請求項4】 前記間隔保持用突起状体は、任意断面の鋼棒を溶接等の固着手段により、前記継手部の嵌合内接面15に固着して構成することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項5】 前記間隔保持用突起状体を、前記継手部の嵌合内接面15に施す溶接金属で構成することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項6】 前記鋼矢板は、熱間圧延による重量鋼矢板である請求項1?5のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項7】 前記鋼矢板が重量鋼矢板であり、該重量鋼矢板と前記間隔保持用突起状体を熱間圧延により一体成形したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項8】 前記鋼矢板は、冷間加工による軽量鋼矢板である請求項1?5のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項9】 前記鋼矢板が軽量鋼矢板であり、該軽量鋼矢板と前記間隔保持用突起状体を冷間加工により一体成形したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項10】 前記間隔保持用突起状体は、継手部の長手方向全長に亘って、あるいは所定範囲に亘って、連続又は断続して設けたことを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項11】相対する両継手部5,6のそれぞれの爪部中間山形頂部12に突起状体7を設け、この突起状体7を設置する両継手部5,6の嵌合内接面15に吸水膨潤性止水材8を設置すること
を特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。
【請求項12】相対する両継手部5,6の爪部10にそれぞれ小突起状体7aを2個ずつ設け、この小突起状体7aが設けられた一方の継手部5の嵌合内接面15および、これと対向する他方の継手部6の嵌合内接面16にそれぞれ吸水膨潤性止水材8を設置し、かつ、両継手部5,6間の全体に間隙9が存在した状態で嵌合されてなり、継手部6の嵌合内接面15と、継手部5の嵌合内接面16には止水材8を設置しないこと
を特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。」
から、以下のように補正された。

「【請求項1】 継手部を有する鋼矢板において、吸水膨潤性止水材の剥離防止を目的として、互いに嵌合する継手部の少なくとも一方の継手部の爪部背面としての嵌合内接面(15)に、他方の継手部の内面としての嵌合内接面(16)と接する間隔保持用突起状体を一体に設け、前記鋼矢板の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面の所定範囲に、吸水膨潤性止水材を一体に設けたことを特徴とする止水用鋼矢板。
【請求項2】 前記間隔保持用突起状体は、前記継手部の嵌合内接面(15)に1箇所又は複数箇所設けたことを特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。
【請求項3】 前記間隔保持用突起状体を前記継手部の嵌合内接面(15)の長手方向全長に、または所定範囲に亘って設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の止水用鋼矢板。
【請求項4】 前記間隔保持用突起状体は、任意断面の鋼棒を溶接等の固着手段により、前記継手部の嵌合内接面(15)に固着して構成することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項5】 前記間隔保持用突起状体を、前記継手部の嵌合内接面(15)に施す溶接金属で構成することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項6】 前記鋼矢板は、熱間圧延による重量鋼矢板である請求項1?5のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項7】 前記鋼矢板が重量鋼矢板であり、該重量鋼矢板と前記間隔保持用突起状体を熱間圧延により一体成形したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項8】 前記鋼矢板は、冷間加工による軽量鋼矢板である請求項1?5のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項9】 前記鋼矢板が軽量鋼矢板であり、該軽量鋼矢板と前記間隔保持用突起状体を冷間加工により一体成形したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項10】 前記間隔保持用突起状体は、継手部の長手方向全長に亘って、あるいは所定範囲に亘って、連続又は断続して設けたことを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の止水用鋼矢板。
【請求項11】 相対する両継手部(5),(6)は、それぞれ爪部(10)を有し、この爪部(10)は、爪部先端(11)から板厚が厚くなり爪部中間山形頂部(12)において最大板厚部を構成し、さらに爪部基端(13)にかけて板厚が薄くなり、上記爪部中間山形頂部(12)に突起状体(7)を設け、この突起状体(7)を設置する両継手部(5),(6)の嵌合内接面(15)に吸水膨潤性止水材(8)を設置すること
を特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。
【請求項12】 相対する両継手部(5),(6)は、それぞれ爪部(10)を有し、この爪部(10)は、爪部先端(11)から板厚が厚くなり爪部中間山形頂部(12)において最大板厚部を構成し、さらに爪部基端(13)にかけて板厚が薄くなり、前記爪部(10)にそれぞれ小突起状体(7a)を2個ずつ設け、この小突起状体(7a)が設けられた一方の継手部(5)の爪部背面としての嵌合内接面(15)および、これと対向する他方の継手部(6)の内面としての嵌合内接面(16)にそれぞれ吸水膨潤性止水材(8)を設置し、かつ、両継手部(5),(6)間の全体に間隙(9)が存在した状態で嵌合されてなり、継手部(6)の嵌合内接面(15)と、継手部(5)の嵌合内接面(16)には吸水膨潤性止水材(8)を設置しないこと
を特徴とする請求項1に記載の止水用鋼矢板。
【請求項13】 前記間隔保持用突起状体は、任意断面の鋼棒を溶接等の固着手段により固着して構成することを特徴とする請求項11又は12に記載の止水用鋼矢板。」

そこで、上記補正事項について検討すると、本件補正は、請求項数を12から13に増加させるものであり、特許請求の範囲の減縮に該当しない。
してみると、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に規定する、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とするものでもない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

3.本願発明
平成19年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1を引用する請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月16日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「継手部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する継手部の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面15に、他方の継手部の嵌合内接面16と接する間隔保持用突起状体を一体に設け、前記鋼矢板の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面の所定範囲に、吸水膨潤性止水材を一体に設けた止水用鋼矢板において、
前記間隔保持用突起状体は、任意断面の鋼棒を溶接等の固着手段により、前記継手部の嵌合内接面15に固着して構成することを特徴とする止水用鋼矢板。」

[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭58-120207号(実開昭60-32433号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「爪部内側に凸部を設け、該凸部と爪部湾曲部が構成する空間に、高復元性水膨潤性ポリウレタン樹脂を流しこみ硬化させてなる鋼矢板。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ)「本考案の目的は、かかる従来の水膨潤性塗料を用いた鋼矢板の止水性をさらに高めた、新らしいタイプの鋼矢板を提供することにある。
本考案の鋼矢板は、爪部内側に凸部を設け、該凸部と爪部湾曲部が構成する空間に、高復元性水膨潤性ポリウレタン樹脂を流しこみ硬化させてなることを特徴とする。」(明細書第2頁第7-13行)

(ウ)「本考案の鋼矢板の爪部を組み合わせると・・・、水が侵入しても水膨潤性樹脂が膨張して隙をふさぐため漏水を防止できる。」(明細書第3頁第13-15行)

(エ)第2図によれば、爪部を介してお互いに連結する鋼矢板であって、互いに嵌合する爪部の少なくとも一方の爪部の内側面に、他方の爪部の内側面と接する凸部1を一体に設け、前記鋼矢板の爪部の内側面の所定範囲に、高復元性水膨潤性ポリウレタン樹脂2を一体に設けた止水用鋼矢板が記載されている。

上記(ア)?(エ)の記載事項を参照すると、これらの記載事項及び第2図を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が開示されている。

「爪部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する爪部の少なくとも一方の爪部の内側面に、他方の爪部の内側面と接する凸部を一体に設け、前記鋼矢板の少なくとも一方の爪部の内側面の所定範囲に、高復元性水膨潤性ポリウレタン樹脂を一体に設けた止水用鋼矢板。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-41364号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(オ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木・建築分野における鋼構造、鋼とコンクリートの合成構造、あるいは鉄筋コンクリート構造における矢板間、鋼管矢板間、パネル部材間および、鉄筋篭間等の高強度かつ高剛性の嵌合継手構造に関する。」

(カ)「【0014】次に、図6?図8には、爪部3の一端にスリット状開口4を有するパイプ状の雌継手1において、スリット状開口4のパイプ内面側に突起14a,14b,14cを設けた例が示されている。突起14a,14b,14cは、先端が尖ったもの(図6参照)であってもよいし、丸形のもの(図7参照)や多角形(図8参照)でもよい。また、各突起はパイプ状の爪部3と一体であってもよいし、あるいは丸棒や角鋼などを溶接等でスリット状開口4側のパイプ内面先端部5に取り付けてもよい。
【0015】このように雌継手1のパイプ内面側に突起14a,14b,14cを設けることによって、スリット状開口4側にあるパイプ内面先端部5と、雄継手7のスリット側に面する爪部先端部10とを結んで形成される面(垂直面)11が、T型雄継手7の引張軸方向12に対してなす角度θを嵌合の余裕を犠牲にせずに、しかも充填材16(図2参照)の充填性を損なわないで、所要の大きさ以上に確保することが可能となるので、継手の引張強度および剛性を飛躍的に上昇させることが出来る点で非常に有効である。
【0016】また、図9?図11には、雌継手1のパイプ状爪部3の内面側の爪奥部6中央に突起14d,14e,14fを設けた例が示されている。突起14d,14e,14fは、先端が尖ったもの(図9参照)であってもよいし、丸形のもの(図10参照)や多角形(図11参照)でもよく、また、それらはパイプ状爪部3と一体であってもよいし、あるいは丸棒や角鋼などを溶接等でパイプ状爪部3の奥部6に取り付けても良い。」

[2]対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用文献1記載の発明の「爪部」が本願発明の「継手部」に相当し、以下同様に、「爪部の内側面」が「継手部の嵌合内接面」に、「凸部」が「間隔保持用突起状体」に、「高復元性水膨潤性ポリウレタン樹脂」が「吸水膨潤性止水材」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、
「継手部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する継手部の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面に、他方の継手部の嵌合内接面と接する間隔保持用突起状体を一体に設け、前記鋼矢板の少なくとも一方の継手部の嵌合内接面の所定範囲に、吸水膨潤性止水材を一体に設けた止水用鋼矢板。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
間隔保持用突起状体について、本願発明では、任意断面の鋼棒を溶接等の固着手段により、継手部の嵌合内接面に固着して構成しているのに対し、引用文献1記載の発明では、どのようにして設けられたのか不明である点。

[3]判断
上記記載事項(オ)及び(カ)によれば、引用文献2には、矢板間の嵌合継手構造について、パイプ状の雌継手のパイプ内面側に突起を設けたものであって、当該突起が丸棒や角鋼などを溶接等で取り付けられたものが記載されている。
してみると、矢板間の嵌合継手構造の技術分野において、継手の嵌合内接面に突起を設けるにあたり、丸棒や角鋼などを溶接等により固着することは従来公知の技術事項であり、引用文献1記載の発明の凸部(間隔保持用突起状体)に、鋼棒を溶接等の固着手段により固着してなるものを採用することは、当業者が容易に想到することである。
そして、本願発明の効果も、引用文献1記載の発明及び引用文献2に記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2に記載の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-06 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-25 
出願番号 特願平10-366242
審決分類 P 1 8・ 572- Z (E02D)
P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 草野 顕子  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 宮崎 恭
家田 政明
発明の名称 止水用鋼矢板  
代理人 林 信之  
代理人 安彦 元  
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